カテゴリ:ラテンアメリカのお話( 9 )

◆7日、ドミニカ共和国の首都サント・ドミンゴで開催された第20回リオ・グループ首脳会議では、1日に起きたコロンビアによるエクアドル領土内おけるゲリラ(FARC)掃討行為について議論されました。「ここ10年間のラテンアメリカにおける最も深刻な外交問題」と報じるメディアもある中で、果たしてどのような展開になるのか注目を集めていました。会議の結論として、ウリベ・コロンビア大統領は越境行為につきエクアドル政府に対して謝罪をし、今後FARCを攻撃する際において越境を行わないことでひとまずの決着を見ました。

◆まず、ラテンアメリカの首脳もメディアも含めて、今回の首脳会議で問題が終結するとは思っていませんでした。先日もお知らせしたとおり、当事者も周辺諸国も問題解決までの一番の山場は17日の米州機構外相会議あたりになるだろうという見通しの下で動いている節がありました。実際、7日の会議ではエクアドルとコロンビアの両首脳が席上で激しく互いを非難していました。当事者両国がラテンアメリカ諸国に対して説得を試みた内容は、エクアドル側が今回のコロンビアが行為が非難に値する点であり、コロンビア側は同行為に至らしめた過去40年間続く内戦への理解を求める点でした。

◆コロンビアは1日の掃討作戦の際に押収した資料の中からFARCが先のエクアドル大統領選でFARCがコレア大統領を支持したとするものがあり、そのような関係が見られていた中で、たとえば事前にコレア大統領に通知していた場合、作戦そのものが成功しなかっただろうと述べていました。コロンビアの作戦は、自らの行為がFARC撲滅(内戦の勝利)という大義のもとであれば容認されるものであり、世界中で展開されている「テロとの戦い」の一環であるという立場を改めて述べたものでした。

◆エクアドルは、FARCとの関係を全面的に否定するとともに、FARCのエクアドル越境等を指して、エクアドルがコロンビアで展開されている内戦の被害者であると述べています。つまり、ゲリラ(コロンビアでいうところの「テロリスト」)を入国させるようなリスクを敢えてとるような国がどこにあるという論理です。また、コレア大統領はウリベ大統領からのテロ掃討作戦の報告を受けた際、「エクアドル国境沿いのコロンビア国内」との説明をしており、そのような不誠実さを指して「嘘吐き」と公然と批判しました。

◆このような両者が正面から衝突するような事態に際して、動いたのが幹事国であるドミニカのフェルナンデス大統領と、いつものようにチャベス・ベネズエラ大統領です。後者については、ここまでマッチポンプ役を徹すると、呆れるよりも一つの才能であるとそれなりに評価しないといけないのかなと思ってしまいます。そして、最終的に出来上がったのが第20回リオ・グループ首脳会議宣言になります。

◆その宣言の中身が冒頭に書いたウリベ大統領の謝罪と今後越境軍事行為を行わないとする確認です。会議の中でコレア大統領は「今回の問題の唯一の根源はウリベ大統領にある」と発言していますが、コロンビア政府がその認識を認める結果となりました。個人的には過去のブログでそれが解決方法と示唆してきましたしたので当然であると思っています。一方で、コロンビアの面子を保つ意味からも、合意書ではコロンビア政府が指摘するコレア大統領とFARCの関係性についてエクアドルの司法が手続きをとることも約しています。どこまでの拘束力があるかは知りませんが、コロンビアとしても手ぶらでは帰れないので、一定の配慮が働いたと見ています。

◆これで、ひとまず「危機」は去ったことになりますが、当事者のアンデス山脈3カ国(ベネズエラ、コロンビア、エクアドル)がそれぞれ得して終えることになりました。まず、ベネズエラはコロンビアを批判をしつつ、FARCとの和平の有力な仲介役になり得ることを再確認し、更に最後は調停役とした超然とした役割を担うことが出来ることを内外にアピールできました。要はマッチポンプなのですが、この政治的な立ち回りは大したものです。

◆次に、コロンビア。収穫はFARCのナンバー2を殺害することができたということでしょう。彼らの誤算は、彼らにとっての「些細な」越境がラテンアメリカ全体の問題に波及したことでした。そして、7日の会議によって、問題が拡散することを止めたことも懸命な判断となるでしょう。報道によると、新たにFARCの幹部7人衆のもう1名が殺害されたと伝えられており、FARCそのものが不安定化しているのではないと見る向きもあります。

◆最後に、エクアドル。これは、コレア大統領のリーダーシップをアピールする格好の機会となりました。危機を好機に変える成功例と見ることができます。今回のコロンビア越境問題を契機とした危機を前にして、迅速に国交を断絶するとともに、南米各国に自国の立場を理解を獲得することに成功。更にコロンビアから謝罪を勝ち取ることに成功しました。リオ・グループ首脳会議開始前の支持率は80%に上昇したと報じられており、今後の政治活動に大きく資することになるでしょう。どの国もただでは転ばないとは、なんとも政治の真髄を見るような気がします。
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昨日に続いてコロンビア軍越境事件について。事件の発生後、南米にとどまらず、北米までも巻き込んで、各国は積極的な動きを続けています。ロイターによれば、新しい動きとして、ベネズエラの「友好国」であるニカラグアが「エクアドルとの連帯」を表明するためにコロンビアとの国交を断絶するなど、局地的に解決できた事態が時間の経過とともに拡大を見せています。今日は、各国の事情などを踏まえながら、この問題を考えてみたいと思います。

◆3月6日付のOppenheimer Reportでは、この事件について書かれています。論旨から汲み取るに、今回はコロンビアがエクアドル領内で内戦相手のゲリラ(FARC)を襲撃したことは責められることではありながらも、その拠点を放置したエクアドル政府も国際法的に容認されるものではないとのこと。更に、ベネズエラに至っては、今回も含めてFARCとの黒い関係が裏付けられようとしており、このエクアドルとコロンビアの二国間問題に便乗することでベネズエラの国内問題から国民の目を逸らせようとしているといったものでした。

◆これまでもバランスの取れたコラムを送り続けているOppenheimer氏ですが、今回は少々「麻薬・テロ」と「チャベス・ベネズエラ大統領」という二つの影に過敏な反応を示して、コロンビアの行為の正当化に走りすぎているのではないかと思われます。確かにチャベス大統領が便乗していることは事実であり、時間の経過とともに、いつの間にかエクアドルとコロンビアの問題は南米全体の問題に拡散し、エクアドルの正当性については、ベネズエラ(又はチャベス大統領)の正当性へと拡大解釈されようとしています。ただし、それは、ウリベ・コロンビア大統領がいたずらに自らの犯した行為について謝罪しないことに拠るものであり、40年間継続している内戦解決への理解と協力については、その謝罪を済ませてからでも十分議論できる話です。Oppenheimer氏が批判するチャベス大統領の「便乗」の根源には、ウリベ大統領の依怙地があることを忘れてはいけません。

◆コロンビアが強気を維持できる背景には、米国という味方がいるというウリベ大統領の計算があります。米国は既に何十億ドル相当の麻薬・テロ対策支援をコロンビア政府に行っており、FARCとの内戦においては間違いなく自陣に組すると見られています。今回のエクアドル領内越境についても、二国間の外交的解決を求め、当然ながらベネズエラの「便乗」については批判しています。また、5日まで開催されていた米州機構の会合では、今回のコロンビアの行為がエクアドルの主権を侵害することについては合意されたものの、コロンビアの採った行為を非難するまでには至らないという外交の世界ではよくある玉虫色の決着になった経緯において、米国はコロンビアが窮地に陥らないようにこの玉虫色の決着に導くよう尽力していました。

◆地域内では、外交による解決を求めていますし、またそのような落としどころに対する楽観的な見通しがあります。ただ、ベネズエラが「便乗」しなければという条件が伴いますが・・・。南米の雄・ブラジルや中米の雄・メキシコはエクアドルの立場を支持していますし、アルゼンチンもベネズエラと認識を共有するという立場からコロンビアを非難しています。コレア・エクアドル大統領が4日からペルー、ブラジル、ベネズエラなど6カ国を相次いで訪問して支持を求めてきたことで、中南米域内でのエクアドル支持というコンセンサスが形成されつつあります。今後、中南米20カ国が集まるリオグループ首脳会議(7日)、米州機構外相会議(17日)と多国間の政府関係者による首脳・大臣級の会議が開かれますが、その中でコロンビアは孤立の色を深めることになりかねない情勢にあります。

◆コロンビアが現状を凌ぐ可能性については、3つほど考えられます。はじめに、米国の助けを借りながら、南米の主要国を穏便な解決へと支持するよう説得できるかどうかということでしょう。ライス国務長官(米国)は3月13~15日にかけてブラジルとチリを訪問します。もともとはバイオ燃料の協力がテーマでしたが、恐らくコロンビア問題が裏のテーマになるでしょう。コロンビア単独で南米各国の首脳に自らの正当性を訴えるには役不足のため、親分格の米国に協力を仰ぐことになってしまいます。この場合、問題が穏便な形で収まったとしても、コロンビアが独自に問題を解決する能力を持ち合わせないと南米諸国から見られてしまい、コロンビア外交のダメージになりかねないでしょう。

◆次に考えられるのは、ベネズエラが暴発することで、南米大陸の悪者がコロンビアからベネズエラに交代することです。先に指摘するように、ベネズエラは今回のエクアドルとコロンビアの二国間問題に便乗して、チャベス大統領の正当性とウリベ大統領の無能さを浮き立たせようとしています。2007年にはチャベス大統領は自らが仲介役となってコロンビアの内戦を終結させるという彼の憧れのシモン・ボリバル気取りの活動を行っていましたが、同年11月にウリベ大統領から拒否される経緯があり、それ以降、両国間は冷え込んでいます。コロンビアにとっては、隣国の問題として存在するのは、元々エクアドルではなく、ベネズエラです。ウリベ大統領としては、コロンビア国境沿いまで展開しているベネズエラ軍が紛争の一つでも起こしてくれれば、米国を引き込める大義名分は出来上がると内心期待しているかもしれません。まさに、オセロのような状況があるのも事実です。

◆そして、最後の可能性は、コロンビアが戦線が拡大する前に、エクアドルに対してまずは謝罪することです。それは、南米の大方の国々が期待していることです。コロンビア政府にとっては単純な謝罪だけではメリットがないのですが、時間の経過によってコロンビアを取り巻く情勢は更に不利になり、孤立化が進むだけになります。折角昨今では日本企業も含めた外資がコロンビアに着目しつつあるなかで、経済的な側面も勘案しながら、被害の最小化に努めることがウリベ政権の果たすべき役割なのではないでしょうか。
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◆6月5日、東京でメルコスール・セミナーが開催されました。今ではウルグアイと全く関係のない仕事をしていますが、ウルグアイで一緒に仕事をしたことのある方がウルグアイ代表スピーカーであるとの知らせを受けたので、会社を休んで挨拶のため出掛けることにしました。

◆はじめに、セミナーに出席して驚かされたのは参加者の多さです。今から4~5年前に似たようなテーマのセミナーに足を運んだことがありましたが、その時はまるで観衆の多くが時間潰しにやってきたかのような停滞した雰囲気が漂っていたものです。現在は資源や食糧、エタノールとホットな話題が何かと多いメルコスールに日本人の関心が向かっているのは良い傾向なのかもしれません(斜に構えた表現をすれば、彼らはブラジルだけに興味があるのかもしれませんが・・・)。

◆少しメルコスールを齧ったことのある人間としては、セミナーを通じて幾つか印象深い発言がありました。なかでも象徴的だったのは、メルコスール常設委員会委員長(メルコスールのトップ)であるカルロス・アルバレス氏の基調講演でしょう。

◆メルコスールへの投資誘致を主な命題として、加盟主要4カ国の代表者がそれぞれ役割分担をして仲良く講演をしたのが今回のセミナーの表向きの体裁だったのですが、現在のメルコスールを眺めると、発足以来最も「仲良くない」状況にあるといっても過言ではありません。特に、メルコスール域内諸国の間の不均衡性に対して小国の悲哀を味わっているパラグアイ及びウルグアイは厳しい態度で挑んでいますし、一方でアルゼンチンは大国主導スタイルの維持を念頭に小国への配慮の欠片も見せていません。基調講演でアルバレス委員長は地域不均衡に対して理解あるコメントを述べていましたが、母国を思えば、その発言もリップサービス以上に捉えることは難しいでしょう。

◆そのアルバレス委員長のコメントで「秀逸」であったのは、メルコスール創設の成果を語った時です。第一の成果として挙げたのが地域間の民主主義の醸成と政治的な安定でした。ご承知の方も多いかと思いますが、メルコスールを日本語にしますと「南米南部共同市場」でして、その目的については、ご丁寧にも外務省のHPに説明があります。

【目的・原則】
(1)域内の関税及び非関税障壁の撤廃等による財、サービス、生産要素の自由な流通
(2)対外共通関税の創設、共通貿易政策の採択及び地域的、国際的経済・貿易面での立場の協調
(3)マクロ経済政策の協調及び対外貿易、農業、工業、財政・金融、外国為替・資本、サービス、税関、交通・通信などのセクター別経済政策の協調
(4)統合過程強化のための関連分野における法制度の調和

◆そのような目的・原則によって形成されたメルコスールは、発足当初から関税同盟であり、政治的な意味合いを含むものではありませんでした。したがって、昨年ウルグアイが一カ国のみで米国とFTAを締結しようと動いた際にも、ブラジルやアルゼンチンはそのような原則を突きつけ、頑なな対応に終始したのです。域外諸国・地域との通商交渉等に際しては一つのブロックとして交渉することが「メルコスールの魂」であるというのがメルコスール加盟国間の暗黙の了解になっています(バスケス・ウルグアイ大統領も昨年末にはそのようなフレーズを使って、メルコスール加盟国に対してひとまず妥協した経緯があります)。

◆ところが、肝心のメルコスールのボスの口から出てきた言葉は、過去15年程度の共同体の最大の成果は政治的なものであり、経済面については「(EUでさえ数十年かかっているのであり、メルコスールは)未だ発展段階」と言うにとどまっていました。ちなみに、アルバレス委員長は第二の成果として経済的安定を挙げましたが、それはアルゼンチンが経済危機を起こした2001年以降であるとして、あくまで「アルゼンチン中華思想」を貫徹していました(まあ、自国経済が好調であれば、それで良いのでしょう)。

◆そのようなアルバレス委員長の言葉の端々に垣間見える大国の驕りに似た意識と原理原則の都合の良い使い分けに対して、ウルグアイをはじめとするメルコスールの小国は大きく反発していますし、昨年来顕在化している脱メルコスールの動きになっているのです。アルバレス委員長に拘れば、どうしても加害者の立場というのは、被害者の心がわからず、メルコスールのトップに立っていながらも、あのような軽率な思想が漏れてしまうのです。同席してたウルグアイ代表は恐らく呆れていたことでしょう。

◆確かに、アルバレス委員長の発言にある「政治が安定したから外資はリスクが少なくなった」というのは、論理展開として間違えないのでしょう。ただし、メルコスール全体に目を向けると、政治の安定だけでは、メルコスール域内で得をするのはブラジルとアルゼンチンといった巨大な市場を持つ国々だけであり、市場の小さな国々はいつまで経っても経済統合が進まないために地域統合の恩恵を受けることはありません。メルコスール総体としてのメリットはないのです。

◆同セミナーの日本人パネリストが「メルコスールを眺める際にはブラジルだけではなく、アルゼンチンも」と言っていましたが、日系企業のビジネスとしては「目先の正解」かもしれませんが、むしろ長期的且つ戦略的な見地に立つのであれば、「メルコスールが経済統合を深化させて文字通りの関税同盟にならない限り、日系企業にとって投資を含めたビジネスチャンスは現状以上に拡大しないのではないでしょうか」とメルコスールの経済統合度の遅さに対して苦言を呈するくらいでないと、日本側によるメルコスールの本質への警鐘として深みが出てこないような気がします。

◆最後にセミナーの場面に戻りますが、日本人聴衆の大半はブラジルとの商いの可能性の観点から見ていたでしょうから、これまで自分が強調したメルコスールの経済統合の進度云々には関心がないのかもしれません。また、そのような関心の低さは、域内貿易比率が20%強という実数を見れば当然と言えるでしょう(EUで60%台、NAFTAで40%台とのこと)。しかしながら、一方のメルコスール関係者は、メルコスールの規模(GDP1.5兆ドル+2.6億人市場)を前面に出して、日本からの投資に期待しているという現実があります。何となく互いに思惑が噛み合わないなかで、言いたい放題な午後だったような気がしました。
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◆ほぼ一ヶ月ぶりに書いていますが、理由は新居にネットが開通したため。その間にも毎日平均して100件以上のアクセスがあったようで、改めて読者の皆様に御礼申し上げます。既にウルグアイについては浦島太郎状態なのかなと認識していますが、それでも情報は何かと集まってくるので、その一端でも紹介しながら、引き続きウルグアイ等を眺める方々の一助になればと思っています。

◆手始めに、最近の南米の大統領支持率を紹介してくれるサイトを目にしましたので(参照)、そこを抜粋した形で、少しばかり大統領支持率を通じた南米諸国の様子をお知らせしたいと思っています。

<南米諸国の大統領支持率>
1.コレア・エクアドル大統領 76% (4月調査)
2.ウリベ・コロンビア大統領 72% (3月調査)
3.モラレス・ボリビア大統領 64% (4月調査)
4.バスケス・ウルグアイ大統領 60% (4月調査)
5.キルチネル・アルゼンチン大統領 57% (4月調査)
6.ルーラ・ブラジル大統領 53% (4月調査)
7.ガルシア・ペルー大統領 50% (3月調査)
8.バチェレ・チリ大統領 49% (3月調査)
9.チャベス・ベネズエラ大統領 41% (2月調査)
10.デゥアルテ・パラグアイ大統領 33% (昨年11月調査)

◆この統計を見て、最初に注目したのは、南米の大統領支持率は総じて安定しているということです。例えば、今から2~3年前にも南米各国の大統領支持率を拾った記憶があるのですが、その際にはエクアドル、ペルーあたりの大統領支持率は20%を切っていたはずです。2006年には立て続けに南米各国で大統領選挙が行われましたが、それらを通じて、各国政府は有権者への「ガス抜き」は無事に終了した形となり、少なくともこれから1年程度は安定期になるのではないかと思われます(その意味では、パラグアイの場合は有権者の大統領に対する嫌気が背景にあるようです)。なお、2008年以降は、米国経済に大きく左右されながら、南米経済も成長率が鈍化するでしょうから、各国政府とも一つの正念場を迎えることになるでしょうし、各国政府ともそのような外的要因の煽りを受けないように色々な仕掛けを模索しているようです。

◆次に、政権発足直後の安定期を最大限に活かした成功例として最近のエクアドルの動きがあるように思っています。4月15日に制憲会議の設立にかかる国民投票を行い、8割近くの支持票を通じて、コレア大統領は議会に対して政治的な勝利を得る結果となりました。この政治的改革に向けたアプローチはベネズエラ及びボリビアの例を踏襲するもので、故に「急進左派」と呼ばれる所以の一つになっていますが、大統領選挙に勝利した勢いをそのままに、公約の大きなテーマの一つを実行に移したことは、過去のエクアドル大統領との違いを明確にさせ、国民の期待を更に高める結果になったのでしょう。ビジネスの世界を中心に海外からの目は厳しいものがありますが、国内の支持率の高さは、1979年の民主化以降騙され続けたと感じる有権者の期待値が維持されているものだと理解できるでしょう。「内」と「外」で見えてくるものが変わってくる一例です。

◆先の一例に加えるべきなのがベネズエラかもしれません。最近はそれほどではありませんが、「南米=左派」とレッテルを貼りたがる日本人は多く、その旗頭となっているチャベス・ベネズエラ大統領に対するイメージは多少誇張されつつあるようにも思われます。確かに、外向けの行動は派手ですし、国内向けの政策についても石油マネーを駆使している様子ですが、足元はそれほどまで磐石ではないのではと示唆するのが今回の世論調査ではないかと思われます。

◆数字だけで評価することには隔靴掻痒の感が否めませんが、一つの国だけではなく、他国と比較することにそれなりの価値はあるように思われます。
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◆そろそろウルグアイは夏モード。モンテビデオの街を歩いても、じんわりと汗をかくような気温になってきました。昨日の最高気温は32度。車内のラジオからは「良い季節がやってきた!」と喜ぶコメンテーターの声が聞こえてきますが、自分としては「少し暑すぎるのではないか」と・・・。そう思っていると、今日の夕方からは雨。行き過ぎるときちんと調整されるという分かりやすい気候です。

◆さて、レプラ工業エネルギー鉱業相の訪日について日経新聞の記事を引用して前回書きましたが、その中で触れられていたデジタルテレビについて、今日は少し書いてみようかと思っています。

◆南米と日本の経済関係を考えると、非常に疎遠であるということは否めないかと思われます。例えば、商社は南米の「ご当地産品」を日本向けに一本釣りするのが中心になっているようです(チリの銅とかブラジルの鉄鉱石等々)。最近では、ブラジルのルーラ大統領が訪日した辺りから「エタノール」という新しいネタが登場しましたが、それもこれまでのビジネスモデルの延長として描くことができるような気がします。

◆その中で、亜流として最近出てきているのが「デジタルテレビ」です。厳密に言うと、地上派デジタルテレビ放送方式とのこと。現在、世界では、デジタルテレビ方式について、大きく分けると、日本方式、米国方式、欧州方式の3種類に収斂されるそうです。その中のどれにするかについて、各国が検討に検討を重ねてきているという状態。といっても、方式の決定なので、直接商売にはなりにくい部分があります。

◆この3方式の国際競争ですが、聞くところによると、日本は必ずしも成功してきたとは言いがたかったそうです。例えば、自らの「裏庭」ともいえるアジア諸国を日本方式で固めることができず、欧米勢に負けてしまっています(例:韓国、台湾は米国方式で、豪州、インドは欧州方式等々)。

◆ところが、ブラジルが日本方式を決定した今年の6月から、日本方式にとって大きな転機がやってきました。決定に至った細かい話については、今月6日に纏められたこちらのレポートにお任せします。他の報道も含めた綺麗な見立てによれば、「後発であった日本方式はその分技術は先端であり、その点を純粋に評価したブラジル国内のテレビ局等が同国政府に圧力を掛け続けた」という構図のようです。同国政府には、欧州方式支持派などもいたようですが、テレビ局の意向を受けたコスタ通信相の政治的な勝利とも言われています。

◆ブラジルが日本方式を選ぶという「奇跡的な選択」によって、この競争に異変が起きようとしています。これまで、「米国の裏庭」であり、「旧大陸」の影響を否応にも感じさせられる南米においては、デジタルテレビ方式の競争についても、欧州と米国のせめぎあいになるというのが常識でした。ところが、日本方式がブラジルのお墨付きをもらったことによって、他の南米諸国にとって、日本方式が考慮するに値する対象になったと見られます。

◆また、ブラジルにとっても、日本方式を将来的には技術協力を通じて「ブラジル方式」又は「南米方式」に昇華させたいとする野心を持ち合わせており、彼らにとっての「南米統一方式」の実現は、地域大国の威信をかけてでも実現したいと見られています。その雰囲気を反映したのがレプラ工業大臣の日本経済新聞への発言であり、同相としても訪日の機会を捉え、日本でデジタルテレビ関係を所管する総務省に話を聞くのでしょう。日本としても伯の決定を突破口として、南米諸国に対して日本方式の決定へと導かせるチャンスがやってきたのかもしれません。

◆このような構図について何かに似ているなと思いましたが、昨年行われた国連改革におけるG4(日独印伯)の動きとダブって見えます。このときも南米諸国の多くはG4に組したかと思われますが、その背景にはブラジルの影響力の大きさがありました(つまり、「日本を支持する」のではなく、「ブラジルを支持するためにG4を支持する」というもの)。

◆一般的に、日本単独で南米に勇んで行くにはどうしても限界があるように思われます。その中で、南米地域では、ブラジルという強力な「紹介役」と緊密な関係を有することは損な話ではありません。今回のデジタルテレビをケースにとった日伯連携の可能性は、地域を隔てたパートナーの構築の一つの形を見せてもらっているような気がします。また、日本方式が南米統一方式へと広まった暁には、日本関係者にとって貴重な成功体験を得るのではと思われます。
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◆ウルグアイでは、今週末(11月3日~5日)に第16回イベロアメリカ・サミットが開催されます。関係各国の首脳だけではなく、アナン国連事務総長をはじめ、IMF、米州機構等といった国際機関の長も集まる盛大な政治的なイベントになる模様です。そのために、モンテビデオの中心地は入場制限を行う予定であり、先週の後半からは中心地の住民への入場IDを発行するといった事務手続きが始まっています。いずれにしても、ブッシュ米大統領が来ないので、何らかの抗議集会等、組織だった騒ぎにはならないでしょう。

◆イベロアメリカとは、日本人には馴染みがないのですが、ラテンアメリカと宗主国であったスペインとポルトガルを含めた地域(?)を指します。わざわざこのような枠組みでサミットを開催した経緯については承知していませんが、冷戦後の新秩序形成の中、第1回が1991年というコロンブス「新大陸」発見から500年を直前にして、「新しいイベリア半島諸国とラテンアメリカの関係」といった文脈で語られたのではないかと思われます。

◆まず、元宗主国側(スペイン・ポルトガル)にとっては、みんなラテン系の言語を喋っているんだし、十分に文化的な相似性もあるのだから、何らかの関係の増進があっても良いのではという腹でしょう。また、ラテンアメリカ側も「米国の裏庭」からの脱却を視野に置き、選択肢の拡大先の一つとして、イベリア半島諸国との関係を深めることは損な話ではないと思ったのではないでしょうか。90年代初頭というのは、その意味で、様々な実験が行われた契機であったと見ることができます(メルコスールも含めて)。

◆それでは、この地域同士で連帯を共有するものは何なのかと考えていたのですが、昨晩訪れた関連イベントでその一端が垣間見えたような気がしました。普通のコンサートだったのですが、登場したのは、アナ・ベレン(1951~)とビクトル・マヌエル(1947~)という夫婦。前者がスペインでも有名な女優兼歌手で、後者は彼女の旦那であり、歌手兼作曲家。曲調には社会性を帯びているものもあるとのことで、の説明では「加藤登紀子のスペイン版」と思えばよいとのこと。本当かどうかはさておき、重なる部分はあったと思っています(この辺は妻のブログを参照ください)。

◆その社会性を帯びた歌で批判の対象にしているのは、軍事力、そしてそれを行使する権力者や組織といったところでしょうか。たしかに、彼らの青春時代のスペインは、フランコ将軍の独裁下にあり、例えば軍政からの解放というのは一つのキーワードになっていたようです。スペインは1975年にフランコの死去を迎え、1978年には議会制民主主義を実現することになります。

◆一方のウルグアイは、1973年から1985年まで「遅い軍政」を迎えることになります。微妙に民主主義不在の時期が重なるのですが、ウルグアイの左派活動家にとって、フランコ末期及びフランコ後のスペインは亡命先の一つとなっていました(他に、フランスやメキシコ等があります)。昨日のコンサートには、最前列にガルガノ外相が観賞していましたが、彼も左派活動家として1974年にスペインに亡命している一人。アナ・ベレンやビクトル・マヌエルの曲に若き日々を思い浮かべたことでしょう。

◆ただし、そのようなコンサート等の文化イベントを通じて観客を集めることには成功していますが、元宗主国側から長年仕掛けていると思われる「新しいイベリア半島諸国とラテンアメリカの関係」の構築については、果たして効を奏しているのかは不明です。過去にサミットを15回も開催していますが、本質的に何を目指しているのかいまいちよく見えてきません。ここでは、備忘録として、過去15回の開催場所を記しておきます。

第1回 Guadalajara (Mexico) 1991
第2回 Madrid (Spain) 1992
第3回 Salvador (Brazil) 1993
第4回 Cartagena (Colombia) 1994
第5回 Bariloche (Argentina) 1995
第6回 Santiago and Viña del Mar (Chile) 1996
第7回 Isla Margarita (Venezuela) 1997
第8回 Porto (Portugal) 1998
第9回 Havana (Cuba) 1999
第10回 Panamá (Panamá) 2000
第11回 Lima (Perú) 2001
第12回 Bávaro (República Dominicana) 2002
第13回 Santa Cruz de la Sierra (Bolivia) 2003
第14回 San José (Costa Rica) 2004
第15回 Salamanca (España) 2005


◆また、元宗主国とラテンアメリカとの間における共通の絆という面で、「民主主義」や「反軍」が挙げられるのかもしれませんが、そのような元宗主国(スペイン)のメッセージを批判なく受け容れる素地があるのは、実はウルグアイやアルゼンチンといった移民で成り立っている国に限られるかもしれません。例えば、アンデス諸国では、支配階層以外から「何言っているんだ。スペイン人、お前らが俺たちの領土を略奪しただろ!」と言われるのがオチでしょう。また、共産主義の砦であるキューバにおける開催では、何もできなかっただろうと察します。

◆最後に、ウルグアイ及びアルゼンチンのブエノスアイレスやロサリオといった都市を覆う地域は、リオプラテンセ地域と呼ばれています。この地域はラテンアメリカの中でも先住民ではなく、移民から成り立っていて、「特異な地域」と理解した方が良いのかもしれません。例えば、移民の傾向としては、1870年代から1890年代に、主にスペイン(バスク、ガリシア地方)、イタリア北部、一部はドイツやその他欧州各国から同地域に移民が押し寄せていましたし、1910年代から1945年周辺までにはスペイン、イタリア南部、少数ながらロシアやポーランドからのユダヤ系がやってきていたと言われています。

◆このようなスペインに愛着を持つ集団を多数有するウルグアイでの今回の会議は、関連イベントを含めて、主催者として「行いやすい」のかもしれません。
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◆昨日に続いて、セミナーの話。今日は税関に関するセミナーに顔を出してきました。

◆自分は税関について関税を徴収する歳入機能と一面的に捉えていましたが、セミナーでは、税関の役割として、先程の歳入機能だけではなくて、「(麻薬や偽物の流出入から守る)社会の保護」と「貿易・投資の促進」と例示。改めて、自らの勉強不足を再認識しました。

◆また、税関に携わる人々の間の問題関心は、「円滑化」と「安全性」のバランスをどうすればいいのかということのようです。立ち位置によって見方が変わるのですが、例えば民間企業からすると、やはり「円滑化」が鍵になってきます。そして、輸出対象先の公権力から「安全性」と盾にされて税関においてビジネス活動を邪魔されるとなるとたまったものではありません。その辺りは、ラテンアメリカ諸国にとって、彼らの主要輸出先である米国との関係を考える際に大きくライトアップされます。

◆今回のセミナーを主催したのがBASCという機関。Business Alliance for Secure Commerceという非常に曖昧なネーミングのした団体でした。何をやっているのかというと、米国向けの輸出の円滑化を米国政府と一緒になって保障していこうとするラテンアメリカを基盤とした企業団体のようです。セミナーでは麻薬云々の話が協調されていたので、これがこの団体の昨今の流行なのかと出席者に尋ねると、その人はこの団体の発足当時の名前を教えてくれました。それは、現在と同じBASCなのですが、意味するところはBusiness Anti-Smuggling Coalition(反密輸ビジネス連合)。

◆ものの始まりは、対米輸出の際に、麻薬との関係があるのではという米国税関の対応に業を煮やした輸出入関連企業が知恵を絞った結果によるもの。そのためか、積極的に活動しているのは、コロンビアだったりします。また、メキシコとの国境沿いの活動も積極的なようで、担当者がしっかりとセミナーに出席していました。

◆また、米国政府もこの団体の役割に注目しているようで、2001年の「911」以降、BASCを拡大解釈して、対テロリスト対策の役割を担ってもらおうと働きかけています。自国の税関で対処するのでは遅すぎるわけで、既に輸出してくる先の税関から管理してほしいということだそうです。これをセミナーの中では、「トレード・サプライ・チェーン」と呼んでいました。サプライ・チェーンとは粋なネーミングだなと変に感心してしまいました(そんな類のネーミングセンスには脱帽)。

◆ウルグアイですが、果たして米国政府が目をつけているのかどうか。相対的にはラテンアメリカの中では優秀なのですが、最近は麻薬等の経由地として使われることが増えてきているようです。その辺は、また機会を見つけて紹介していこうと思っています。
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◆エネルギー問題に関心のある人々にとっては、最近の南米南部諸国の動向を少し関心をもって見ているかもしれません。テーマは原子力。既に原発を保有しているアルゼンチンとブラジル両国がここ数週間のうちに原発利用の活性化に向けて前向きな姿勢を見せ始めたためです。この動向はチリにも波及しているようで、先日の旅行の移動中に読ませてもらったチリのTERCERA紙でも詳細な記事や特集が出ていました。

◆ところが、この南米諸国の原子力発電の再活性化の議論よりも先んじて、原発の可能性を検討していたのがウルグアイでした。2年前に一度議論されていたのですが、立ち消えになった過去がありました。しかし、数ヶ月前から再び当地の新聞紙面を賑わせています。一部主要紙では、ウルグアイ政府が原子力発電の可能性について検討したとする政府の報告書を抜粋する形で紹介しています。導入の目標としている年次は2017~2020年の間とのこと。

◆なぜウルグアイで原子力発電を導入しようとしているのか。その一番の背景は、ウルグアイの電力事情の脆弱性にあります。過去のブログで何度か紹介したことがありますが、平時におけるこの国の電力源の99%は水力です。ただし、この仕組みが立ち行かなくなっていることがここ数年の電力需給データで裏付けられています。電力の輸入は2004年以降から顕著で、今年もブラジルとアルゼンチンから輸入しています。エネルギー面から見た際の自立性を検討する際、このまま電力輸入に依存する体制からの脱皮を図りたいとする勢力が現政権の中にいるのは確かでしょう。

◆また、原子力発電を推進する勢力は、現政権だけにとどまらず、野党にも幅広く広がっています。政府においては原子力発電を所管する工業・エネルギー・鉱業省はその一角でしょうし、野党でもバジェ前大統領(コロラド党)や国民党の上院議員も推進を公言しています。彼らの底辺で繋がっているのは、メルコスールへの依存度の逓減という針路なのかもしれません。つまり、電力という経済の根幹を握られている限り、いつまで経っても周辺諸国から独立したエネルギー政策を導入できないのが現状であり、その解決策として原子力発電というツールを検討しているわけです。

◆本来であれば、自国の電力確保が困難であった選択肢として、近隣諸国からの電力輸入というのは真っ当な手段であり、例えば、南米の優等生とされるチリの場合、発電用の天然ガスをアルゼンチンから輸入してきました。それをチリが原子力という「媚薬」を嗅がされて、手を出そうとする遠因を作っているのは、昨今生じてしまっている近隣諸国(具体的にはアルゼンチン)への不信感に他ならないと見られます。例えば、アルゼンチンからの天然ガスの輸出については、実質上の価格統制のために天然ガスの資源開発等にかかる新規投資が誘発されず、供給が頭打ちになってしまっている現状があると聞き及んでいます。そのシワ寄せが結果的に、自国のみならず他国にも波及してしまっているのが今の南米南部の原子力ブームの一つの要因ではないかと見られます。

◆周辺諸国の事情は理解できる一方、ウルグアイの原発が果たして現実的なのかどうかについては、疑問が残ります。当地主要紙では、憲法の改正(現在は原子力発電による電力使用を禁止)が必要と立法面での環境整備を伝えていますが、本当に議論すべき点は、人口300万程度の国で電力供給をするツールとして果たして原子力発電が妥当なのかということでしょう。また、日本では当然議論の対象となる廃棄物の問題については、彼らにとって「未知の世界」であるようです。今回の議論ですが、まだまだ詰めるべき点が多くあるように思えます。
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鳥インフルエンザの記事が日本の新聞を賑わせています。
京都でもいろいろと騒がせていますね。

ひとまず、南米は「インフルエンザ・フリー」です。
ビジネスとして南米のいくつかの国では
この出来事を天佑と見ている節があります。

これまで貿易を行ってきたブラジルは
一時的に鶏の対日輸出量を増やしています。

日本経済新聞などでも伝えられたとおり、
対日輸出単価が2倍近くになり、
これまで対日輸出を行ってきた企業を潤わせています。

この事実を知り、アルゼンチンは
3月に輸出ミッションを日本に送り込む予定とのこと。

南米ではこのように湧きつつある対日輸出熱ですが、
その割にNHKの報道では、鶏肉の価格の頭打ちを伝えていますし、
タイから加工用鶏肉の輸入を再開したとのことで、
流れは変わりつつあるのではと思っています。

話によると、鶏肉の供給を増やそうとしても
投資に見合った収入を得るまでに、最低3ヶ月のタイムスパンが必要とのこと。

対日輸出だけを目的に拙速な環境整備をしたその日に、
日本では既に「日常」に戻っていたならば、笑い話にしかなりません
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