カテゴリ:ウルグアイの経済( 33 )

◆サンパウロで生活をしていると、時折、東京の物価と変わらないと思うときがあります。例えば、お昼時のビジネス街。日本食レストランのメニューは平気で30レアル(約1,500円)を超えています。それでも、地元ブラジル人であふれかえっていることに、赴任当初は驚きを覚えました(その後、ブラジルの一般的な企業には、会社による食事補助が制度として存在することを知るのですが)。

◆時に「ブラジルは東京よりも物価が高いのでは」とか、「南米のよその国はきっと物価が安いだろう」という話を聞きますので、ここで少し調査会社のデータを参考にしてみたいと思います。

Mercer社が毎年発表するCost of Living調査があります。ニューヨークを100にして、世界中の都市を物価の高い順にランキングしています。以前、ウルグアイでブログを書いていたころ、この数字を毎年記事にしていた気がしましたので、ここで少し復活してみたいと思います。

◆主な南米諸国のランキングの変遷は次のとおりです。

都市名: 2008年 → 2009年 → 2010年
サンパウロ(ブラジル): 25位 → 72位 → 21位
リオデジャネイロ(ブラジル): 31位 → 73位 → 29位
ブエノスアイレス(アルゼンチン): 138位 → 112位 → 161位
モンテビデオ(ウルグアイ): 136位 → 131位 → 129位
アスンシオン(パラグアイ): 143位 → 141位 → 204位
サンティアゴ(チリ): 92位 → 128位 → 123位
ラパス(ボリビア): - → - → 211位
リマ(ペルー): 115位 → 122位 → 135位
キト(エクアドル): 142位 → 136位 → 194位
ボゴタ(コロンビア):87位 → 120位 → 66位
カラカス(ベネズエラ): 89位 → 15位 → 100位

◆この調査の基本はドル換算ですので、対ドルの為替の影響が大きく反映することになっていますし、ユーロ高の頃はそれに見合った順位の変動がありましたので、実はあまり順位にこだわることに意味はないかもしれません。ただ、同じ地域の比較をする際の定点観測としては役に立つと思っています(なお、2009年までには140都市強だった対象都市は2010年に214都市に増えました)。調査結果をみると、サンパウロなどブラジルの都市は南米で最も物価の高い部類に入りますし、レアルが高止まりしても、物価そのものは高くなっているようです。

◆ここ数年ウルグアイを訪れていないなかで、友人から「ウルグアイの物価がサンパウロ並みになっている」との話を聞きましたが、この調査結果をみると、そこまで急激に高くなっていることはないのかもしれません。地元スーパーのサイトをみても、テーブルワイン(ボトル)の価格は、相変わらず100~200ペソの間でラインを揃えることができます。ただ、2004年~2007年当時、ウルグアイは世界でも最も物価の安い都市であったことから考えると、幾分かは高くなったかもしれません。

◆ちなみに、この調査によれば、東京と大阪はトップ5の常連のようです。「サンパウロが東京並み」というのは、ちょっとした思い込みの部分があるか、それとも日頃の生活スタイルがもしかすると贅沢なのではないかという示唆なのかもしれません。
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◆24日付の日本経済新聞HPシンフォニア・テクノロジー社がウルグアイで風力発電のビジネスを開始するとの報道がありました。日本企業の進出が少ないウルグアイにとっては目出度い話です。既に6月9日付の現地紙でも報じられておりますが、同社がウルグアイ側(工業省や国営電力公社)に技術供与も含めた協定を結ぶといった内容になっています。

◆なぜウルグアイにシンフォニア・テクノロジー社がやってくるのかということになりますが、本年2月5日付同社プレスリリースにありますように、ブラジルでの同社製品の現地生産及び販売という契機があったように思われます。同リリースで示唆しているように、ブラジルを始めとする南米諸国へのアプローチも検討対象に入っており、その第一弾が隣国ウルグアイになったのではないかと思われます(実際、ウルグアイ政府は2015年までに風力発電が国内電力消費の6%を賄うを見込んでおり、そのための制度作りにも動いているようです)。

◆ウルグアイのような小国に進出することに果たしてメリットがあるのかという点について、恐らく多くの企業の方々は懐疑的になると思われますが、南米に視線を注ぐ多くの多国籍企業にとっては、ゲートウェーとしてのウルグアイというのは、比較的常識の範囲内として取り扱われているような気もしてます。

◆これは、2004年頃の話ですが、インドのタタ・コンサルタンシー・サービス社がウルグアイに進出した際に、タタ財閥のトップが現地紙に対して、「ウルグアイを南米の拠点にすることの魅力として、国が小さいことがある。つまり、国のトップへのアクセスが近いことであり、当社の意向をしっかりと聞き入れてもらえるということである」といった主旨の発言があったことを記憶しています。

◆小国に対して相応の投資などをすれば、その時の政府は強力な味方になってもらえる可能性が高いということです。ウルグアイ(人口350万人)はその意味で、前のバスケス政権から投資誘致などに力を入れているため、それに資する活動をする企業(人々)に対して義理堅いところがあると見ています。逆説的ではありますが、ブラジルにどれだけ投資をしても、ブラジル政府が強力な味方になってもらえる保証はそれほど高くないでしょう。

◆本件に関連したウルグアイの魅力としては、(1)国のトップへのアクセスが近い、(2)周辺諸国と比べるとクリーンである、(3)政府が左派(&田舎者)ということで真面目である、といったことがあります。進出する業態によって、ブラジルやアルゼンチンといった周辺諸国への輸出で非関税の障壁があるとか、ウルグアイ国内で雇用する人材に限りがある、等々の問題に直面するかもしれません。ただ、それとは別の悩ましい問題はブラジルでもアルゼンチンでも存在することも事実です。

◆ウルグアイをテストケースとして見ているのではないかと思われるシンフォニア・テクノロジー社の今後に注目したいと思います。
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◆前回は、2007年時点でウルグアイが読みを外した話をしました。当時、地デジ放送の方式というテーマを通じた、EU対ブラジルの威信をかけた戦いで、ウルグアイは早々にEU側に賭け金を置きました。それは、決してブラジルを見くびっていたわけではなくて、当時のEUにそれほどの勢いがあったためです。それが、サブプライムやリーマンショックを通じて、EUはこけたが、ブラジルは軽傷で済んだ。欧州方式を採用すると思われていたアルゼンチンは、ブラジルによる硬軟自在のアプローチによって「ブラジル・日本方式」を採用しました。

◆日本のメディアでは、日本政府などの頑張りによって、南米での日本方式の普及に成功しているという美談が描かれています。しかし、それとは別に、EU対ブラジルの威信をかけた戦いという構図もあります。その場合、日本はブラジルの技術面でのパートナーという位置づけ程度でしかありません。

◆たしかに、日本勢は南米諸国で一生懸命普及活動をしていますが、その技術の優秀さだけで日本方式を採用する政府はありません。その最初の例がウルグアイでした。当時の日本勢は、地デジ放送の担当大臣を日本に招聘するなど、ウルグアイのペースを把握していましたが、ブラジルはまだこの戦い(局地戦?)に本腰ではなかった。日本勢が孤軍奮闘の中で、欧州の影響力の強いウルグアイで日本勢が苦戦し、結果、負けてしまった。

◆当時の日本勢が敗北の教訓として学んだとすれば、如何に優れた技術を持っていてもダメで、それとともに腕力の強い存在が一緒にいる必要があるということです。ドラえもんでいうところの「ジャイアン」が必要でした。南米での地デジ方式の戦いでは、ジャイアンであるブラジルと一緒に、日本はスネオ役として生きる。この役割分担を通じて、日本のプレゼンスは相乗的に増してきたのではないでしょうか。

◆「君はスネオだ」と言われて嬉しい人はいませんが、今のところ、ないものねだりをしても仕方がない。腕力のない国、あるいは新参者としての処世術として、この方法は一つの知恵だと思っています。当然、スネオになることが最終目的にさせることでは本末転倒だと思いますけどね。

◆欧州方式を決めたウルグアイに対しては、捲土重来とばかりに、日本政府もブラジル政府も本腰を入れています。それらに押される形でムヒカ大統領は日本方式に変更することも検討するような発言をしたとも報じられています。天の利、地の利、人の利、時の利が揃っているのでしょう。そして、これらが揃っているうちに日本方式への引っ繰り返しをやっておかないといけません。ブラジルの天下だって、いつまで続くかわかりませんからね。
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◆5月3日から5日にかけて、アルゼンチンのブエノスアイレスで、地デジ放送の日本方式を導入した南米諸国と日本の関係者などによる、第2回ISDB-T(日本方式の名称)インターナショナル・フォーラムというイベントを見てきました。

◆南米では、3~4年ほど前から、地デジ放送の方式をめぐって、日本と欧州、米国が鎬を削っています。2006年にブラジルが日本方式の導入を決めてから、チリ、アルゼンチン、ペルー、ベネズエラ、エクアドルが日本方式に決めており、その実績は日本のメディアでも紹介されています。現時点でまだ方式を決めていないのは、パラグアイとボリビア。既に欧州方式に決めたのは、コロンビアとウルグアイです。

◆今日話をしたいのは、日本と欧州の対決になっている中で、なぜウルグアイが欧州方式に決めたのかについてです。それは、南米の小国としての計算があったからですが、その後、ウルグアイはその目論見が外れ、地デジ放送方式の面では周辺諸国から孤立しています。

◆当時のウルグアイは、ブラジルが日本方式を採用したものの、最終的には、欧州方式が南米大陸を席巻して、南米のデファクトになるという読みをしていました。その中でウルグアイが特に意識したのは、隣国のアルゼンチンの動向でした。当時、同国があたかも欧州方式に決めるかのような様子を目の当たりにして、焦りを感じていたようです。

◆ウルグアイとしては、南米のデファクトとなるであろう欧州方式を早急に採用することで、産業振興を行いたい意向がありました。注目したのは、IT産業やコンテンツ産業、それらに関連した研究開発関係でした。当時、ウルグアイは、IT分野では南米でトップを争うほどの産業力があると言われており、欧州企業の誘致に成功することで、南米におけるIT関連産業の発信基地としての地位を確立したかったと見られます。

◆ところが、ウルグアイよりも国力も市場も大きなアルゼンチンが先に欧州方式に決めてしまうと、これら関連産業の投資はアルゼンチンに逃げてしまう。当時の報道では、アルゼンチンは間違いなく欧州方式に決める勢いでしたし、当時のEUは勢いがありました。ユーロも高く、欧州企業も色々な意味で資金面で余裕があった。ウルグアイが南米で欧州方式が勝つと思ったのも無理がなかったと思います。

◆以上が2007年の話。3年が過ぎて、様相は大きく変わりました。その辺りの話は、次の機会に。
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◆このブログで継続的に取り上げているベルガラ経済財務次官の訪日ですが、その成果について、2月29日付のEl Paisが伝えています。同記事は、地元の記者が同経済財務次官の帰国に合わせて、外信で伝えられていた内容を確認するというお得意の手法。ウルグアイの新聞社はさすがにお金がないので、このような方法で外信との差別化を図っています。ちなみに、今回の記者の一番の確認したかった内容は日本製紙が新たにウルグアイ向けに投資をするという事実関係だったでしょう。

◆ウルグアイにおける投資誘致の一番の目玉は製紙業です。一次産品からの最終製品までの流れでいけば、一番最初の材木から木材チップ、セルロース、紙パルプ、製紙ということになるでしょうが、外資が投資を試みているのは、その中でもセルロース工場の建設です。欧州勢ではBOTNIAが操業開始、ENCEが工場建設を開始、STORA-ENSOが土地購入を完了し、他にもポルトガルやアルゼンチン勢がそれぞれ10億ドル規模の投資を検討していると報じられています。

◆日本勢については、2004年から王子製紙と日本製紙が木材チップを調達することでウルグアイとの結びつきを強めてきました。その両社の一般的な傾向から比較すると、日本の近隣で材料を調達する王子製紙よりも遠隔地をも厭わずに調達を試みる日本製紙の方がそもそもウルグアイとの相性は良かったのかもしれません。また、これまでもコンスタントに対日輸出の実績も残し、2007年9月から駐在員事務所も開設している日本製紙は、今後のウルグアイとの関与の仕方について検討を重ねやすい環境にあったともいえるでしょう。

◆2月23日付のEl Paisの報道では、まるで日本製紙が製紙(又はセルロース)工場を建てるかのようなニュアンスで報じられていましたが、同月29日付のEl Paisの報道では、その点について、ベルガラ経済財務次官は、日本製紙が工場建設をコミットしたわけではないものの、既に土地や森林の購入などを進めていると抑え目ではあるものの、確実に日本企業がウルグアイに投資を行いつつあることを伝えています。

◆このベルガラ発言については、先走り報道ではないかとの見立ても出来るかもしれません。一般的に、ウルグアイの政府高官は地元メディアに馬鹿正直に話をする癖があって、オフレコの線引きの解釈が日本の企業関係者と異なる部分があるように思われます。憶測の域を出ませんが、今回の日本製紙のウルグアイ進出の話についても、ベルガラ経済財務次官が同社を訪問した際に同社幹部から現在そのように検討していますのでとオフレコ・ベースで話をしたのでしょうし、当然同社幹部はそのようなことが進行中のことであるので表にならないと思い込んだのでしょう。一方、ウルグアイの政府高官にとっては「これはオフレコだ」という念押しがない限りは情報の公開の裁量は自分にあると一般的に解釈します。

◆従って、今回の日本製紙の動きについて、ベルガラ経済財務次官は、日本訪問における一つの収穫であり、投資誘致を率先するバスケス政権の大きな成果の一つとして我慢できずにメディアに伝えてしまったというのが今回の事の顛末ではないかと見ています。実際、このような先走り報道は初めてではなく、他の日系企業のウルグアイ進出(又は計画)のケースでも垣間見られます。いずれも、情報が漏れた元はウルグアイ政府高官であり、グッド・ニュースを自らの手柄にしたいという誘惑から生じてしまっています。

◆日本製紙がベルガラ経済財務次官のお土産としてこのニュースを持ち帰っていただこうという意図で情報を提供したのであれば、それはそれで戦略性があって良かったのですが、限られた経験の中では、そのような戦略的なケースは稀有です。一般的には、相手国の政治家や政府高官の情報の取り扱い作法の認識不足が理由になっているような気がします。ウルグアイの場合、進出している日系企業が5社ですが、大方の企業は進出してまだ0.5~3年程度であり、そのようなウルグアイの政治家や政府高官の「お行儀」を理解することには困難があると思われます。

◆製紙業界で日本製紙が既にウルグアイの土地を購入していることが周知の事実であれば、今回のニュースもそれほどの価値はありません。ただ、木材チップを含めた製紙原料の欧州勢との奪い合いが近年熾烈になっている中で、アクシデントとして今回の情報が漏れてしまった場合、果たして今回のアクシデントをオール・ジャパンとして防ぐことができなかったのか考えてみても良いのかもしれません。一日系企業が「お行儀」を知らなかったでは済まないと思っています。
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先日のブログでも触れましたが、ウルグアイのベルガラ経済財務次官が東京で投資誘致を目的としたセミナーを開催しました。その様子については、スペインの通信社EFEが報じており、それを転電する形で、23日付のウルグアイの地元紙El Paisでも掲載されていました。当日は現場にいなかったのですが、仄聞したところなどから、「経済セミナー」を読み解きたいと思います。

◆ベルガラ次官が何を話したかについては、IDBのHPを参照すると当日のセミナーのPower Pointを眺めることができます。端的に説明してしまえば、「ウルグアイはメルコスール加盟国の中でも国の質が高く、経済も順調であり、南米南部のハブにするには最適である。政府としても投資誘致インセンティブを導入して、今後とも経済成長に死活的に必要である投資誘致を進めていく」といったことを1時間近くかけて説明したかったのだと思われます。

◆ただ、揚げ足をとるのも気が引けるのですが、この資料、別に日本の聴衆に対して作られているわけでもなく、ウルグアイ経済財務省が欧米の金融機関等に債権発行の打ち合わせをする際にウルグアイの現状を紹介するために使われているもののようです。その証拠に、最後の頁には「債務対策室」の文字。経済財務省や同次官が忙しかったのか、そもそも彼らにヤル気がなかったのか。招聘で日本くんだりまでやってきた人間の気持ちの入れ具合が透けて見えてきてしまいました。

◆従いまして、当然のことではありますが、そのようなスピーカーの気持ちの下で行われたセミナーなのですから、聴衆が心を動かされるとは思えません。セミナーの中では、昨今矢崎総業や日本製紙、CI化成といった日本企業がウルグアイに進出していることは質疑応答あたり触れたそうですが、願わくばこれら企業の戦略に見合った政策をウルグアイ政府が遂行していると例示できるような気の利いた言葉が欲しかったように思います。

◆焼き直しのような資料を用いた今回のセミナーだけでは、「ウルグアイ政府の目標は対内投資額を継続的に増やすことであり、経済大国・日本もよかったらどうぞ」といった印象しか与えません。例えば、「ウルグアイ政府としては、投資誘致は国是であり、日本に対してもペルーとの間で目下検討されているような二国間投資協定を結ぶこともやぶさかではない。そのくらいウルグアイは日本をアジアにおける経済パートナーとして重要視している」というリップサービスを入れることで、日本企業にとってもウルグアイ政府は本気かもしれないと思わせることが可能になったのではないでしょうか。

◆ベルガラ経済財務次官は政治家出身ではないので、そのような真似は性格的に受け付けないでしょうし、余計なリスクを取ろうともしません。良くも悪くもテクノクラートです。そして、今回の訪問が招聘であることから察するに、ウルグアイ政府も今回の同次官の訪日を戦略的に活用しようする発想がなかったように思います。今年行われるかもしれないバスケス大統領訪日に向けた露払い程度にはなったのかもしれませんが、その程度のものでしょう。したがって、他の南米諸国と日本との二国間関係の動きに関心が及ばなかったことは当然といえば当然の帰結です。

◆更に、残念であったのは、先の政治的なメッセージが二国間にとって効果的であると示唆するような振付師が日本側にもウルグアイ側にもいなかったことです。この機会を最大限に活かすためにはどうすれば良いのかという想像力が今回の招聘に携わった日本・ウルグアイ両国の関係者に欠けていたのではないかと思われます。個人的に限られた経験を敷衍すると、そのような振付師は官民の枠を超えて存在するものだと思います。如何に多くの関係者から忌憚のない意見やアイデアに耳を傾け、より良いものを仕上げていくかにかかっている中で、同じIDBのHPに掲載されている来月のガルシア・ペルー大統領によるセミナーの案内を見ますと、日本にとってのウルグアイの存在感の薄さは決して距離やメイン・スピーカーの格だけによるものではないと感じてしまいます。
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先日のブログで、弱いドルのせいで2007年のウルグアイの対米輸出は大幅に下がったと述べました。その一方で、実質ドルにペッグしているような状況にあるアルゼンチン向けの輸出は、為替では不利でありながらも、昨年比で大幅に増加していることを述べました。今日は、その背景の一端について考えてみたいと思います。

ウルグアイ中央銀行の統計によると、2007年の対アルゼンチン輸出額は米ドルベースで昨年比46.1%増となっています。ウルグアイからどのような産品がアルゼンチン市場に流れ込んだのか。統計から拾い集めていきますと、(1)自動車関連製品、(2)石油製品、(3)化学製品の3つで輸出額の大きな伸びを示していていました。

◆それぞれのミクロの事情については、憶測の域から出ることがないのですが、自動車関連製品については、アルゼンチン・ペソ安によるアルゼンチンからの自動車輸出が好調であり、その部品供給地としてウルグアイも対象になっていることが考えられます。つまり、アルゼンチンの自動車産業ネットワークの中にウルグアイ企業もしっかりと入り込んでいることが考えられます。

◆そして、石油製品と化学製品については、恐らくアルゼンチン国内の供給不足から隣国の製品を求めたのではないかと思われます。特に石油製品については、産油国でありながらアルゼンチン国内の新規投資は価格統制のために芳しくなく、国内需要に見合う供給をとる態勢にはないのではと考えられます(これは飽く迄憶測の域ですが)。そのために、隣国から原材料となるこれら製品を仕入れ、アルゼンチン国内で最終製品に仕上げ、それらをブラジル市場などに輸出しているのではないかと推測されます。

◆ところで、面白いことに、これらのウルグアイのアルゼンチン向け有望製品の動向に波長を合わせるようにして、日本企業もウルグアイに進出を果たしています。例えば、自動車関連製品については、矢崎総業が2006年からアルゼンチンの自動車工場向けにウェア・ハーネスの輸出を行っています。また、化学製品については、CI化成が工場を構えるとの報道が2007年8月の時点でなされていました。

◆ウルグアイではANCAP(石油公社)が石油製品を独占していることを考えると、一部の日系企業ではウルグアイ(というよりも南米南部)進出にかかる鋭い戦略を既に持ち合わせていることが確認できます。これら日系企業はウルグアイ一国でビジネスを見ているわけではなく、アルゼンチンとブラジルという大きな市場を両睨みをしながら、製品の輸出等を進めていくものと思われます。2007年のウルグアイの対アルゼンチン輸出の急増は、ウルグアイにある企業がメルコスール市場においてしっかりと統合されつつあることを裏付ける一つの材料となるかもしれません。
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◆22日、AP電によると、EUがウルグアイ産の魚介類の輸入を衛生上の理由から停止したと発表しました。その記事によれば、ウルグアイの魚介類輸出およそ2億ドルのうち、40%がヨーロッパ向けとされており、ウルグアイにとっては痛手となっているかのように想像させます。ただ、記事を読んでいくと、ウルグアイ当局はEUの判断に対して従順な姿勢を示しており、少し意外な感じを与えます。この記事に見えてこないところは何かついて考えていきたいと思います。

◆ウルグアイにとって魚介類は伝統的な産品であり、輸出総額の3~4%あたりを占めています。ウルグアイ中央銀行も含めた幾つかの統計によれば、2007年の輸出額は1.55億ドルから1.70億ドルあたりを推移しています。

◆今回の経緯を整理しますと、EUからの検査官がウルグアイを訪問し、8つの魚介類工場を調べたところ、そのうちの4工場からの輸入を停止するとの判断を行いました。その後、水産資源局(DINARA)が独自に検査した結果、問題点が克服されるまで、すべての工場の魚介類の対欧輸出を停止する判断をしたそうです。

◆随分と思い切ったことを行ったようにも見えますが、果たして本当にそうなのか。統計を切り口にして考えていきたいと思います。そこで、2005年から2007年にかけての魚介類(HSコード:03)にかかる輸出額と主要対象国を紹介したいと思います。

・2005年(130,483千ドル) 
(1)イタリア、(2)中国、(3)米国、(4)スペイン、(5)ナイジェリア
・2006年(153,258千ドル) 
(1)イタリア、(2)中国、(3)ブラジル、(4)スペイン、(5)米国
・2007年(170,845千ドル) 
(1)ブラジル、(2)イタリア、(3)ナイジェリア、(4)スペイン、(5)中国

◆このデータからも判明するように、魚介類の輸出額は年々伸びてはいますが、その主要輸出国については必ずしもEU一辺倒ではありません。EU以外では、老舗としての中国や米国、そしてアフリカからナイジェリアやトップ5には入っていませんがカメルーンなどもあります。そして、新しい主要輸出国としてブラジルが台頭してきたことが見逃せません。2008年の1月から事件直前の2月15日までの魚介類の輸出額(HSコード:03)を確認しましょう。

・2008年1月1日~2月15日(22,385千ドル)
(1)ブラジル9,612、(2)イタリア2,844、(3)ロシア1,269、(4)スペイン1,200、(5)ナイジェリア1,150

◆今年に入ってから顕著なのは、ブラジル向け輸出が全体の4割以上を占めているということです。過去3年間でもトップの国のシェアが2割を超えることがなかったなかで、このような突出した数字を出していることは、EU向け輸出停止を決断する上で大きな後押し材料になったのではないでしょうか。

◆当然、そのような打算的な視点だけではなく、EUの指摘に対しては真摯な姿勢で対応していこうとするウルグアイ独特の潔さがあることも事実です。自らに落ち度があった場合は、素直に認めるような美学がウルグアイ人の間にはあったりします。

◆なお、ウルグアイの当局ですが、EUによる輸入停止を3月末までに終わらせたい目標を設けています。早速、ウルグアイ当局関係者をEU本部のあるブリュッセルに派遣すると報じられており、その行動の速さは少々ウルグアイらしくないところがあります。

◆ちなみに、今回の一件の担当となっているモンティエル水産資源局長とは何度も仕事の上で話を交わしたことがありますが、物腰の柔らかいスマートな人物です。元々2005年に議員として当選していたのですが、ムヒカ農牧大臣の引きで、局長ポストを宛がわれた経緯のある若手実力者です。同局長が所属するMPP(与党・拡大戦線内で最大派閥)が親メルコスールであることも今回の政治決断に躊躇いをもたせなかった一因だったとするのは少々穿ち過ぎでしょうか。
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◆巷ではすっかり米ドルが弱くなっていることが当然視されていますが、南米もご多分に漏れず、現地通貨の対米ドルレートが2007年あたりから急速に強くなっています。Mercopressによれば、これらの国々では次のように自国通貨が米ドルに比べて高くなっています。

ブラジル 16.69%
ウルグアイ 11.86%
コロンビア 9.91%
チリ 6.64%
ペルー 6.17%

◆ウルグアイのケースに限定して話を進めていきますと、現地通貨であるウルグアイ・ペソは昨年のこの時期でしたら24ペソ/米ドルで両替のレートでしたが、現在では21ペソ周辺になっています。現地の日本人にとっては生活しにくくなったようにも映りますが、日本円にしますと、1ペソ/5円周辺のままであり、現地に生活する日本人の心理的な影響はさておき、実質的は変化はありません。

◆豊富な天然資源を有するブラジルやチリ、ペルーなどの南米諸国に引き替え、ウルグアイは特段の天然資源を有しているわけではありません。それでも自国通貨が高くなっている理由とされているのが海外からの投資が増えているという実態です。2007年11月からフィンランドのBOTNIA社がセルロース工場を稼動させ、欧州等に向けて輸出を開始しました。このプロジェクトの投資額が10億ドル。ウルグアイのGDPのおよそ10%に値します。

◆BOTNIA社の工場稼動を受けて、翌月にはスペインのENCE社がセルロース工場建設の工事を開始しました。これも10億ドル以上の投資であり、2009年か2010年には完成する予定です。その他にもセルロース関連では10億ドル規模の投資計画が2~3程度存在しており、その結果ウルグアイ・ペソに対する需要が出てきていると見られています。何せ夏の観光シーズンにアルゼンチンから観光客がやってくるだけでウルグアイ・ペソが高くなるような国なので、この程度の動きでも十分に反映されてしまいます。

◆自国の通貨高については、輸出産業が打撃を受けるということで特に農牧業を中心とした輸出業界は政府に対して通貨高を抑え込むような介入を要請してきました。少し余談を交えますと、ここでも2009年大統領選の予行演習が行われており、農牧業界に支持者が多いムヒカ農牧相は通貨高に反対する立場から政治的な発言を繰り返し、それにアストリ経済財務相が反対するという構図を過去3年間で作り上げてきていました。ムヒカ農牧相のボディーブローがどこまで効いたのかは来年の選挙時に判明するでしょう。

◆以上のような与党内における政治的な鞘当はあったものの、米ドルに対する通貨高はそれほどの国内問題にはなりませんでした。理由は簡単で、今回の現象はウルグアイ・ペソ高ではなく、単純に米ドルが弱くなっているだけであり、また他の南米諸国も同様に現地通貨が高くなっているから特に輸出での打撃を受けることがないためです。

ウルグアイ中銀が公表している2007年11月のデータを見ますと、2007年1-11月期の輸出は前年同期比で13.3%増。この数字は過去1~2年間のトレンドを維持しています。そして、ウルグアイ・ペソ高の影響は対米輸出で歴然としており、前年同期比0.1%増。ウルグアイの対米輸出のシェアは11.6%と2005年11月期の22.4%の半分近くに下がっています。

◆このような傾向が反映していることとして、一時期盛り上がっていた米国とのFTA論争が、両国政府の事務方で外堀を埋めるべく動いているようですが、今では国民からあまり相手にされていないようです。また、皮肉にも米国のプレゼンスが衰えることがアストリ経済財務相の神通力も衰えさせる結果にもなり兼ねない情勢に入っているのかなと見ています。

◆この対米輸出の停滞を埋め合わせるようにして、対ブラジル輸出は25.3%増、対EU輸出は25.2%増と大きく伸びています。これら地域との通貨は2007年も若干の上下はあったもののほぼ同じレートで推移しており、恐らく農牧業界は米国市場ではなく、ブラジル市場に回帰しているものと見受けられます。

◆また、この輸出動向にかかる若干の例外として対アルゼンチン輸出がありますが、それについては日を改めて話をしていきたいと思っています。
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◆先日、ベルガラ・ウルグアイ経済財務次官が東京でセミナーを行うとの案内が手元にやってきました。同次官とは直接二人で話をする間柄ではありませんでしたが、仕事の関係で同じ場所に立ち会うことは幾度がありました。そのセミナーで果たして何を話をするのか関心ありますが、当日はスケジュールの都合がつかずに恐らく欠席でしょう。残念。

◆「所詮、小国の経済財務次官だろ」といって、セミナーへの面白味を見出せないと悩んでいる当日の出席予定者の方々にちょっとした質疑応答に向けたヒントを差し上げたいと思います。

◆ベルガラ経済財務次官ですが、ウルグアイではアストリ経済財務相率いる経済マフィア(ウルグアイ・メディアでは「経済チーム」と呼んでいますが)の番頭格の人物です。現在のバスケス政権において、ウルグアイは引き続き高い経済成長を続けていますが、その牽引役が経済マフィアの存在です。彼らの原則はIMFの名を利用した中での緊縮財政政策で、IMFの債務を全額返済した現在でもその方針を貫いています。ベルガラ経済財務次官は、その方針の事務方部門で手堅く遂行してきた実績があります。

◆今年に入って、この「経済マフィア」が若干の変化を遂げようとしています。ボスであったアストリ経済財務相が4~6月頃を目処に翌年行われる大統領選準備のため辞任した上で上院議員に戻り、カンセラ中銀総裁が後釜になる見通しになっています。そして、スライド式にベルガラ経済財務次官が中銀総裁になると報道されています。

◆そこで、最初の質疑応答の材料は「アストリ経済財務相辞任後のウルグアイ経済は大丈夫か?」ということです。答えは「大丈夫」なのでしょうが、どこまでベルガラ経済財務次官が自信を持って言えるかがポイントです。それによってどこまで「経済マフィア」が3年間にわたってバスケス政権の経済部門を支配できたかが分かります。逆にここでベルガラ経済財務次官が微妙な逡巡を見せるようであれば、ウルグアイ投資も考えものでしょう。

◆ベルガラ経済財務次官ですが、彼の経歴を紐解きますと、経済財務次官就任前にURSEC(ウルグアイ通信サービス規制機関)という機関のトップでした。この機関、実はウルグアイのデジタルテレビ方式を掌る機関です。日本ではそれほど注目されていませんが、南米におけるデジタルテレビ方式は、現在日本、欧州、米国の三つ巴で熾烈な争いが行われています。その中で、一番最初にブラジルが日本方式を決定し、その次に決めたのが実はウルグアイ。日本方式はウルグアイで敗れ、欧州方式が勝利しました。

◆その決定過程において陰で影響力を与えたのがベルガラ経済財務次官(前URSEC総裁)であったことは知られていません。2007年5月、ノキア社はウルグアイのデジタルテレビ方式決定の権限を与えられてたレプラ工業相と一介の経済財務次官であったベルガラ次官をフィンランドに招きました。欧州陣営はそれまでもEU本部にレプラ工業相を招いたり、スペイン政府がウルグアイで積極的な動きを行うなどしてきました。そして、2007年8月、ウルグアイ政府は欧州方式に決定。ノキア社による技術協力計画などが発表されました。

◆ウルグアイでの日本方式「敗北」の教訓を日本政府が学んでいるのかは不明です。例えば今回の訪日は外務省の招待の様子ですが、万が一デジタルテレビ日本方式挽回の切っ掛けにしたいとする深遠な考えのもとに行われているとすれば大いに評価したいものです。けど、きっとそのようなことはないでしょう。もしかすると、招待した過程において、ベルガラ経済財務次官がそのような影響力を有してきたことすら把握していなかったかもしれません。

◆そうなりますと、二つ目の質疑応答の材料は「なぜウルグアイにおいて日本方式は敗れたのか、そして欧州方式は勝利したのか」ということです。そして、同次官はウルグアイへの投資誘致についてもセミナーでは話をするでしょうから、それならウルグアイがデジタルテレビを材料にして日本の官民を相手に交渉するくらいの真摯さがあっても良かったのではと問い掛けることができるのではとも思えます。

◆今回の訪日が外務省の招待であれば、それくらいの修羅場は差し上げても良いのではないかと思いますが如何でしょう。そうでないと、予算消化のための招聘かと後ろ指をさされるでしょうし、日本方式を葬ったかもしれない張本人に物笑いにされてしまいます。

◆このセミナー、申し込みは2月20日までになっています。ご参考まで。
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