<   2006年 09月 ( 17 )   > この月の画像一覧

◆28日の午前中、バスケス大統領(写真)は13人いる大臣のうち、8大臣を招集して、今後の米国との通商協定の枠組みについて協議しました。下馬評では、10月2~3日に開催されるウルグアイ・米国2国間協議会を前に、FTAに向けた最終的な調整を行う場と見られていました。

◆ところが、その昼に行われたバスケス大統領の記者会見の席では、同大統領自らから先週末に米国政府(USTR)からFTA協議開始の申し出があったことを明らかにしつつも、それを断ったことを発表しました。つまり、バスケス発言によって、これまで9ヶ月以上も検討を重ねてきたFTA協議は帳消しになったわけです。先々週のENCEのウルグアイ撤退に続く失態をウルグアイ政府は犯してしまったのかもしれません。

◆バスケス大統領が対米FTAを断念したのは、2007年6月末とするファースト・トラック期限までにFTAをモノにするには時間的にも不十分といった理由だそうです。念のため、これまで両国がFTAを締結する際に考えていた戦略を整理しますと、ウルグアイ側が牛肉、乳製品、ソフトウェア、羊毛といった産品の輸出拡大、米国側が知的財産権、政府調達、公的企業の扱いであったと報じられています。

◆バスケス大統領は、引き続き通商協定については「前進できるだけ前進する」と前向きな姿勢を示していますが、その声明には空虚感が漂います。同大統領周辺では、FTAの替わりに、先般両国が批准した二国間投資協定の補則として盛り込むこと、又は貿易投資枠組み協定の可能性を示唆しているとも報じられています。例えば、後者の場合ですが、どのようなものなのでしょうか。ジェトロが出している通商弘報記事から拝借します。

貿易・投資枠組み協定(Trade and Investment Framework Agreement: TIFA)
 締結国間において,投資家の法的保護,知的財産権保護,税関手続きの透明性・公平性確保,政府規制や商業規則の透明性向上などを図るため,双方の政府代表者からなる貿易投資委員会(CTI)を設立する。委員会メンバーは定期的に会合を開き,民間の意見を聴取しつつ,二国間の懸案事項を協議,問題の解決を図る。
 TIFAは,相手国に関税上の特恵待遇やその他特別な便宜を供与するものではなく,話し合いの場を設けるための枠組み。したがって,締結・発効にあたり議会の承認は不要。米側はUSTRが代表。米国は従来からFTAを結ぶ前提として, WTOへの加盟やTIFAの締結を求めてきたが,これは慣習上の要請であり法的な要件ではない。


◆FTAやらTIFAやらアルファベットを並べていれば格好がついたように聞こえますが、もしバスケス大統領が本気でTIFAで良いと思っているのであれば、それは従来のFTAを前提とした協議を進めてきた者にとって大きな後退になります。同大統領は、知的財産権や政府調達といったウルグアイにとっての負の部分を享受したくないために、最終的にはFTAを断念したと考えられます。一部報道では、同大統領の出自(医師)とも大いに関係のある製薬業界がFTA締結によってダメージを受けるとも伝えられていました。

◆一方で、バスケス大統領が願っている牛肉等の輸出拡大がTIFAを通じて実現する道のりは果てしなく遠いと言っても良いのではないでしょうか。先の解説にも書いてあるとおり、TIFAは「話し合いの場を設けるための枠組み」なのであって、従って議会の批准が必要ないのです。つまり、TIFA締結といっても、実質的には何もしないのと同じです。もう一つの選択肢である二国間投資協定の補則を作ることによって、文言の中に牛肉等の関税を低く据え置くことが可能であるとの発言も同大統領は行ったようですが、そのような「美味しいところ取り」を米国が易々と認めるのか不明です。

◆そして、ウルグアイと米国との二国間関係において、今回はウルグアイが焚き付けたFTA騒動です。米国がご丁寧にもウルグアイ政府にFTA交渉開始の案内を出した途端に、掌を返すような真似をとったのです。ブッシュ政権としては、「本気にさせやがって」と苦虫を噛み潰していることでしょう。バスケス政権は今回の一件で米国からの信用を大きく失墜させたとみています。今後の進展によっては、ウルグアイの孤立化だけが今回の成果になるかもしれません。
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◆昨日に続いて、セミナーの話。今日は税関に関するセミナーに顔を出してきました。

◆自分は税関について関税を徴収する歳入機能と一面的に捉えていましたが、セミナーでは、税関の役割として、先程の歳入機能だけではなくて、「(麻薬や偽物の流出入から守る)社会の保護」と「貿易・投資の促進」と例示。改めて、自らの勉強不足を再認識しました。

◆また、税関に携わる人々の間の問題関心は、「円滑化」と「安全性」のバランスをどうすればいいのかということのようです。立ち位置によって見方が変わるのですが、例えば民間企業からすると、やはり「円滑化」が鍵になってきます。そして、輸出対象先の公権力から「安全性」と盾にされて税関においてビジネス活動を邪魔されるとなるとたまったものではありません。その辺りは、ラテンアメリカ諸国にとって、彼らの主要輸出先である米国との関係を考える際に大きくライトアップされます。

◆今回のセミナーを主催したのがBASCという機関。Business Alliance for Secure Commerceという非常に曖昧なネーミングのした団体でした。何をやっているのかというと、米国向けの輸出の円滑化を米国政府と一緒になって保障していこうとするラテンアメリカを基盤とした企業団体のようです。セミナーでは麻薬云々の話が協調されていたので、これがこの団体の昨今の流行なのかと出席者に尋ねると、その人はこの団体の発足当時の名前を教えてくれました。それは、現在と同じBASCなのですが、意味するところはBusiness Anti-Smuggling Coalition(反密輸ビジネス連合)。

◆ものの始まりは、対米輸出の際に、麻薬との関係があるのではという米国税関の対応に業を煮やした輸出入関連企業が知恵を絞った結果によるもの。そのためか、積極的に活動しているのは、コロンビアだったりします。また、メキシコとの国境沿いの活動も積極的なようで、担当者がしっかりとセミナーに出席していました。

◆また、米国政府もこの団体の役割に注目しているようで、2001年の「911」以降、BASCを拡大解釈して、対テロリスト対策の役割を担ってもらおうと働きかけています。自国の税関で対処するのでは遅すぎるわけで、既に輸出してくる先の税関から管理してほしいということだそうです。これをセミナーの中では、「トレード・サプライ・チェーン」と呼んでいました。サプライ・チェーンとは粋なネーミングだなと変に感心してしまいました(そんな類のネーミングセンスには脱帽)。

◆ウルグアイですが、果たして米国政府が目をつけているのかどうか。相対的にはラテンアメリカの中では優秀なのですが、最近は麻薬等の経由地として使われることが増えてきているようです。その辺は、また機会を見つけて紹介していこうと思っています。
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◆今日は、人探しで或る会議を覗くことになりましたが、ちょっと驚かされました。イベロアメリカ地域(イベリア半島+ラテンアメリカ地域)における再生エネルギーに関するセミナーでしたが、並行して同地域の大臣会合も開かれるために、集まった人がすごかった。自分が会場に入ったときには、既にペトロブラス(ブラジル国営石油会社)の社長さんがポルトニョール(スペイン語とポルトガル語のミックス)で力説していましたし、その後にはブラジルの開発商工相の登場・・・。

◆「えーと、誰だったっけ」と悩んでいて、会社に戻ってから主催者の一つであるUNIDOウルグアイ事務所のHPの資料を見ると、「フルラン」と出ているではないですか。「あっ、フルランだ!」と思った際には、時既に遅し・・・。新聞紙面でしか見たことのない隣国の有名人の話をもっと心して聞けば良かったと思ったのでした(といっても、ポルトガル語をまくしたてるオッサンでしたけど)。

◆会議の主題であった再生エネルギーに関しては、ブラジルは大国です。フルラン開発商工相もしっかりとその点を強調していました。ちなみに、彼が最初に例示したのは、国土・人口・GDPの3点でそれぞれ大国と呼べるのは、実は米国・中国・ブラジルの3カ国しかないという紹介から始まっていました。「エネルギーと何の関係があるんかいな、どうも我田引水だよな」と思ったのですが、これこそが「未完の大国」の思考回路なんだと隣国で勉強させてもらうのでした。

◆それから、ブラジルのエネルギー面でのベスト・ミックスを目指す中期計画なるものが紹介されていました。それによれば、2023年には、再生エネルギー42%、原子力1%、石炭12%、石油・ガス45%を目指すということに。再生エネルギーの比率が非常に高いのです。ちなみに、全世界ですが、再生エネルギーはわずか8%、原子力が5%、石炭が24%、石油・ガスが63%となっています(遠くからの見学だったので、若干の数字の誤差は許してください)。ブラジルが如何に再生エネルギーの世界で先進国であるかを見せ付けていました。

◆この再生エネルギーの旗頭となっているのがエタノールです。どうもこの地域で働く日本企業の方々と話をしても、絶対に出てくるネタになってきました。余談ですが、自分のエタノールとの出会いなんて実に酷いものでした。1990年のリオデジャネイロなんてエタノール不足が深刻で、当時エタノール車を使っていた父が働いていた会社にある社用車の運転手の主な仕事はガソリンスタンドで並ぶことだったという笑えない話があります。また、最初は、リオ郊外に居を構えていたのですが、車で会社まで片道40分ではエタノールを食い潰すということで、泣く泣く街中に引っ越した記憶もあります。つまり、当時の記憶しかなかった場合、エタノールとは「使えないもの」であって、それをせっせと開発するペトロブラスとは「酔狂な会社」だと思えたのでした。

◆時代の先端を行く存在は常にそんな風に見られるのでしょう。そして、ペトロブラスが成功したのは、時代背景が手伝ったこともさることながら、きっと自らが目先にとらわれず遠くを見たためだったと思います。ペトロブラスの活躍にとって、ブラジルは気が付けば石油の自給が可能となり、いつしか輸出もできる体力になってきているとのこと。そして、エタノールは外交の武器になっています。例えば、ルーラ大統領は熱心にエタノールの対日輸出を頑張っていますし、フルラン開発商工相はその信者の一人になっています。このセミナーでもしっかりと日本とのJVでエタノールの対日輸出が本格化すると企業名まで出していました(ご参考まで)。

◆そんなところで、今朝の日経新聞には以下の記事

ブラジル国営石油、円建て外債350億円発行へ
 【サンパウロ=岩城聡】ブラジル国営石油会社ペトロブラスは27日、日本の投資家向けに総額350億円の円建て外債(サムライ債)を発行する。同社は1997年にサムライ債を出したが、2001年のアルゼンチン国債のデフォルト(債務不履行)による中南米全体の信用低下で発行を停止していた。資源高を背景にした信用回復で発行再開に踏み切る。
 期間10年、表面利率2.15%で、国際協力銀行が元本と金利の一部の支払いを保証する。野村証券と三菱UFJ証券が共同主幹事を務める。 (07:00)


ペトロブラスも着実に信用度が高まっているということでしょう。これに関連して色々とまた話を聞きたい方が増えてきました。どうぞ、そのときは宜しくお願いします(笑)。
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◆エクアドルの大統領選挙については、10月15日の投票日をもって書こうと思っていましたが、世論調査で著しい変化があるので少し前倒し。ちなみに、同国の大統領選挙の傾向は、CEDATOS/GALLUPを見ていれば、大概フォローできると思います。

◆「著しい変化」ですが、ここ1ヶ月で「チャビスタ」(チャベス信奉者)ことコレア元経済財務相の支持率が急騰しています。先の「関連したブログ」では、コレア候補の伸びを認めつつも、その勢いは限られており、2位狙いではないかと見ていました。それからすると、コレア候補の伸びは、自分の修行不足を曝け出す一例になってしまいました(苦笑)。

◆では、コレア候補が伸びた要因を検証しますと、CEDATOS/GALLUPの論評でも示唆していましたが、エクアドルの大統領選挙では、最も急進化した候補が支持を集めやすいということに尽きるかと思います。どの候補も現体制からの「改革」と唱えていますが、その過激さについては、穏健な改革アプローチを模索するロルドス候補(1位から2位に後退)よりも、コレア候補の方が上を行っていたということでしょう。

◆コレア候補の「過激さ」ですが、米国とのFTA交渉、米軍によるマンタの基地の使用、対外債務の支払いにかかるコンディショナリティのすべてについて「NO」を唱えています。国民にとっては、非常にわかりやすく、愛国心をくすぐられます。ただし、それらの「愛国心」をくすぐる選挙公約は、過去に実ったケースがありません。エクアドルは1978年に民主化しましたが、それ以降に行われた過去の大統領選挙では、得てしてそれらのような「強気な」公約が踊り続けています。特に、この10年近くは顕著です。

◆余談ですが、今後日本を含めたメディアでは、コレア候補が「チャビスタ」ということも手伝って、チャベス大統領が旗頭となっている南米の左傾化と結び付けたがる論調が出てくるかもしれませんが、それは表層的なものであって、本質的にはエクアドルの大統領選の伝統が成していることに他なりません。後に述べますが、コレア候補は、チャベス大統領の知名度を政治的に利用している側面があります。

◆そして、そのような政治的な「伝統」を知っている者が今回の世論調査の趨勢を見ると、「またか・・・」と思ってしまうのです。これは「いつか来た道」であり、それを又々繰り返してしまうのかなという諦念に近い感情です。毎回の大統領選挙のパターンとして、「過激な発言をする候補」は、大統領が万能であるという幻想を抱きながら、国民の審判を受けて、大統領に就任します。しかし、実際の政策運営では、自ら少数与党の中で議会運営に行き詰まり、当初の改革路線はいつの間にかIMFとの協調路線に修正し、国民はその大統領を「他の政治家と同じだ」と不信感を募らせるといったカラクリになっています。

◆それが「経済はそこそこやっているけど、国民の政治不信は極まりなく高い」というエクアドルの近年の状況に結びつきます。この政治意識の悪循環が国民に「誰がなっても同じ」という潜在意識を植え付け、更に「だったら何か大胆にやってくれそうな候補に投票する」という判断をとらせる結果となっています。大統領選挙は閉塞感を抱える国民に対する政治的なショーと成り下がっています。例えば、この国で本当に実の在る改革を行おうとすれば、議会の多数派を獲得するのが最低条件ですし、また行政府が立法や司法の領域に侵犯することで改革を成し遂げようとする近道をすることをやめることから始まるのではないかと思います。

◆確かに、「根無し草」で選挙戦に登場したコレア候補としては、大統領選挙に勝つためには手段を選びません。これは、過去の例を見ると、グティエレス元大統領の例に似ているのではないでしょうか(グティエレス元大統領の場合はマワ元大統領追放という「戦功」がありましたけど)。また、対外的なキャッチ・コピーとしては「チャビスタ」と位置づけ注目を集めながら、一方でブッシュ政権への「懐疑派」であるとして保険もかけておく。エクアドルにも橋頭堡を確保したいチャベス大統領としては、「味方」がエクアドルに出現したわけで、悪い話ではありません。一般的に、コレア候補がとった今回の戦術は、無名候補が選挙を勝ち抜くための常道かもしれません。彼にとって、「チャビスタ」の看板は、両刃の剣ではありますが、勝つための道具になっています。

◆ただし、そのような選挙戦術によって、米国のFTAをはじめとする「主要政策の継続」を台無しにしていいのか思うのです。2000年の通貨ドル化によって、米国との協調路線は(好き嫌いはさておき)国是となり、その安定性が求められているなかで、無闇に断絶や破壊を唱え、更に新しいものを築くというのは、時間と労力が必要とされます。エクアドルは過去数十年間も似たようなことを繰り返して、時間を徒に過ごしてきました。今回が初めてではないそのような選挙戦術を前に、容易に乗っかってしまう国民こそこれまでの大統領候補の道具にされてきたのではないかと感じてしまいます。投票日まで残り20日。いずれにしてもエクアドルは変わらないのでしょうが、過去の投票にかかる学習効果が今回の大統領選挙では試されていると見ています。
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◆昨日に続いてブラジルの話題。来週(10月1日)に迫った大統領選挙についてです。南米では今年が大統領選挙の当たり年になっていますが、ブラジルの大統領選挙は本来南米の動向を図る上で注目されるべき選挙の一つだったのかもしれません。ただ、選挙の賑わいは海外に全く伝わってきません。恐らく、国内でも盛り上がりを欠いたままで進んでいるのではないでしょうか。

◆本日付の現地紙に出て来た世論調査(IBOPE)を見ますと、2期目を目指すルーラ大統領が47%で、対抗馬となっているアルキミン候補(前サンパウロ州知事)の33%を大きく引き離しています。ブラジルの大統領選挙は、50%の得票数を超えないと1位と2位との決選投票(10月29日)なので、メディアが注目するのは、果たしてルーラ大統領が決選投票なしで再選されるかでしょう。

◆ルーラ大統領にとっては、決選投票の有無がもしかすると大きな節目になるかもしれないと感じているようですし、またアルキミン候補もその機運を高めようとしている節があります。その最もたるものが、先週からブラジル国内で話題になっているルーラ選挙対策チームの疑惑問題。

◆内容は、アルキミン候補が救急車購入にかかるキックバックを受けていた不正の証拠をルーラ選挙対策チームの一員が買い取ろうとしたことが逆に裁判所から訴えられたというもの。この構図なんとなく、30年前のウォーターゲート事件と似ていることもあって、現地メディアは、ルーラ大統領が指揮したのではないかという点も含めて、話題になっています。ちなみに、ルーラ大統領は、早速選挙対策チーム長をクビにして、新しいチーム長にガルシア外交顧問を宛てました。イメージとしては、キッシンジャーが新しい選挙対策チーム長になったようなもので、ルーラ大統領の真剣さが伝わってきます。

◆そのような経緯があったので、今日出てきた世論調査は、果たしてルーラ大統領に疑惑のダメージはあったのかを図る意味で大事でした。結果からすると、前回比2%減と漸減傾向の範囲内ということで、深刻な被害にはなっていないということが明らかになりました。今後は、この疑惑が複雑化する前に選挙活動を終えてしまいたいルーラ大統領の意向通りになるかといった点です。したがって、第1回投票で5割を確保できるかが焦点になるわけです。

◆7月にサンパウロに行ってきて、その際に大統領選の話もしてきたのですが、相手の人から「本当なら、新しい大統領が望ましいんだけどね」とポロリ。過去を見ても、ブラジルの大統領は2期目で目立った成果を出していないことが分かります(近年はカルドーゾ前大統領のケースしかありませんが)。また、現政権のここ数年間は不正疑惑のオンパレード。ルーラ大統領が直接噛んだものはないとされていますが、与党・労働者党が過去に清廉だと思われてきた中で、ここまで不正疑惑を晒されると、国民と新たな疑惑と言われても麻痺しきってしまったと見ることもできます。先の世論調査はその傾向を汲み取っているのかもしれません。

◆本来であれば、大統領選挙を通じて、時代性に合う新しい大統領かと吟味することが大切だったのですが、何せ有力な対抗馬がいなかったのが今回の大統領選挙の致命的な問題点。それで、先の疑惑がウォータゲートのようにルーラ大統領の指揮によるものだったとなれば、いかに腐敗しきったブラジル政界であると国民が分かりきっていても、2期目早々からレームダック化する危険性も孕んでいるのかもしれません。
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◆週末の新聞紙面も中心は、ENCEのセルロース工場建設見直しの記事。これについては、色々思うところがあるので、フォローしていこうと思っています。ただ、それより先に溜まっている宿題をやってしまいます。それは、上記の「関連したBlog」で、ウルグアイの対米FTAの協議の可能性へのブラジルの好意的な姿勢について、「どこで方針を転換したのか」ということです。少し頭の体操をしてみようと思います。

◆ブラジル政府は、ウルグアイの対米FTAについて、当初は反対の姿勢を貫いていました。2006年1月にアストリ経済財務相が米国や中国とのFTA協議の可能性について言及した際にも、ブラジルのアモリン外相は「どうしてもやりたいなら、メルコスールから脱退してやれば良い」と述べていましたが、これは当時のブラジル政府の本音だったと思います。ブラジルとしては、名実ともに「南米の雄」として君臨していることが前提で動く国であり、他国がその権益を侵害しようものなら、それを潰しにかかるという行動規範が存在しています。ウルグアイの行動は、その秩序を乱す行為と映ったわけです。

◆メルコスールの役割というのは経済的側面で発生したものですが、現在は政治的な色彩が強まっています。域内関税ゼロの動きが先延ばしされているなかで、今年のベネズエラのメルコスール加盟をみるように、当初の関税同盟的な目標ではなく、「南米共同体」という政治的な目標のツールになっているのが現状です。域内統合による経済的なベネフィットを享受するためにブラジル又はアルゼンチンとの門戸を開放したウルグアイにとっては、一向に進展しない経済的な域内統合によって、2大国にうまいようにやられてしまったという意識が強いです。更に、昨今の政治的色彩が強まってしまったメルコスールを前に、それなら自らが新しい市場を開拓しようと動くのは当然の成り行きでした。

◆ブラジルはウルグアイの動きを実力行使で止めるまでには至りませんでした。南米域内を中心とした国際環境がブラジルの考え方を変えてしまったためです。最初の事象は、4月に行われたボリビアによる天然資源国有化の動きです。そこでブラジルが直面したのは、ブラジルの権益を侵す政権が自国のすぐ隣に登場した点です。同じ左派政権ということで、モラレス政権の動きには一定の理解を示していましたが、天然資源国有化の過程においてボリビア国内にあるPETROBRASの施設を差し止める行動に出たのは予想外だったかもしれません。

◆そして、ブラジルにとってボリビアの直接的な行動よりも懸念材料であったのは、モラレス政権の後方にベネズエラのチャベス大統領の影があることを確認したことでした。天然資源国有化は司法的見地からも周到に進められていましたが、その過程ではベネズエラが手伝ったとの報道がされています。ブラジルのルーラ大統領にとっては、表向きはさておき、実際にはブラジルの国益を侵害することに手を貸してるベネズエラへの捉え方をこの時点で決定的に変えたと見ています。つまり、ルーラ政権としては、ベネズエラとは手を握ることは出来ないということです。それ以降、ブラジルはチャベス政権から一定の距離を保つようになりました。

◆常にブラジルが考えていること、それは「南米の雄」で維持し続けることです。ベネズエラが「南米の雄」の地位に色目を見せるのであれば、それを周到に阻止することを考えます。現政権には、それを戦略的に考えることのできるブレーンがいます(アモリン外相とガルシア外交顧問)。彼らが導き出した当面の結論は何かといえば、「敵の敵は味方」ということであり、米国との関係を強化するということです。元々、ルーラ政権と米国政府とは関係が良好で、アルゼンチンで昨年開催された米州サミットでブッシュ大統領がコテンパンに批判された際にも、サミット終了後に訪問したのはブラジルでした。米国にとっても南米への外交が疎かになっていながらも、ブラジルとの関係をまずは良好に保っていることは、国益に適います。

◆ただし、両国を結びつけるタマがない。そこでブラジルが先兵として泳がせることにしたのがウルグアイです。ルーラ政権としては、政権第2期における隠し玉として米国との何らかの通商協定(FTAになるかは不明ですが)も選択肢に入れていると見られており、その前例を作ってもらうプレーヤーとしてウルグアイに頑張ってもらう判断をしたと考えられます。メルコスール加盟国は域外国と通商協定を結ぶ場合にその他加盟国の承認をもらわなくてはならないという障害があるなかで、ウルグアイが対米関係の前捌きをしてもらえば、ブラジルとしては将来的にフリーハンドになるという計算です(大国は前捌きなんてしません)。したがって、ブラジルとしては、現時点で敢えてウルグアイの動きに反対する理由はないと見ています。

◆実際に、ルーラ大統領は、先に行われたバスケス大統領との会談の席でブラジルも南アフリカとの2国間通商協定の可能性を匂わせています。ドーハラウンドも立ち行かず、新たな活路を見出す動きをブラジルも見せているなかで(そこは当然ドーハラウンドの成立に向けた動きと並行しています)、ブラジル1カ国によるFTAを含めた通商協定の可能性は魅力に映っているのかもしれません。

◆時の政権の動きに敏感に反応するのが民間セクターですが、先週にはウルグアイの大手精肉企業がブラジル牛肉産業大手Marfrigに買収される動きが報じられました。米国とのFTAになれば、牛肉をはじめとする産品の輸出が増大する見通しであり、現時点からウルグアイ企業への投資の可能性を探し出す動きが出ているようです。また、ブラジル企業にとっては、官民含めた金融機関の進出(BNDES及びITAU)がここ数ヶ月で整ってきており、ウルグアイ・シフトが着実に進んでいます。これによって、ウルグアイの「ブラジル化」が深まればブラジル政府にとっては一石二鳥とでしょう。
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◆それにしても驚いたのが今朝の新聞紙面。「ENCE、フライベントスでのセルロース工場建設中止へ」と出ていました。更に報道では、それに先立って、モンテビデオに構えているENCEウルグアイ事務所の従業員60名のうち、42名を解雇。徹底的なダウンサイジングに動き始めました。自分の知人がその中に含まれているのではと心配にはなるのですが、さすがにこちらからは電話連絡できません(苦笑)。

◆本日午後、ENCE本社(スペイン)からやってきたアレギ社長は、フェルナンド大統領府長官と会談をして、今後のENCE社の方針について協議。その後、記者会見を開きました。質疑応答を含めたスクリプトについては、大統領府HPで出ていますので、スペイン語で閲覧したい方はどうぞ。

◆アレギ社長のおおまかな主張は、
(1)フライベントスにセルロース工場は建設しない
(2)ウルグアイの事業撤退は考えいない
(3)当初計画の2倍の規模のセルロース工場建設を検討する
(4)今回の決定はウルグアイとアルゼンチン間の対立に影響されたものではない
(5)物流面から、フライベントスにセルロース工場2つ存在するには限界がある
といったあたりでしょうか。

◆極めて表面的な話を軸に議論をしていこうと思っています。アレギ社長は、今回の判断が純粋な経営的判断と主張したがっているようですが、(5)あたりは言い訳以上の響きはしません。アルゼンチン国境沿いのフライベントスにおいてENCE社とBOTNIA社は総額16億ドルのセルロース工場建設を進めていたのですが、投資が始まった以降に(5)を検証するのは不思議な感じがします。また、(4)を改めて述べていますが、数ヶ月前にアレギ社長は「ウルグアイとアルゼンチンの2国間関係の改善」を条件に工事建設を進めていくと発言していました。どうも、その辺の矛盾は自ら感じていないようです。

◆また、(2)については、ENCEは当国西部に積極的に植林を展開しており、そう易々と事業撤退できる状況にはありません。どこかに売却するなら話は別ですが、当初の「プランA」をやめて、「プランB」である(3)が出てきたところ、実は中身が生産倍増計画だったというのは苦笑いを浮かべてしまいます(それなら、従業員のクビを切る必要がないし・・・)。アレギ社長は新しい候補地について「未定」だと言葉を濁していますが、新聞報道から聞こえてくる候補地(パイサンドゥ県)は物流の面ではフライベントスよりも不便なところです。やはり、「物流の観点」から見ると、「プランA」が今のところ最善策に見えます。

◆一方のウルグアイ政府は、「ENCEが拡張計画を出しているから、今後に期待しよう」とこの場を凌ぎたい様子ですが、この言い分は長続きしないでしょう。今回のENCE及びBOTNIAのセルロース工場の建設計画は、ウルグアイが投資先として妥当かという海外企業にとっての判断材料でした。特に、アルゼンチンの不条理な言い掛かりを前にして、ウルグアイ政府が前面に出て守ることができるのかという点が問われたと思います。

◆確かに、アルゼンチンを相手にした国際司法裁判所の結果を見る限りは、7月の時点でウルグアイの正当性が認められました。ただし、2社の事業計画を守り通すという「本質」にかかる成績については、1社の事業案の撤回を招いており、落第だといえるでしょう。その点を商いをやる方々はしっかりと見ていると思います。今回のENCEの決定にはもっと入り組んだ方程式があるとも漏れ伝え聞こえてきますが、いずれにしても今回の一件は、バスケス政権の外交的な敗北と位置づけてよいでしょう。
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◆すっかり小春日和が続いているモンテビデオ。これから首を長くしていた夏へと一歩ずつ近づこうとしています。そして、来月の第1日曜日からは夏時間の開始。1時間ほど日が暮れるのが後ろにずれることで、一日の楽しみがグンと広がります。なんともいい季節がやってきました。

◆さて、ウルグアイの景気が良くなってきたためか、最近は日本人の方が仕事でウルグアイにやってくる機会が増えてきたようです。卑近な例では、ホテルを歩くだけでも、日本人らしき方々と遭遇する機会が以前よりも格段に増えてきました。そんななかで、今日はちょっとウルグアイのビジネスミーティング模様を紹介しようと思います。「模様」なので、飽くまで見た目の話。日本のビジネス・パーソンが相手にするウルグアイの方々は大概「グローバル・スタンダード」を習得した方々なのですが、それでもたまには面白い経験をするかもしれませんので、その一端でも・・・。

◆ウルグアイのビジネス・ミーティングで「グローバル・スタンダード」と変わっているところといえば、それは「衣装」と「飲み物」になるでしょう。ちなみに、ここで言うところの「グローバル・スタンダード」とは、衣装ではスーツ、飲み物ではコーヒー又は紅茶といったところでしょうか。

◆「衣装」ですが、まず一般論として地元の人々との交流が深まれば深まるほど、「普段着」が目立ちます。そして、日本人のビジネス・パーソンが相手にする企業や政府関係者とのミーティングでもたまに「普段着」を来ている人々を見かけます。その「普段着」とはなんぞやと聞かれてしまいそうですが、上が襟付きの長袖シャツで、下がジーンズやチノパンといったところでしょうか。最近まではまだ寒かったので、上着として羊毛のカーディガン又は薄手のセーターを羽織っていました。彼らは、それでオシャレを演出しているわけではなくて、家でも外でも同じような格好をしているわけです。彼らの潜在意識としては、スーツによるスノッブな格好への抵抗と、「飾らない」ことを善しとしている部分が垣間見えてきます。

◆そして、飲み物。彼らの一部は「マテ茶」を愛用します。自分用のマテ壺とボンビージャ(銀製のストロー)、水筒を持参して、ミーティングが始まると同時にお湯を注いで、マテ壺に既に入っているマテ茶の葉っぱとお湯をしっかりと染み込ませて、ボンビージャでマテ茶を啜ります。例えば、が働いている会社でも「マテ奉行」がいて、会議の進行に合わせて、マテ壺にお湯を注いではマテ茶を回し飲みしています。これ、ウルグアイ式の会議のよくある進行形式で、慣れてくるとなんてことはありません。マテ茶の回し飲みは友情の証でもあるのです。

◆ところが、日本からやってくるビジネス・パーソンは、他国でも「普段着」には遭遇するかもしれませんが、「マテ茶」の光景は「未知との遭遇」です。そして、アメリカ文化に少しでも齧っていたのであれば、どうしてもマテ茶を啜る姿がいかがわしい薬物(ドラッグ)に手を染めているように見えたりします。先日のミーティングでも、マテ茶道具一式を持参する参加者がいたのですが、マテ壺にお湯を注ぐ彼の目が何となく遠くを眺めていて、日本からやってきた方々は、「あの人は大丈夫か?」と内心心配したそうです。ちなみに、その遠い目をしていた彼ですが、その会議で一番の重鎮だったことを申し添えておきましょう。

◆この「普段着」と「マテ茶」のビジネス・パーソンの光景ですが、現政権になってから目立ってきました。例えば、ある公的企業や政府関係者と話をする際に、幹部でこのような格好をしている人がいる場合は、十中八九、彼は政治任用(ポリティカル・アポインティー)だと思ったほうが無難でしょう。ウルグアイは、2004年の選挙で、これまでの伝統政党中心の社会から、左派の色彩の強い世界に変わりました。そして、権力の中心が、それまで100年以上も培ってきた家族の集合体中心のものから、由緒を持たないが実力のある一般市民にも少しずつ開放されてきています(ちなみに、実力のない政治任用者はこの1年少しで着実に淘汰されています)。現在の変容期において、ビジネス世界における「普段着」と「マテ茶」の光景とは、アウトサイダーだった彼らの誇りを垣間見る機会なのかもしれません。
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◆金曜日は朝食会に顔を出してきました。講演者はトーマス・フリードマン『フラット化する世界』の著者ですが、そんな流行の人物がなんでウルグアイにやってきているのか、この案内をもらったときにはさっぱり理解できませんでした。ご当人も「ウルグアイは初めて」といっていましたし、今後も再びやってくる可能性は低いのでしょう。いずれにしても彼を拝む貴重な機会になりました。

◆その彼が何度も挙げていた人物の名前が当地に進出しているインド財閥TATAの現地マネージャー。恐らく、同社のお招きという形でしょう。フリードマン氏とインドの関係の深さは知る人ぞ知るところでしょうから、今度の作品では「インドに進出した米国人」ではなくて、「米国の裏庭にやってくるインド人」というケーススタディーでも検討しているのでしょうか。これも「フラット化」の一環だということで・・・。

◆講演ですが、基本的に『フラット化する社会』に纏わることばかりだったので、内容はおそらく世界各国で話されていたことの焼き写しなのでしょう。それでも、英語だったからかもしれませんが、面白い。なんでこんなにスピーチが訓練されているのかと感嘆してしまいます。そういえば、自分も米国の高校で2年近く過ごしましたが、「スピーチ」の授業を受けていたことを思い出しました。「質問を受けたら、質問者に『いい質問ですね、ありがとう』と言え」というその授業で唯一覚えた鉄則をフリードマン氏もしっかりと踏襲していました。なんとも本質ではないところばかり記憶に残っています(苦笑)。

◆フリードマン氏は、世界的な「フラット化」への流れを系統的に紹介して、そのような世界の中でどのように処していくことが望ましいのかという指摘していました。ただ、「焼き増し講演」の性(さが)なのですが、彼の喋るエッセンスとウルグアイの現状が何となく噛みあっていない。「フラット化」する世界における魅力ある国とは、(1)公共インフラ、(2)教育、(3)統治体制が整っているところと述べていました。(1)については、公共投資がGDP比10%以下という低さ、(2)公教育のレベルの低さは往年の「教育先進国」を泣かせるものに落ちぶれていること、となんだか逆行している様子。誇れるとすれば(3)程度ですかね。

◆また、講演を聴きに来ていた大半の企業家も心理的に「フラット化する世界」を受け入れる素地が出来ていないのではと感じました。フリードマン氏の話はごもっともなのですが、誰もが「ウルグアイは当てはまらないよ」と斜に構えているところがあります。彼が企業を誘致しようとすれば「従業員をクビにしやすい仕組みが必要(そうすれば労働の流動性が高まる)」といった辺りでは、労使関係が昨今ギスギスし始めているウルグアイの企業家から乾いた笑いが漏れていました。

◆どうもウルグアイ人自身が「フラット化」の発想を先取したビジネスモデルを展開させることはまだまだ先になるのでしょう。フリードマン氏が言うように「貴方がやらなくても、誰かがやる」のでしょうが、ウルグアイ人の気質からすれば、頭では分かっていても、誰も最初に手をつけようとはしないでしょう。けど、外資にとっては、そのような未開の地が実は面白かったりするかもしれません。

◆現在のウルグアイ政治経済情勢は、外資に対して武装しない中で門戸を開放する流れの中にある状況にあります。外資に対するナイーブな意識と現在起きている現実とのギャップが「外資の一人勝ち」と「国民意識の内向化」へと帰結してしまうのかなと懸念しています。ただし、その副作用が表面化するとしても、2~3年先の話になるでしょうけどね。当然、杞憂で終わってくれることを願っています。
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◆先週の日曜日はプラド展見学にいってきました。今回で3回目。モンテビデオの中心地から20分程度離れたプラド地区にある農牧協会の敷地を使って家畜の品評会などを中心に開催する10日間近くのイベントです。春に向いつつあるウルグアイを皆で楽しもうとする国民的行事になっています。日曜日は、天気が良くて、気温を20度を超えたためか、14万人の見学客が訪れました。ちなみに、モンテビデオの人口が140万人程度ですから、10人に1人がこのお祭を見に行ったことになります。

◆日本人にとっては、正直なところ、牛とか羊などが陳列されたところを見ても特段の感慨はないかもしれません。何の魅力があって、これほどの集団が集まっているかは不明ですが、いずれにしても娯楽の少ないウルグアイ、こんなお祭りにはとにかく顔を出すわけです。自分たちもその一団になっていました。

◆今回のプラド展で目に付いたのは、家畜類ではなくて、実は海外諸国のパビリオンでした。これらパビリオンの移り変わりがウルグアイに対する各国民間企業群のプレゼンスの深度を知る上で参考になると思っています。

◆今年目立ったのは新規参入者でした。メキシコ館、ベネズエラ館、中国館の登場です。昨年と比較しますと、フランスやイタリアが占めていた敷地をメキシコ及びベネズエラが乗っ取った形になっています。いずれもパビリオンとしては大きなもので、ウルグアイ庶民に対するインパクトは大きいかと思われます。

◆国別パビリオンを設ける際には、恐らく各国の大使館が総合調整役としてパビリオンのスペースをまず購入し、民間企業がスペースを埋め合わせる形になるかと思います。そのためには、パトロンとなる中核企業が必要となるのが道理で、メキシコの場合は携帯電話事業を展開しているCTI(TELMEX)、ベネズエラは最近ウルグアイの銀行を買い取ったばかりのBANDES、スペインは携帯電話事業のMOVISTARが中心となっています。出資額は数千ドルから1万ドル前半あたりになるのでしょう。

◆このような「パトロン型」とは異なり、集団で押しかけているスタイルをとっているのがブラジル、アルゼンチン、中国のパビリオンでした。ブラジル及びアルゼンチンは隣国なので、そのスタイルが有り得ると思う一方、驚かされたのは中国館でした。中国の中小の輸出企業が乗り出してきて、館内で所狭しと物品を販売しています。その姿はまさに「行商」。廉価品をひたすら売りつづけるバイタリティは在りし日の日本企業を彷彿とさせるものなのかもしれません。

◆さて、日本館はあったのかということですが、2~3年前に撤退しており、現在はありません。出展を止めた理由は、先の各国の出展トレンドにて説明できるかと思います。一つは中核企業がないことです。人口300万人の国に進出する日系企業は稀ですし、現在ウルグアイに存在する日系企業は、一次産業及び二次産業に関わる3社に止まります。資金の遣り繰りに融通のつくような三次産業関連企業は存在せず、「パトロン型」は困難でしょう。また、「行商型」についても近隣諸国であればいいのですが、日本の反対側まで売り込みを図る企業は今の日本においては少ないと思います。「出たとこ勝負」というのは現在の日本の企業スタイルとは少々異なっているのかもしれません。

◆ウルグアイと日本の関係を考える上で日本館の必要性があるかということですが、結論は決まって「あるに越したことはない」ということでしょう。ただ、その経費の大方を誰がまかなうかということに尽きるのかもしれません。参考まで、自分がウルグアイに来る前には日本館が存在したということですが、それは「パトロン型」で取り纏めはジェトロ(日本貿易振興機構)がやっていたと聞きます。日本における官のダウンサイジングが続いている中でそのスタイルが続くわけもなく、撤退を余儀なくされたようです。

◆「行商型」を日本が今後展開するとは到底思えない中で、「パトロン型」が残された道になるのでしょう。ただし、出展するときには盛大に出ないと訪問客にマイナスのイメージしか与えない可能性が高いことを知ることになりました。中途半端にやって失敗しているなと思ったのが米国館です。確かに米国館はありましたが、その敷地は他の外国館よりも一回り小さく、出展企業も限られていました。実際訪れると、何の夢も希望も与える内容はなく、これなら出さない方が賢明だったのでは思えるほどでした。米国とのFTAという風に最近ウルグアイのメディアでは賑わっていますが、その話がどことなく庶民と「距離感」を持たせる一端をプラド展で発見したような気がします。

◆最後に余談ですが、その米国は、駐ウルグアイ大使を一年間の不在させた後にようやく決めたと報じられています。投資銀行業出身のフランク・バクスター氏(68歳)とのこと。前任に続いて政治任命です。表面的にはこれからのFTA協議における司令塔が整ったと見る向きが多いのでしょうが、同氏の思惑はそれ以上のところにあると思っています。そこら辺は別の機会で話をする機会があるのかもしれません。
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