IE9ピン留め


◆先週から日本のメディアでもブラジル南東部の豪雨による水害がニュースになっているようで、日本の友人からも「大丈夫?」というメールが来ます(ご心配ありがとうございます)。今回600名を超える人々が亡くなっているとのことで、はじめにご冥福をお祈りします。被害が起きたのは、主にリオデジャネイロ州の山間部の町(集落)。州都のリオデジャネイロから70~140キロ程度といったところで、標高が800~900メートル程度あるので、避暑地にもなっています。

◆今回の大きな被害の理由は、およそ50年ぶりにまとまった雨が降ったため。1月11日から12日の間の降水量は、一番の被害地になっているノヴァ・フリブルゴ(Nova Friburgo)で280ミリ、ペトロポリス(Petropolis)で135ミリ、テレゾポリス(Teresopolis)で112ミリとのこと。毎年台風に見舞われている日本からすれば大した降水量に見えませんが、一部の被害地ではその2日間でその月平均に相当する降水量もあったとのこと。つまり、雨にやられたという自然災害の側面があります。

◆また、併せて人災の要素も報じられています。例えば、当地の気象台は避難勧告を出したのですが、地元の消防団(のようなもの)など現場ではそれほどの対応をしていなかったらしく、それが「ブラジル国内史上最悪の水害」をもたらす原因の一つとなったとの見方があります。消防団の十分に機能していたとして、どこまで被害を減らすことができたかは分かりませんが、システムとして万全に備えておくことに越したことはありません。

◆ブラジル南東部(サンパウロやリオデジャネイロを含む地域)の1月は雨期に当たります。年末年始とずっとサンパウロ市内にいますが、毎日どこかで雨が降っていますし、半月ほど前からは雨が降ると市内のどこかで浸水被害が起きています。市内の中心部を取り巻くように流れているチエテ川でも氾濫が起きており、国際空港と市内中心部を結ぶ主要道路がマヒするような日もありました。

◆サンパウロの浸水について、サンパウロ州知事サンパウロ市長は相次いで今年は例年の平均雨量を上回っているためという自然災害の側面を強調しますが、地元主要紙では、警戒システムが機能しておらず、浸水地域のゴミ袋が排水溝に詰まって被害を拡大しているという対策の不備も指摘されています。いずれにしても、このような時には天災と人災が複合的に絡んで拡大するものでしょうから、何か一つに責任を求めるのはあまり意味がありません。どのように被害を防ぐのかに着眼点を置くべきでしょう。

◆その中で日本に何らかのヒントがあるのではないかというのが、今回のポイントです。先週の朝のブラジルの大手民放TV Globoのニュースでは東京の特派員経験者が東京の水害防止システムを丁寧に説明していました。昔であれば、さすが先進国という切り口だったのかもしれませんが、恐らく今ではブラジルもそこまでやるべきではないかというBRICSの一角を担う自負が含まれているように思えました。昨今の日本の官民によるインフラ輸出の機運ではありませんが、そのようなニーズのある場所を訪ねてみるのは一つの方法かもしれません。

◆また、冒頭の南東部の災害ですが、これも実は日本の地デジ方式決定後、南米のチリやペルーといった西海岸諸国に売り込みが図られているEWS(緊急警報放送)システムを援用する方法が考えられます。元々は大地震や津波のためのものとされていますが、場所によって用途が異なることは大いに考えられること。今回の甚大な被害を奇禍として、日本政府から「こんなシステムあるんですけど」と提案することに価値があるかと思われます。自然災害に見舞われることの多い日本としての貢献の方法は幾らでもあるのではないでしょうか。

(画像は、Nova Friburgoの全景。Wikipediaより)


◆先日、地元紙(Estado de Sao Paulo)では、ウィキリークスによる米大使館公電の公表に関する記事が出ていましたが、その中で南米から欧州の麻薬の流れに関心を寄せていると報じていました。ちなみに、欧州のコカインの10%、フランスの40%がブラジル経由で到達しているとのこと。ただ、ブラジルが出所というわけではなく、ルートとしては、「ボリビア、コロンビア、ペルーなど→ブラジル→アフリカ(モーリタニア、アルジェリア、モロッコ)→欧州」といったものだそうです。

◆米国が関心を寄せるのは従来のコロンビアやメキシコから北上するルートだけかと思いきや、そうではないのですが、その訳はアフリカ内で発生したマネーがアルカイダの資金として流れていると見ているためだそうです。改めて米国政府が追いかける範囲の大きさに気がつかされます。

◆麻薬は、主にボリビアやペルー、又はコロンビアからブラジルに流れてくるそうですが、アフリカに向けてはブラジル最大の港であるサントス港やアフリカに地理的に近い北東部の港(サルバドール辺りでしょうか)から出ていくとのこと。そういえば、先日の地元のTV番組ではボリビアとの国境辺りから闇夜の国道を自転車で麻薬を運搬する運び屋が紹介されていたそうです。ブラジル国内では、麻薬はボリビアなどブラジルの西隣の国々から流れてくるというのがある程度の常識になっています。

◆そこで気になったのが先般リオデジャネイロで展開されたスラム街での麻薬カルテル一掃の動きです(日本では北朝鮮による韓国国境沿いへの攻撃であまり目立たなかったかもしれませんが、こちらでは連日生放送していました)。2016年の五輪などを意識して、地元警察や軍、更には行政が本気になったとの見立てがありますが、このような世界を股にかけた麻薬の大きな流れがある中で、この一都市の取り締まりにどこまでの効果があるかは不明で、もしかすると砂漠への一滴になりかねない可能性もあります。

◆根が深そうな問題がある中で、ブラジルでは1月1日に新政権の誕生となりましたが、話題の中心は経済の賑やかなものばかり。このような類の話は聞こえてこないのが実情です。

(写真のサントス港は、あくまでイメージです。埠頭の場所と本論とは何の関係もありません。為念)


◆ウルグアイ政府は、27日、大統領府HPで地デジ方式をこれまでの欧州方式から日本方式に変更することを発表しました。07年にバスケス大統領が決定したものが覆る形となりましたが、その理由として、記者会見に立ったカネパ大統領府副長官(写真中央)によれば、「地政学的な理由」を強調しました。

◆南米では、地デジの日本方式と言いながらも、実際はブラジルの採用以降から普及が広まったことでも「ブラジル・日本方式」というのが大方の採用国の認識です。今回のウルグアイの「翻意」の過程でも日本のみならず、ブラジル勢の南米の大国としてのアプローチが効果的だったとの見方が優勢です。ムヒカ大統領は、大統領に就任した3月から10カ月の間に5度もルーラ・ブラジル大統領との会談を行っているほど、ブラジル重視の姿勢を見せてきており、今月末にルーラ大統領が退任するのを前にして、ムヒカ大統領からルーラ大統領へのお土産を差し出したとも見ることができます。

◆記者会見には、カネパ大統領府副長官のほか、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相(写真左)とアルマグロ外相(写真右)が同席。アルマグロ外相には、外交的見地からメルコスール加盟国が統一した方式を有する方が好ましいとの判断が働いてきており、それが「地政学的な理由」という点を浮かび上がらせていると見ることができます。また、クレイメルマン工業エネルギー鉱業相は、技術的な普及プロセスを強調したことも然ることながら、今回の決断が如何に国内の産業の活性化及び雇用の促進に資するかに力点を置いていることがうかがえます。このロジックは07年の欧州方式採用の時と変わりません。

◆ところで、日本政府が今回の決定を通じて何をするのかは、大統領府HPなどでは明らかになっていませんが、追って総務省のプレス発表などがあるでしょう。過去の報道からすると、他国の例に倣って、専門家の派遣や機材の提供といったところになるのではないかと思っています。ウルグアイにおいても、地デジ日本方式に普及の第1フェーズ(方式の決定)がようやく完了したところです。これからは第2フェーズである日本方式を採用したことによる果実を日本勢が獲得しなくてはいけないと思っています。他国も前例を教訓としながら、是非第2フェーズの成功をウルグアイでと願っています。


◆皆さまご存じのとおり、ウルグアイは既に欧州方式(DVB-T)に決定していましたが、先般来、日本政府とブラジル政府がウルグアイを日本方式にひっくり返そうと頑張っています。現地メディアでも11月から頻繁に報じており。どうもムヒカ大統領もそれに乗っかりそうだという様子になってきています。今日は、その辺りを書いてみます。

◆欧州方式だったウルグアイに変化の兆しが見えたのはムヒカ大統領が就任した今年3月からです。同大統領は前政権で決めた欧州方式の再検討を明らかにしました。大きな理由として考えられるのは、ウルグアイ政府が欧州方式の決定という政治的な賭けに敗れたことです。

◆今回の地デジの方式もそうですが、ウルグアイが決定に際して重視するものの一つが、関連産業の投資呼び込みと雇用の創出です。07年に欧州方式をいち早く採用したのは、当時南米大陸で優勢であった欧州方式をいち早く採用することで、欧州企業のウルグアイへの投資促進を加速させる目論見があったためと言われています。当時、ノキアが進出するなどの噂が流れるほどでしたし、欧州勢はかなり本気で南米大陸の地デジ方式の席巻を狙っていました。

◆ムヒカ大統領就任以降、日本政府からは総務省審議官レベル、ブラジル政府からは大統領を頂点に、ウルグアイ政府との協議を継続していました。ウルグアイ政府からは、貧困層向けの機材(セットトップボックス)の無償提供、オーディオ・ビジュアル産業の研究開発支援、地デジ方式普及にかかる各種支援などが日本方式への変更に向けた条件として提案されており、11月上旬に日本政府はそれら技術的な側面での回答を中心に行ったとの報道がされています。

◆ただ、07年にウルグアイが欧州方式に決めた背景は、技術的な理由だけではなく、むしろ自国産業の発展を意識したものであり、その切り口を十分に理解するブラジル政府からはウルグアイ経済の発展と雇用に資する2.9億ドル相当、3,000名の直接雇用に繋がる民間投資の提案を11月に行いました。具体的には、地デジ機材(セットトップボックス)の工場進出をはじめ、病院建設、ショッピングモール建設、自動車関連や化粧品関連工場の進出など、要は何でもありです。また、ブラジル政府は、これら案件に対するBNDES(ブラジル国立経済社会開発銀行)の融資枠を約束しただけで、予定は未定なのですが、今のブラジルの景気からすると現実的な印象を与えます。

◆一方、青色吐息の欧州勢からウルグアイ政府に約束されているのは1,000万ユーロ相当。目の前にニンジンをぶら下げられたムヒカ大統領は、12月5日、今月中までに決定することをブラジル側に伝えています。政権内では、欧州方式を支持する工業省(地デジ所管官庁)と、南米統一方式構想や今後のブラジルとの関係強化を目指す立場から日本方式を支持する外務省で意見が対立しているようですが、最終的にはムヒカ大統領が決める運びになります。

◆さて、日本方式への逆転という僥倖(ぎょうこう)が実現した暁には、これを奇禍として、特に経済・産業面での両国の遣り取りがもっと多くなればと願っています。今回の一連の流れの中で日本サイドに足りないのは、日本企業レベルの動きに繋がるような動きが見えてこない点です。これは、どこかの企業が進出を約束するといった類ではなく、ウルグアイ側が日本企業の誘致に熱心なのであれば、日本側もそれを円滑にさせる仕掛けを率先して整えてみてはということです。

◆そのような動きの一例を紹介します。07年3月、ウルグアイのレプラ工業相(当時)はアルゼンチンで開かれた現地日本商工会議所の昼食会でウルグアイの投資誘致について講演が行われました。当時ウルグアイは既に日本方式か欧州方式かを検討しており、同相はウルグアイへの投資に関心があれば遠慮なく自分にコンタクトして欲しいとの主旨の話をしていました。日本政府がウルグアイの経済発展を考えている姿勢を見せつつ、日本企業にもウルグアイの政権幹部とのチャンネルを作るという機会を提供するという一石二鳥のチャンスの見地に立ったものでした。

◆先日、ブラジル・サンパウロで、ウルグアイ進出への漠然とした関心を持つ日系企業の話を聞きましたが、その方に必要なのはそれが具現化されるための情報とチャンネルだと思います。例えば、ウルグアイのハイレベルの方にサンパウロで喋っていただく機会があるだけで、似たような関心を抱く現地日系企業の選択肢は格段に増えるのではないでしょうか。今年10月、韓国のサムスンはウルグアイに物流センターを1,500万ドルかけて設立することを発表しましたが、その背景は何か。それだけでも在ブラジル日系企業の関心をそそり、ウルグアイの魅力を知る上で面白いポイントになるのではないでしょうか。案外、ブラジルからウルグアイを見ている企業は多いようです。

◆日本と南米が地デジ方式で結ばれることの何処に価値があるかというと、その方式の普及も然ることながら、それを一つの触媒として経済・産業面等々で日本と当該国の可能性を見出すところにあるのではないかと思っています。ウルグアイについては、この切り口において、他国と比べてまだそれほどの手垢がついていませんし、小国であるため、アイデア次第では面白い展開ができると思っています。


◆前回ウルグアイにいた時に、日本では出来ないことということで、ウルグアイ国内のワイナリー訪問とエスタンシア(観光牧場)での乗馬にそれなりの時間を費やした。そのような贅沢に手が届いたのも、当時の物価が安かったからだ。その頃の調査によると、世界で最も物価の安い都市のひとつに挙げられていた。

◆再びウルグアイを訪れることになったが、乗馬は妻が妊娠中なので次回以降の楽しみにするとして、ワイナリーについては今回2か所訪問した。一つはBouzaで、もう一つは老舗のJuanicoだった。いずれも古くからやっている家族経営のワイナリーだが、後者の方がステータスが高く、名も知られていた。ウルグアイでの3年間で、Bouzaには一度も訪れたことがなかったが、Juanicoには機会があるたびにいつも出掛けて行った。

◆そんな中で、今回紹介したいのはBouzaである。モンテビデオ中心地から15キロほどのところにある農園を2001年に新たに購入して、ブドウ栽培を開始。生産量は少量であるが、半分以上を輸出向けにした経営を行っている。また、ハイエンドのワインを生産しており、これがそこそこ売れている様子。ただ、値段は45ドルしていたのには驚かされた。3~4年前のウルグアイでそのような価格帯のワインはJuanicoで1~2種類程度あっただけだと記憶しているが、景気が良くなったのだろう。そのような品物を出しても売れるようになっている。

◆Bouzaを紹介する理由は、その比較的新しいワイナリーが非常に手入れが行き届き、観光でモンテビデオにやってきた方々にとっては、週末の午後を過ごすのに最適だからである。上品でお洒落なレストランを備えており、ワインのテイスティングだけではなく、前菜、メイン、デザートなどいずれの料理も堪能できる。レストランからの風景も心落ち着かせるもので、当日は快晴だったから尚更ウルグアイの素晴らしさを再認識させてもらった。

◆結局、ワイナリーには正午に訪れて、17時過ぎまでのんびりと過ごした。途中ワイナリーの見学にも参加でき、ガイドから色々と説明をしてもらった。ワイナリー見学を終えてからは、またレストランに戻り、今後はテラス席からブドウの木々やその手前の手入れの行き届いた芝生を眺めながらコーヒーを味わった。このようにウルグアイの時間の流れを満喫した。

◆モンテビデオの中心地から15分程度で素敵なワイナリーとレストランを一体にして経営されている様子を見て、ウルグアイも景気が良くなったと再認識した。これもモンテビデオから15キロ程度であることと、オーナーの趣味が良いことが相乗効果を発揮した結果だろう。なお、もう一つの訪問先であったJuanicoについても、4年前に訪問した時には似たような大規模な計画が持ち上がっていたが、実現には及んでいなかった。老舗ではあるものも、モンテビデオから35キロ程度となると、さすがに距離を感じた。

◆最後に、Juanicoのワインでお勧めするとすれば、特定の樽から瓶詰をしたというシングルバレルという商品がある(ウィスキーみたいだが)。4年前と比べて値段が倍になってしまったのでお得感はないが、それでも17ドル(ワイナリーよりも空港の免税店の方が安かった)で飲むのであればいい買い物だと思う。あと、ウルグアイのワインを試す場合、今は現地で10ドル周辺で入手できるものであれば、ウルグアイワインのレベルを十分に確認できると思う(やはり4年前と比べてドルベースでおよそ2倍になってしまったが)。一度ウルグアイに訪れることがあれば、是非お試しを。最近のものはまだ試していないが、Juanico、Toscanini、Pisano、Carrauあたりであれば、それほどのハズレはないと思う。