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決選投票の見どころ

◆前回に続いて(というか、最近ずっとですが)、エクアドル大統領選挙について。今回は、決選投票のみどころを少し説明していこうと思っています。

◆ノボア候補とコレア候補ですが、米国との協調と南米統合への姿勢といった外交面において色の濃淡はありますが、いずれにしても国内的にはポピュリストであることに変わりないと思われます。この国の大統領選では、5日に開かれたテレビ討論会でも顕著でしたが、巧言令色と愛国心に訴えることが勝ち残る近道になっているようです。

◆ただし、この両候補は、そのような主義主張だけではなく、実は得票傾向も似ています。都市部と農村部における獲得票の傾向を検証しますと、ノボア候補が「27.5%、24.8%」と出ており、コレア候補も「25.4%、23.6%」といった結果を出しており、共に都市部に基盤を置いた候補です。一方、地域別では、ノボア候補=コスタ(海岸)地域でコレア候補=シエラ(山岳)地域という色分けが出ていますが、今後決選投票で更に有権者を獲得しようとする場合、農村部の得票をどこまで上積みできるかが鍵になります。

◆そこで両候補が農村票獲得で鍵になるのがダークホースとして急浮上してきた3位のグティエレス候補の票です。彼の都市部と農村部の獲得票の傾向ですが、「12.4%、20.4%」と他の有力4候補がいずれも都市部に強かった傾向を示しているなかで、唯一「農村部で強い候補」であることを実証しました。特に、得票数では微々たる数しかないのでしょうが、アマゾナス地域(アマゾン川上流地域)での彼の得票数は48.1%に及んでいることからも、メディアの情報が氾濫していないところでは「グティエレス(前大統領)の亡霊」が未だに跋扈していると見ることができます。

◆グティエレス候補又はグティエレス元大統領がこれからの選挙戦で一定の発言力を有すると見られます。特に、グティエレス候補の今後の政治的な扱いについて、彼にとって有利な対応を行ってくれる候補を支持することになるでしょう。その点では、コレア候補に傾く可能性は高いでしょうが、コレア候補にとっては、このグティエレスの亡霊が既得権を持つ浮動票の乖離を招く恐れがあり、両刃の剣になる可能性も高いと見ています。

◆ここで少し余談を入れますが、今回の大統領選を通じて、エクアドルのメディアは意図的に「グティエレス外し」を行ってきたのではないかと勘ぐらせるような展開を見せてしまいました。例えば、CEDATOA-Gallupでは、グティエレス候補について全くのノーマークで、9月17日付で3%、9月23日付でも4%の支持率しかないと発表していました(最終局面で申し訳程度にグティエレスの顔写真を盛り込んだ世論調査報道をしていましたが・・・)。最後の一ヶ月で「泡沫候補」が10%以上も伸びる事情とはいったい何なのかと考えさせられます。エクアドルの報道機関の独立性が問われる選挙戦なのかもしれません。

◆本題に戻りますが、次のポイントは中道穏健層を獲得したロルドス候補の票がどちらに流れるかということです。これは、有権者と支持政党との間で認識を異にしていると思われます。ロルドス候補に投票した有権者の多くは、コレア政権誕生による国情不安を避けたいとする行動規範によるものだったと思われます。「反コレア」の意識が底辺にあり、その意識が次の投票行動を起こすと考えられます。一方で、ロルドス候補の支持基盤である左派民主党(ID)は同党幹部がこれまでの経緯から右派のノボア候補に与する訳にはいかないと明言しています。ロルドス候補及びIDは最終的にコレア候補を支持するという苦渋の選択をするでしょうが、同氏を支持した有権者はそれに従わない可能性が高いと思われます。

◆ノボア候補は、1位で通過しながらも、決選投票に向けて確実な勝利を獲得したわけではありません。未だに逆転される可能性を十分に秘めた中での選挙戦となるでしょう。まず、手短なところとして、ノボア候補はビテリ候補率いるキリスト教民主党(PSD)を組むと考えられます。大統領選挙に並行して投票が行われた議会選の結果はまだ公表されていませんが、既存政党で有力な柱となると見込まれるノボア候補が所属するプリアン党とPSDが中道右派連合を形成して進めていくのではないかと思われます。ちなみに、この流れによってエクアドル政界のドンであるコルデロ氏にとっては、従来の政治体制の維持という彼にとって望むべき展開となるであろうと思われます。

◆IDは、どの候補を支持するかについて今週の金曜日に決定したいと伝え、同党がキャスティングボート役になると思っていますが、正しくはロルドス候補に投票をした有権者(現状安定志向の浮動票)が鍵になります。そして彼らの多くはノボア候補に投票するでしょう。コレア候補としては、グティエレス前大統領によるコレア支持表明を明らかにしてもらい、それからIDとは政策協定を結ぶことから始まると思われます。それでも勝利には十分条件とは言えませんし、大統領選に勝利しても、数々の課題が待ちかまえており、それらを克服する技量をコレア候補が持ち合わせていると見ていません。

◆エクアドル大統領選挙の決選投票は、メディアが「親米」対「反米(左派)」という表面的な議論を展開する一方で、そのような政策論争ではなく、実質的には政局へと移行するでしょう。