続・ルーラ対アルキミン

◆昨日に続いてブラジルの大統領選挙の話。Data Folhaは10月10日付の最新の世論調査を流しました。前回が6日であり、今回の結果が意味するところは、8日に行われた大統領選挙討論会以降の変化といったところだと思われます。

◆アルキミンが注目され、ルーラが押されっぱなしのようにも思えましたが、実際は支持率の差は拡大する結果になっています。ルーラ大統領が50%→51%の微増であれば、アルキミン候補は43%→40%と減少しています。これは憶測の域を出ませんが、ルーラ大統領周辺の汚職にまつわる事件に進展がないため、アルキミン候補の支持率に勢いがなくなってしまったということかもしれません。

◆前回のコラムにnamaleさん(サンパウロ州在住)からコメントをいただきましたが、彼女の周辺ではアルキミン支持者が多いとのこと。それを裏付けるようなチャートがVeja誌で掲載されていました。米国大統領選における南部の共和党支持者と北東部や西部のリベラルの分布は知られていますが、今回のブラジルの大統領選挙では、有権者の傾向が明確に分かれました。

◆まず、北東部や北部はルーラ大統領、サンパウロ州以南を含めた地域はアルキミン候補が優位に立っています。ブラジル関係者の常識として、北東部の慢性の貧困と南部の相対的な所得の高さがあります。北半球の人々の先入観を覆すように、ブラジルでは、「北」が貧乏であり、「南」が裕福だと括ることができます。

◆そのような括り方によれば、貧困層がルーラ大統領を支持しており、中流層より上がアルキミン候補を指示しているという二極分化の構図を確認することができます。エコノミスト誌でも特集されていましたが、ルーラ政権の最大の受益者は貧困層です。数字でも貧困率は下がっていますし、極貧層世帯の所得が2004年から2005年にかけて28%も上昇しています。彼らとしては、当然ルーラ大統領に二期目を望む判断に至るでしょう(一方、同期間における中流層の所得は1.6%しか伸びていません)。これら支持層の後押しを受けて、各候補者は自らが政権に就いてからの政策を形成することになります。

◆そのように考えてみますと、これまで1年近く南米の「左傾化」の動向についてメディアは注目してきましたが、左派の一角とされていたブラジルの大統領選挙に際して、何もそのようなイデオロギー的な話が聞こえてきません。どうもメディアは声を潜めているのが実際のようです。これまでも、どことなくイデオロギーかかってしまったブッシュ米政権の思考回路がそのまま南米に当て嵌められた感があれば、一部の南米諸国が政治的プロパガンダの材料として生かしたがっているようにも見えます。しかし、今回のブラジルの大統領選を通じて、先般来語られている南米政治の「左傾化」が、実は手垢がつき始めていて、一歩引いてみる必要があるかなと見ています。
[PR]