カテゴリ:ブラジルのお話( 36 )

◆29日、ブラジル大統領選挙が開かれ、開票99.4%の時点で、

ルーラ大統領(中道左派:写真) 60.79%
アルキミン候補(前サンパウロ州知事;中道右派) 39.21%

といった大差によって、ルーラ大統領が再選されました。これで4年間の任期を更に務める運びになりました。

◆10月1日の第1回目の投票ではアルキミン候補の健闘が光り、「もしかすると、番狂わせ?」という雰囲気も一時は漂いましたが、決選投票の後半戦においては、大差でルーラ候補が勝利する見通しになっており、まずは政権交代による大きな変化が起きないという前提で「再選後」を南の隣国から眺めていました。

◆早速、開票速報が流れて、ルーラ大統領の圧勝が判明した時点で、ルーラ陣営では同大統領の記者会見が開かれました。ウルグアイでは、CNN(スペイン語版)とO'GLOBO(国際版)が生放送で中継しており、それを眺めることに・・・。庶民の味方の印象を植え付けるように、「この勝利はブラジルのもの」というロゴの入ったTシャツを下に着込んだ格好ですが、こういったスタイルが勝利を導いたのかもしれません。

◆ルーラ大統領再選の要因は、貧困層の圧倒的な支持という基盤が揺らぐことがなかったということでしょう。以前にも指摘したかもしれませんが、貧困層にとって、「汚職」の噂なんて関係ありません。目先の生活改善が最優先課題であり、「真実の究明」を前面に出して決選投票で勢いを保とうとしたアルキミン候補は、貧困層にとって、「事情を分かっていない候補」と映ったのかもしれません。29日のウルグアイの主要紙の社説の題名は「『貧困』と『誠実さ』」。つまり、アルキミン候補は「誠実さ」だけでは勝てないということなのかもしれません。

◆次回は、ルーラ大統領の勝利宣言と記者会見の席で気になったことに触れたいと思っています。ウルグアイに関わることなので、別稿ということで。
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◆昨日に続いてブラジルの大統領選挙の話。Data Folhaは10月10日付の最新の世論調査を流しました。前回が6日であり、今回の結果が意味するところは、8日に行われた大統領選挙討論会以降の変化といったところだと思われます。

◆アルキミンが注目され、ルーラが押されっぱなしのようにも思えましたが、実際は支持率の差は拡大する結果になっています。ルーラ大統領が50%→51%の微増であれば、アルキミン候補は43%→40%と減少しています。これは憶測の域を出ませんが、ルーラ大統領周辺の汚職にまつわる事件に進展がないため、アルキミン候補の支持率に勢いがなくなってしまったということかもしれません。

◆前回のコラムにnamaleさん(サンパウロ州在住)からコメントをいただきましたが、彼女の周辺ではアルキミン支持者が多いとのこと。それを裏付けるようなチャートがVeja誌で掲載されていました。米国大統領選における南部の共和党支持者と北東部や西部のリベラルの分布は知られていますが、今回のブラジルの大統領選挙では、有権者の傾向が明確に分かれました。

◆まず、北東部や北部はルーラ大統領、サンパウロ州以南を含めた地域はアルキミン候補が優位に立っています。ブラジル関係者の常識として、北東部の慢性の貧困と南部の相対的な所得の高さがあります。北半球の人々の先入観を覆すように、ブラジルでは、「北」が貧乏であり、「南」が裕福だと括ることができます。

◆そのような括り方によれば、貧困層がルーラ大統領を支持しており、中流層より上がアルキミン候補を指示しているという二極分化の構図を確認することができます。エコノミスト誌でも特集されていましたが、ルーラ政権の最大の受益者は貧困層です。数字でも貧困率は下がっていますし、極貧層世帯の所得が2004年から2005年にかけて28%も上昇しています。彼らとしては、当然ルーラ大統領に二期目を望む判断に至るでしょう(一方、同期間における中流層の所得は1.6%しか伸びていません)。これら支持層の後押しを受けて、各候補者は自らが政権に就いてからの政策を形成することになります。

◆そのように考えてみますと、これまで1年近く南米の「左傾化」の動向についてメディアは注目してきましたが、左派の一角とされていたブラジルの大統領選挙に際して、何もそのようなイデオロギー的な話が聞こえてきません。どうもメディアは声を潜めているのが実際のようです。これまでも、どことなくイデオロギーかかってしまったブッシュ米政権の思考回路がそのまま南米に当て嵌められた感があれば、一部の南米諸国が政治的プロパガンダの材料として生かしたがっているようにも見えます。しかし、今回のブラジルの大統領選を通じて、先般来語られている南米政治の「左傾化」が、実は手垢がつき始めていて、一歩引いてみる必要があるかなと見ています。
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◆最近のウルグアイ主要紙の国際面の中心は、北朝鮮の一件もありますが、ブラジルの大統領選挙も多く報道されています。何せウルグアイの「北」と言えば、ブラジルのことであり、ブラジル人の総称として「北の人(norten~o)」という表現があるくらいです。

◆さて、その「北」の大統領選挙の動きですが、既に報道のとおり、10月1日の投票日は、再選を狙っていたルーラ大統領が47%、対抗馬として名乗りを上げていたアルキミン候補(前サンパウロ州知事)42%という結果によって、29日に両者による決選投票が行われることになりました。選挙前にはルーラ大統領が決選投票不要となる50%以上の得票率を獲得するというのがメディアの見立てでしたが、それが外れる結果になりました(日本の場合、時事通信がこの例になるでしょうか)。従って、10月2日の当国の新聞紙面では、アルキミン候補の善戦について驚きをもって報道されていました。

◆何が決選投票に導いたかについては、既にメディアでも報じられていますが、2点あると言われています。一つは、9月16日に発覚した「ブラジル版ウォーターゲート疑惑」です。これは、アルキミンを含めた野党政治家の不正の証拠を買おうとしたルーラ選挙対策チーム関係者が54万ドル相当の現金を持ち合わせているところを警察に逮捕されたという騒動を指しています。ルーラ大統領は関与を否定していますが、いずれにしても与党・労働者党の腐敗振りが目に余るという有権者の反応が示されたのは間違いないと見られています。

◆もう一つは、9月下旬に開催された大統領選挙候補者討論会にルーラ大統領がボイコットしたことです。ルーラ大統領は、先の疑惑を含めて、与党への批判に終始するような討論会に出るメリットを見出せずに欠席しました。確かに、その討論会での最初の質問として準備されていたのは、「次期政権の任期中に(先の疑惑について)大統領の関与が認められたら辞任しますか」といった厳しいものでした。ルーラ大統領にしてみれば、討論会に出ても、出なくても支持率は下がると見ていたのかもしれません。「マシな結果(menos mal)」といったところでしょう。

◆候補者が2名に絞られた中、8日にはルーラ大統領とアルキミン候補との討論会が開かれ、今度はルーラ大統領も出席しました。既に6割以上のブラジル国民が討論会の結果をもってしても投票を考えている候補者を変更するつもりはないと述べていますが、週末の夜のショーとしてはなかなか見応えのあるものだったのではないでしょうか。この討論会の直前に行われた世論調査では、ルーラ大統領54%、アルキミン候補46%と競り合っているものの、ルーラ大統領の優位は揺らぐ状況にはないと伝えられています。

◆討論会での中心は、やはり現政権の腐敗に関することでした。立て続けに行われる関連質問を前にして、ルーラ大統領は「経済について話をしたい。社会保障や金利政策などがあるじゃないか」とテーマを変えたがっていました。

◆しかし、経済については、ルーラ大統領ではなくてアルキミン候補に分があるというのが一般の反応です。また、彼の州知事時代の実績を知るブラジルの大都市サンパウロの産業界は8:2又は9:1の割合でアルキミンを支持していると耳にします。BRICSと言われて久しいですが、その中で近年一番低い成長率なのがブラジルです。中国やインドが7~8%程度の成長をしている中で、ブラジルは2%台。ブラジルの潜在性を信じるブラジル国民にとっては、この数字は満足できるものではなく、その一因を現政権に求める向きがあります。

◆昨晩、サンパウロ州の産業界関係者と雑談する機会がありましたが、大統領選挙の見通しについては「まだまだ分からない」とのことでした(まあ、アルキミン候補への期待含みはあるのでしょうけど)。ルーラ大統領の再選が当然のように語られていた数ヶ月前とは異なる情勢に、ラテンアメリカの「変わらないようで、変わっている。変わっているようで、変わらない」一例なのかなと思ってしまいました。
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◆今日は、人探しで或る会議を覗くことになりましたが、ちょっと驚かされました。イベロアメリカ地域(イベリア半島+ラテンアメリカ地域)における再生エネルギーに関するセミナーでしたが、並行して同地域の大臣会合も開かれるために、集まった人がすごかった。自分が会場に入ったときには、既にペトロブラス(ブラジル国営石油会社)の社長さんがポルトニョール(スペイン語とポルトガル語のミックス)で力説していましたし、その後にはブラジルの開発商工相の登場・・・。

◆「えーと、誰だったっけ」と悩んでいて、会社に戻ってから主催者の一つであるUNIDOウルグアイ事務所のHPの資料を見ると、「フルラン」と出ているではないですか。「あっ、フルランだ!」と思った際には、時既に遅し・・・。新聞紙面でしか見たことのない隣国の有名人の話をもっと心して聞けば良かったと思ったのでした(といっても、ポルトガル語をまくしたてるオッサンでしたけど)。

◆会議の主題であった再生エネルギーに関しては、ブラジルは大国です。フルラン開発商工相もしっかりとその点を強調していました。ちなみに、彼が最初に例示したのは、国土・人口・GDPの3点でそれぞれ大国と呼べるのは、実は米国・中国・ブラジルの3カ国しかないという紹介から始まっていました。「エネルギーと何の関係があるんかいな、どうも我田引水だよな」と思ったのですが、これこそが「未完の大国」の思考回路なんだと隣国で勉強させてもらうのでした。

◆それから、ブラジルのエネルギー面でのベスト・ミックスを目指す中期計画なるものが紹介されていました。それによれば、2023年には、再生エネルギー42%、原子力1%、石炭12%、石油・ガス45%を目指すということに。再生エネルギーの比率が非常に高いのです。ちなみに、全世界ですが、再生エネルギーはわずか8%、原子力が5%、石炭が24%、石油・ガスが63%となっています(遠くからの見学だったので、若干の数字の誤差は許してください)。ブラジルが如何に再生エネルギーの世界で先進国であるかを見せ付けていました。

◆この再生エネルギーの旗頭となっているのがエタノールです。どうもこの地域で働く日本企業の方々と話をしても、絶対に出てくるネタになってきました。余談ですが、自分のエタノールとの出会いなんて実に酷いものでした。1990年のリオデジャネイロなんてエタノール不足が深刻で、当時エタノール車を使っていた父が働いていた会社にある社用車の運転手の主な仕事はガソリンスタンドで並ぶことだったという笑えない話があります。また、最初は、リオ郊外に居を構えていたのですが、車で会社まで片道40分ではエタノールを食い潰すということで、泣く泣く街中に引っ越した記憶もあります。つまり、当時の記憶しかなかった場合、エタノールとは「使えないもの」であって、それをせっせと開発するペトロブラスとは「酔狂な会社」だと思えたのでした。

◆時代の先端を行く存在は常にそんな風に見られるのでしょう。そして、ペトロブラスが成功したのは、時代背景が手伝ったこともさることながら、きっと自らが目先にとらわれず遠くを見たためだったと思います。ペトロブラスの活躍にとって、ブラジルは気が付けば石油の自給が可能となり、いつしか輸出もできる体力になってきているとのこと。そして、エタノールは外交の武器になっています。例えば、ルーラ大統領は熱心にエタノールの対日輸出を頑張っていますし、フルラン開発商工相はその信者の一人になっています。このセミナーでもしっかりと日本とのJVでエタノールの対日輸出が本格化すると企業名まで出していました(ご参考まで)。

◆そんなところで、今朝の日経新聞には以下の記事

ブラジル国営石油、円建て外債350億円発行へ
 【サンパウロ=岩城聡】ブラジル国営石油会社ペトロブラスは27日、日本の投資家向けに総額350億円の円建て外債(サムライ債)を発行する。同社は1997年にサムライ債を出したが、2001年のアルゼンチン国債のデフォルト(債務不履行)による中南米全体の信用低下で発行を停止していた。資源高を背景にした信用回復で発行再開に踏み切る。
 期間10年、表面利率2.15%で、国際協力銀行が元本と金利の一部の支払いを保証する。野村証券と三菱UFJ証券が共同主幹事を務める。 (07:00)


ペトロブラスも着実に信用度が高まっているということでしょう。これに関連して色々とまた話を聞きたい方が増えてきました。どうぞ、そのときは宜しくお願いします(笑)。
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◆昨日に続いてブラジルの話題。来週(10月1日)に迫った大統領選挙についてです。南米では今年が大統領選挙の当たり年になっていますが、ブラジルの大統領選挙は本来南米の動向を図る上で注目されるべき選挙の一つだったのかもしれません。ただ、選挙の賑わいは海外に全く伝わってきません。恐らく、国内でも盛り上がりを欠いたままで進んでいるのではないでしょうか。

◆本日付の現地紙に出て来た世論調査(IBOPE)を見ますと、2期目を目指すルーラ大統領が47%で、対抗馬となっているアルキミン候補(前サンパウロ州知事)の33%を大きく引き離しています。ブラジルの大統領選挙は、50%の得票数を超えないと1位と2位との決選投票(10月29日)なので、メディアが注目するのは、果たしてルーラ大統領が決選投票なしで再選されるかでしょう。

◆ルーラ大統領にとっては、決選投票の有無がもしかすると大きな節目になるかもしれないと感じているようですし、またアルキミン候補もその機運を高めようとしている節があります。その最もたるものが、先週からブラジル国内で話題になっているルーラ選挙対策チームの疑惑問題。

◆内容は、アルキミン候補が救急車購入にかかるキックバックを受けていた不正の証拠をルーラ選挙対策チームの一員が買い取ろうとしたことが逆に裁判所から訴えられたというもの。この構図なんとなく、30年前のウォーターゲート事件と似ていることもあって、現地メディアは、ルーラ大統領が指揮したのではないかという点も含めて、話題になっています。ちなみに、ルーラ大統領は、早速選挙対策チーム長をクビにして、新しいチーム長にガルシア外交顧問を宛てました。イメージとしては、キッシンジャーが新しい選挙対策チーム長になったようなもので、ルーラ大統領の真剣さが伝わってきます。

◆そのような経緯があったので、今日出てきた世論調査は、果たしてルーラ大統領に疑惑のダメージはあったのかを図る意味で大事でした。結果からすると、前回比2%減と漸減傾向の範囲内ということで、深刻な被害にはなっていないということが明らかになりました。今後は、この疑惑が複雑化する前に選挙活動を終えてしまいたいルーラ大統領の意向通りになるかといった点です。したがって、第1回投票で5割を確保できるかが焦点になるわけです。

◆7月にサンパウロに行ってきて、その際に大統領選の話もしてきたのですが、相手の人から「本当なら、新しい大統領が望ましいんだけどね」とポロリ。過去を見ても、ブラジルの大統領は2期目で目立った成果を出していないことが分かります(近年はカルドーゾ前大統領のケースしかありませんが)。また、現政権のここ数年間は不正疑惑のオンパレード。ルーラ大統領が直接噛んだものはないとされていますが、与党・労働者党が過去に清廉だと思われてきた中で、ここまで不正疑惑を晒されると、国民と新たな疑惑と言われても麻痺しきってしまったと見ることもできます。先の世論調査はその傾向を汲み取っているのかもしれません。

◆本来であれば、大統領選挙を通じて、時代性に合う新しい大統領かと吟味することが大切だったのですが、何せ有力な対抗馬がいなかったのが今回の大統領選挙の致命的な問題点。それで、先の疑惑がウォータゲートのようにルーラ大統領の指揮によるものだったとなれば、いかに腐敗しきったブラジル政界であると国民が分かりきっていても、2期目早々からレームダック化する危険性も孕んでいるのかもしれません。
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◆週末の新聞紙面も中心は、ENCEのセルロース工場建設見直しの記事。これについては、色々思うところがあるので、フォローしていこうと思っています。ただ、それより先に溜まっている宿題をやってしまいます。それは、上記の「関連したBlog」で、ウルグアイの対米FTAの協議の可能性へのブラジルの好意的な姿勢について、「どこで方針を転換したのか」ということです。少し頭の体操をしてみようと思います。

◆ブラジル政府は、ウルグアイの対米FTAについて、当初は反対の姿勢を貫いていました。2006年1月にアストリ経済財務相が米国や中国とのFTA協議の可能性について言及した際にも、ブラジルのアモリン外相は「どうしてもやりたいなら、メルコスールから脱退してやれば良い」と述べていましたが、これは当時のブラジル政府の本音だったと思います。ブラジルとしては、名実ともに「南米の雄」として君臨していることが前提で動く国であり、他国がその権益を侵害しようものなら、それを潰しにかかるという行動規範が存在しています。ウルグアイの行動は、その秩序を乱す行為と映ったわけです。

◆メルコスールの役割というのは経済的側面で発生したものですが、現在は政治的な色彩が強まっています。域内関税ゼロの動きが先延ばしされているなかで、今年のベネズエラのメルコスール加盟をみるように、当初の関税同盟的な目標ではなく、「南米共同体」という政治的な目標のツールになっているのが現状です。域内統合による経済的なベネフィットを享受するためにブラジル又はアルゼンチンとの門戸を開放したウルグアイにとっては、一向に進展しない経済的な域内統合によって、2大国にうまいようにやられてしまったという意識が強いです。更に、昨今の政治的色彩が強まってしまったメルコスールを前に、それなら自らが新しい市場を開拓しようと動くのは当然の成り行きでした。

◆ブラジルはウルグアイの動きを実力行使で止めるまでには至りませんでした。南米域内を中心とした国際環境がブラジルの考え方を変えてしまったためです。最初の事象は、4月に行われたボリビアによる天然資源国有化の動きです。そこでブラジルが直面したのは、ブラジルの権益を侵す政権が自国のすぐ隣に登場した点です。同じ左派政権ということで、モラレス政権の動きには一定の理解を示していましたが、天然資源国有化の過程においてボリビア国内にあるPETROBRASの施設を差し止める行動に出たのは予想外だったかもしれません。

◆そして、ブラジルにとってボリビアの直接的な行動よりも懸念材料であったのは、モラレス政権の後方にベネズエラのチャベス大統領の影があることを確認したことでした。天然資源国有化は司法的見地からも周到に進められていましたが、その過程ではベネズエラが手伝ったとの報道がされています。ブラジルのルーラ大統領にとっては、表向きはさておき、実際にはブラジルの国益を侵害することに手を貸してるベネズエラへの捉え方をこの時点で決定的に変えたと見ています。つまり、ルーラ政権としては、ベネズエラとは手を握ることは出来ないということです。それ以降、ブラジルはチャベス政権から一定の距離を保つようになりました。

◆常にブラジルが考えていること、それは「南米の雄」で維持し続けることです。ベネズエラが「南米の雄」の地位に色目を見せるのであれば、それを周到に阻止することを考えます。現政権には、それを戦略的に考えることのできるブレーンがいます(アモリン外相とガルシア外交顧問)。彼らが導き出した当面の結論は何かといえば、「敵の敵は味方」ということであり、米国との関係を強化するということです。元々、ルーラ政権と米国政府とは関係が良好で、アルゼンチンで昨年開催された米州サミットでブッシュ大統領がコテンパンに批判された際にも、サミット終了後に訪問したのはブラジルでした。米国にとっても南米への外交が疎かになっていながらも、ブラジルとの関係をまずは良好に保っていることは、国益に適います。

◆ただし、両国を結びつけるタマがない。そこでブラジルが先兵として泳がせることにしたのがウルグアイです。ルーラ政権としては、政権第2期における隠し玉として米国との何らかの通商協定(FTAになるかは不明ですが)も選択肢に入れていると見られており、その前例を作ってもらうプレーヤーとしてウルグアイに頑張ってもらう判断をしたと考えられます。メルコスール加盟国は域外国と通商協定を結ぶ場合にその他加盟国の承認をもらわなくてはならないという障害があるなかで、ウルグアイが対米関係の前捌きをしてもらえば、ブラジルとしては将来的にフリーハンドになるという計算です(大国は前捌きなんてしません)。したがって、ブラジルとしては、現時点で敢えてウルグアイの動きに反対する理由はないと見ています。

◆実際に、ルーラ大統領は、先に行われたバスケス大統領との会談の席でブラジルも南アフリカとの2国間通商協定の可能性を匂わせています。ドーハラウンドも立ち行かず、新たな活路を見出す動きをブラジルも見せているなかで(そこは当然ドーハラウンドの成立に向けた動きと並行しています)、ブラジル1カ国によるFTAを含めた通商協定の可能性は魅力に映っているのかもしれません。

◆時の政権の動きに敏感に反応するのが民間セクターですが、先週にはウルグアイの大手精肉企業がブラジル牛肉産業大手Marfrigに買収される動きが報じられました。米国とのFTAになれば、牛肉をはじめとする産品の輸出が増大する見通しであり、現時点からウルグアイ企業への投資の可能性を探し出す動きが出ているようです。また、ブラジル企業にとっては、官民含めた金融機関の進出(BNDES及びITAU)がここ数ヶ月で整ってきており、ウルグアイ・シフトが着実に進んでいます。これによって、ウルグアイの「ブラジル化」が深まればブラジル政府にとっては一石二鳥とでしょう。
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