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81歳

◆ウルグアイ滞在中、中国新聞でコラムを書いていたときに取り扱わせていただいた三上隆仁氏が日本でこのたび日本善行会から善行賞なるものを受けたという報道がブラジルのニッケイ新聞でなされていました。

ウルグァイで第二の人生実る=林産業振興に貢献=三上隆仁さん81歳=善行賞を受賞=JICA専門家から「永住」
 [モンテビデオ発]JICA(国際協力機構)専門家としてウルグァイに係わり、第二の人生をこの国に移して林産業の開発や振興に余生を捧げている三上隆仁さん(広島県出身)が永年にわたって国際協力に寄与したことが評価され、社団法人・日本善行会(川村晧章会長)より善行賞を授与さた。授賞式は去る五月二十六日、東京の明治神宮参集殿で行われ、賞状とメダルが三上さん(代理出席)に手渡された。
 三上さんは一九五O年三月、京都大学工学部繊維化学科を卒業と同時に興人人絹パルプ(株)に入社して繊維の開発に携わった。ノルウエー政府のフェローシップを受けて同国の紙パルプ研究所に一年留学の経験を持つ。七六年に興人社を依願退職し、以後はJICAの短期・長期専門家としてウルグアイの林業、林産品加工、紙パルプ品質改善などに九三年まで係わった。
 八〇年代に一時的にJICA専門家の立場を離れた時期があったが、この間は(社)海外林業コンサルタンツ協会のコンサルタントとしてウルグァイの造林や木材利用の調査に携わり、豊富な知識と経験を買われてウルグァイ国家造林五ヵ年計画の作成にも指導的役割を果たした。今ではウルグァイはユーカリや松などの早成樹種の育成による林業・林産のモデル国として世界的に知られているが、三上さんはそのモデル化に貢献してきた。
 最近はサンパウロでも援護協会などの支援で自閉症児の教育が注目されるようになってきているが、三上さんは九〇年代初期から首都モンテビデオで自閉症児教育を支援してきており、保護者と一緒になって自閉症児教育財団を設立した。副会長として今でも貢献を続けている。その教育のため、十年間にわたりJICA専門家(三枝たか子さん)の派遣を得ることにも成功した。
 近年はアルゼンチンとパラグァイの賛同者と一緒に草の根レベルのラ・プラタ流域再開発研究会を立ちあげた。将来はこの流域を日本に対する木材と食料の生産基地にすることをめさして頑張っている。
 一九九三年、JICA専門家としての役割に区切りをつけ、LATU(ウルグァイ技術研究所)顧問に就任し、ウルグァイ永住を決意した。同時にLATU総裁を会長とするNGOのオイスカ・ウルグァイ総局の発足にも係わり、国際理事に就いている。同総局が九六年に米州開発銀行(本部・ワシントン)より受託した林業人材育成プロジェクト実施の中核を担った。
 このプロジェクトと連動して展開された植林思想普及運動の一環として、文部省と共同で全国の小中学校に「子供の森」を定着させた。〇三年十一月にウルグァイを訪問された紀宮さま(黒田清子さん)を「子供の森」実施校にご案内する栄誉にも浴した。
 最近は、琉球大学の比嘉照夫教授が発明した有用微生物(EM菌)が農牧国家であるウルグァイに極めて有効であることを試験結果から確信して、その活用技術をナショナル・プロジェクトにすべく努力している。
 その一方で「貧困を減少するには人づくりを欠かせない。そのための早成樹種の植林とEM菌の活用をアフリカの人材を対象とする集団研修をウルグァイで実施すべくJICAに打診している」と善行賞を受けてもなお気概満々の八十一歳だ。八四年には日本の外務大臣表彰も受けている。


◆その時の中国新聞の自分のコラムでは書き込める文字数が限られていましたが、ニッケイ新聞の記事を見るとおり、三上氏の活動の範囲は、自閉症児教育、有用微生物、南米南部地域連携など年々広がっています。年齢が80歳を超えても矍鑠(かくしゃく)としている姿は驚かされるものがあります。

◆日本の反対側で30年近くにもわたって、決して私欲ではなく、公への貢献を大義にしつつ、自らの仕事に生き甲斐を持ち続けている姿は、高齢者社会を迎えた日本にとって、時代の先駆者の役割を担っているような気がします。また、そのような活躍に対して偉ぶるところがないのが三上氏の魅力なのかもしれません。

◆実は、今回の受賞の話も、自分のコラムを読んだ日本善行会の広島支部の方から中国新聞社に話があったそうです。はじめに三上氏に日本善行会から話が来ているとウルグアイ駐在時に連絡したところ、「そりゃぁ、広島への恩返しができたかのぉ。よかった」とその喜びが素直に現れていました。日本には馴染みのないウルグアイですが、二国間の絆を考える際、三上氏が行ってきた数々の積み重ねが非常に貴重な役割を果たしていることは知っておきたいと思います。