カテゴリ:エクアドルのお話( 16 )

エクアドルを国として眺めるとき、米国の関係を重んじしてしまいます。これは、『エコノミック・ヒットマン』で紹介されているまでもなく、米国にとっては、「裏庭」である南米において反共の芽は早く摘んでしまおうという過去から積み重なった行動規範によるものと思われます。また、冷戦終結後では、そのような反共というお題目が反米に変わっていることも昨今の米国とベネズエラとの関係、あるいは2004~2006年辺りにメディアで騒がれた「南米左派傾向へ」という論調から見ても読み取れます。

エクアドルのコレア政権は一般的に反米と位置づけられています。それは、コレア大統領候補(当時)が当初の泡沫候補から大統領への道を勝ち取った段階において確立されました。例えば、正攻法で支持を獲得することが難しかった同候補は、当時の選挙戦を通じて、社会正義の拠り所の一つとしてベネズエラのチャベス大統領の存在を余すところ無く活用しました。チャベスという「シンボル」を最大限に利用した一例として、チャベス大統領がブッシュ米大統領を「悪魔」呼ばわりしたことに対して「悪魔が可哀相だ」と便乗することがありました。その際、海外メディアは小国・エクアドルの大統領候補に注目を与える媒体となり、結果的にコレア候補の知名度を高める結果となりました。

果たしてコレア大統領が反米であるかについて、これについて拙ブログではこれまでも一定の留保を綴っています。彼なりの社会正義の実現のため、その過程において米国が妨げているようであれば、それに容易には屈しないというのがコレア大統領のスタンスであるように思われます。そのような視点から、現在のコレア大統領を見るうえで参考になる3つのケースがあります。

1.マンタ空軍基地の米軍継続使用

先のエクアドル大統領選挙でテーマの一つになったのは、2009年11月で期限を迎えるマンタ空軍基地の米国軍使用を継続させるかでありました。同基地は、米国軍にとって、コロンビア国外からコロンビアの麻薬撲滅を図る3基地のうちの1つであり、南米では唯一の拠点となっています(他の2箇所はエルサルバドルとキュラソー)。

コレア大統領は、選挙戦の最中から継続は行わないと述べ続けており、2008年3月、コレア大統領の息がかかっているとされるエクアドルの憲法制定議会はエクアドルにおいていかなる外国軍の基地も非合法化すると可決しました。また、7月30日、エクアドル外務省は正式に米軍の10年間の継続使用を更新しない意図を伝えました()。

選挙戦の時もそうでしたが、同基地の継続使用を許可しないことは、あたかも米国とエクアドルとの断交を意味するといった論調も垣間見えていたが、結果的には粛々と行われようとしています。エクアドルとしては、麻薬撲滅に反対している訳ではなく、同基地の使用が停止された後にも、両国間で麻薬の流通が広まらないように共に取り組むことが確認されています。エクアドルにとっても、コロンビアからの麻薬等の経由地として利用されることを望んでおらず、テロ組織と見做されているFARCの進入を防いでいることと同様、国境沿いの水際作戦に従事しています。

2.イサイアス一族への追求

7月8日、コレア大統領は、1998年の金融危機に際して6.6億ドルを着服して米国に逃亡したイサイアス一族に関連する企業200社程度の差し押さえの指示を出しました。この動きに対して、メディアからは、接収された企業のうちTV会社が含まれている点を絡めて、今回の接収の背後にあるのは、9月に行われる新憲法に対する国民投票を前に、コレア政権が批判的なメディアを黙らせるためと示唆しています()。また、キューバからの政治亡命者の拠点でもある米国・マイアミの主要紙であるマイアミ・ヘラルドのコラムニストのオッペンハイマー氏は、今回の件も含めて、コレア大統領批判の急先鋒を担っています()。

コレア大統領の動きが国内メディアへの影響力強化といった高度に政治的な判断が働いたものであることは否定できませんが、それを一部米国メディアが声高にいうことも多分に政治的なきな臭さを感じます。実際オッペンハイマー氏が批判的な視点からコレア大統領を取り上げたコラムに対しては、「一面的」や「ネオコンの発想」といった批判が書き込まれています。

ブッシュ政権は当座模様眺めを維持していますが、米国政府がイサイアス一家の件でコレア政権に対峙するような形で深入りした場合、エクアドルだけではなく、南米各国からも、米国政府が未だに冷戦期のダブルスタンダードを踏襲していると冷めた目で見ることになると思われます。現在、米国政府は、6.6億ドルを着服してマイアミに在住中のイサイアス一家の関係者を速やかにエクアドル当局に渡すようにとする要請に対して、外交的な判断が迫られていますが、米国の対南米政策にかかる一つの試金石となるでしょう。

3.去り行く在エクアドル米国大使の弁

もう一点は、7月20日、近く退任するジュエル在エクアドル米国大使が、個人的な見解としながらも、コレア政権とFARCとのコネクションを見出すことは出来ないと地元新聞社(Universo)とのインタビューで発言した点です(※)。

現役の大使が退任を前にコレア政権とコロンビアのゲリラとの関係を見出すことができないと発言したことの意味は大きいです。3月に行われたコロンビア軍がFARC一団を掃討する目的でエクアドルに越境した際、米国は対テロの一環であれば已むなしとするコロンビア政府に同調するスタンスでしたが、ここに来て若干の軌道修正を図り始めたと見ることができます。また、ブッシュ政権内におけるコロンビアへの肩入れ具合に濃淡があること、更にエクアドルへの外交姿勢が一枚岩ではないといった片鱗が今回出てきたともいえます。

また、海外メディアを中心に、「極左」、「ポピュリスト」、「反米」と表面的に騒ぎ立てているコレア政権へのレッテル貼りの行為に対し、エクアドル政府と米国政府の外交当局では建設的な外交が展開できていると見ることもできるのではないでしょうか。冒頭に述べた『エコノミック・ヒットマン』で展開されていたようなレトロな二国間関係とは違う方程式が存在しているのか検証してみるのも楽しい作業かもしれません。
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◆ここ数日、19世紀初頭にグランコロンビアという名で呼ばれていた地域が国際社会で注目されています。当時のグランコロンビアの構成国は、ベネズエラ、コロンビア、そしてエクアドルなど。3月1日、コロンビア軍はエクアドル領地内でコロンビアが長年内戦の相手となっているゲリラ軍(FARC)の幹部を殺害しました。その際、自国領土を侵されたエクアドルのコレア大統領は3日にコロンビアとの国交を断絶。中南米の関係諸国政府は米州機構で緊急会議を開き、二国間の問題について外交的見地からの解決策を模索することになりました。今回はこのコロンビア越境や二国間の駆け引きの背景について述べていきたいと思っています。

◆北にコロンビア、南にペルーに隣接する南米の小国・エクアドルにとって、「国境問題」とは90年代中盤までペルーとのことを指していました。1940年代前半にアマゾン地域をペルーに「奪われて」以来、エクアドルは長年領土を回復するために、政治的な思惑も左右していましたが、領土を回復すべく局地戦レベルの「戦争」を行い続けていました。1998年、エクアドル・ペルー両国は国境問題について最終和平合意をしました。

◆このペルーとの国境問題に代わるようにして、2000年以降から顕在化しているのが北の隣国・コロンビアとの国境問題です。これは国境線画定云々といった話ではなく、コロンビアの悪弊がエクアドルに輸出されていることに対して、次第にエクアドル国民のコロンビアに対するイメージが悪くなりつつあるという傾向です。ちなみに、コロンビアの悪弊3点セットとは、「ゲリラ・麻薬・誘拐」。お互い密接に関係していますが、特に首都のキトの人々は、裕福な家庭ともなると、誘拐ビジネスの餌食になってしまうリスクを感じて生活していると仄聞したことがあります。

◆一方、過去40年間にわたってゲリラ軍との内戦を継続しているコロンビア政府側からしますと、エクアドルは格好の逃げ場になっており、切歯扼腕の対象となっていました。今回のエクアドル・コロンビア二国間の国交断絶の理由となったゲリラとの銃撃戦(といってもヘリコプターまで動員されたようですが)においても、ゲリラ軍はエクアドル国内で陣地を張っていたと伝えられています。コロンビア政府がコレア・エクアドル大統領率いる左派政権がゲリラ軍と通じているのではという疑心暗鬼に襲われていることも今回の一件を深刻にさせました。

◆この二国間の事件の火に油を注いだのがチャベス・ベネズエラ大統領。越境行為を働いたコロンビア政府を非難するとともに、間髪入れず自国のコロンビア国境沿いに師団を送り込みました。この過剰反応に対しては、ウリベ・コロンビア大統領だけではなく、ブラジルやメキシコからも自重を求める発言がありました。チャベス大統領としては、同じ左派で「友好国」と見做しているエクアドルに対する援護射撃だったのでしょうが、彼の行動がなくても、南米各国はコロンビアの行為に何ら正当性がないということで見解の一致を見ていますので、所謂「余計なお世話」以上のものにはなりませんでした。

◆今回の越境行為で判ったことが少なくとも二点あるでしょう。一つは、コロンビア政府がエクアドルという国を対等な存在として見ていないということです。まるでそれは、グランコロンビアの首都があったコロンビアが同国の僻地であったエクアドルを見下しているかのようです。今回の一件でエクアドル政府は国のプライドが傷つけられましたし、今後そのような相手に建設的な友好関係が築くことが出来るのかと思われます。だからといって、戦争を起こすという選択肢はないのですが、コロンビア政府(ウリベ政権)にかなり舐められているのがコレア大統領あたりが事件発生直後に感じた点ではないでしょうか。

◆二点目ですが、南米各国政府に対して、このような行為を黙認するようでは「明日は我が身」に及ぶという点をエクアドルは上手にアピール出来たのではないかと思われます。コレア大統領がコロンビアとの断交に合わせて行ったことは周辺諸国の訪問と相次ぐ首脳会談でした。先手必勝とばかりにペルーやブラジルなどを訪れ、各国の大統領相手にエクアドルの判断に対する支持を求めました。

◆今の南米各国の政権は潜在的に反米の色が濃淡はあれど入っています。米国の代理人でもあるコロンビアが「テロや麻薬撲滅を大義名分にして隣国に侵入する」という事件を起こしたことで各国首脳の間で否応にも思い浮かぶのは米国の南米への介入というリスクです。チャベスの介入も面倒だが、米国の介入は更に面倒という潜在意識を恐らく今回のエクアドルは成功したように思われます。

◆イデオロギーの色眼鏡をかけずに、常識的に見れば、軍隊を越境させることに理を求めることはできないでしょう。逃げ場があることを非難する前に、内戦の相手と40年間も「共存」しているその政府に何の落ち度はないのかということです。存続するには何らかの力学が働いていますし、それを外の政府に求めるのは本末転倒ではないでしょうか。40年前にチャベスはいないのですから。ウリベ政権の常識が欠けているのか、大統領は政府軍を統率できていないのか。問題はむしろそこにあるような気がします。隣国にとってもとんだ「迷惑」と共存しています。
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◆中国新聞の1月19日付に拙文が掲載されました。ウルグアイ以外の国を扱うなんて、そろそろネタ切れですかね。ここ数日はどうも看板に偽りあるようなテーマばかりになっていますが、来週辺りからはもう少しウルグアイを取り扱いますので、ご容赦のほど。

出稼ぎ送金効果 家並み一変 (1月19日付 中国新聞「世界の街角から」より)

 年末年始に、南米エクアドル第三の都市クエンカを訪れた。母の生まれた地で、両親が現在住んでいる。自分のルーツがそこにある。

 赤道直下に位置するエクアドルは、常夏の印象を与えがちだが、多様性に富む気候の国であることは、意外と知られていない。実際、クエンカは、アンデス山脈に位置する標高二千五百メートルの町であり、風光明美であるうえに、その街並みは世界遺産にも登録されている。

 初めてエクアドルを訪れてから四半世紀になるが、このアンデスの町の姿も大きく変わった。

 変化の最大の要因は、出稼ぎ労働者の存在である。この動向は一九九〇年代に本格化し、現在でも米国やスペインといった先進諸国で一家を養うために働くエクアドル人が後を絶たない。その送金額は今となっては、エクアドルにおいては、石油に次いで、二番目に多い外貨収入である。

 その出稼ぎの大きな役割を担っているのが、クエンカや、その周辺出身の人々である。同地域から出稼ぎに行く人々は、他の地域と比較しても多いといわれている。

 そのような出稼ぎ労働者による送金の効果は、クエンカと、その周辺の集落に如実に表れている。例えば、昔は貧相な小屋が点在していたアンデスの山肌に、豪華なコンクリート造りの家々が見られるようになった。年々増えている。

 また、潤沢な海外からの送金によって、クエンカは国内で最も物価の高い町になった。金の流れが多いため、新たにペルーなどの周辺諸国からクエンカに出稼ぎにやってくる現象が起きている。

 年末、エクアドル全土では、「モニゴテ」と呼ばれる人形を焼く風習がある。クエンカでも同様の風習が営まれ、大みそかの数日前から、古着に木片を詰め込んだ人形が道端に並べて売られる。

 地元の人々は、人形とそれにかぶせるお面を買い、親族一同が集まる大みそかの夕方から夜半にかけて、人形を焼く。その年に起きた嫌なことを忘れるためである。

 果たして、かの地で働く出稼ぎ労働者とその家族にとって、一緒にモニゴテが焼けるのを見る日は来るのだろうか。


◆昨日の新大統領就任の話ではないのですが、このコラムを書いている時(1月3日頃)は、エクアドルの「失われた10年」を前にして、貧困対策には出稼ぎが有効な手段なんて斜に構えていました。コレア大統領の登場を通じて、出稼ぎ依存の構図は本当に変わるのか、少し楽しみになってきました。
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◆1月15日、エクアドルではコレア大統領が就任しました。欧米及び日本のメディアでは、新大統領が「反米左派」であり、エクアドルが「過去10年間で8人目の大統領」といったような不安定さを象徴している国であるためでしょうか、この南米の小国に対して異例の取り扱い方をしてくれています。数多の日本語で書かれた記事の中で、秀逸であったのは朝日新聞の記事でしたが、非常に簡潔なものとしては、時事通信の速報があります。

2007/01/16-01:10
コレア氏が大統領就任=南米3カ国目の反米左派政権-エクアドル
 【サンパウロ15日時事】南米のエクアドルで15日、昨年11月の大統領選挙決選投票を制した反米左派のコレア元経済・財務相(43)が大統領に就任した。任期は4年。コレア政権誕生により、南米12カ国中、左派政権は8カ国、反米国はベネズエラ、ボリビアに次ぎ3カ国となった。


◆本欄で取り上げていきたいのは、就任準備期間を通じてのコレア大統領への評価と今後の見通しについて。最初に後者にかかる結論を言ってしまいますと、「コレア大統領は頭が良いから、当面心配いらない」との立場をとります。

◆まず、コレア大統領の国際的な知名度が上がったのは、昨年の国連総会の頃だったと思われます。反米の急先鋒チャベス・ベネズエラ大統領が同総会においてブッシュ米大統領を「悪魔」と批判した際、コレア大統領候補(当時)は、エクアドルの地において、「ブッシュを悪魔に比べるのは悪魔に失礼だ。悪魔は邪悪だが、少なくとも知性はある」と発言しました。それまでもエクアドル国内では「親チャベス」として大統領選挙で注目を集めていましたが、あの一件で世界デビューを果たしました。その後も、ベネズエラとボリビアの両首脳と行動する機会が多く、今回の大統領就任式の前日に行われた先住民に対する集会(就任式典)においても3首脳は行動を共にしていました。それだけを拾い上げると、今度のエクアドル大統領は「とんでもない奴」と映ります。

◆また、コレア大統領が今後創設しようとする制憲会議がベネズエラとボリビアが行っているものと類似していることから、あたかもエクアドルはそれら「反米左派」の両国の後を追っているように見受けられます。たしかに、3カ国に共通するのは(過去又は現在における)議会の腐敗であり、過去において大統領主導の改革意欲を徹底的に阻害したという点です。先述の「過去10年間で8人目の大統領」についても議会による大統領弾劾を通じた辞任が幾つか含まれています。現在も議会は基本的に制憲会議の創設に反対する考えを内心では有していると見られますが、エクアドル国民の大半は議会の腐敗振りに辟易しており、議会は当面国民感情を前に譲らざるを得ない状況にあります。コレア大統領は、自らの人気の勢いがあるうちが鍵だと分かっており、大統領就任日の15日には、制憲会議創設にかかる国民投票を3月18日に行う大統領令に署名しています。

◆コレア大統領ですが、自らを「ヒューマニストで、左派のクリスチャン」と表しています。「左派」については確信的なところがありますが、メディアが強調する「反米」の部分については彼は必ずしも同意していないでしょう。「愛国者」として拠って立つところが「反米」と映ってしまっているためです。自国を第一に置いている点については、大統領就任式演説でも色濃く出ていました。

◆彼の主張によれば、90年代以降のエクアドルは数字の上で一定の経済成長はあったものの、格差は広がり、そのことが先進国への出稼ぎを助長したと捉えています。新自由主義批判はそのような文脈から出てきており、大統領就任演説では、欧米諸国で働く出稼ぎエクアドル人が母国で働き、家族と共に過ごせるような環境を作るのが自らの役割であると表明しています。彼の出稼ぎにかかる発言は、出稼ぎで親族を送り出している国民の多くの琴線に触れたのでは思われます。

◆コレア大統領とチャベス大統領の蜜月については、これは両国の打算の産物です。コレア大統領にとっては、今後の債務再編において国際金融機関とのゴタゴタが収斂しなかった場合、ベネズエラのオイルマネーをあてにしようといったものでしょう(数年前にキルチネル・アルゼンチン大統領が使った手法でもあります)。一方のベネズエラにとっては、エクアドルの左傾化はチャベス大統領の夢でもある「南米統一」構想に沿ったものであり、国際社会に対して、当面は健康状態の危ういカストロ氏は奥に引っ込んでもらい、代わりにコレアを表にだして、新鮮なイメージを出そうとしていると思われます。また、両国にとっては、悩ましい隣国、コロンビアに対する牽制材料として、友好関係を築くことは損な話ではありません。

◆欧米のメディアも注目する南米の「反米左派連合」(ベネズエラ・ボリビア・エクアドル)について、肝心の南米の首脳陣は、コレア新大統領がチャベス・ベネズエラ大統領(軍人上がり)やモラレス・ボリビア大統領(コカ栽培のリーダー)とは違った存在であることには気付いている模様です。まず、ブラジル政府は陰日向にコレア大統領を積極的に取り込もうとしています。例えば12月中旬にボリビアで行われた南米共同体会議にコレア次期大統領(当時)は赴きましたが、彼の飛行機を手配したのはブラジル政府でした。また、同地においてコレア次期大統領はスピーチや会談を行ったようですが、その内容を聞いた人々の評価は総じて高かったとのこと。

◆高い評価を下している中の一人には、南米の穏健左派を代表するチリのバチェレ大統領(写真左)も含まれます。まず、12月中旬、チリ・サンティアゴで両者は会談を行い、先の大統領就任式に彼女(バチェレ)も出席しました。また、コレア大統領は、大統領就任に向けた準備段階において、チリの経験を参考にしたとも見受けられます。例えば、チリの現政権と同様、新閣僚17人のうち、7人は女性を起用。そして、国防相にはエクアドルの歴史上初めて女性の閣僚を任命しました。

◆その新国防相ですが、政治家出身であるものの、軍との関係は皆無。就任発表当時、自分はエクアドルにいましたが、関係者の話からは好意的な反応は聞かれませんでした。しかし、これも実はチリのケースを学んでいるように思われます。南米の各国では依然として政治と軍の関係の微妙な関係が未だに存在します。その中で、新しい展開を図るためには、過去に引きずられた中途半端な人物を充てるのではなく、象徴的な人物を充てることが案外活路を見出すのかもしれません。ちなみに、バチェレ大統領もラゴス前政権では国防相を務めていたりします。

◆最後に、過去10年間の政権との違いについて言及したいと思います。エクアドルにもアウトサイダーとして大統領選挙に勝利した人物として軍人出身のグティエレス元大統領がいました。彼は先住民の集団と共闘をして、体制派への不満が鬱積している有権者からの支持を得て、大統領に就任しました。形としては、今回のコレア大統領勝利の構図と似ています。

◆しかし、グティエレス元大統領が最終的に放擲されてしまった背景には、「政策路線を変更した」ことと「筋の良い既得権とのパイプがなかった」という2つのミスがありました。前者ですが、当初は反新自由主義路線に近い政策を採っていたものの、最終的に新自由主義路線に妥協したことで国民の支持を失いました。そもそも彼自身に思想的なバックボーンがありませんでした。そして、後者ですが、彼が背景とする軍は違った意味での既得権層であり、その点からしてそもそも既得権層からの訣別という課題は懐疑的なものでした。また、政官財の筋の良い人材を閣僚として獲得することができませんでした。最終的には親族を政治任命する苦肉の策を講じ、そこから腐敗が生じました。ネポティズムは旧体制のイメージを増幅させ、腐敗によって国民不信を加速する結果になりました。コレア大統領は、このグティエレス政権の失敗を他山の石にしています。

◆表面的には、色々と「反米」や「左派」といったイデオロギーという色に塗られた話がメディアを通じて出てくるでしょう。いずれにしても、コレア新政権の行く末が決まるのは最初の数ヶ月間なので、それまでは「コレア大統領は頭が良いから、当面心配いらない」ということで自らの立場をとりたいと思っています。
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◆ウルグアイに戻ってきましたが、非常に暑いですね。標高2500メートルある常春のクエンカから戻ってくると、モンテビデオがここまでジットリする気候だったのかと再確認させられました。ちなみに、地元の人々は以前から「ここの夏は湿気が高い」と言い続けていましたが・・・。

◆エクアドルで年末年始を過ごし、その間親戚縁者等々と色々話していましたが、話題に出てくるのが今月15日に就任するコレア次期大統領についてです。毎晩のニュースでも必ずトピックになっており、現在の大統領(パラシオ大統領)は見る影もありません。コレア氏がこれからどのような政権運営を行っていくのかについては追って話をしていくにして、今日は先に行われた大統領選挙に係る話について。

◆エクアドルの有力紙コメルシオ(1月1日版)にも書いてありましたが、一年前のこの時期に「コレア大統領」と予測した人間は皆無でした。それが何故ここまでコレア候補が伸し上ってきたのか。その一番のキーワードは政党との対決姿勢を鮮明にしたことでした。ただし、それは彼が意図した結果ではなく、偶然の産物であったようです。

◆はじめに、コレア次期大統領については、現政権において4ヶ月弱ほど経済財務相を務めていましたが、彼の描く改革姿勢が仇となって、現大統領に見捨てられる形となり、辞任。同相の任期において、同国の問題点を垣間見たことがその後の建設的な政策立案に役立っているとの話がありますが、いずれにしても辞任に至るには、議会を数十年近く仕切っているフェブレス・コルデロ元大統領(現議員・キリスト教民主党)の尾を踏んだとの話も漏れ伝え聞こえてきます。

◆その後、コレア氏は大統領戦に立候補したわけですが、最近の新聞報道によると、最初、彼としては、いずれかの政党との共闘を考えていた節があるようです。思想的に一番近かったのは、ID(左派民主党)ですが、彼らは政策的には近くともコレア氏で勝てるとは見ておらず、共闘を見送りました。また、パチャクティック(先住民が母体の政党)との連携の可能性についても、同党は先のグティエレス政権時における共闘及びその後の失敗というトラウマがあったようで、結果的に連携には至らず。コレア氏は単独で戦うことになりました。

◆コレア氏にとって奇禍となったのは、06年に次々と起きた様々な国内的な事象であり、唯一同氏が政策的に内容を有していたためとの分析が出ています。確かに、昨年のエクアドルについては、米国とのFTA、コロンビアとの外交関係、マンタ基地の米国貸与の問題等々、様々なテーマが遡上にあがりましたが、これらの政策に対して、当初有力候補と言われていた人々(左派ロルドス候補及び右派ノボア候補)は発言に中味が伴っていませんでした。

◆例えば、象徴的だったのは、10月5日に行われたTV討論会です。この際に司会者から最初の質問として同国の経済問題を振られたノボア候補(98年、02年の選挙ではいずれも次点に終わり、今回が3度目の挑戦)が行ったのは、手持ちの原稿の棒読み。彼とも付き合いのある現地の企業関係者からの話でも「あいつは馬鹿だ」の一言で片付けられていました。他の話でも、「ノボアの選挙というのは、一つのビジネス。負けても十分メリットは享受している」とのことでした。本当かどうかは知りませんが、同氏は選挙中、圧力鍋の蓋のない鍋を貧民に与えて、「選挙に勝ったら、蓋をあげよう」と言ったとか言わなかったとか。そんな話に信憑性を与えてしまうのがノボア候補の本質だったといえるでしょう。

◆あと、先の大統領選挙で一つだけ見えてこなかったのが、第3位になったグティエレス候補(今回出馬できなかったグティエレス前大統領の弟)の奮闘ぶりでした。直前の世論調査では4%程度しかなかった同氏の支持率が、最終的には15%近くの得票率を獲得する結果については、自分は最初世論調査会社の誘導ではないのかと勘繰っていました。

◆これについて、親戚に話をすると、「軍だよ」との答え。つまり、今回の選挙で軍に一番近かったのは、グティエレス(弟)候補であり、大統領職を追放されても軍との関係が深いグティエレス(兄)前大統領の働きかけによって、軍中枢よりグティエレス(弟)支持という上意下達の指示が出ていたらしいとのこと。軍人(及び警察)は中立性の見地から投票できないため、その親族が投票マシーンとなって働いた・・・そうです。信じるかどうかはお任せします。

◆それにしても、国際機関の監視の目が働いていたであろう今回の選挙ですが、それは飽く迄表面的な話で、この他にも色々な抜け道の話を聞かせてもらいました。たしかに、それなら捕まらないと思ってしまうようなことばかり。上には上がいるものです。
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◆クリスマスを跨いで両親夫婦と一緒にガラパゴスに旅をしました。本来であれば、両親夫婦の結婚30周年記念に訪問することになっていたのですが、その年に自分達夫婦の挙式があったために、計画が流れてしまったとのこと。その後、結婚35周年に訪問する予定にしていたようですが、それを2年ほど前倒しにしてもらいました。

◆ガラパゴスというと、どうしても自然の宝庫であり、希少動物が生息する最後の楽園のような印象がありますが、エクアドルから1,000キロ程度離れた孤島の群れであるものの、人口はゆうに1万人を超えていますし、中心地とされるプエルト・アヨラはれっきとした町であり、数ヶ月前にイースター島を体験した自分としては、ガラパゴスの予想外の発展ぶりに驚かされました。

◆イースター島と同様に、ガラパゴスは基本的に観光業を生業としていて、それに従事する人々が中心に島の社会は形成されています。ガラパゴスが商業目的に観光が開始されたのが1969年といいますから、思ったよりも最近の話です。また、これもイースター島と同様に、外資の開発を禁止しているため、グローバル化以前の牧歌的な助け合いの精神が仕事の中に成り立っています。秩序化且つ透明化される以前の社会なので、ガイドの案内する店が友人の店ということは容易に想像されるわけで、そのようなことによって親類縁者が支えあっている構図が垣間見えてきます。

◆ガラパゴスへの上陸に際しては、国内居住者は6ドル、海外からの観光客には100ドルの入島料がかかります。統計によれば、04年にガラパゴスに訪れた人々は10万人強とのことで、その内訳が外国人7割:エクアドル人3割とのこと。そのようなその歳入は国庫ではなく、ガラパゴスの島々に還元されるそうで、島への上陸への値段の高さを感じつつも、島のために役にたつのであれば納得した次第です。

◆余談ですが、同島には、大型外資の参入はなくとも、一泊500ドルという桁違いのホテルが存在します。そこの従業員から話を聞いた限りでは、同施設の利用者は北米を中心とした観光客のほかに、エクアドルの国会議員がお得意様とのこと。「会議」と称して、同施設を予算という名の税金から落としていることは未だ想像の域を出ませんが、規模は違えど、どこの世界も似たような光景が散見されます。

◆いずれにせよ、そのような様々な「観光客」のお陰で、島の失業者はいないようですし、物乞いも存在しない、エクアドルでは理想的な光景を目にすることができます。現在の島の村長も堅実な行政をしているとのことで、観光を通じて中央政府に流れようとするおカネをどのように島に留めておくのかということを思案していると聞き及んでいます。
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◆ウルグアイからエクアドルの移動や、先日のガラパゴスまでの旅でも、その移動手段は当然飛行機。空港やそれぞれの機内では色々とこれまでとは違った光景が見えてきます(例えば、最近改装したグアヤキル国際空港)。

◆2年前のエクアドル訪問の際にそれほど気がつかなかった存在が出稼ぎのエクアドル人たちです。それもちょうどクリスマス・シーズンと重なっているからか、家族連れでの行動となっていて、目立っています。例えば、パナマからエクアドルの港町グアヤキルまで飛行機に乗ったのですが、そこにはエクアドルの実家への帰省客が数多く乗り合わせていました(自分もその一人と言われてしまえば、それまでですが・・・)。クリスマスを故郷に住む親家族と過ごすという殊勝な心持ちなのでしょう。ただし、それらの人々は、米国に正規のビザを有している人々に限られています。

◆そのパナマからのフライトですが、偶然でしょうが、自分達の座席の周辺にはそのような家族連れの家族が多く、約2時間の行程はなかなか騒がしいものでした。そのなかの一人の坊やはクリスマスということで嬉しかったのでしょう、音程の外れたジングルベルを歌っていました。ただし、それはスペイン語ではなく、英語。風貌や血はエクアドルでも、国籍は米国という次の世代が増えているようで、子供の国籍を活用して親たちも米国籍を獲得している話も聞こえてきます。既にエクアドルを含めた周辺諸国では当然の光景なのかもしれませんが、同じ南米のウルグアイではまずお目にかかることの出来ない光景なので、新鮮でした。

◆先進国に渡って出稼ぎで財を成す人々に対するエクアドルの一般市民の視線についても、昔とは大きく変わってきたと思ったのが今回の訪問の収穫でした。恐らく本当の上流社会には別の見方があるのでしょうが、一般生活において出稼ぎ者及びその家族に対する偏見の敷居は大きく下がっているように感じました。街でも出稼ぎ出身とわかる集団がクエンカの街で幅を利かせていますし、クエンカの小規模な店においてサービス精神がある人物は案外米国からの出稼ぎ帰りだったりします。

◆また、今回のガラパゴスの旅行でもパッケージのツアーを頼みましたが、そこには出稼ぎ出身と分かる家族が親を連れ10人近くでツアーに参加していました。恐らく、10年前であれば、出稼ぎ者がそのような消費パターンをとらなかったでしょうし、他の客の中にも彼らが参加することに違和感を感じる人々がいたのかもしれません。

◆外から見ていると、出稼ぎ者とその構成員の多くを占める「先住民」を同一視してしまいますし、更に「先住民」という括りでエクアドル社会の中で虐げられている集団と見る向きもありますが、そのような集団の中にも様々なタイプがあって、エクアドルの場合、単純にはいかない融合の作用が働いているような気がします。そして、「先住民」の所得向上のための一番の近道が出稼ぎだったというふうに、経済開発に携わる人々にとっては少々皮肉な現実もあったりします。

◆また、出稼ぎ経験者という集団が持つ意識については、今年行われたペルーの大統領選挙で見られた傾向とは異なるものだと思われます(ペルーの場合、出稼ぎ者の多くは親米&FTA推進でした)。彼らが中長期的にエクアドルの社会や政治にどのような影響を与えるのか、少し興味を持ち始めたところです。
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◆長らくご無沙汰していました。ここ暫くウルグアイを離れています。年末年始を過ごすのは、アンデス山脈標高2,500メートルにあるエクアドルのクエンカという街。ここに自分の実家があるのですが、帰省は2年ぶり。また、初めて自分の目でエクアドルという地を訪問してから、今年でちょうど四半世紀の月日が過ぎました。

◆25年間の移り変わりはさすがに大きく感じます。まず、クエンカが「町」から「街」に変わりました。また、観光都市としてインフラ整備が近年急速に進み、綺麗な場所へと変容しました。そして、インディオの民族衣装をした人々が減った気がします。クエンカの空港は昔のままの場所にありますが、その周辺にひしめく住居の数は、10~15年前から急激に増えた気がします。

◆それら様々な「変化」が引き起こすアクターとなっているのが出稼ぎ者です。エクアドルから米国又はスペインへの合法及び非合法の移民が大量に訪れており、彼の地で職を手にしながら、本国(エクアドル)への海外送金をいそいそと行っています。その資金が本国では住居や乗用車等々に化けています。また、出稼ぎ者を持つ親族関係者の消費意欲はなかなかなもので、大手資本のスーパーは彼らの消費をあてこんで、設備投資を続けています。

◆クエンカの変容ぶりについては、先日訪れたガラパゴスで知り合ったクエンカ出身の20代の学生さんも同様の印象を持っていました。例えば、クエンカ市内のスーパーマーケットにおいて品物で台車を山盛りにした人々や米国でも購入に億劫になりそうな高級大型車が多数走っている光景が昔と比べると信じられないとのことでした。ちなみに、その学生さんも今はロサンゼルスで生活をして、年末年始を使ってエクアドルに友人と戻っているとのこと。エクアドル人も豊かになりました。

◆また、「911」の発生によって、エクアドルから米国への出稼ぎ労働者の環境にも黄色信号が出ていた節がありましたが、エクアドルの労働者の出超傾向が止んだという話は聞きません。今日も街を歩くと、インディオの衣装を身にまとった人々が行列を成している光景に遭遇。何かと思うと、それは日本でいうところの「宅急便」屋さん。米国に住む出稼ぎの親族にクリスマスや年末年始に故郷のものを送るために並んでいるとのことで、そこには家族の繋がりが垣間見えます。出稼ぎ者の固い絆のベクトルは米国からエクアドルへの一方的なものではなく、相互に向かっているものだと再認識しました。

◆そんな変化の中でも、「世界遺産」に登録されているクエンカの旧市街を求めて世界中から旅行客が今日もやってきています。当地で生活する者にとっては、渋滞に悩まされる旧市街に行くことは手控えがちですが、徒歩で旧市街を楽しむ観光目的の旅行客にとっては、なかなか風情のある良い街であることは間違いありません。エクアドルの中では、首都のキトよりもエクアドルらしいコロニアルな趣を残した街になっています。
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◆エクアドルの大統領選挙は、コレア候補の勝利で決着がついた模様で、これから1月15日まで、次期政権の方向性が明確になっていきます。

◆当選確定直後から、コレア次期大統領は積極的に国内外のメディアに対して次期政権の課題について明快に受け答えをしています。この背景としては、自ら経済政策について語る実力を持ち合わせていることもありますが、過去の欧米での生活を通じて、国内外のメディアの味方につける利点を、十分に認識しているためと見られます。

◆今回のエクアドル大統領選挙の候補者を最初に揃って見たのは10月上旬に放映されたCNNによるディベートだったのですが、4名の主要候補のうち主導権を握っていたのは、ビテリ候補とコレア次期大統領でした。前者は元テレビキャスターで後者は元経済学者と、共にメディアの訓練を受けた人々だなと印象を受けました。このディベートをはじめとする映像メディアを通じて、当初有力候補であった中道左派のロルドス候補は「つまらない候補」というレッテルを貼られたでしょうし、決選投票には残ったノボア候補も「古くて、中味がない」と有権者に嗅ぎ取られたのかもしれません。

◆ここ数日のインタビューでも触れていますが、コレア次期政権における短期的な優先課題は「政治改革」であり、メディアが注目している債務や石油等といった諸般の「経済改革」は二の次であることを明確にしています。特に、政権基盤を有していないコレア次期大統領にとっては、既得権層が牛耳っている立法府と司法府をどのように対処していくのかが、今後4年間の任期を大きく左右する点です(そのために制憲会議という手を使おうとしています)。何せ、立法府を敵に回して退陣した大統領が過去10年間に2人(ブカランとグティエレス)いるわけで、コレア次期大統領としては、これが首尾よく行わなければ、次の経済改革や予算一つも通らないと理解していると思われます。

◆このように、現在エクアドルで展開しているのは、頑丈に固定化されてしまった既得権層とそれに風穴を開けようとする勢力とのせめぎ合いであり、かれこれ10年近く幾度となく時の大統領が試しては、失敗していった歴史に他ならないと見ています。そのような文脈からすると、南米全体を指して「エクアドルも左派政権」というのは、何とも他所の国の話のように聞こえてきます。

◆次に、「経済改革」の部分ですが、コレア次期大統領は米国及び国際金融機関に跪く必要はないという論者です。「エクアドル国民が最優先」という考え方であり、海外の投資家に不安感を醸成させます。ただし、この思想の根底にあるのは、ベネズエラのチャベス大統領が夢見る「ボリバル主義」(南米統一思想)やキューバのカストロ氏が抱く共産主義のようなものとは別物です。

◆コレア次期大統領の思想の拠り所は、どちらかというとスティグリッツ氏(コロンビア大学教授)のような国際金融機関に対する懐疑的なものの見方です。債務の棒引きも否定しない点や石油の国家の取り分の拡大などは、国の信頼を損なうようにも見えるのですが、コレア次期大統領からすると、まず国として言うところは言うという点を明確にしています。同氏が傍若無人ではないのは、ドル化の撤廃や天然資源の国有化という選択肢を採らないと現時点から明言している点から確認できるでしょう。経済面において、コレア次期大統領は、今後数多くの妥協を強いられるのかもしれませんが、原則ははっきりしています。

◆最後に、コレア政権が安定するかどうかの分かれ目になるのは、意外に外交面だと思っています。つまり、「反米」であると売り込んでいる中で、誰を味方につけていくかという点です。これについては、コレア次期大統領は大統領選のディベートの時点から「メルコスール」という言葉を使っています。そのとき自分は意外な思いで聞いていたのですが、既に同氏の頭の中には米国の代替のパートナーとしてメルコスールを描いていたことが分かります。

◆そこでの問題点は、果たしてメルコスールの何処を頼りにしていくのかということです。一部メディアでは、エクアドルがベネズエラとボリビアと共闘して反米機軸を構築していくような論調をしていますが、自分はそのような憶測をコレア次期大統領が敢えて泳がせているようにも見受けられます。そもそもコレア次期大統領が有力候補として急上昇した背景には、同氏が自らをチャベス・ベネズエラ大統領とダブらせることを肯定したことから始まります。つまり、同氏はチャベス大統領を利用して、エクアドルの政治シーンの中心にやってきたのであって、必ずしも彼の信条に陶酔したわけではありません。それは、大統領選中のインタビューでも「ボリバル主義に従うわけではない」と表明している点からも分かります。

◆コレア次期大統領としては、最終的にはメルコスール加盟を視野において、ブラジルとの関係を重視する方向にシフトすると思われます。これはエクアドルの足腰を鍛える過渡期としては、絶好のパートナーだと思われます。まず、コレア次期大統領は「反米」と強調していますが、その代替がベネズエラではなくて、ブラジルであれば、海外の投資家は安心するでしょう。 また、ブラジルとしては、今後メルコスールを南米共同体にまで昇華させることを外交目標として目指しています。その一環としてアンデス共同体の切り崩しも視野に入ってくると見られ、その加盟国であるエクアドルがベネズエラに続いてメルコスール加盟を表明すれば、南米域内におけるブラジルの力が高まると計算しています(ボリビアも時間の問題ですが…)。ましてや、ブラジルは、メルコスールの「小国対策」を昨今真剣に行うと言葉の上では表明しています。

◆コレア次期大統領としては、エクアドルがメルコスールの懐に飛び込むことで「実利」を得る可能性の方が当面高いと見ているのかもしれません。そして、その飛び込む先がブラジルであれば、好都合でしょう。特に石油分野においては、ブラジルの石油国営会社ペトロブラスが進出を果たしており、「小国対策」の文脈で交渉を進めていくのではないでしょうか(ただし、コレア次期大統領から見えるメルコスールの姿と、昨今における実際のメルコスールの動きが必ずしも一致するとは限りません。これは、また別の機会に書くとしましょう)。
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◆エクアドル大統領選挙ですが、既に出口調査について報道がなされています。それによると、次のとおり。いずれもコレア候補(写真)の勝利を伝えています。

Teleamazonas / RTS社 コレア候補57%、ノボア候補43%
Ecuavisa / Cedatos社 コレア候補56.8%、ノボア候補43.2%
Voz y voto / Market社 コレア候補57.99%、ノボア候補42.01%

◆それにしても、ここまでの大差を予想した人はいなかったのではないかと思っています。そして、ロイター電の解説にも書かれていましたが、誰も1年前に彼が大統領になるとは思っていませんでした。

◆早速、今晩の記者会見の席で幾つかのことを確認しているようです。10億ドル相当に至る債務返済のリスケの検討、経済財政相、エネルギー相とペトロエクアドル総裁の指名、更にOPECへの再加盟の検討・・・といったところが目立つでしょうか。経済財政相については、自らが過去に経済財政相であった際に次官に任命した側近を置いており、指名のスピードと併せて、自らの優先課題が何であるかというメッセージを発したと見ています。

◆まずは明日のエクアドルの市場の動向を見てみたいと思っています。また、明日以降にでもコレア新政権で注目したいポイントを書いてみたいと思います。
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