カテゴリ:ウルグアイの社会( 8 )

◆南米というと麻薬というイメージを持つ日本人は比較的多いのではないでしょうか。最も有名な国はコロンビアで、日本でも『パブロを殺せ』など壮絶なストーリーを書籍を通じて知ることができます。しかし、それは生産地の話で、南米の小国・ウルグアイは関係ないと思われているところ、次のようなニュースが舞い込んできました。

El Paisによると、22日未明、ウルグアイの麻薬対策チームは、ウルグアイ西部ソリアノ県にある牧場(エスタンシア)において、ボリビア国籍のセスナ機及び乗用車を確保し、142キロの麻薬を押収。一連の麻薬取引に関係した11名(メキシコ人6名、ボリビア人3名、ウルグアイ人2名)を逮捕したことを発表しました。また、警察は、記者会見において、今回の「パハロス・ピンタドス(多彩色の鳥)」作戦については2007年11月から内密に進めてきており、今回取引に関するウルグアイ国内ネットワークを一網打尽にしたことを発表しました。

◆今回押収されたコカインは、密輸されていると推測される2,000キロの一部だったそうですが、ボリビアからウルグアイにセスナでの空輸でやってきて、人の行き交うことの少ない僻地の牧場に着陸。そこから車で首都モンテビデオの冷凍倉庫に運び込まれ、冷凍牛肉又は冷凍魚介類(メルルーサ)のコンテナに忍ばせて、モンテビデオ港から欧州(スペイン)又はメキシコに輸出されることが予定されていました。ちなみに、コカインの単価ですが、生産地のボリビアで2,000ドル/キロであり、消費地のスペインで33,000ユーロ/キロとのこと。末端価格6,600万ユーロ(約105億円)の取り引きだったようです。

◆実は、欧州向けコカインの経由地としてウルグアイはその筋の方々には有名であるようです。ウルグアイ国内のメディアでも以前から指摘されていましたし、昨年もウルグアイ国内では警察による「サンフランシスコ」作戦というコロンビアの麻薬マフィアが関係する大捕り物がありました。

◆麻薬関係者がウルグアイに注目する理由は、「入りやすくて、出やすい」ためです。まず、「入りやすい」点についてですが、今回のようなセスナ機でコカインなどの麻薬を運び込むことはそれほど難しい話ではありません。私がウルグアイにいた頃にもブラジルからセスナ機を飛ばしてきて、ウルグアイの或る場所に「荷物」を投下して、それをウルグアイ国内にいる仲間が拾いに来るという話は聞いたことがあります。広大な原野の広がるウルグアイの国土を前に、国境を越えて飛来するセスナ機をウルグアイの警察が捕捉するには限界があります。

◆そして、「出やすい」点についてですが、米国政府が昨年の段階でモンテビデオの港湾施設及び空港施設に対する麻薬等のトラフィックに対する脆弱性を指摘していました。麻薬ではないのですが、2~3年前には中国人の不法移民で、中国からウルグアイを経由して最終的に米国に渡るというビジネスが行われており、ウルグアイの国境管理の甘さは広く知られています。

◆そのようなウルグアイに関する常識と照らし合わせると、今回の麻薬一味の計画は必ずしも杜撰だったわけではないことが分かります。既に述べているように、セスナ機の到着場所を手配していましたし、モンテビデオに運び込んだ後の輸出方法についても手抜かりはなかった模様です。そして、逮捕されたメキシコ人は既にモンテビデオ市内にアジトを2箇所構えており、長期的に今回のプランを準備した形跡があります(余談ですが、そのうちの一つのアパートは私が住んでいた場所と同じ通りだったようですけど)。

◆それでも捕まっているというのは、今回は麻薬一味よりも警察の方が周到さで上だったということでしょう。国境警備や港湾管理で最新鋭の技術やインフラを導入するほどウルグアイ政府には予算に余裕がない中で、麻薬経由地としてウルグアイというレッテルが払拭される日は近くないような気がします。解決の糸口のためには米国をはじめとする他国からの援助次第といったところでしょうか。
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◆南半球に位置するウルグアイは夏の真っ盛り。バスケス大統領も1ヶ月近く休暇に入っており、すっかりバケーション・モードに入っています。駐在していた頃は、毎朝現地の新聞を広げると、国内有数のリゾート地であるプンタデルエステの海岸風景の写真などが載っており、仕事を始めることが憂鬱になっていました。

◆ウルグアイにとって夏の期間は観光産業の稼ぎ時です。先ほど触れたプンタデルエステがその最たるもので、夏の光景と冬の光景を比べると、本当に同じ町なのかと思えてくるほどです。そのプンタデルエステの夏を盛り上げているのは、ウルグアイの地元民ではなくて、実は隣国のアルゼンチンの人々。このことは過去のブログにも書いているので詳細は割愛しますが、要はウルグアイの観光産業は自国民の需要だけでは成り立つものではなく、むしろ他国からの訪問客で成り立っています。

◆ウルグアイ政府は、その事情が痛いほど分かっていますから、これまでのアルゼンチン偏重型の観光客誘致から少しでも多角化できればと願っています。また、アルゼンチンともセルロース工場問題に端を発した国境封鎖問題やウルグアイ・ペソ高を通じてアルゼンチンのパイが右肩上がりになる要素は少ないのが現状です。

◆それでは、ウルグアイ政府が何をやっているのか。早速、ウルグアイ観光省のHPを開いてみますと、驚いたことに右のコラムに「ウルグアイ観光情報」の漢字の文字が飛び込んできました。ダウンロードしますと、JICAと観光省が協力してFlash Playerで作った観光案内が出てきました。私の古いPCでは詳細までは見ることができませんでしたが、ウルグアイを旅行する際のプランまで盛り込まれており、親切な内容になっています。

◆JICAの観光誘致協力については、1月9日付のウルグアイ大統領府のHPでも出ているように、これまでの「第1期」のメルコスール観光誘致にかかる協力が終わり、1月から新たに「第2期」が始まるとのこと。そのセレモニーの様子は翌日の現地紙にも掲載されており、ウルグアイ政府にとっての期待の表れが見て取れます。

◆それでは、日本側はそのようなウルグアイの期待をどのように受け止めているのか。念のため、JICAモンテビデオ駐在員事務所(以下、「JICA」と省略)及び在ウルグアイ日本大使館(以下、「日本大使館」と省略)のHPにアクセスして、1月9日の出来事を確認したところ、一切情報が掲載されていませんでした(1月18日現在)。JICAに至っては、Flash Playerの観光案内のリンクもなく、折角の協力の成果であるコンテンツが宝の持ち腐れになっています。

◆そもそも、ウルグアイを旅したい人がウルグアイ観光省を探し出してまでアクセスするとは思えませんし、だからといってJICAにアクセスするとも思っていませんが、せめてJICAとしては骨を拾ってあげることはできるのではないかと。また、日本大使館でもウルグアイ観光のページがあるのですから、そこにリンクを設けるだけでも、親切な配慮になるのではないでしょうか。

◆参考までに、同じウルグアイにある在ウルグアイ米国大使館(以下、「米国大使館」)のHPをアクセスしますと、画面の中央に飛び込んできたのが「Ambassador Baxter Welcomes U.S. Tourists To Uruguay(バクスター大使、ウルグアイへの米国人観光客を歓迎)」の文字(1月18日現在)。そこをクリックすると、青い海とクルーズ船の写真と共にバクスター米国大使の写真とメッセージが出てきます。メッセージには、ウルグアイの魅力を簡潔に説明した上で、困ったことがあれば米国大使館に遠慮なく連絡して欲しいと電話番号やメールアドレスが掲載されています。更に驚いたのは、ビジネス機会を見出した観光客は遠慮なく通商部に連絡して欲しいとこれまた電話番号とメールアドレスを掲載していることです。これを見るだけでも、敷居が低く、機動力のある米国大使館を素直に評価してしまいます。

◆また、米国大使館の1月16日付の最新ニュースでは「Ambassador and Mrs. Baxter Celebrate the New Year in Punta del Este」という題名で1月11日に開催した米国大使主催のレセプションの様子を掲載していました。内容はバクスター米国大使が友人たちを集めて賑やかに振舞ったという他愛のないものですが、そのニュースを通じてバクスター米国大使は先の観光誘致の意思を「ウルグアイの宣伝マン」として、言葉だけでなく、態度で実践していることを確認させることに成功しています。大したお金を使わなくても米国政府は観光誘致に積極的に貢献していることをウルグアイ政府内外にアピールできています。

◆最後に余談として、日本大使館を擁護するわけでもないのですが、正直なところ米国大使館のHPは速報性・センス・写真の使い方いずれをとっても非常に優れています。恐らく、米国大使館としてHPを通じた広報の重要性を理解していて、戦略的に捉えるトップの眼と機動力のある担当者がうまく機能しているものと見ています。日本大使館にとっては、その存在を「敵わない相手」と見るか、「目指すべきライバル」と見るかで大きく変わってくるでしょう。
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◆ウルグアイ・モンテビデオで開かれていたイベロアメリカ・サミットは無事に終了しました。厳戒態勢の独立記念広場周辺には近寄ることもなく、金曜日と土曜日を過ごしていましたが、メディアから聞こえてくる限り、それほどの大きな騒ぎも無かったようです。ただ、果たして会場近くがどのくらいの警戒態勢をしていたのかについて、迷惑を掛けない範囲で自分たちとしては見てみたいこともあって、今日の午後、車で中心地まで行ってみました(といっても、車で10分・・・)。

◆クライマックスを過ぎたので、警官などの緊張感は感じられることがありませんでしたが、それにしても「人が少ない」。ただでさえ、普段から寂しさを感じさせるモンテビデオの街ですが、今日の曇り空も追い討ちをかけるかのように、街全体が沈んでいました。例えば、旧市街の広場にいる市民はベンチに腰を掛けた老人一人だけ。

◆これは何だろうなと思ってしまいました。別に裏づけもないのですが、この国の人は、上からの協力要請に対しては比較的好意的に対応するDNAが織り込まれている気がします。例えば今回の場合、「サミットの会場となる独立広場周辺は市民の入場規制をやっているので・・・」をお上が言えば、合言葉のように「近寄るべからず」ということを悟ってしまうわけです。周辺諸国の国民と比較すれば、非常に従順だといえます。これを民度の高さというか知りませんが、そのようなところをウルグアイ人を見ていると感じます。

◆さて、サミットの期間、街にはウルグアイ人だけではなく、観光客も少なかったようです。モンテビデオのダウンタウンにある最大のホテル「ラディソン」はサミット用に全ての部屋が貸切になった様子。更にサミット目的にやってきた仕事関係者は、他のハイレベルなホテルにも泊まっていたようです(自宅近くの「シェラトン」も同様)。

◆このために一般の観光客はモンテビデオを訪れることがなかったのでしょう。ひとまずホテルが満杯になっていることを当初は喜んでいた様子だったのはお土産屋。イベロアメリカ各国からお客がやってくるために、皮算用をしていたのですが、その結果は散々。当地の新聞記事に掲載されてもいますが、ビジネスでやってきた人々は、一般の観光客と比較して、お土産を買わないとのこと。特に、入場規制地区に店を構える地元でも有名な土産物屋は通常の50分の1程度しか儲かっていないとのコメントまでしています。

◆さらに、イベロアメリカ(特に中南米)の世界を旅した人は分かるのかもしれませんが、ウルグアイも他の諸国と似たようなものしか売っていません。そのような特徴のないお土産物(キーホルダー等々)をわざわざ出張者が買わないといったことも働いた様子。或る宝石商では、開店時間から午後2時まで訪問したお客が5名だったとのこと。「まるで墓地にいるようだった」とのコメントは政府への恨み節にも聞こえます。

◆では、その中でも売れた(差別化された)商品とは何だったのか気になるところですが、その新聞記事に書いてあったのがウルグアイのナショナルチームのユニフォームだったそうです。確かに、差別化によって他の南米諸国の心を捕えることができるのがサッカーだったとは何となく分かるような気がします。自分たち夫婦も昨年この時期の日本訪問の際のお土産にはサッカー関連グッズ(第1回W杯のポスターレプリカ等々)を持ち帰った記憶があります。

◆実は、このサッカー関連グッズの潜在力をまだウルグアイの土産物屋は気がついていない部分があったりします。今回の一件が転機となることができるのでしょうか。
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◆外は快晴でありながらも、ラプラタ河からの南風が冷たい一日でした。その中で妻がウルグアイをニッポン放送で紹介してましたが、今日はNHKラジオで紹介されます。自分も以前中国新聞のコラムに書いたTさんのこと。その記事を読まれたNHKラジオのHさんがコンタクトを取っていただいたようです。2日連続でウルグアイの話が都内のラジオから流れてくれることは、日本の反対側に住む日本人として嬉しいものがあります。

◆また、14日~17日にかけては、アークヒルズでウルグアイ産品が陳列された展示会も開催されます。ウルグアイ企業では、コメ、牛肉、羊毛製品、タバコ、木材等々バリエーションあるものになっているそうです。物産展ではないので、即売はないでしょうが、話によればウルグアイ・ワインの試飲(又は小ボトルの提供)があるとのこと。ウルグアイを触れる面白い機会かもしれませんので、是非この機会を利用されては如何でしょうか。

◆実は、この展示会に先立ってウルグアイ企業の一部は日本のバイヤー向けにパンフレットなどを作っているのですが、律儀なことに、一部のウルグアイ人は英語ではなく、一気に日本語のパンフレットを作ってしまいます。察するに、翻訳を行っている日系人の方々は「特需」に近い状況にあるのではないでしょうか。

◆面白いもので、その日系人の翻訳の出来について、ウルグアイ人は確信を持っていないようで、先日来、複数の友人から「この翻訳、おかしくないかチェックしてくれ」という相談が舞い込んできています。仕事の付き合いとは全く違った筋からの相談ですが、そんなに日本語の分かる人がウルグアイ国内にいるわけでもないでしょうから、「どれどれ・・・」と読み始めました。

◆「日系人の使う日本語は非常に古風である」という話を聞いたことがあります。つまり、昔日本から南米に渡ってから日本語が「進化」しておらず、カタカナ言葉が少なく、「美しい日本語」を使う人が多いためだそうです。頂いた翻訳文にもその傾向が滲み出ていて、原文と照らし合わせて唸らせる翻訳も幾つか拝見しました。

◆ただし、一般化するのは失礼かもしれませんが、日本語を母国語としない二世以降の翻訳になると怖いものがありました。例えば、或る商品について、文章の最後に「色とデザインは変わる可能性があります」との日本語の説明。そのような条件をバイヤーが飲むわけないので、依頼者に「原文を送ってほしい」と言ったところ、そのスペイン語には「色とデザインは要望に応じることが出来ます」といった主旨の説明がありました。ダブルチェックを受けておいて良かったと一安心。そうでないと、大金を叩いて日本まで訪れる出品者にとって自分は何故受け容れられなかったのか分からないままだったかもしれないのですから・・・。

◆いずれにしても、その展示会を覗いてみると、そのような類の「楽しいパンフレット」に遭遇できるかもしれません。また、おかしなことが書いてあった場合は、そのパンフに微笑んであげて、本当のことについては直接出展者に質問してみてください。総じてウルグアイ人は善意のカタマリです。来日して緊張しているはずの彼(女)たちは話を通すことで寛ぐでしょうし、そのような人と人との対話の経験が日本への心象を良くするかと思います。
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◆月曜日から起きていた複数のストライキ。昨日のラジオでは、「こんなの初めてではないか」と話していました。その中で、タクシー業界は月曜日のうちに有耶無耶なまま終了して、そして今日(水曜日)は輸送業者のストライキが夜になって終了しました。最後までもつれ込んだ輸送業者のストライキは、輸送業者側の無条件降伏に近いものになった模様で、先々週あたりから対決色を強めていた政府と輸送業者の直接対決は、ひとまず政府側の勝利で終わったようです。

◆ストが2日目に入ると、バスケス政権はストを止めることもできない政権ではないかといった雰囲気が醸成されつつありました(昨日の拙コラムはその論調でした)。しかし、その矢先、政府が出してきたのが労働相及び運輸公共事業相による政令です。大統領が同政令を承認したのが今日の午前3時。その時間からして、如何に政府が問題解決に差し迫られていたのかが分かります。同政令の内容ですが、現状を「危険な情勢」と位置づけて、1960年代の古い法律を根拠に、次に関連する輸送業者のストライキは認めないと告げています。それらは、(1)燃料、(2)食料及び右加工品、(3)日持ちのしない商品、(4)空港及び港湾の円滑化に関連する産品、(5)病院関係のもの、になります。つまり、ほぼ全て。

◆今日の午前3時以降は、それまで大手を振っていた輸送業者のスト決行者が「賊軍」になったわけです。注目しても良かったのは、政府の「強権」に対しても国民からの不満の声は一切出てこなかったことです。それもそのはず、昨日メディアで報じられたガソリン不足への不安が決め手だったのでしょう。ガソリンの次は食料に及ぶと薄々勘付いたとき、自らの生活が脅かされると初めて分かったわけで、政府の強権に抗議して、更に一部業界を支持するほど、最近のウルグアイ国民は肝が据わっていません(苦笑)。

◆今回の一件で分かったもう一つの点は、ひとまず政府と最大労組である労働総同盟(PIT-CNT)は一枚岩であることです。今回の輸送業界のようなPIT-CNT以外の団体に対しては、「対抗スト」ということでPIT-CNTは現政権に対して側面支援で応えていました。ストに便乗する「跳ね返り」を発生させなかったtことでPIT-CNTは恩を売った形になり、現政権内におけるPIT-CNTの影響力が高まる可能性が強まりのではないかと見ています。

◆それが今後のウルグアイにとって何を意味しているのかと言いますと、同組合の構成員は主に共産党員であるため、彼らが向かう方向が、外への開放ではなく、極めて内向きになり兼ねないことです。目先では、現政権の勝利なのかもしれませんが、長期的に考えますと、本当の勝者は別のところにいるような気がします。
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◆真夏を思わせるような天気がモンテビデオを覆った昨日でした。最高気温は34度。室内よりも屋外の方が暑いというのは、今シーズンになってから初めてのこと。昨晩は窓を閉め切って寝ていました。

◆その暑苦しさを助長するかのような出来事がウルグアイでは今週から始まっています。それはストライキ。まず、タクシー業界が月曜日にストライキを一斉に打ち、同様にトラック業界も経営者側が主導権をとって無期限のストライキを打ってきました。火曜日には、ウルグアイ最大の労組である労働総同盟(PIT-CNT)がそれらストライキが同団体の統制下で行われなかったことに対して「民主主義が脅かされる」と「対抗ストライキ」を5時間ほど打つという問題の所在がどこにあるのか分からなくなるような事態になっています。

◆それでは、一連の事態が発生した背景ですが、一般的な解説としては、運輸公共事業省がディーゼル燃料価格の値上げとその財源を公共バス料金への転化を検討していることに対して、ディーゼル燃料を取り扱う業界が反発したというものです。その価格は1.2ペソ/リットル。現在のディーゼル燃料の販売価格が21.9ペソなので、上昇率は5.5%といったところ。

◆このようなテーマで大々的な無期限ストを打つというのは現政権になって初めてではないかと思います。そして、この内容で無期限ストを打つのは、理由として弱いかなというのが正直な感想。確かに、関連業界が主張するように、政府は産業界に対して「生産的」な政策を講ずると主張しながら、それに逆行するような政策を提案しているというのは一理あるかもしれません。しかし、燃料の上昇及び下降は原油価格に沿って常に行われており、そのような不測の事態にかかる企業側のコストの飲み込みについて十分に対応が可能だとも思われます(実際に、最近ではディーゼル燃料の値段は5%近く下がっていましたし)。むしろ、この程度のケースでストを許してしまうのが昨今のウルグアイの情勢だといえるかもしれません。

◆このストライキに際して、トラック業界は日常生活に最低限必要な物資の供給は保証していると報じられていますが、昨日の午前中からラジオを通じてしきりに報じられていたのは、輸送トラックのストライキによって、モンテビデオ市内のガソリンが不足しはじめたことでした。「××地区のガソリンスタンドでは既にガソリンが不足している」というニュースが流れ、それに対してANCAP(当国石油公社)総裁のコメントとして「予想外の出来事」と聞こえてくれば、当然反応するのが人間の性(さが)なわけです。昼にモンテビデオを車で走ると、早速幾つかのガソリンスタンドでは珍しく長蛇の列ができていました。

◆どうも、今回の一件を通じてもそうですが、バスケス政権の潮目が変わってきたという感覚を最近は覚えます。今年に入り、セルロース工場問題におけるアルゼンチンとのやり取りにしても、米国とのFTA含みで進められてきた通商協議にしても、どうしても素人臭が抜け切れていないという批判を最近は耳にするようになりました。この政権の行動規範は「攻め」ではなく「守り」であることが最近のバスケス大統領の政策判断を通じて見えてきました。「守り」という行間には「無策」という意味も含まれていると思われます。バランス感覚が取り柄とされる同大統領ですが、現状維持以上の何かを見出せていないというのが政権就任後1年半近くの評価になりつつあります。今回のストライキについても、これまでの「現状維持」以上の成果を見出すのは難しいのではないでしょうか。暑くなるなかでどうも沈滞ムードが広がりつつあるウルグアイです。
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◆すっかり小春日和が続いているモンテビデオ。これから首を長くしていた夏へと一歩ずつ近づこうとしています。そして、来月の第1日曜日からは夏時間の開始。1時間ほど日が暮れるのが後ろにずれることで、一日の楽しみがグンと広がります。なんともいい季節がやってきました。

◆さて、ウルグアイの景気が良くなってきたためか、最近は日本人の方が仕事でウルグアイにやってくる機会が増えてきたようです。卑近な例では、ホテルを歩くだけでも、日本人らしき方々と遭遇する機会が以前よりも格段に増えてきました。そんななかで、今日はちょっとウルグアイのビジネスミーティング模様を紹介しようと思います。「模様」なので、飽くまで見た目の話。日本のビジネス・パーソンが相手にするウルグアイの方々は大概「グローバル・スタンダード」を習得した方々なのですが、それでもたまには面白い経験をするかもしれませんので、その一端でも・・・。

◆ウルグアイのビジネス・ミーティングで「グローバル・スタンダード」と変わっているところといえば、それは「衣装」と「飲み物」になるでしょう。ちなみに、ここで言うところの「グローバル・スタンダード」とは、衣装ではスーツ、飲み物ではコーヒー又は紅茶といったところでしょうか。

◆「衣装」ですが、まず一般論として地元の人々との交流が深まれば深まるほど、「普段着」が目立ちます。そして、日本人のビジネス・パーソンが相手にする企業や政府関係者とのミーティングでもたまに「普段着」を来ている人々を見かけます。その「普段着」とはなんぞやと聞かれてしまいそうですが、上が襟付きの長袖シャツで、下がジーンズやチノパンといったところでしょうか。最近まではまだ寒かったので、上着として羊毛のカーディガン又は薄手のセーターを羽織っていました。彼らは、それでオシャレを演出しているわけではなくて、家でも外でも同じような格好をしているわけです。彼らの潜在意識としては、スーツによるスノッブな格好への抵抗と、「飾らない」ことを善しとしている部分が垣間見えてきます。

◆そして、飲み物。彼らの一部は「マテ茶」を愛用します。自分用のマテ壺とボンビージャ(銀製のストロー)、水筒を持参して、ミーティングが始まると同時にお湯を注いで、マテ壺に既に入っているマテ茶の葉っぱとお湯をしっかりと染み込ませて、ボンビージャでマテ茶を啜ります。例えば、が働いている会社でも「マテ奉行」がいて、会議の進行に合わせて、マテ壺にお湯を注いではマテ茶を回し飲みしています。これ、ウルグアイ式の会議のよくある進行形式で、慣れてくるとなんてことはありません。マテ茶の回し飲みは友情の証でもあるのです。

◆ところが、日本からやってくるビジネス・パーソンは、他国でも「普段着」には遭遇するかもしれませんが、「マテ茶」の光景は「未知との遭遇」です。そして、アメリカ文化に少しでも齧っていたのであれば、どうしてもマテ茶を啜る姿がいかがわしい薬物(ドラッグ)に手を染めているように見えたりします。先日のミーティングでも、マテ茶道具一式を持参する参加者がいたのですが、マテ壺にお湯を注ぐ彼の目が何となく遠くを眺めていて、日本からやってきた方々は、「あの人は大丈夫か?」と内心心配したそうです。ちなみに、その遠い目をしていた彼ですが、その会議で一番の重鎮だったことを申し添えておきましょう。

◆この「普段着」と「マテ茶」のビジネス・パーソンの光景ですが、現政権になってから目立ってきました。例えば、ある公的企業や政府関係者と話をする際に、幹部でこのような格好をしている人がいる場合は、十中八九、彼は政治任用(ポリティカル・アポインティー)だと思ったほうが無難でしょう。ウルグアイは、2004年の選挙で、これまでの伝統政党中心の社会から、左派の色彩の強い世界に変わりました。そして、権力の中心が、それまで100年以上も培ってきた家族の集合体中心のものから、由緒を持たないが実力のある一般市民にも少しずつ開放されてきています(ちなみに、実力のない政治任用者はこの1年少しで着実に淘汰されています)。現在の変容期において、ビジネス世界における「普段着」と「マテ茶」の光景とは、アウトサイダーだった彼らの誇りを垣間見る機会なのかもしれません。
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◆ちょうど先週の火曜日からモンテビデオに新しくCOPA Airlinesが就航しました。日本の人には馴染みのない響きですが、パナマの航空会社で、中南米において昨今積極的に就航便数を増やしていっています。立地条件の恵まれているパナマ国際空港を南北アメリカ大陸のハブ空港にしようとする同国の構想にも合致しているようです。

◆今回のウルグアイへの就航もその一環と捉えられています。素人からすると、パナマシティ・モンテビデオ間で果たして儲かるのかと首を傾げたくなりますが、彼らの強みは、パナマシティそのものではなく、同地から他の国地域のどこにでも飛行機を飛ばしているという点です。例えば、モンテビデオからパナマに向けて飛んだ際に、パナマ国際空港を経由することで米国、メキシコ、カリブ地域等も含めて37の新たな目的地へのフライトが可能になっています。また、その乗り換えについても比較的便利なのが助かります。

◆特にウルグアイの旅行客にとってCOPAを利用するメリットは、カリブ地域又はメキシコを利用する際に、米国の経由を回避することが可能だということです。ウルグアイ人の場合、米国に入国する際にはビザの申請が必要になります。ビザ取得のために数日かけて無駄な時間に苛まれていた彼らにとっては、それだけでも十分なメリットになります。ましてや、空港で靴まで脱がされる昨今、米国経由は不愉快以外の何物でもありません。

◆現在COPAはウルグアイにおいて就航記念のプロモーションを行っており、パナマシティまでが往復399ドル、マイアミが599ドル、ニューヨークが650ドルといった具合に、現在の利用している米系の航空会社の数割引になっています。COPAも先述のメリットを売り込もうとしており、現在は週4便ですが、12月からは週5便、来年3月までには毎日就航させるという強気の考えでいると伝えられています。

◆ただし、COPAにも立ちはだかる壁が一つ存在しているのも事実。それはウルグアイ国内の旅行会社がCOPAを極力取り扱わないことで現在合意していることです。きっかけは、航空券販売の際のマージンを通常の6%ではなく、COPAは1%と提示してきたことに反発したもの。当初はCOPAも6%で飲んでいたとは当地の旅行会社協会の幹部の言い分ですが、それでもCOPAの魅力はなかなか下がらないのではないかと見ています。果たしてウルグアイ人の航空会社利用傾向を変えることができるのか。保守的な社会にどのように戦略を展開していくのかを暫くは楽しみに見ています。
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