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3年半ぶりのウルグアイ

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◆11月18日から22日にかけて、3年半ぶりにウルグアイを訪問しました。滞在中のほとんどがウルグアイらしい真っ青な空に恵まれ、モンテビデオを中心にのんびりと過ごしました。旧友との再会を喜び、思い出の場所を訪れ、これまで知らなかった場所を紹介していただくなど、充実した時間でした。改めまして、一緒に時間を共有したみなさんに感謝です(といっても、ウルグアイ人がほとんどなので、ここで述べてもあまり意味はないのですが…)。

◆3年半で変わったことと、変わっていないことを確認するのが関心の一つでした。03年から続いている経済成長の恩恵はしっかりと出ています。新しい建物や道路が出来たり、建設途中だったりしますし、昔住んでいたあたりの古い家の庭先の修繕が進んでいるなど、少しは人々に余裕が出てきたのかなとも思いました。また、観光客向けには、近郊のワイナリーにお洒落なレストランが出来ているなど、贅沢な時間の過ごし方もできるようになっています。

◆ただし、その経済成長の恩恵が国民全体に行き渡っているかは、議論の分かれるところです。滞在初日、旧市街の教会の前の広場の噴水を歩いていると、同じように散歩をしていた家族に出会い、そこのご主人と暫く立ち話をしていました。品のある身なりをしていた彼の口から近年の経済成長が格差の拡大を招いたと否定的なコメントが聞こえてきて、意外感を持ちました。その後、週刊誌「ブスケダ」を読むと、若手社会学者がウルグアイの経済成長は貧富の格差を生む結果につながったとの研究成果が記事になっていたことを知り、納得したところです。これまで経済成長を「善」としてきた左派政権にとっては冷や水を浴びせられた記事だったかもしれません。

◆先週末の現地紙「オブセルバドール」でも「ハネムーンの終わり」という類のテーマで、10年3月から始まったムヒカ政権の今後の課題について特集を組んでいました。政権発足当初はある程度の支持がありましたが、最近は当初の勢いがなくなりつつあるようです。皮肉なものですが、左派政権の支持基盤である労組がストライキなどで活動を先鋭化しており、アルゼンチンの現地紙「クロニスタ」には今のウルグアイの情勢を「ウルグアイのアルゼンチン化」という表現を使って説明していました。左派政権だから支持基盤の労組の手綱捌きができるというのではなくて、実は政権が振り回されている状況が見え始めたようです(どこかの国も似ていますが)。

◆早くもムヒカ大統領の真価が試される時がやってきたのかもしれません。彼は左派政権の中でも更に左側且つ大衆政治的な派閥(MPP)に属しています。その最大派閥をバックに大統領選を有利に戦ってきました。ただ、MPPが目指す政治と左派政権内の経済エリートが仕切っている経済政策とは肌合いが異なります。安定した経済政策を「アルゼンチン的な動き」によって不安定化させてはならないと企業家と与党内の経済エリートあたりは思っているでしょう。そのための用心棒としてのムヒカ大統領なのですが、彼の手綱捌きが予想に反して上手くいかないと分かった時、これはちょっとウルグアイの評価を少し考え直さなくてはいけません。