アルゼンチン大統領の中国訪問

◆11日から15日にかけてアルゼンチンのフェルナンデス大統領が中国を訪問しています。企業家約70名や関係閣僚4名を連れての大型ミッション。さすが派手なことが好きなアルゼンチンと再認識します。このフェルナンデス大統領、本来なら1月に訪中していたはずなのですが、国内問題でアルゼンチンを離れることができないとドタキャンをしてしまいました。当然中国政府からすると、胡錦濤総書記との会談日程まで入れていたわけで、中国人にとっては三度の飯よりも大切なメンツを潰されました。

◆それからの中国の報復措置はなかなかなもので、アルゼンチン産大豆油の輸入を衛生上の理由から禁止しました。アルゼンチンからすると、09年の大豆油輸出全体の7割以上が中国向けで、その年で40億ドル相当稼いでいた金の卵。また、アルゼンチンからの輸出には35%の輸出税がかかっているはずなので、早急に解決したいと思っています。今回の訪中の大きな目的の一つは、この大豆油問題を解決することでした。

◆そして、わざわざ大統領が訪中するに至ったもう一つの理由は、あまり報道されていませんが、中国マネーをアルゼンチンに流し込むためです。アルゼンチン経済が回復基調を続けるなかで、インフラがかなり貧弱であることを現政権は痛感しています。肝心の先進国はアルゼンチンがパリクラブでの債務返済を進展させないために融資を再開させていません。現政権としては、少なくとも大統領選挙のある来年10月までは資金不足に陥りたくないなかで、中国にパトロンになってもらいたいとの期待があるようです。

◆一方の中国にとっては、先進国が躊躇するような市場を攻めたいわけで、資源と食糧に恵まれているアルゼンチンに投資することはお得だと思っている節があります。既に今年3月には中国海洋石油がアルゼンチン石油企業に投資を行っていますし、今回は鉄道分野への投資を約束しました。04年にも中国政府による南米諸国への大掛かりな投資のお約束攻勢がありましたが、当時は狼少年で終わっています。今回はその時の反省があると思いますので、本格的な進出になるのではと見ています。

◆フェルナンデス大統領にとっては、そのような現政権の生命線にかかる2つの大きなテーマを解決するために中国に向かいました。そして、首脳会談の冒頭において、1月のドタキャンを「公式に」謝罪しました。プライドの高いアルゼンチン人のトップがそのようなことをしたということは、如何に今回の訪中が大事だったかが分ります。

◆ちなみに、大豆油については失敗。中国政府に足元を見られました。中国の外務報道官からは「相互の今後の成り行きが解決策を見出すだろう」といった禅問答が聞かれました。そして、中国マネーに関しては、幾つものプロジェクトが署名されました。これでアルゼンチン政府が回さなくてはならなかった資金に余裕ができたかもしれません。フェルナンデス大統領は「現時点では満足を上回る結果」といって、上海の博覧会に向かいました。

◆最後に余談ですが、大統領の訪中初日の11日は、ワールドカップの決勝戦。誰が日程設定したのか知りませんが、もしアルゼンチンが決勝戦まで行っていたらどうしていたんでしょうね。もう一度ドタキャンをしていたんでしょうか。この日程、中国側からの提案だったとしたら、その狡猾さは大したものです。
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