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ブラジル大統領選挙

◆昨日に続いてブラジルの話題。来週(10月1日)に迫った大統領選挙についてです。南米では今年が大統領選挙の当たり年になっていますが、ブラジルの大統領選挙は本来南米の動向を図る上で注目されるべき選挙の一つだったのかもしれません。ただ、選挙の賑わいは海外に全く伝わってきません。恐らく、国内でも盛り上がりを欠いたままで進んでいるのではないでしょうか。

◆本日付の現地紙に出て来た世論調査(IBOPE)を見ますと、2期目を目指すルーラ大統領が47%で、対抗馬となっているアルキミン候補(前サンパウロ州知事)の33%を大きく引き離しています。ブラジルの大統領選挙は、50%の得票数を超えないと1位と2位との決選投票(10月29日)なので、メディアが注目するのは、果たしてルーラ大統領が決選投票なしで再選されるかでしょう。

◆ルーラ大統領にとっては、決選投票の有無がもしかすると大きな節目になるかもしれないと感じているようですし、またアルキミン候補もその機運を高めようとしている節があります。その最もたるものが、先週からブラジル国内で話題になっているルーラ選挙対策チームの疑惑問題。

◆内容は、アルキミン候補が救急車購入にかかるキックバックを受けていた不正の証拠をルーラ選挙対策チームの一員が買い取ろうとしたことが逆に裁判所から訴えられたというもの。この構図なんとなく、30年前のウォーターゲート事件と似ていることもあって、現地メディアは、ルーラ大統領が指揮したのではないかという点も含めて、話題になっています。ちなみに、ルーラ大統領は、早速選挙対策チーム長をクビにして、新しいチーム長にガルシア外交顧問を宛てました。イメージとしては、キッシンジャーが新しい選挙対策チーム長になったようなもので、ルーラ大統領の真剣さが伝わってきます。

◆そのような経緯があったので、今日出てきた世論調査は、果たしてルーラ大統領に疑惑のダメージはあったのかを図る意味で大事でした。結果からすると、前回比2%減と漸減傾向の範囲内ということで、深刻な被害にはなっていないということが明らかになりました。今後は、この疑惑が複雑化する前に選挙活動を終えてしまいたいルーラ大統領の意向通りになるかといった点です。したがって、第1回投票で5割を確保できるかが焦点になるわけです。

◆7月にサンパウロに行ってきて、その際に大統領選の話もしてきたのですが、相手の人から「本当なら、新しい大統領が望ましいんだけどね」とポロリ。過去を見ても、ブラジルの大統領は2期目で目立った成果を出していないことが分かります(近年はカルドーゾ前大統領のケースしかありませんが)。また、現政権のここ数年間は不正疑惑のオンパレード。ルーラ大統領が直接噛んだものはないとされていますが、与党・労働者党が過去に清廉だと思われてきた中で、ここまで不正疑惑を晒されると、国民と新たな疑惑と言われても麻痺しきってしまったと見ることもできます。先の世論調査はその傾向を汲み取っているのかもしれません。

◆本来であれば、大統領選挙を通じて、時代性に合う新しい大統領かと吟味することが大切だったのですが、何せ有力な対抗馬がいなかったのが今回の大統領選挙の致命的な問題点。それで、先の疑惑がウォータゲートのようにルーラ大統領の指揮によるものだったとなれば、いかに腐敗しきったブラジル政界であると国民が分かりきっていても、2期目早々からレームダック化する危険性も孕んでいるのかもしれません。