カテゴリ:パラグアイのお話( 2 )

◆南米で展開されている地デジ方式を巡る日欧の戦いですが、パラグアイは日本方式になったことが報じられています。

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パラグアイが日本式地デジ採用
 総務省は2日、南米のパラグアイが地上デジタルテレビ放送で日本方式の採用を決定した、と発表した。海外で地デジの日本方式を採用するのは今回で、8カ国目。
 パラグアイ政府が現地時間1日、地デジの日本方式を採用する大統領令を発表した。同国での地デジの放送開始時期などは未定。
 総務省によると、日本の地デジ方式が電波干渉に強い「ワンセグ」といった移動端末向け放送や、ハイビジョン放送に対応している点が評価されたという。日本はパラグアイに対し、技術移転や人材育成での支援協力を進める考えだ。
 今回のパラグアイによる採用決定で、海外での日本の地デジ方式は、ブラジルやペルーなど中南米8カ国で導入される。総務省では今後、アジアやアフリカに照準を移し、日本の地デジ方式のさらなる採用を働きかけていく考えだ。


http://www.sankeibiz.jp/business/news/100603/bsb1006030503008-n1.htm
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◆この記事だけを見ると、南米戦線は終了という印象がありますが、ボリビアがまだ残っています。また、ブラジルのプライドとしては、コロンビアとウルグアイが欧州方式のままでいることは気に喰わないでしょうから、南米が「日本・ブラジル方式」に統一されるまでは、引き続き戦い続けると思われます。

◆さて、その一方の当事者のウルグアイですが、ムヒカ新政権になってから、徐々に日本方式に傾いているとの報道がされています。形を気にするウルグアイ政府としては、何らかの大義名分が必要になってきます。特に今年に入ってからそのための布石は次々と打たれています。

◆まず、日本政府からのアプローチ。これは継続的に行われているようです。5月上旬に総務省幹部がウルグアイを訪問しているようですし、その前にも訪れているという話も仄聞しています。むしろ、ウルグアイの地デジ所轄の大臣が「これまでアプローチはブラジルしかない」といった趣旨の発言を上院の委員会で行ったところ、日本政府が遺憾の意を述べたという積極的な姿勢を見せてもいます。

◆次に、ブラジル政府からのアプローチ。3月20日、ブラジル政府関係者は、ウルグアイ政府関係者に対して、(1)政府系銀行による5,000万ドルのクレジットラインの確保、(2)ブラジルの地デジ関連機器メーカーの進出の提案、などについて話をしています。欧州方式に決まってから、EUがウルグアイに貢いだ金額は69万ドル程度。ウルグアイ政府関係者は、「5,000万ドルといっても融資枠の話で実態がない」とは言っていますが、企業進出だけでも250万ドルの投資が早速見込めるとの話もあり、ブラジルは本気であることが確認されます。

◆このような「アメ」を差し出されたウルグアイですが、国民の意識としては、容易く日本方式になびくわけにはいきません。この国は真面目な方々が揃っているので、「一度約束したことをおいそれと変えることが適当なのか」といった論調が出てきます。ウルグアイ政府の中でも、現実主義のムヒカ大統領は、風が変わったのであれば、向かう方向も変わるといった具合に考えるのでしょうが、欧州の薫りに愛着を感じる人々はそういうわけにも行かないのかもしれません。

◆そこで、「カネ」の他に「大義名分」が必要なところに、今回のパラグアイの決定が重要になってきます。つまり、今回のパラグアイの決定によって、メルコスール加盟国のうち、唯一ウルグアイだけが別の方式を維持していることになります。有名無実のメルコスールではありますが、こういった時には便利な存在になります。使い方によっては、「メルコスールの一体化を維持するために、政治的判断から日本方式に変えることにした」という言い方が先ほどの真面目な国民には受けたりするのです。

◆果たして、今月予定されているメルコスール首脳会議(アルゼンチンが議長国)で地デジに触れることがあるのかに注目しています。議長国は輪番制で、これまでアルゼンチン→ブラジル→パラグアイ→ウルグアイと回っているので、今回はなかったとしても、次のブラジルの番にはやってくるのではないでしょうか。いずれにしても、そうでもないとウルグアイは動かないのではないかと見ています。
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◆4月20日、パラグアイで大統領選挙が行われ、聖職者であるフェルナンド・ルゴ氏(56)が当選しました。開票率92%の現時点で、ルゴ氏40.8%、オベラル女史(前教育相・与党)30.7%、オビエド氏(元陸軍司令官)21.9%という結果です。既に南米に関心を持っている方々は新聞等で目を通しているでしょうが、61年ぶりに与党・コロラド党が敗北し、南米で新たに中道左派政権が誕生する見通しになることが伝えられています。ここでは、今回の結果が国内外に与える影響について考えてみます。

◆まず、今回のルゴ氏の当選は、ドゥアルデ現政権の無能さ、大統領選挙戦における与党内の分裂、貧困による不満層の発露など言われています。国内外のメディアがそのような要因を「南米大陸の特徴」と捉えて、南米における左派旋風が未だに続いていると書きたくなる気持ちはわからないでもありませんが、実際は、貧困は貧困でも「政治の貧困」に対する国民の不信任が中道左派という受け皿に取って代わっていると見るべきでしょう。同じ現象については、2005年に既に同じ南米であるウルグアイでも起きていました。

◆ここで確認したいのは、右か左かということではなく、選挙が真っ当に行われたということです。パラグアイにおける前回の大統領選挙では、事前の世論調査でリードしていた野党候補が直前になって「コロラド党の組織力」によって逆転を許すということがありました。今回の大統領選における世論調査でも常にルゴ氏がリードをしていましたが、有権者の心のどこかで前回に似たような「奇跡」が起きて、与党が結局は勝ってしまうのではないかといった諦念に近い感情がどこかしらにあったとも聞いています。その意味では、選挙の結果が既得権勢力にとってネガティブな世論調査結果に見合った形(その善し悪しはさておき)で反映されたことは、一つの成果なのではないかと思われます。

◆次に、今後のパラグアイを見る上で注目したいのは、「イタイプー条約」と「台湾との国交」の二つの「見直し」です。

◆まず、「イタイプー条約」について、パラグアイとブラジルは、両国国境沿いにあるイタイプー・ダムから作られる膨大な電力量を両国で折半し、小国であるパラグアイが需要の多いブラジルに安値(一説には市場コストのほぼ半額)で売却する取り決めを1970年代に行いました。今回の大統領選挙戦でルゴ氏は、同条約の見直しを主要な公約の一つにしており、当選後も同条約の不公平性を訴え、対話を開始したい意向を述べています。資源ナショナリズムの派生のような動きを見せている背景には、他の南米左派政権が国益の観点から外国企業又は他国政府と結んでいた既存の契約を半強制的に見直していることがあります。ただし、イタイプーの件では、電力の売却先がブラジルしかないような中で、果たしてパラグアイが望むような結果を得ることが出来るかは不明です。パラグアイとブラジル両国間関係では、これから一年間、この話題が中心になるのではないかと思われます。

◆むしろ、日本と大きく関わりがあるのは、後者の「台湾との国交」の見直しです。パラグアイは南米で唯一台湾と国交を結んでいる国です。ただし、そのこと自体に大きな意味はないのですが、パラグアイが中国と国交を結ぶようになった場合、メルコスール(南米南部共同体)と中国とのFTAに向けた動きが一気に加速する可能性があります。2004年頃、ブラジルやアルゼンチンなどでは胡錦濤国家主席訪問に合わせて、「中国フィーバー」に似たような空気に包まれていました。実際に、その頃の中国政府は市場経済国の認定と差し替えに大型投資の話(大風呂敷?)を数多く提案し、それら南米諸国は鵜呑みにしていました(その後、しっかりと学習はしていますが・・・)。

◆ただし、その興奮に似た空気に包まれた当時でも、メルコスールと中国のFTAの話は浮上しませんでした。その理由はパラグアイと中国の国交がないためです。パラグアイというハードルのお陰で、日本政府はメルコスールとのFTAの可能性の検討に緊急性を持たなくて済んできました。どちらかというと、メルコスールとEUのFTAの行方を見極めてから動こうかという悠長な姿勢であったように記憶しています。

◆今回のルゴ氏による台湾との国交見直し可能性発言が問いかけているものは、これ以上メルコスールとのFTAというテーマで日本政府が不作為を働くことは出来ないということでしょう。あまりに安穏としていると、いつの間にか中国が挽回してくるのではないかと思われます。確かに、ここ数年、中国からの輸入品に対してブラジル及びアルゼンチン政府は神経を尖らせていますが、さすがにあの巨大市場の魅力に対しては抗し難いところがあると思われます。今後パラグアイの議会が国交問題をどのように扱っていくかは見え難いですが、一つの転換点を迎えようとしていることは間違いないのではないでしょうか。
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