国境というもの

◆モンテビデオから600キロほど北にあるアルティガスは人口4万人強の小さな町です。モンテビデオに生活する人々にとって、この地域はブラジルとの国境に接する「辺境」であり、あまり省みられることもありません。実際にアルティガスの町を覆う趣きも、例えばラジオやテレビはブラジルの番組の影響を大きく受けているなど、モンテビデオとは異なっていました。

◆自分がこの町を訪れてみたいと思った理由の一つに、「密輸」の存在があります。今年に入ってから麻薬の経路としてウルグアイが活用されることが増えてきました。同じ南米のコロンビアが麻薬の主な生産地のようですが、それが先進国に流れる経路として、ボリビア、パラグアイ、ブラジル等を経て、ウルグアイから欧州に出るルートなどがあるそうです。ちなみに、先日報じられたケースでは、パイロット等航空関係者までが一連の犯罪に関与しており、組織的な犯罪が根付いていることがうかがえます。

◆ウルグアイの北北西には、イグアスの滝で有名なパラグアイ・アルゼンチン・ブラジルの国境沿いから構成される「三角地帯」と呼ばれる地域があり、同地域は密輸やマネーロンダリング等で有名です。米国政府はテロの資金源として使われていると911以降から特に目を光らせている様子です。また、このような国境地域には、アラブ系の移民が多く商売を営んでおり、それが米国の警戒を更に強める結果になっています(そして、ウルグアイとブラジルの国境にもパレスチナやアラブ系のネットワークが構築されています)。

◆三角地帯からウルグアイに麻薬を含めた密輸品が流れてくる場合、三角地帯から比較的近いとされるのがベジャ・ウニオン、アルティガス、リベラといった国境沿いの町です。それぞれ陸路でモンテビデオに運び、それから海又は空の経路を通じて、主に欧州に流れると見られています。

◆それでは、何故その筋の人々にウルグアイが着目されるのか。その理由は、ウルグアイが他国と比較して脇が甘いためであると思われます。

◆これらの町については、それぞれ自分の目で確認したことがありますが、総じて国境を通過することは容易でした。例えば、今回自分たち夫婦は、ウルグアイ側のリベラでブラジルへの入国手続きをしました。まずはウルグアイ側にある役所で出国手続きを行い、それから車で免税店がひしめく繁華街や国境(らしきもの)を越えて、ブラジル側にある警察で入国手続きを行いました。リベラの場合は、川など国境を明確に区別するものがないため、誰がどの時点でブラジルを越え、ウルグアイに入ったかについては、その個人の「善意」の申請によって成り立っているような状況です。

◆今回、ブラジル側の警察で入国手続きを行いましたが、その際に「アルティガスに行くと、もう一度ブラジル側を出国しなくてはいけないが、どうすれば良いのか」と聞きますと、先方は怪訝そうな表情をして、「ウルグアイ側はどうか知らないが、多分手続きは必要ない。明日ここ(警察)に戻ってくればよい」との回答。

◆その時点では、その回答の意味が分からなかったのですが、この界隈で2日間過ごしてみると見えてきたのは、そもそも出入国手続きを几帳面にやる必要はないということでした(自分の場合は、万が一の際の保険として必要ですが)。リベラの町でも、アルティガスの町でも、歩いて国境を渡っても、車でウルグアイ・ナンバーを付けて国境を越えても止められている光景は目にすることがありませんでした。

◆また、アルティガスは、川を隔ててウルグアイとブラジルで分かれていますが、一般的に車や歩行者が渡る橋とは別に、人の胸程度の丈しかない川を馬車で渡る貧困層の人々を橋から眺めることができました。当然その人達にお咎めはなし。どうしても日本人は、国境となると「見えない壁」があるように思えてしまうのですが、実はそれは意識の問題で、現地で生活する人々にとっては、何の意味も為していないような気がしました。
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