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ルーラ対アルキミン

◆最近のウルグアイ主要紙の国際面の中心は、北朝鮮の一件もありますが、ブラジルの大統領選挙も多く報道されています。何せウルグアイの「北」と言えば、ブラジルのことであり、ブラジル人の総称として「北の人(norten~o)」という表現があるくらいです。

◆さて、その「北」の大統領選挙の動きですが、既に報道のとおり、10月1日の投票日は、再選を狙っていたルーラ大統領が47%、対抗馬として名乗りを上げていたアルキミン候補(前サンパウロ州知事)42%という結果によって、29日に両者による決選投票が行われることになりました。選挙前にはルーラ大統領が決選投票不要となる50%以上の得票率を獲得するというのがメディアの見立てでしたが、それが外れる結果になりました(日本の場合、時事通信がこの例になるでしょうか)。従って、10月2日の当国の新聞紙面では、アルキミン候補の善戦について驚きをもって報道されていました。

◆何が決選投票に導いたかについては、既にメディアでも報じられていますが、2点あると言われています。一つは、9月16日に発覚した「ブラジル版ウォーターゲート疑惑」です。これは、アルキミンを含めた野党政治家の不正の証拠を買おうとしたルーラ選挙対策チーム関係者が54万ドル相当の現金を持ち合わせているところを警察に逮捕されたという騒動を指しています。ルーラ大統領は関与を否定していますが、いずれにしても与党・労働者党の腐敗振りが目に余るという有権者の反応が示されたのは間違いないと見られています。

◆もう一つは、9月下旬に開催された大統領選挙候補者討論会にルーラ大統領がボイコットしたことです。ルーラ大統領は、先の疑惑を含めて、与党への批判に終始するような討論会に出るメリットを見出せずに欠席しました。確かに、その討論会での最初の質問として準備されていたのは、「次期政権の任期中に(先の疑惑について)大統領の関与が認められたら辞任しますか」といった厳しいものでした。ルーラ大統領にしてみれば、討論会に出ても、出なくても支持率は下がると見ていたのかもしれません。「マシな結果(menos mal)」といったところでしょう。

◆候補者が2名に絞られた中、8日にはルーラ大統領とアルキミン候補との討論会が開かれ、今度はルーラ大統領も出席しました。既に6割以上のブラジル国民が討論会の結果をもってしても投票を考えている候補者を変更するつもりはないと述べていますが、週末の夜のショーとしてはなかなか見応えのあるものだったのではないでしょうか。この討論会の直前に行われた世論調査では、ルーラ大統領54%、アルキミン候補46%と競り合っているものの、ルーラ大統領の優位は揺らぐ状況にはないと伝えられています。

◆討論会での中心は、やはり現政権の腐敗に関することでした。立て続けに行われる関連質問を前にして、ルーラ大統領は「経済について話をしたい。社会保障や金利政策などがあるじゃないか」とテーマを変えたがっていました。

◆しかし、経済については、ルーラ大統領ではなくてアルキミン候補に分があるというのが一般の反応です。また、彼の州知事時代の実績を知るブラジルの大都市サンパウロの産業界は8:2又は9:1の割合でアルキミンを支持していると耳にします。BRICSと言われて久しいですが、その中で近年一番低い成長率なのがブラジルです。中国やインドが7~8%程度の成長をしている中で、ブラジルは2%台。ブラジルの潜在性を信じるブラジル国民にとっては、この数字は満足できるものではなく、その一因を現政権に求める向きがあります。

◆昨晩、サンパウロ州の産業界関係者と雑談する機会がありましたが、大統領選挙の見通しについては「まだまだ分からない」とのことでした(まあ、アルキミン候補への期待含みはあるのでしょうけど)。ルーラ大統領の再選が当然のように語られていた数ヶ月前とは異なる情勢に、ラテンアメリカの「変わらないようで、変わっている。変わっているようで、変わらない」一例なのかなと思ってしまいました。