<   2006年 10月 ( 17 )   > この月の画像一覧

◆29日、ブラジル大統領選挙が開かれ、開票99.4%の時点で、

ルーラ大統領(中道左派:写真) 60.79%
アルキミン候補(前サンパウロ州知事;中道右派) 39.21%

といった大差によって、ルーラ大統領が再選されました。これで4年間の任期を更に務める運びになりました。

◆10月1日の第1回目の投票ではアルキミン候補の健闘が光り、「もしかすると、番狂わせ?」という雰囲気も一時は漂いましたが、決選投票の後半戦においては、大差でルーラ候補が勝利する見通しになっており、まずは政権交代による大きな変化が起きないという前提で「再選後」を南の隣国から眺めていました。

◆早速、開票速報が流れて、ルーラ大統領の圧勝が判明した時点で、ルーラ陣営では同大統領の記者会見が開かれました。ウルグアイでは、CNN(スペイン語版)とO'GLOBO(国際版)が生放送で中継しており、それを眺めることに・・・。庶民の味方の印象を植え付けるように、「この勝利はブラジルのもの」というロゴの入ったTシャツを下に着込んだ格好ですが、こういったスタイルが勝利を導いたのかもしれません。

◆ルーラ大統領再選の要因は、貧困層の圧倒的な支持という基盤が揺らぐことがなかったということでしょう。以前にも指摘したかもしれませんが、貧困層にとって、「汚職」の噂なんて関係ありません。目先の生活改善が最優先課題であり、「真実の究明」を前面に出して決選投票で勢いを保とうとしたアルキミン候補は、貧困層にとって、「事情を分かっていない候補」と映ったのかもしれません。29日のウルグアイの主要紙の社説の題名は「『貧困』と『誠実さ』」。つまり、アルキミン候補は「誠実さ」だけでは勝てないということなのかもしれません。

◆次回は、ルーラ大統領の勝利宣言と記者会見の席で気になったことに触れたいと思っています。ウルグアイに関わることなので、別稿ということで。
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◆ウルグアイでは、今週末(11月3日~5日)に第16回イベロアメリカ・サミットが開催されます。関係各国の首脳だけではなく、アナン国連事務総長をはじめ、IMF、米州機構等といった国際機関の長も集まる盛大な政治的なイベントになる模様です。そのために、モンテビデオの中心地は入場制限を行う予定であり、先週の後半からは中心地の住民への入場IDを発行するといった事務手続きが始まっています。いずれにしても、ブッシュ米大統領が来ないので、何らかの抗議集会等、組織だった騒ぎにはならないでしょう。

◆イベロアメリカとは、日本人には馴染みがないのですが、ラテンアメリカと宗主国であったスペインとポルトガルを含めた地域(?)を指します。わざわざこのような枠組みでサミットを開催した経緯については承知していませんが、冷戦後の新秩序形成の中、第1回が1991年というコロンブス「新大陸」発見から500年を直前にして、「新しいイベリア半島諸国とラテンアメリカの関係」といった文脈で語られたのではないかと思われます。

◆まず、元宗主国側(スペイン・ポルトガル)にとっては、みんなラテン系の言語を喋っているんだし、十分に文化的な相似性もあるのだから、何らかの関係の増進があっても良いのではという腹でしょう。また、ラテンアメリカ側も「米国の裏庭」からの脱却を視野に置き、選択肢の拡大先の一つとして、イベリア半島諸国との関係を深めることは損な話ではないと思ったのではないでしょうか。90年代初頭というのは、その意味で、様々な実験が行われた契機であったと見ることができます(メルコスールも含めて)。

◆それでは、この地域同士で連帯を共有するものは何なのかと考えていたのですが、昨晩訪れた関連イベントでその一端が垣間見えたような気がしました。普通のコンサートだったのですが、登場したのは、アナ・ベレン(1951~)とビクトル・マヌエル(1947~)という夫婦。前者がスペインでも有名な女優兼歌手で、後者は彼女の旦那であり、歌手兼作曲家。曲調には社会性を帯びているものもあるとのことで、の説明では「加藤登紀子のスペイン版」と思えばよいとのこと。本当かどうかはさておき、重なる部分はあったと思っています(この辺は妻のブログを参照ください)。

◆その社会性を帯びた歌で批判の対象にしているのは、軍事力、そしてそれを行使する権力者や組織といったところでしょうか。たしかに、彼らの青春時代のスペインは、フランコ将軍の独裁下にあり、例えば軍政からの解放というのは一つのキーワードになっていたようです。スペインは1975年にフランコの死去を迎え、1978年には議会制民主主義を実現することになります。

◆一方のウルグアイは、1973年から1985年まで「遅い軍政」を迎えることになります。微妙に民主主義不在の時期が重なるのですが、ウルグアイの左派活動家にとって、フランコ末期及びフランコ後のスペインは亡命先の一つとなっていました(他に、フランスやメキシコ等があります)。昨日のコンサートには、最前列にガルガノ外相が観賞していましたが、彼も左派活動家として1974年にスペインに亡命している一人。アナ・ベレンやビクトル・マヌエルの曲に若き日々を思い浮かべたことでしょう。

◆ただし、そのようなコンサート等の文化イベントを通じて観客を集めることには成功していますが、元宗主国側から長年仕掛けていると思われる「新しいイベリア半島諸国とラテンアメリカの関係」の構築については、果たして効を奏しているのかは不明です。過去にサミットを15回も開催していますが、本質的に何を目指しているのかいまいちよく見えてきません。ここでは、備忘録として、過去15回の開催場所を記しておきます。

第1回 Guadalajara (Mexico) 1991
第2回 Madrid (Spain) 1992
第3回 Salvador (Brazil) 1993
第4回 Cartagena (Colombia) 1994
第5回 Bariloche (Argentina) 1995
第6回 Santiago and Viña del Mar (Chile) 1996
第7回 Isla Margarita (Venezuela) 1997
第8回 Porto (Portugal) 1998
第9回 Havana (Cuba) 1999
第10回 Panamá (Panamá) 2000
第11回 Lima (Perú) 2001
第12回 Bávaro (República Dominicana) 2002
第13回 Santa Cruz de la Sierra (Bolivia) 2003
第14回 San José (Costa Rica) 2004
第15回 Salamanca (España) 2005


◆また、元宗主国とラテンアメリカとの間における共通の絆という面で、「民主主義」や「反軍」が挙げられるのかもしれませんが、そのような元宗主国(スペイン)のメッセージを批判なく受け容れる素地があるのは、実はウルグアイやアルゼンチンといった移民で成り立っている国に限られるかもしれません。例えば、アンデス諸国では、支配階層以外から「何言っているんだ。スペイン人、お前らが俺たちの領土を略奪しただろ!」と言われるのがオチでしょう。また、共産主義の砦であるキューバにおける開催では、何もできなかっただろうと察します。

◆最後に、ウルグアイ及びアルゼンチンのブエノスアイレスやロサリオといった都市を覆う地域は、リオプラテンセ地域と呼ばれています。この地域はラテンアメリカの中でも先住民ではなく、移民から成り立っていて、「特異な地域」と理解した方が良いのかもしれません。例えば、移民の傾向としては、1870年代から1890年代に、主にスペイン(バスク、ガリシア地方)、イタリア北部、一部はドイツやその他欧州各国から同地域に移民が押し寄せていましたし、1910年代から1945年周辺までにはスペイン、イタリア南部、少数ながらロシアやポーランドからのユダヤ系がやってきていたと言われています。

◆このようなスペインに愛着を持つ集団を多数有するウルグアイでの今回の会議は、関連イベントを含めて、主催者として「行いやすい」のかもしれません。
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◆昨日のブログでは、ウルグアイのアメジスト生産が今年に入って減少傾向であると紹介しました。その背景に3つほど理由を挙げましたが、「(3)同じ貴石である瑪瑙(メノウ)の需要が高まり、生産者としてアメジストを輸出するインセンティブが低くなっている」ことを、今日は書いていきます。

◆アルティガスの鉱山経営者にとって、アメジストとメノウの採掘はゼロサムの関係です。大型資本が入っていないため、生産量及び輸出額がここ数年右肩上がりでありながら、限られた労働資源の中で、アメジスト採掘かメノウの採掘を選択を迫られています。

◆その傾向を裏付ける一例として、アメジストとメノウの輸出額を比較してみましょう(ウルグアイのような国では内需は見込まれないため)。

<アメジストとメノウの輸出額(アメジスト/メノウの順番)>
2000年 17.3万ドル / 38.4万ドル
2001年 30.3万ドル / 21.2万ドル
2002年 42.7万ドル / 24.3万ドル
2003年 53.2万ドル / 127.9万ドル
2004年 71.2万ドル / 222.1万ドル
2005年 104.6万ドル / 218.6万ドル
2006年 56.0万ドル / 289.5万ドル

◆ご覧のとおり、2003年以降、メノウは急激な輸出増の時期を迎え、その流れは現在も続いています。今年1-9月の輸出額は既に昨年実績を超えていますし、昨年同期比の2倍近くの伸びです。この「特需」を前に、鉱山経営者は、アメジストよりも容易に採掘が可能なメノウに向かう結果になっています。

◆ウルグアイの北部の片田舎において、「特需」の原因を作っているのが実は中国です。瑪瑙の輸出は2003年に急成長しましたが、その年の中国向け輸出額は5.4倍の伸びでした。2002年からメノウの主要な買い手は台湾から中国に移りましたが、現在では中国の独壇場です。そのシェアは98%(!)。ガイドのW氏によれば、頻繁に中国大使館員が当地に関係者を斡旋しているとのことです。

◆それでは、何故中国かということですが、例えば、縁起物として国内向けにされたり、中国国内で何がしかに加工されて、日本を含めた第三国に輸出されるようです。先述の縁起物も含めて、中国人関係者にとって、ウルグアイという調達先はお手頃と映っているようです。

◆日本でも、メノウには心のバランスを保ち気持ちを落着かせてくれる効果があると宣伝されています。アルティガスを訪れて、自分たち夫婦は「水入りメノウ」を買いました。話を聞けば、1.2万年以上前に水がメノウの中に閉じこめられたとのこと。神秘的な響きがしますが、最初はかなり眉唾に思っていました。ただ、日本のサイトを見ると結構な値段で販売されている様子。ちなみに、現地の価格は末端価格の10分の1程度。日本へのお土産として「ネタ」になるかもしれません。
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◆話をウルグアイ北部の旅に戻しましょう。この旅の詳しい話は既に妻のブログで続々と紹介しているので、そこに大方任せるとして、自分はニッチな話をしていきます。

◆アルティガスに入ると、鉱山を案内してくれるW氏と待ち合わせて、自分の運転でアルティガスから30分程離れた採掘場に向かいました。その途中では、当地のアメジストの話になりました。世界的なアメジストの産地としてウルグアイは名前が通っているそうですが、それらアメジストはこのアルティガス界隈で採れたものです。そして、「ブラジル産」アメジストの中にも実はウルグアイから流れてきたもの多いと説明を受けました。ウルグアイ産は、ブラジル産よりも紫の色が濃く、人気が高いとのことです(最後の部分はちょっと眉唾ですけどね…)。

◆実際に、ウルグアイ産アメジストの「ブラジル産」への変身する傾向については、統計資料によって裏付けられます。まず、2000年から2005年にかけてのアメジストの輸出統計では、次のように輸出が急成長を遂げていることがわかります。

2000年 17.3万ドル
2001年 30.3万ドル
2002年 42.7万ドル
2003年 53.2万ドル
2004年 71.2万ドル
2005年 104.6万ドル

◆5年間で約6倍の輸出額を記録しており、当地アメジスト生産者の羽振りの良さを察することができます。そして、この2005年の輸出額のうち、ブラジル向けのシェアは66.6%。ただし、これは公式の数値であって、W氏によれば、9割はブラジル向けとのこと。その意味するところですが、実はブラジルへの密輸の存在を示唆しています。

◆「9割」という数字を当て嵌めると、公式の輸出額は、密輸分を含めた全体の25%相当にしか過ぎないことになるので、そのまま鵜呑みにすることはできません。しかし、いずれにしても、輸出業者における輸出の際の煩雑な手続き、及び輸入業者における関税負担の免除を考えると、国境管理の甘いブラジル・ウルグアイ国境は魅力的なのかも知れません(個人的には、あんな重いものをどうやって密輸するのか不明ですが…)。

◆ところが、そのアメジスト輸出に変化の兆しが見えてきています。例えば、2006年(1-9月)の輸出額は56.0万ドルで、昨年同期比ではマイナス31%を記録しています。特にブラジル向けの輸出の減少が顕著であり、マイナス57%となっています。また、ブラジルのシェアも75%から47%に減っています。

◆この急激な変化の背景を聞くと、(1)ブラジルという「仲買人」を廃し、直販を行うようになった、(2)精製過程をブラジルにアウトソースするのではなく、内製化の方向で動き始めた、(3)同じ貴石である瑪瑙(メノウ)の需要が高まり、生産者としてアメジストを輸出するインセンティブが低くなっている、等があるそうです。

◆全体の減少については、(3)が真っ当な理由になるかと思いますが、ブラジル偏重だったシェアの低下については(1)と(2)で説明できるのではないでしょうか。例えば、(1)を裏付ける統計として、今年に入ってから、過去に輸出実績のなかったイタリア向けの輸出額がブラジルに次ぐ第2位を占めています。また、(2)の影響としては、アメジスト及び瑪瑙の加工過程において、採掘だけではなく、精製や研磨を含めて地場産業の振興に役立っているとのこと。雇用でも3千人強が見込めるとのことで、4.3万人のアルティガスにとっては、大きな雇用源になる可能性を秘めています。

◆最後に、余談ですが、日本向けの輸出は、2000年以降を繙きますと、2005年に5.5千ドル程度という寂しい実績しかありません。現地の生産業者と話をしても、中国人やアメリカ人の好みについては的確に把握していますが、日本人の好みは「?」でした。日本のバイヤーはブラジル経由での調達が中心でしょうが、ウルグアイに直接買い付けるのもお得かもしれません。ちなみに、現地の値段ですが、右写真のもので、キロあたり、一番安いもので5ドル、一番高くても20ドルで話を始めることができます。如何でしょうか?
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◆月曜日から起きていた複数のストライキ。昨日のラジオでは、「こんなの初めてではないか」と話していました。その中で、タクシー業界は月曜日のうちに有耶無耶なまま終了して、そして今日(水曜日)は輸送業者のストライキが夜になって終了しました。最後までもつれ込んだ輸送業者のストライキは、輸送業者側の無条件降伏に近いものになった模様で、先々週あたりから対決色を強めていた政府と輸送業者の直接対決は、ひとまず政府側の勝利で終わったようです。

◆ストが2日目に入ると、バスケス政権はストを止めることもできない政権ではないかといった雰囲気が醸成されつつありました(昨日の拙コラムはその論調でした)。しかし、その矢先、政府が出してきたのが労働相及び運輸公共事業相による政令です。大統領が同政令を承認したのが今日の午前3時。その時間からして、如何に政府が問題解決に差し迫られていたのかが分かります。同政令の内容ですが、現状を「危険な情勢」と位置づけて、1960年代の古い法律を根拠に、次に関連する輸送業者のストライキは認めないと告げています。それらは、(1)燃料、(2)食料及び右加工品、(3)日持ちのしない商品、(4)空港及び港湾の円滑化に関連する産品、(5)病院関係のもの、になります。つまり、ほぼ全て。

◆今日の午前3時以降は、それまで大手を振っていた輸送業者のスト決行者が「賊軍」になったわけです。注目しても良かったのは、政府の「強権」に対しても国民からの不満の声は一切出てこなかったことです。それもそのはず、昨日メディアで報じられたガソリン不足への不安が決め手だったのでしょう。ガソリンの次は食料に及ぶと薄々勘付いたとき、自らの生活が脅かされると初めて分かったわけで、政府の強権に抗議して、更に一部業界を支持するほど、最近のウルグアイ国民は肝が据わっていません(苦笑)。

◆今回の一件で分かったもう一つの点は、ひとまず政府と最大労組である労働総同盟(PIT-CNT)は一枚岩であることです。今回の輸送業界のようなPIT-CNT以外の団体に対しては、「対抗スト」ということでPIT-CNTは現政権に対して側面支援で応えていました。ストに便乗する「跳ね返り」を発生させなかったtことでPIT-CNTは恩を売った形になり、現政権内におけるPIT-CNTの影響力が高まる可能性が強まりのではないかと見ています。

◆それが今後のウルグアイにとって何を意味しているのかと言いますと、同組合の構成員は主に共産党員であるため、彼らが向かう方向が、外への開放ではなく、極めて内向きになり兼ねないことです。目先では、現政権の勝利なのかもしれませんが、長期的に考えますと、本当の勝者は別のところにいるような気がします。
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◆真夏を思わせるような天気がモンテビデオを覆った昨日でした。最高気温は34度。室内よりも屋外の方が暑いというのは、今シーズンになってから初めてのこと。昨晩は窓を閉め切って寝ていました。

◆その暑苦しさを助長するかのような出来事がウルグアイでは今週から始まっています。それはストライキ。まず、タクシー業界が月曜日にストライキを一斉に打ち、同様にトラック業界も経営者側が主導権をとって無期限のストライキを打ってきました。火曜日には、ウルグアイ最大の労組である労働総同盟(PIT-CNT)がそれらストライキが同団体の統制下で行われなかったことに対して「民主主義が脅かされる」と「対抗ストライキ」を5時間ほど打つという問題の所在がどこにあるのか分からなくなるような事態になっています。

◆それでは、一連の事態が発生した背景ですが、一般的な解説としては、運輸公共事業省がディーゼル燃料価格の値上げとその財源を公共バス料金への転化を検討していることに対して、ディーゼル燃料を取り扱う業界が反発したというものです。その価格は1.2ペソ/リットル。現在のディーゼル燃料の販売価格が21.9ペソなので、上昇率は5.5%といったところ。

◆このようなテーマで大々的な無期限ストを打つというのは現政権になって初めてではないかと思います。そして、この内容で無期限ストを打つのは、理由として弱いかなというのが正直な感想。確かに、関連業界が主張するように、政府は産業界に対して「生産的」な政策を講ずると主張しながら、それに逆行するような政策を提案しているというのは一理あるかもしれません。しかし、燃料の上昇及び下降は原油価格に沿って常に行われており、そのような不測の事態にかかる企業側のコストの飲み込みについて十分に対応が可能だとも思われます(実際に、最近ではディーゼル燃料の値段は5%近く下がっていましたし)。むしろ、この程度のケースでストを許してしまうのが昨今のウルグアイの情勢だといえるかもしれません。

◆このストライキに際して、トラック業界は日常生活に最低限必要な物資の供給は保証していると報じられていますが、昨日の午前中からラジオを通じてしきりに報じられていたのは、輸送トラックのストライキによって、モンテビデオ市内のガソリンが不足しはじめたことでした。「××地区のガソリンスタンドでは既にガソリンが不足している」というニュースが流れ、それに対してANCAP(当国石油公社)総裁のコメントとして「予想外の出来事」と聞こえてくれば、当然反応するのが人間の性(さが)なわけです。昼にモンテビデオを車で走ると、早速幾つかのガソリンスタンドでは珍しく長蛇の列ができていました。

◆どうも、今回の一件を通じてもそうですが、バスケス政権の潮目が変わってきたという感覚を最近は覚えます。今年に入り、セルロース工場問題におけるアルゼンチンとのやり取りにしても、米国とのFTA含みで進められてきた通商協議にしても、どうしても素人臭が抜け切れていないという批判を最近は耳にするようになりました。この政権の行動規範は「攻め」ではなく「守り」であることが最近のバスケス大統領の政策判断を通じて見えてきました。「守り」という行間には「無策」という意味も含まれていると思われます。バランス感覚が取り柄とされる同大統領ですが、現状維持以上の何かを見出せていないというのが政権就任後1年半近くの評価になりつつあります。今回のストライキについても、これまでの「現状維持」以上の成果を見出すのは難しいのではないでしょうか。暑くなるなかでどうも沈滞ムードが広がりつつあるウルグアイです。
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◆モンテビデオから600キロほど北にあるアルティガスは人口4万人強の小さな町です。モンテビデオに生活する人々にとって、この地域はブラジルとの国境に接する「辺境」であり、あまり省みられることもありません。実際にアルティガスの町を覆う趣きも、例えばラジオやテレビはブラジルの番組の影響を大きく受けているなど、モンテビデオとは異なっていました。

◆自分がこの町を訪れてみたいと思った理由の一つに、「密輸」の存在があります。今年に入ってから麻薬の経路としてウルグアイが活用されることが増えてきました。同じ南米のコロンビアが麻薬の主な生産地のようですが、それが先進国に流れる経路として、ボリビア、パラグアイ、ブラジル等を経て、ウルグアイから欧州に出るルートなどがあるそうです。ちなみに、先日報じられたケースでは、パイロット等航空関係者までが一連の犯罪に関与しており、組織的な犯罪が根付いていることがうかがえます。

◆ウルグアイの北北西には、イグアスの滝で有名なパラグアイ・アルゼンチン・ブラジルの国境沿いから構成される「三角地帯」と呼ばれる地域があり、同地域は密輸やマネーロンダリング等で有名です。米国政府はテロの資金源として使われていると911以降から特に目を光らせている様子です。また、このような国境地域には、アラブ系の移民が多く商売を営んでおり、それが米国の警戒を更に強める結果になっています(そして、ウルグアイとブラジルの国境にもパレスチナやアラブ系のネットワークが構築されています)。

◆三角地帯からウルグアイに麻薬を含めた密輸品が流れてくる場合、三角地帯から比較的近いとされるのがベジャ・ウニオン、アルティガス、リベラといった国境沿いの町です。それぞれ陸路でモンテビデオに運び、それから海又は空の経路を通じて、主に欧州に流れると見られています。

◆それでは、何故その筋の人々にウルグアイが着目されるのか。その理由は、ウルグアイが他国と比較して脇が甘いためであると思われます。

◆これらの町については、それぞれ自分の目で確認したことがありますが、総じて国境を通過することは容易でした。例えば、今回自分たち夫婦は、ウルグアイ側のリベラでブラジルへの入国手続きをしました。まずはウルグアイ側にある役所で出国手続きを行い、それから車で免税店がひしめく繁華街や国境(らしきもの)を越えて、ブラジル側にある警察で入国手続きを行いました。リベラの場合は、川など国境を明確に区別するものがないため、誰がどの時点でブラジルを越え、ウルグアイに入ったかについては、その個人の「善意」の申請によって成り立っているような状況です。

◆今回、ブラジル側の警察で入国手続きを行いましたが、その際に「アルティガスに行くと、もう一度ブラジル側を出国しなくてはいけないが、どうすれば良いのか」と聞きますと、先方は怪訝そうな表情をして、「ウルグアイ側はどうか知らないが、多分手続きは必要ない。明日ここ(警察)に戻ってくればよい」との回答。

◆その時点では、その回答の意味が分からなかったのですが、この界隈で2日間過ごしてみると見えてきたのは、そもそも出入国手続きを几帳面にやる必要はないということでした(自分の場合は、万が一の際の保険として必要ですが)。リベラの町でも、アルティガスの町でも、歩いて国境を渡っても、車でウルグアイ・ナンバーを付けて国境を越えても止められている光景は目にすることがありませんでした。

◆また、アルティガスは、川を隔ててウルグアイとブラジルで分かれていますが、一般的に車や歩行者が渡る橋とは別に、人の胸程度の丈しかない川を馬車で渡る貧困層の人々を橋から眺めることができました。当然その人達にお咎めはなし。どうしても日本人は、国境となると「見えない壁」があるように思えてしまうのですが、実はそれは意識の問題で、現地で生活する人々にとっては、何の意味も為していないような気がしました。
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◆20日(金)から21日(土)までウルグアイ北部を中心に旅をしていました。といっても、内容はほとんど仕事のようなもの。2日で1,500キロほど自ら運転して、ブラジル国境の町々の様子やアメジストや瑪瑙(めのう)が掘り起こされる鉱山の見学をしてきました。あと、業務連絡ですが、当然帰路では例の国道8号線も通ってきました。確かに橋の部分は拡張が必要です。

◆今回の旅ですが、初日のアルティガス(モンテビデオから北へ600キロ)の宿は手配していましたが、その次の日はどうするか決めていませんでした(本当はラバジェハ県のメロあたりで2泊目を過ごすことも考えていました)。ただし、日中の予定を十分に入れても、2日間でこの辺りを余裕をもって周ることができるということが判明して、自分としては「遠い場所」という先入観が払拭されて良かったと思っています。どうしても、南端のモンテビデオに住んでいると北部とは接点がなくなり、精神的に距離を置いてしまいがちですが、1泊2日で十分な距離ですね。

◆旅での出来事については、妻のブログでも彼女の観点から紹介してくれると思いますし、自分でも要点を掻い摘んで書いていきます。そして、ウルグアイ国内を車で旅をするのであれば、春は非常に良い季節です。緑の色が映えてきて、窓を開ければ紫、黄、赤といった花々の香りが漂ってきます。また、今回のルートを通じてウルグアイを景色の変化ぶりを堪能しました。先入観を壊す旅をまだまだ出来たことに、ウルグアイの深さを少しばかり知ることができました。

◆最近、ウルグアイのことを書いていなかったので、少し地元のことを書いていきましょう。
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◆前回に続いて(というか、最近ずっとですが)、エクアドル大統領選挙について。今回は、決選投票のみどころを少し説明していこうと思っています。

◆ノボア候補とコレア候補ですが、米国との協調と南米統合への姿勢といった外交面において色の濃淡はありますが、いずれにしても国内的にはポピュリストであることに変わりないと思われます。この国の大統領選では、5日に開かれたテレビ討論会でも顕著でしたが、巧言令色と愛国心に訴えることが勝ち残る近道になっているようです。

◆ただし、この両候補は、そのような主義主張だけではなく、実は得票傾向も似ています。都市部と農村部における獲得票の傾向を検証しますと、ノボア候補が「27.5%、24.8%」と出ており、コレア候補も「25.4%、23.6%」といった結果を出しており、共に都市部に基盤を置いた候補です。一方、地域別では、ノボア候補=コスタ(海岸)地域でコレア候補=シエラ(山岳)地域という色分けが出ていますが、今後決選投票で更に有権者を獲得しようとする場合、農村部の得票をどこまで上積みできるかが鍵になります。

◆そこで両候補が農村票獲得で鍵になるのがダークホースとして急浮上してきた3位のグティエレス候補の票です。彼の都市部と農村部の獲得票の傾向ですが、「12.4%、20.4%」と他の有力4候補がいずれも都市部に強かった傾向を示しているなかで、唯一「農村部で強い候補」であることを実証しました。特に、得票数では微々たる数しかないのでしょうが、アマゾナス地域(アマゾン川上流地域)での彼の得票数は48.1%に及んでいることからも、メディアの情報が氾濫していないところでは「グティエレス(前大統領)の亡霊」が未だに跋扈していると見ることができます。

◆グティエレス候補又はグティエレス元大統領がこれからの選挙戦で一定の発言力を有すると見られます。特に、グティエレス候補の今後の政治的な扱いについて、彼にとって有利な対応を行ってくれる候補を支持することになるでしょう。その点では、コレア候補に傾く可能性は高いでしょうが、コレア候補にとっては、このグティエレスの亡霊が既得権を持つ浮動票の乖離を招く恐れがあり、両刃の剣になる可能性も高いと見ています。

◆ここで少し余談を入れますが、今回の大統領選を通じて、エクアドルのメディアは意図的に「グティエレス外し」を行ってきたのではないかと勘ぐらせるような展開を見せてしまいました。例えば、CEDATOA-Gallupでは、グティエレス候補について全くのノーマークで、9月17日付で3%、9月23日付でも4%の支持率しかないと発表していました(最終局面で申し訳程度にグティエレスの顔写真を盛り込んだ世論調査報道をしていましたが・・・)。最後の一ヶ月で「泡沫候補」が10%以上も伸びる事情とはいったい何なのかと考えさせられます。エクアドルの報道機関の独立性が問われる選挙戦なのかもしれません。

◆本題に戻りますが、次のポイントは中道穏健層を獲得したロルドス候補の票がどちらに流れるかということです。これは、有権者と支持政党との間で認識を異にしていると思われます。ロルドス候補に投票した有権者の多くは、コレア政権誕生による国情不安を避けたいとする行動規範によるものだったと思われます。「反コレア」の意識が底辺にあり、その意識が次の投票行動を起こすと考えられます。一方で、ロルドス候補の支持基盤である左派民主党(ID)は同党幹部がこれまでの経緯から右派のノボア候補に与する訳にはいかないと明言しています。ロルドス候補及びIDは最終的にコレア候補を支持するという苦渋の選択をするでしょうが、同氏を支持した有権者はそれに従わない可能性が高いと思われます。

◆ノボア候補は、1位で通過しながらも、決選投票に向けて確実な勝利を獲得したわけではありません。未だに逆転される可能性を十分に秘めた中での選挙戦となるでしょう。まず、手短なところとして、ノボア候補はビテリ候補率いるキリスト教民主党(PSD)を組むと考えられます。大統領選挙に並行して投票が行われた議会選の結果はまだ公表されていませんが、既存政党で有力な柱となると見込まれるノボア候補が所属するプリアン党とPSDが中道右派連合を形成して進めていくのではないかと思われます。ちなみに、この流れによってエクアドル政界のドンであるコルデロ氏にとっては、従来の政治体制の維持という彼にとって望むべき展開となるであろうと思われます。

◆IDは、どの候補を支持するかについて今週の金曜日に決定したいと伝え、同党がキャスティングボート役になると思っていますが、正しくはロルドス候補に投票をした有権者(現状安定志向の浮動票)が鍵になります。そして彼らの多くはノボア候補に投票するでしょう。コレア候補としては、グティエレス前大統領によるコレア支持表明を明らかにしてもらい、それからIDとは政策協定を結ぶことから始まると思われます。それでも勝利には十分条件とは言えませんし、大統領選に勝利しても、数々の課題が待ちかまえており、それらを克服する技量をコレア候補が持ち合わせていると見ていません。

◆エクアドル大統領選挙の決選投票は、メディアが「親米」対「反米(左派)」という表面的な議論を展開する一方で、そのような政策論争ではなく、実質的には政局へと移行するでしょう。
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◆エクアドルの大統領選挙が15日に行われました。開票率70%の段階ですが、1位がバナナ富豪のノボア候補(26.7%)、2位がチャビスタ(チャベス・ベネズエラ大統領シンパ)のコレア元経済財政相(22.5%)でほぼ確定しました。両者による決選投票は11月26日に行われる予定になっています。

◆投票1ヶ月前までの世論調査では10%周辺を推移していたノボア候補ですが、選挙戦直前になって大幅に得票を伸ばすことに成功しました。また、有権者の投票傾向を総括しても、地盤のコスタ(海岸)地域で強力な集票力を発揮し、課題とされたシエラ(山岳)地域でも18.5%の得票率を確保しました。

◆エクアドルの大統領選挙の際に着目しておきたいのは、地域対立という構図です。毎回、最大の商業都市のグアヤキルを抱えるコスタ(海岸)と、政治の中心となる首都キトを抱えるシエラ(山岳)との反目は歴史的な要素にもなっています。今回は、ノボア、コレア、ロルドス、ビテリの有望とされた4候補のいずれもがコスタの出身であり、この地域対立については語られることは限られていたように思われます。

◆それでは、空白地域となったシエラ(山岳)を誰が占めたのか。他の地域も含めて、有力4候補の選挙結果は次のように説明しています(括弧内の%は、コスタ、シエラ、アマゾナスの順)。
1位 ノボア候補 26.7% (36.3%、 18.5%、 10.0%)
2位 コレア候補 22.5% (20.0%、 31.1%、 15.1%)
4位 ロルドス候補 15.5% (9.6%、 20.1%、 13.9%)
5位 ビテリ候補 9.9% (12.2%、 5.5%、 3.7%)

◆上記のとおり、コスタ色が薄いと見られるコレア候補及びロルドス候補がシエラにおいて票を重ねていることが分かります。元々シエラは中道左派に好意的なところがあると見ており、その傾向が反映したのでしょう。ロルドス候補の支持母体であるID(左派民主党)としては、浮動票を含めた票の獲得を狙ったのですが、結果的に同地域ではコレア候補と食い合う形になりました。当初有力候補と見られていたロルドス候補の敗因は、前のブログで指摘しましたが、左(コレア)右(ノボア)両極への二極分化による穏健勢力(ロルドス)の埋没、そしてシエラでの伸び悩みが考えられます。

◆そして、選挙戦の終盤で1位は固いと思われていたコレア候補にとっても誤算がありました。それは、一回目の投票で既存体制に虐げられていると思う浮動層を自陣に引き付けることが適わず、「まさかの2位」に甘んじたことです。今回の選挙では、ノボア候補の「驚きの勝利」が目立つようになっていますが、今回の選挙での一番のサプライズは予想外に3位を獲得したグティエレス候補です。彼は今回大統領選挙に出馬を禁止されたグティエレス前大統領の兄弟で、前大統領の名前だけで16.4%の得票率を獲得しました。
1位 ノボア候補 26.7% (36.3%、 18.5%、 10.0%)
2位 コレア候補 22.5% (20.0%、 31.1%、 15.1%)
3位 グティエレス候補 16.4% (13.1%、 12.2%、 48.1%)
4位 ロルドス候補 15.5% (9.6%、 20.1%、 13.9%)
5位 ビテリ候補 9.9% (12.2%、 5.5%、 3.7%)


◆コレア候補としては、反体制票の大半を獲得することで、選挙戦終盤には、1回目の投票で勝利することが実現するかもしれないと信じたでしょうが、皮肉にも既存勢力からではない別の勢力から足下を掬われる結果になりました。コレア候補としては、これ以上「勢い」で選挙戦を勝利することは困難になるでしょうから、既存勢力を含めた政治勢力との交渉が始まると思われます。また、既存勢力との対立姿勢を引き続き顕在化させ、飽くまで「勢い」だけに任せる場合、決選投票勝利の可能性はかなり狭くなるでしょう。

◆決選投票のみどころについては、次のコラムで書いていこうと思います。
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