人気ブログランキング | 話題のタグを見る

エクアドル大統領戦こぼれ話

◆ウルグアイに戻ってきましたが、非常に暑いですね。標高2500メートルある常春のクエンカから戻ってくると、モンテビデオがここまでジットリする気候だったのかと再確認させられました。ちなみに、地元の人々は以前から「ここの夏は湿気が高い」と言い続けていましたが・・・。

◆エクアドルで年末年始を過ごし、その間親戚縁者等々と色々話していましたが、話題に出てくるのが今月15日に就任するコレア次期大統領についてです。毎晩のニュースでも必ずトピックになっており、現在の大統領(パラシオ大統領)は見る影もありません。コレア氏がこれからどのような政権運営を行っていくのかについては追って話をしていくにして、今日は先に行われた大統領選挙に係る話について。

◆エクアドルの有力紙コメルシオ(1月1日版)にも書いてありましたが、一年前のこの時期に「コレア大統領」と予測した人間は皆無でした。それが何故ここまでコレア候補が伸し上ってきたのか。その一番のキーワードは政党との対決姿勢を鮮明にしたことでした。ただし、それは彼が意図した結果ではなく、偶然の産物であったようです。

◆はじめに、コレア次期大統領については、現政権において4ヶ月弱ほど経済財務相を務めていましたが、彼の描く改革姿勢が仇となって、現大統領に見捨てられる形となり、辞任。同相の任期において、同国の問題点を垣間見たことがその後の建設的な政策立案に役立っているとの話がありますが、いずれにしても辞任に至るには、議会を数十年近く仕切っているフェブレス・コルデロ元大統領(現議員・キリスト教民主党)の尾を踏んだとの話も漏れ伝え聞こえてきます。

◆その後、コレア氏は大統領戦に立候補したわけですが、最近の新聞報道によると、最初、彼としては、いずれかの政党との共闘を考えていた節があるようです。思想的に一番近かったのは、ID(左派民主党)ですが、彼らは政策的には近くともコレア氏で勝てるとは見ておらず、共闘を見送りました。また、パチャクティック(先住民が母体の政党)との連携の可能性についても、同党は先のグティエレス政権時における共闘及びその後の失敗というトラウマがあったようで、結果的に連携には至らず。コレア氏は単独で戦うことになりました。

◆コレア氏にとって奇禍となったのは、06年に次々と起きた様々な国内的な事象であり、唯一同氏が政策的に内容を有していたためとの分析が出ています。確かに、昨年のエクアドルについては、米国とのFTA、コロンビアとの外交関係、マンタ基地の米国貸与の問題等々、様々なテーマが遡上にあがりましたが、これらの政策に対して、当初有力候補と言われていた人々(左派ロルドス候補及び右派ノボア候補)は発言に中味が伴っていませんでした。

◆例えば、象徴的だったのは、10月5日に行われたTV討論会です。この際に司会者から最初の質問として同国の経済問題を振られたノボア候補(98年、02年の選挙ではいずれも次点に終わり、今回が3度目の挑戦)が行ったのは、手持ちの原稿の棒読み。彼とも付き合いのある現地の企業関係者からの話でも「あいつは馬鹿だ」の一言で片付けられていました。他の話でも、「ノボアの選挙というのは、一つのビジネス。負けても十分メリットは享受している」とのことでした。本当かどうかは知りませんが、同氏は選挙中、圧力鍋の蓋のない鍋を貧民に与えて、「選挙に勝ったら、蓋をあげよう」と言ったとか言わなかったとか。そんな話に信憑性を与えてしまうのがノボア候補の本質だったといえるでしょう。

◆あと、先の大統領選挙で一つだけ見えてこなかったのが、第3位になったグティエレス候補(今回出馬できなかったグティエレス前大統領の弟)の奮闘ぶりでした。直前の世論調査では4%程度しかなかった同氏の支持率が、最終的には15%近くの得票率を獲得する結果については、自分は最初世論調査会社の誘導ではないのかと勘繰っていました。

◆これについて、親戚に話をすると、「軍だよ」との答え。つまり、今回の選挙で軍に一番近かったのは、グティエレス(弟)候補であり、大統領職を追放されても軍との関係が深いグティエレス(兄)前大統領の働きかけによって、軍中枢よりグティエレス(弟)支持という上意下達の指示が出ていたらしいとのこと。軍人(及び警察)は中立性の見地から投票できないため、その親族が投票マシーンとなって働いた・・・そうです。信じるかどうかはお任せします。

◆それにしても、国際機関の監視の目が働いていたであろう今回の選挙ですが、それは飽く迄表面的な話で、この他にも色々な抜け道の話を聞かせてもらいました。たしかに、それなら捕まらないと思ってしまうようなことばかり。上には上がいるものです。