アルゼンチンの国営航空会社-その後

◆前回、アルゼンチンの国営航空会社であるAerolineas Argentinas(アルゼンチン航空、以下AR)を取り上げましたが、その際に、帰路が心配と書きました。というのも、この航空会社は定時に運行される方が珍しいぐらいで、フライト前日の夜に日系企業の方々とお会いした際にも「よく乗るねぇ」と呆れられる始末。定時に飛んでもらうためには、十字を切るしかありませんでした。

◆サンパウロ便(AR1244)の出発時刻は17時15分。2時間前に空港(Aeroparque)に到着するため、町中でタクシーを拾って、運転手に行き先を告げました。運転手からは「何に乗るんだい」という質問。「ARだ」と答えると、「災難だねぇ。今さっき乗せたお客さんの便は2時間遅れだったよ。Aeroparqueで荷物運搬の組合がストをやっているよ」との説明。予想通りの展開とは思いましたが、国際線は別ではないかと甘い期待を抱いていました。

◆空港に着くと、チェックイン・カウンターは黒山の人だかり。放送メディアや通信社が数社やってきて、カウンターに並ぶ人々を撮影しています。チェックインをすると、「飛行機は2時間遅れなので、ご了承ください」との宣告。この時点では、2時間程度であれば、W杯のTV観戦で時間を潰せばいいという軽い気持ちでした。

◆19時15分発と刻まれたチケットを手に、搭乗口で待ちました。同じ国際線では、他の航空会社(ウルグアイのナショナルフラッグであるPluna航空)のモンテビデオ行きやリゾート地(といっても今は季節外れですが)のプンタデルエステ行きの搭乗案内のアナウンスが流れる中、サンパウロ便を待っているであろう客の苛立ちが次第に高まっていきました。

◆19時過ぎに変化がありました。フライト掲示板にあったサンパウロ便(AR1244)の表示が消えたのです。思わず辺りから「オォー」という呻きにも似た低い音が鳴り響きました。乗客の数人が慌てて搭乗口や待合室にいるはずのAR社員を探すのですが、その時に限って一人もいません。AR社員個々人の危機管理能力の高さには恐れ入りました。

◆仕方ないので、うろうろしていると、ウルグアイに住む知人S氏と3年ぶりに再会。彼は17:00発のARのモンテビデオ便に乗るはずだったところ、フライトは20:30まで遅れているとのこと。「久しぶりに飛行機を使って早く帰ろうと思ったのに、ARにしたのが間違いだった」と苦笑いしていました。彼によれば、往路のブエノス便(ボーイング737)の乗客は彼を入れても5名だけ。民間企業だったら飛ばさないレベル。改めてARのすごさを知りました。

◆もはや案内掲示板にも存在しなくなったAR1244便。乗客と思われる人々の怒りは次第に大きくなり、最後には、乗客が搭乗案内のマイクを使ってAR社員を呼び出したり、手拍子を合わせて抗議に出たりしていました。そういった抗議行動をするのはアルゼンチンの乗客の方で、ブラジル人は半ば諦めたように構えていました。もはや誰も収拾能力を持ち合わせていないという状況になりました。

◆結局フライトはキャンセルにはならず、21時過ぎの出発になりました。チケットを切ってもらった乗客は、まるで何かを成し遂げたようにガッツポーズをする顛末。飛行機が定時に飛ぶという「当たり前のこと」が如何に当たり前ではないかを再認識させられました。

◆ちなみに、この日の荷物運搬の組合によるストでは、15本程度のキャンセルが発生したとの報道がありました。組合のストなので、ARの責任ではないとも言えるでしょうが、実際キャンセルが発生した殆どの便がARでした。そんな折、ARでは新しいデザインを発表したとのこと。個人的には、同社の問題解決はそのような目先の話ではないような気がします。
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