<   2006年 11月 ( 11 )   > この月の画像一覧

◆エクアドルの大統領選挙は、コレア候補の勝利で決着がついた模様で、これから1月15日まで、次期政権の方向性が明確になっていきます。

◆当選確定直後から、コレア次期大統領は積極的に国内外のメディアに対して次期政権の課題について明快に受け答えをしています。この背景としては、自ら経済政策について語る実力を持ち合わせていることもありますが、過去の欧米での生活を通じて、国内外のメディアの味方につける利点を、十分に認識しているためと見られます。

◆今回のエクアドル大統領選挙の候補者を最初に揃って見たのは10月上旬に放映されたCNNによるディベートだったのですが、4名の主要候補のうち主導権を握っていたのは、ビテリ候補とコレア次期大統領でした。前者は元テレビキャスターで後者は元経済学者と、共にメディアの訓練を受けた人々だなと印象を受けました。このディベートをはじめとする映像メディアを通じて、当初有力候補であった中道左派のロルドス候補は「つまらない候補」というレッテルを貼られたでしょうし、決選投票には残ったノボア候補も「古くて、中味がない」と有権者に嗅ぎ取られたのかもしれません。

◆ここ数日のインタビューでも触れていますが、コレア次期政権における短期的な優先課題は「政治改革」であり、メディアが注目している債務や石油等といった諸般の「経済改革」は二の次であることを明確にしています。特に、政権基盤を有していないコレア次期大統領にとっては、既得権層が牛耳っている立法府と司法府をどのように対処していくのかが、今後4年間の任期を大きく左右する点です(そのために制憲会議という手を使おうとしています)。何せ、立法府を敵に回して退陣した大統領が過去10年間に2人(ブカランとグティエレス)いるわけで、コレア次期大統領としては、これが首尾よく行わなければ、次の経済改革や予算一つも通らないと理解していると思われます。

◆このように、現在エクアドルで展開しているのは、頑丈に固定化されてしまった既得権層とそれに風穴を開けようとする勢力とのせめぎ合いであり、かれこれ10年近く幾度となく時の大統領が試しては、失敗していった歴史に他ならないと見ています。そのような文脈からすると、南米全体を指して「エクアドルも左派政権」というのは、何とも他所の国の話のように聞こえてきます。

◆次に、「経済改革」の部分ですが、コレア次期大統領は米国及び国際金融機関に跪く必要はないという論者です。「エクアドル国民が最優先」という考え方であり、海外の投資家に不安感を醸成させます。ただし、この思想の根底にあるのは、ベネズエラのチャベス大統領が夢見る「ボリバル主義」(南米統一思想)やキューバのカストロ氏が抱く共産主義のようなものとは別物です。

◆コレア次期大統領の思想の拠り所は、どちらかというとスティグリッツ氏(コロンビア大学教授)のような国際金融機関に対する懐疑的なものの見方です。債務の棒引きも否定しない点や石油の国家の取り分の拡大などは、国の信頼を損なうようにも見えるのですが、コレア次期大統領からすると、まず国として言うところは言うという点を明確にしています。同氏が傍若無人ではないのは、ドル化の撤廃や天然資源の国有化という選択肢を採らないと現時点から明言している点から確認できるでしょう。経済面において、コレア次期大統領は、今後数多くの妥協を強いられるのかもしれませんが、原則ははっきりしています。

◆最後に、コレア政権が安定するかどうかの分かれ目になるのは、意外に外交面だと思っています。つまり、「反米」であると売り込んでいる中で、誰を味方につけていくかという点です。これについては、コレア次期大統領は大統領選のディベートの時点から「メルコスール」という言葉を使っています。そのとき自分は意外な思いで聞いていたのですが、既に同氏の頭の中には米国の代替のパートナーとしてメルコスールを描いていたことが分かります。

◆そこでの問題点は、果たしてメルコスールの何処を頼りにしていくのかということです。一部メディアでは、エクアドルがベネズエラとボリビアと共闘して反米機軸を構築していくような論調をしていますが、自分はそのような憶測をコレア次期大統領が敢えて泳がせているようにも見受けられます。そもそもコレア次期大統領が有力候補として急上昇した背景には、同氏が自らをチャベス・ベネズエラ大統領とダブらせることを肯定したことから始まります。つまり、同氏はチャベス大統領を利用して、エクアドルの政治シーンの中心にやってきたのであって、必ずしも彼の信条に陶酔したわけではありません。それは、大統領選中のインタビューでも「ボリバル主義に従うわけではない」と表明している点からも分かります。

◆コレア次期大統領としては、最終的にはメルコスール加盟を視野において、ブラジルとの関係を重視する方向にシフトすると思われます。これはエクアドルの足腰を鍛える過渡期としては、絶好のパートナーだと思われます。まず、コレア次期大統領は「反米」と強調していますが、その代替がベネズエラではなくて、ブラジルであれば、海外の投資家は安心するでしょう。 また、ブラジルとしては、今後メルコスールを南米共同体にまで昇華させることを外交目標として目指しています。その一環としてアンデス共同体の切り崩しも視野に入ってくると見られ、その加盟国であるエクアドルがベネズエラに続いてメルコスール加盟を表明すれば、南米域内におけるブラジルの力が高まると計算しています(ボリビアも時間の問題ですが…)。ましてや、ブラジルは、メルコスールの「小国対策」を昨今真剣に行うと言葉の上では表明しています。

◆コレア次期大統領としては、エクアドルがメルコスールの懐に飛び込むことで「実利」を得る可能性の方が当面高いと見ているのかもしれません。そして、その飛び込む先がブラジルであれば、好都合でしょう。特に石油分野においては、ブラジルの石油国営会社ペトロブラスが進出を果たしており、「小国対策」の文脈で交渉を進めていくのではないでしょうか(ただし、コレア次期大統領から見えるメルコスールの姿と、昨今における実際のメルコスールの動きが必ずしも一致するとは限りません。これは、また別の機会に書くとしましょう)。
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◆エクアドル大統領選挙ですが、既に出口調査について報道がなされています。それによると、次のとおり。いずれもコレア候補(写真)の勝利を伝えています。

Teleamazonas / RTS社 コレア候補57%、ノボア候補43%
Ecuavisa / Cedatos社 コレア候補56.8%、ノボア候補43.2%
Voz y voto / Market社 コレア候補57.99%、ノボア候補42.01%

◆それにしても、ここまでの大差を予想した人はいなかったのではないかと思っています。そして、ロイター電の解説にも書かれていましたが、誰も1年前に彼が大統領になるとは思っていませんでした。

◆早速、今晩の記者会見の席で幾つかのことを確認しているようです。10億ドル相当に至る債務返済のリスケの検討、経済財政相、エネルギー相とペトロエクアドル総裁の指名、更にOPECへの再加盟の検討・・・といったところが目立つでしょうか。経済財政相については、自らが過去に経済財政相であった際に次官に任命した側近を置いており、指名のスピードと併せて、自らの優先課題が何であるかというメッセージを発したと見ています。

◆まずは明日のエクアドルの市場の動向を見てみたいと思っています。また、明日以降にでもコレア新政権で注目したいポイントを書いてみたいと思います。
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◆11月26日はエクアドル大統領選挙の決選投票日。あと数時間で結果が判明します。その前に、決選投票までの選挙戦のお浚いをしておこうと思っています。

◆まず、毎度お世話になっているCedatos-Gallap社の世論調査動向を見ていきますと、面白い展開になっています。第1回目投票で第1位だったノボア候補(バナナ富豪)は、対立候補であるコレア候補(左派の元経済学者)に対して終始有利な展開を進めていましたが、終盤になって大幅に失速しています。そして、とうとう11月25日発表分では、ノボア候補46%対コレア候補54%とノボア候補は8%の差をつけられています。

◆これは、第1回投票時において決選投票でも勝利が優勢と見られていたノボア候補にとっては想定していなかった展開だと思われます。なかでも10月30日時点には18%の差(59%対41%)を広げていました。その後の1ヶ月弱でノボア候補↓13%、コレア候補↑13%が起きた変化は、エクアドル国内に何かが起きたのではと思いたくなるほどです。

◆今回の決選投票において、欧米を含めたメディアは、「エクアドルの大金持ち」対「チャベス大統領の一味」という分かりやすいネーミングによって話を進めてきた部分があります。そして、その影響は、これまでの南米の左傾化の傾向に少なからず影響を与えるといいたいのかもしれません。したがって、決選投票でコレア候補が勝てば、「南米の左傾化の影響、そして加速」というのかもしれませんが、それはどうでしょうか。国の頭領を選ぶのにイデオロギーだけで動くような大陸ではないことは既に過去40年間程度だけの歴史を見ていれば分かることだと思われます。候補者のキャラクターにかかっている部分が多いのです。

◆今回のノボア候補とコレア候補の選択において、有権者の多くは、自らが持ち合わせている思想・信条よりも、今後の自らの生活にとって「マシ」であれば良いという計算が働いているかと思われます。つまり、積極的な支持による投票行動から成り立っていません(そもそも、エクアドル国民は政治を信用していませんので)。そのような国において参考になる指標として、先の世論調査会社が発表していますが、「この候補には絶対投票しない」という設問では次のような回答が出ています(数字は、10月22日、30日、11月14日、23日の順)。

ノボア候補: 32%→30%→35%→40%
コレア候補: 44%→43%→35%→35%
両候補: 10%→10%→14%→11%
わからない: 14%→17%→15%→14%

◆互いにキャラクターの濃い候補なのですが、その中でノボア候補から「チャベスやカストロの友達」や「共産主義者」とレッテルを貼られ続けたコレア候補は、着々と「不支持」率を減らしてきました。時間が解決するわけではないのでしょうが、一本調子のコレア候補批判に有権者が飽きをきたした部分があるのではないかと見ています。また、このような左派に対するネガティブ・キャンペーンというのは、民政化以降ずっと続けられてきましたが、有権者がそれに従ったことで国が良くなったわけではないので、ノボア候補が「既得権層のお仲間」と見られた部分も多いかと思います。

◆また、今回の決選投票における戦いでは、ノボア候補の慢心が目立ったのではないかと見ています。これまでのエクアドル大統領選挙の伝統を踏襲しているように、今回も地域間の対立がありました。具体的には、コスタ(海岸)地域の支持が高いノボア候補とシエラ(山地)地域の支持が高いコレア候補です。決選投票に向けては、この地盤の更に強固にすること、そして、他陣営に切り込むことが求められていました。

◆ノボア候補に対する世論調査を見る限り、彼はアウェーであるシエラ地域だけではなく、地盤のコスタ地域でも不支持率を伸ばす結果になっています(シエラ地域:37%→51%、コスタ地域:25%→31%)。また、支持については、コスタ地域71%→60%、シエラ地域45%→33%と負け戦を行っています。

◆地域間の代理人対決になった今回の大統領選挙ですが、実はシエラ地域で支持の高いコレア候補はコスタ地域の出身。実はコスタ地域の人々にとって、コレア候補はそれほどの地域主義の立場からしてアレルギーはなかったということができます。その一方で、コスタ地域の代表的な産品のバナナが前面に出るようなノボア候補こそ、シエラ地域の切り込みを図る必要がありました。シエラの人間の心情からすると、コスタの人間を投票するには心の中に大きなハードルが存在します。コレア候補がシエラの「鎧」を着て戦ってきたことはノボア候補との対決によって大きな効果を発揮する結果になりました。

◆3回目の大統領選挙の挑戦となっているノボア候補が未だ投票を決めていない層(16%)を取り込むことができるのかが鍵でしょうが、難しいでしょう。また、個人的にはコレア候補がここまで支持を伸ばしてきたのは驚きですが、長い選挙戦を通じて、「今回は彼に試してみてもいいのかな」というちょっとした「賭け心」が生まれつつあるのも事実です。成功しないのは分かっているのですが、そうやって少しでも投票を通じて夢を買っているのかもしれません。南米の庶民に広がる宝くじ(ロト)のようなものです。当然、この心情はノボア候補支持の投票者も持ち合わせているものです。
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◆ウルグアイのワインの統計数字が新聞に載っていたので、備忘録として書きますと・・・。

・ウルグアイのワイン輸出量は2百万リットル
・この量は生産量全体の2%程度
・今年の生産量見通しは115百万リットル
・そして国内での消費見通しは80~85百万リットル

◆この数字について、地元のワイン関係者は生産過剰と見ているようで、理想としては、生産量を90百万リットル程度にして、更に輸出についても現在の2%から15%に拡大したいようです。ただし、この15%という数字、ウルグアイのこれまでの実績からすると、非現実的な響きがします。これまでウルグアイのワインが最も輸出された年は2000年で、その量は4.3百万リットル。現実的なアプローチとしては、5%を狙うというところが最初の一歩ではないでしょうか。

◆参考までに、ウルグアイのワインの輸出先ですが、やはり隣国のブラジルが一番で、その後は英国、ノルウェー、スイス、カナダ、ベルギーといった北米や欧州が続きます。ただし、そもそも輸出量が少ないので、現地でボトルとしてウルグアイのワインを目にする機会はほとんどないでしょう。距離的な事情からいえば、ウルグアイのワイナリーが一定の所得を有する近場の先進国に輸出するというのは賢明な選択なのかもしれません。

◆当地の新聞紙面において、今後輸出マーケットとして注目される場所が例示されており、それらには「カナダ、オランダ、スイス、ニュージーランド、日本」と出ていました。日本と出ている根拠については言及していませんでしたが、果たしてそれが妥当かどうかについて少し書きましょう。

◆まず、日本のジェトロにあたるウルグアイの輸出促進機関であるウルグアイXXIは、日本を輸出の有望市場としては見ていません。このことは、ウルグアイにおいて対日輸出は、政府が下支えしてるものではなく、極めて個々の企業のインセンティブに任せられています。

◆次に、先日東京で開催されたウルグアイ産品の展示会において、ウルグアイのワインが会場でアンケートの景品として配られたそうですが、出展したワイン企業はなかったと聞いています。実はこのことが日本におけるウルグアイ・ワインのステータスを示唆しているような気がします。つまり、「お土産にはいいのかもしれないが、商品としては機が熟していない」ということです。

◆出展企業がなかった理由の一つとして、先の新聞記事で関係者が有望市場に例示しても、現場のワイナリーの多くは日本市場まで出ていこうとするインセンティブが備わっていないことがあります。これまでの輸出実績を見るように、ウルグアイ・ワインの実績の中心は欧州です。その一番の理由は距離でしょう。その延長として、現在、彼らが重点を置いているのは北米市場です。彼らとしては、まず北米市場で足場を固めたいという思惑があるようです。

◆一方で、輸出志向になる場合、ウルグアイのワイナリーにも発想の転換が必要だと思われます。ウルグアイ・ワインの主要品種はタナットという非常にタンニンの強い品種であり、これを「ウルグアイ特産」として長年売りたがっています。ところが、彼らの頭の中に、例えば輸入企業にとって新しい商品を扱うことはリスキーだという概念が欠けています。先日モンテビデオで行われた対米市場セミナーにおいても米系IT企業の現地法人社長がこの点について口を酸っぱくして述べていました。つまり、米国市場への活路は、売れているラインを工夫をしたものであって、全く新しいものではないということです。これは米国市場だけではなく、普遍化できるものではないでしょうか。ウルグアイのワイナリーにとって、主力であるタナットにいつまでも力を入れることが、果たして新規市場への参画に適した判断か再考しないといけないでしょう。

◆ただし、皮肉なことに、発想の転換を目指しても、ウルグアイ・ワインに占めるタナットの比率が非常に高いため、輸出向けに出来るワインの量は限られてくるという問題が次に発生します。欧州市場においてもライトなワインが好まれる傾向にある中で、自らのストックの関係から、ウルグアイはタナットを輸出しなくてはいけないという呪縛にとらわれており、冒頭の15%という数字が短期的には非現実的なものだと改めて聞こえてしまうのです。
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◆今日は早朝からセミナーに出席。お題は米国市場への進出について。2時間ほどパネリストの話や質疑応答を聞いた中で、印象に残った点を少々・・・。

◆このようなお題設定があった場合、どうしても避けられないのは、先日までウルグアイで米国とのFTAの可能性があったことについてです。産業界では、まだ「逃した魚」は大きいと思っています。パネリストの一人が面白い喩えをしていました。

◆その話によれば、或る「坊や」の家に、長い間やってきたことの無かった「伯父さん」がふらりと遊びにやって来ました。坊やは他人行儀なまま見ず知らずの伯父さんと接します。自分のお父さんからは伯父さんについてあまり良い話を聞いたことがない中、坊やは伯父さんに玩具屋へと連れて行かされます。ずらりと並んだ玩具を前にして、坊やは「何でもいいから一つ選びなさい」と伯父さん告げられます。坊やは、素直に大好きなものを選べば良かったのですが、どうも自分のお父さんに何を言われるのか心配で仕方がない。ここで坊やが大きな玩具をもらって、自分のお父さんに怒られないものかがどうしても気になるのです。悩んだ挙句に坊やが選んだのは鉛筆1本。伯父さんは「遠慮はいらないんだよ」と念押ししましたが、坊やは「これがいい」と言って譲りませんでした・・・。

◆実際にありそうな話ですが、実はこの話、「坊や」をバスケス大統領、「伯父さん」が米国政府、「お父さん」が国民(与党支持者)、「大きな玩具」がFTA、「鉛筆1本」がTIFA(貿易投資枠組み協定)に見立てています。つまり、米国が条件を大幅に緩めている中で、バスケス大統領はFTAを半ばフリーハンドで選ぶ環境にあったものの、肝心なところで怖気づいてしまい、最後は「鉛筆1本」で満足してしまったというわけです。人によっては、「お父さん」をメルコスールの大国(ブラジル及びアルゼンチン)と置き換える場合もありますが、反米イデオロギーが潜在的に残る与党支持者に見立てる方が正確だと思われます。

◆今年8月、バスケス大統領は、米国とのFTA協議開始を内心決断したと思われた際に使ったフレーズとして、「列車は二度とやってこない」というのがありました。つまり、好機は逃してはいけないと示唆したわけで、ここ辺りで拾い読みすると、米国政府はこの時期からバスケス大統領は本気だと思っていたかもしれません(結局、梯子を外される結果になりますが・・・)。

◆ところが、先ほどの喩えではありませんが、伯父さん(米国)は「長いこと家にやってきたことが無かった」のであって、実は「初めて」やってきたわけではありません。多くのウルグアイ人も含めて忘れかけていることですが、ウルグアイでは軍政時代の1982年から米国との通商関係の強化に向けて協議を重ねており、その結果、米国は1985年にエジプト、ジャマイカ、イスラエル、ウルグアイの4カ国とのFTAに向けて動いた過去があります(その中で実現したのはイスラエルだけでした)。このときも実はウルグアイは、民政化直後等を理由にして、この好機を自ら見逃しています。

◆列車は二度やってきており、その両方を見逃しているのがウルグアイです。1985年の判断以降、ウルグアイは徐々に地域統合路線へと進み、90年代以降はメルコスール重視へと舵を取りをしました。その後、このメルコスールへの傾倒がいつしか呪縛となって、90年代後半から発生したブラジル及びアルゼンチンの経済危機によって、ウルグアイは輸出先を失い、壊滅一歩手前の経済危機に遭遇しました。

◆その失敗の教訓を活かすべく、前政権の後半は、米国を含めた通商の多角化とそれによるメルコスール依存の脱却に力が注がれました。バスケス現政権になっても、表面的にはメルコスール重視とは述べていますが、実際は前政権の経済手法を踏襲して、成功しています。南米左派の影響力拡大等々言われていますが、ウルグアイが一線を引いているのは、このような理由があるためです。そして、今回、ウルグアイは回り道をしたのかもしれませんが、伯父さん(米国)は再びやってきたのであって、坊や(バスケス大統領)はもっと伯父さんを信用すべきだったのかもしれません。

◆ちなみにこの坊や、今のところは「鉛筆1本」で我慢していますが、お父さんの様子を見ながら、時機が来れば「大きな玩具」をもらえるかなとも思っているとか、いないとか・・・。ただ、坊やだけあって、伯父さんの都合(ファスト・トラック期限や民主党が多数派となった米国議会)をあまり気にしていないところが気がかりです。
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◆ここ数日暑い天気が続いていたかと思うと、昨日の15時過ぎからは風が涼しくなってきました。父と同じ職場出身のSさんは、その時間帯にモンテビデオ港を眺めていたようですが、「ちょうど暖かい北風から冷たい南風に変わったんだよね」と今日の昼にお会いした際に話してくれました。その後、数時間もしないうちに、雲行きは益々怪しくなり、夕方からは雨が降り始めました。

昨日のブログを書いていたのはちょうどそのとき。「分かりやすい」なんて調子の良いことを書いていましたが、それから何が起きるかということをその時は知る由もありませんでした。ただ、雲が厚く垂れ込めている兆候として、自宅の衛星放送が信号を受信することができなくなり、画面に何も映らなくなっていました。天気悪くなるなと思いながら、妻と夕食を摂りにレストランへ。

◆昨日(11月15日)は、入籍記念日。3年前のその日の午前中、妻と自分の両親と散歩しながら東京の中野区役所まで書類を届けに行ったことを思い出します。ちなみに、自分の両親はその日を「結婚記念日」と位置付けて、昨日もメールでお祝いの言葉。果たして、入籍と挙式のどちらが正式な結婚記念日なのかは知りませんが、「2回お祝いしよう」と纏まりつつあります。

◆ただ、少し気張ったレストランでオシャレをして出掛けるのは珍しく、「珍しいことをしたから雨が降る」と思うよりも先に、雨は激しく降り始め、レストランに着く頃には雷が落ちていました。こういう時には本当に雨が降ると夫婦して納得しました。

◆ただし、「珍しさ」の度を超えていたのかもしれません。雨脚と雷は更に激しくなり、「停電になるな」と思っていると、案の定停電になりました。自宅だと不自由を感じるのかもしれませんが、その日は運良くレストランということで、ワインを飲みながら、良く見えない中で前菜を摘んで、自宅ではやらないような真面目な話をしていました。ロウソクの火がテーブルの上に灯されていて、記念日のちょっとした演出も伴っていました…。

◆さて、翌朝の新聞を読むと、昨晩の停電の様子が一面に掲載されています。停電の被害は国土の南半分に及んでいました。こんなことは3年間で初めてです。ウルグアイは日本の半分の国土ですから、ウルグアイ人の感覚から捉えると、日本でいうところの関東地方から近畿地方にかけて全て停電になったようなインパクトなのでしょう(終わってみれば大したことはないのでしょうけど・・・)。また、新聞に載るということは「珍しい」からであり、そこは他の発展途上国とは違うということを知っておくのも良いかもしれません。

◆冒頭のSさんですが、ちょうどその時間からモンテビデオ港で仕事があったために、とんだ災難に遭っていたとのこと。「ホテルの周辺では水が溢れているし、街は真っ暗だし…」と異国の地で少し怖い思いをしたようです。ただ、これも他の或る南米の国とは違って、暗闇になっても、不安がることはないのかもしれません。実際に停電に便乗したような犯罪は起きなかったようです。南米の田舎といえばそうなのでしょうが、人々の美徳も残っているということなのではないでしょうか。
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◆そろそろウルグアイは夏モード。モンテビデオの街を歩いても、じんわりと汗をかくような気温になってきました。昨日の最高気温は32度。車内のラジオからは「良い季節がやってきた!」と喜ぶコメンテーターの声が聞こえてきますが、自分としては「少し暑すぎるのではないか」と・・・。そう思っていると、今日の夕方からは雨。行き過ぎるときちんと調整されるという分かりやすい気候です。

◆さて、レプラ工業エネルギー鉱業相の訪日について日経新聞の記事を引用して前回書きましたが、その中で触れられていたデジタルテレビについて、今日は少し書いてみようかと思っています。

◆南米と日本の経済関係を考えると、非常に疎遠であるということは否めないかと思われます。例えば、商社は南米の「ご当地産品」を日本向けに一本釣りするのが中心になっているようです(チリの銅とかブラジルの鉄鉱石等々)。最近では、ブラジルのルーラ大統領が訪日した辺りから「エタノール」という新しいネタが登場しましたが、それもこれまでのビジネスモデルの延長として描くことができるような気がします。

◆その中で、亜流として最近出てきているのが「デジタルテレビ」です。厳密に言うと、地上派デジタルテレビ放送方式とのこと。現在、世界では、デジタルテレビ方式について、大きく分けると、日本方式、米国方式、欧州方式の3種類に収斂されるそうです。その中のどれにするかについて、各国が検討に検討を重ねてきているという状態。といっても、方式の決定なので、直接商売にはなりにくい部分があります。

◆この3方式の国際競争ですが、聞くところによると、日本は必ずしも成功してきたとは言いがたかったそうです。例えば、自らの「裏庭」ともいえるアジア諸国を日本方式で固めることができず、欧米勢に負けてしまっています(例:韓国、台湾は米国方式で、豪州、インドは欧州方式等々)。

◆ところが、ブラジルが日本方式を決定した今年の6月から、日本方式にとって大きな転機がやってきました。決定に至った細かい話については、今月6日に纏められたこちらのレポートにお任せします。他の報道も含めた綺麗な見立てによれば、「後発であった日本方式はその分技術は先端であり、その点を純粋に評価したブラジル国内のテレビ局等が同国政府に圧力を掛け続けた」という構図のようです。同国政府には、欧州方式支持派などもいたようですが、テレビ局の意向を受けたコスタ通信相の政治的な勝利とも言われています。

◆ブラジルが日本方式を選ぶという「奇跡的な選択」によって、この競争に異変が起きようとしています。これまで、「米国の裏庭」であり、「旧大陸」の影響を否応にも感じさせられる南米においては、デジタルテレビ方式の競争についても、欧州と米国のせめぎあいになるというのが常識でした。ところが、日本方式がブラジルのお墨付きをもらったことによって、他の南米諸国にとって、日本方式が考慮するに値する対象になったと見られます。

◆また、ブラジルにとっても、日本方式を将来的には技術協力を通じて「ブラジル方式」又は「南米方式」に昇華させたいとする野心を持ち合わせており、彼らにとっての「南米統一方式」の実現は、地域大国の威信をかけてでも実現したいと見られています。その雰囲気を反映したのがレプラ工業大臣の日本経済新聞への発言であり、同相としても訪日の機会を捉え、日本でデジタルテレビ関係を所管する総務省に話を聞くのでしょう。日本としても伯の決定を突破口として、南米諸国に対して日本方式の決定へと導かせるチャンスがやってきたのかもしれません。

◆このような構図について何かに似ているなと思いましたが、昨年行われた国連改革におけるG4(日独印伯)の動きとダブって見えます。このときも南米諸国の多くはG4に組したかと思われますが、その背景にはブラジルの影響力の大きさがありました(つまり、「日本を支持する」のではなく、「ブラジルを支持するためにG4を支持する」というもの)。

◆一般的に、日本単独で南米に勇んで行くにはどうしても限界があるように思われます。その中で、南米地域では、ブラジルという強力な「紹介役」と緊密な関係を有することは損な話ではありません。今回のデジタルテレビをケースにとった日伯連携の可能性は、地域を隔てたパートナーの構築の一つの形を見せてもらっているような気がします。また、日本方式が南米統一方式へと広まった暁には、日本関係者にとって貴重な成功体験を得るのではと思われます。
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◆12日付日本経済新聞にウルグアイをテーマにした記事が登場したので、紹介しようと思います。

ウルグアイ、年内にサムライ債・産業相会見
 【サンパウロ=岩城聡】南米ウルグアイのレプラ・産業・エネルギー・鉱業相(64)は11日からの訪日に際して日本経済新聞のインタビューに応じ、「年内に日本で円建て外債(サムライ債)を発行する」と語った。ブラジルが地上デジタル放送で日本方式がベースの規格を採用したのを受け、ウルグアイでも「同方式が採用可能か、総務省と協議したい」とも述べた。
 隣国アルゼンチンの金融危機の余波で、同国は2002年の国内総生産(GDP)成長率がマイナス約11%まで落ち込んだが、牛肉を中心とした農牧産品の輸出をテコに04年以降は急回復しており、同相は「今年は6―6.5%、来年も5%の成長を維持する」と語った。こうした経済環境の改善に自信を深めて、国際資本市場から資金調達に踏み切る。 (07:00)


◆どうも話によれば、ネットの記事は要約だそうで、全文は同日付の国際面(5面)に掲載されているとのこと。是非紙面にもアクセスしてみてください。

◆レプラ工業エネルギー鉱業相(写真、注1)の訪日については、ウルグアイでも6日付のオブセルバドール紙にも取り上げられていました(注2)。その記事のトーンでは、サムライ債の発行の「マーケティング」活動を9月のIMF総会の時点から継続して行ってきており、今回も(報道によればレプラ大臣と同時に訪日するステネリ経済財務省債務対策室長が)その一環を行うとする経済財務省筋からの発言が掲載されていました。ちなみに、同紙によればサムライ債は「年内の可能性も捨てていない」という風に当国政府としては検討課題の一つに挙げている様子です。

◆レプラ大臣の訪日の意味を考えていくと、日本側からみれば、「ウルグアイの或る大臣の訪日」という些細なことに見えてしまいがちですが、実はウルグアイ側からはこの大臣の訪日の意味が日本とウルグアイの二国間関係において深い意味を持つことが透けて見えてきます。

◆まず、レプラ大臣は、日本に「たまたま」訪日するのではなく、実は先月中旬に中国を訪問しています(中国政府の招待との報道ですが)。その訪中を伝える記事では、レプラ大臣は「バスケス大統領は確実に来年訪中する」と発言しています。確かに、今年に入ってからもバスケス大統領は、アジア歴訪先として「中国とインド」と例示しています。そして、これらの国々に対してはFTAを含めた通商関係拡大の可能性をウルグアイ政府としても戦略として取り組んでいることが度々報じられています。

◆そのバスケス大統領アジア歴訪の中に「日本」という選択肢が出てきていなかったのですが、今回のレプラ大臣訪日によって、初めて可能性として出て来たことになります。レプラ大臣の訪日は、その点で「ウルグアイのパートナーとして日本は国益に適うか」というフィージビリティー・スタディーの意味合いも含まれています。言い方を変えると、レプラ大臣の目を通じて、アジアにおける通商パートナーとして「日本と中国のどちらが頼りになるか」と天秤に計っているのかもしれません(なお、レプラ大臣が訪問期間中に講演をするそうなので、関心の有る方はこちらまで)。

◆ウルグアイ政権内でレプラ大臣にその資格があるのかについては、次のように考えられます。まず、論功行賞が目立つバスケス政権の閣僚の中で唯一の民間出身(Texaco Uruguay)であり、自らも企業家として米国ウルグアイ商工会議所の会頭を務めていました。また、政治色がないので、バスケス大統領に信頼されていて、米国とのFTAを含めた通商協定締結に向けた協議では、ウルグアイ側の関係各省の取り纏め役を担っていました。つまり、ウルグアイの通商問題では、彼がキーパーソンであるということです。

◆以上のように、ウルグアイ政府が、ここに来て日本をパートナーとして検討する動きになりつつあることを日本側は勿怪の幸いとして良いのではと思っています。日経新聞のネット版の記事を見る限りでは、その弾(タマ)として目下検討されているのがサムライ債とデジタルテレビ方式のようです。それらの成り行きが嚆矢となって、次へのステップに結び付けていくかが試されているのかもしれません。また、レプラ大臣には、中国とは違った形において、信頼に足るパートナーであることを売り込む絶好の機会かと思っています。

注1:レプラ大臣の肩書きにある最初の「INDUSTRIA」が「工業」なのか「産業」なのかについては、日本大使館が「工業」、日経やジェトロが「産業」を用いているようです。ここでは前者を採用しています。
注2:ウルグアイのニュースについては、在ウルグアイ日本大使館が毎日地元紙のニュース記事の要約(スペイン語)をメルマガ方式で配信していますので、ご参考まで。
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◆最近のウルグアイの新聞記事は連載のようにアルゼンチンとのセルロース問題(アルゼンチン国境沿いにあるウルグアイ河岸の町フライベントス(写真赤線)に2つのセルロース工場を建設することにアルゼンチンが昨年来反対を続けている問題)が語られています。解決の見通しがつかないことでは、何となく中東の出来事のようにも見えてきてしまいます。

◆そんな折に、今朝の当地の新聞はセルロースに関する幾つかのニュースが同時に流れていたので、最近の当地の事情を整理するうえでも、少し書いてみます。

【その1】アルゼンチン政府関係者が世銀幹部に対してウルグアイが許可したセルロース工場への融資の差し止めを要求する

【その2】米州開発銀行総裁は、アルゼンチンにおいて、アルゼンチン・ミシオネス州に建設予定のセルロース工場建設にかかる融資の検討に入ることを表明(その席にアルゼンチン外相同席)

【その3】セルロース工場建設の再検討を発表していたENCE社(スペイン)は、新たな候補地を絞る段階に入った


◆まず、【その1】と【その2】のニュースに潜在する矛盾を矛盾とは思わないところが今のアルゼンチンを象徴しているような気がします。

◆【その1】のニュースでは、アルゼンチンは政府書簡をウォルフォビッツ世銀総裁に送り、その中でウルグアイ及びアルゼンチン国境沿いのウルグアイ河の均衡を達成することが重要であると述べ、従ってセルロース工場の建設は認められないと表明しています。国際司法裁判所は、既に7月の時点で汚染の影響が発生していない時点での工場建設停止を要求することは出来ないとアルゼンチンの言い分を却下しています。現在のアルゼンチンは、BOTNIA社の建設中のセルロース工場建設への世銀融資を差し止めることで実質的な建設を中止させようといった戦術を採っています。また、先日のイベロアメリカ・サミットではスペインが仲介役になる可能性もあるなど、色々な方程式が見え隠れしています。

◆セルロース問題を起因として停滞するウルグアイとアルゼンチンの二国間関係の一方で、アルゼンチンは【その2】を着々と進めようとしています。同工場の建設が進められるミシオネス州はウルグアイ河の更に上流にある地域で、パラグアイとブラジルとの国境に面しています。同州はセルロース工場建設には積極的であり、反対運動が活発な下流のエントレ・リオス州とは異なっています。

◆アルゼンチンの言い分としては、恐らく「これは別の州の話」ということであり、「対象となる河はウルグアイには面しておらず、改めてウルグアイに協議する筋合いのものではない」ということで淡々と進めていくのでしょう。もともとミシオネス州及びその周辺は植林の好適地とも言われていて、ユーカリ材の一次産品を同国内で付加価値をつけて輸出するということはアルゼンチン政府の思惑にも合致しています。「ウルグアイに付加価値製品生産に使われる」状況でなければ、アルゼンチンとしては、そもそもウルグアイ相手に議論をしている「環境」等々の問題などどうでもいいのでしょう。

◆【その3】に書かれているENCE社は、最近までウルグアイ河岸にあるフライベントスでセルロース工場建設を計画していた企業です。結局、様々な方程式によって、フライベントスでの工場建設を断念して、生産量を倍増するとしながらも、ウルグアイ国内の他の場所に工場建設を行う考えであることを表明しています。今日の新聞記事には、同じウルグアイ河岸のロジスティックの拠点とされるヌエバパルミラ又はウルグアイ国内でも太平洋岸に位置するロチャ県を候補になっているとの報道がされています。

◆外資(スペイン企業)が従来の計画から倍増すると発表しているのにもかかわらず、ウルグアイ国内ではENCE社に対して醒めた視線を投げています。というのもこの会社、ウルグアイがアルゼンチンと外交で戦っている最中に、ウルグアイ政府に相談することなく、9月の時点で従来の工場建設予定地には建設しないと発表したためです。それだけなら企業判断とみなすことが出来たのかもしれませんが、その数日後のアルゼンチンからの報道によれば、ENCE社は既にキルチネル・アルゼンチン大統領周辺と交渉を進めていて、6月の時点には手を打っていたとのこと。これで、ウルグアイは醒めました。

◆野党だけではなく、外資からの大型投資を喉から手が出るほど欲しがっている与党にとっても、ENCE社を信用しているとは見受けられません。わざわざ同社が最近「今後の拠点はスペインとウルグアイ」と大々的に発表しても、メディアまでが淡々と報じています。ENCE社の幹部が才に溺れたのか、単に振り回されたのかは知りませんが、今後のウルグアイのセルロース生産が右肩上がりになるかもしれない中では、「ババを引いた」感が否めません。
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◆ウルグアイ・モンテビデオで開かれていたイベロアメリカ・サミットは無事に終了しました。厳戒態勢の独立記念広場周辺には近寄ることもなく、金曜日と土曜日を過ごしていましたが、メディアから聞こえてくる限り、それほどの大きな騒ぎも無かったようです。ただ、果たして会場近くがどのくらいの警戒態勢をしていたのかについて、迷惑を掛けない範囲で自分たちとしては見てみたいこともあって、今日の午後、車で中心地まで行ってみました(といっても、車で10分・・・)。

◆クライマックスを過ぎたので、警官などの緊張感は感じられることがありませんでしたが、それにしても「人が少ない」。ただでさえ、普段から寂しさを感じさせるモンテビデオの街ですが、今日の曇り空も追い討ちをかけるかのように、街全体が沈んでいました。例えば、旧市街の広場にいる市民はベンチに腰を掛けた老人一人だけ。

◆これは何だろうなと思ってしまいました。別に裏づけもないのですが、この国の人は、上からの協力要請に対しては比較的好意的に対応するDNAが織り込まれている気がします。例えば今回の場合、「サミットの会場となる独立広場周辺は市民の入場規制をやっているので・・・」をお上が言えば、合言葉のように「近寄るべからず」ということを悟ってしまうわけです。周辺諸国の国民と比較すれば、非常に従順だといえます。これを民度の高さというか知りませんが、そのようなところをウルグアイ人を見ていると感じます。

◆さて、サミットの期間、街にはウルグアイ人だけではなく、観光客も少なかったようです。モンテビデオのダウンタウンにある最大のホテル「ラディソン」はサミット用に全ての部屋が貸切になった様子。更にサミット目的にやってきた仕事関係者は、他のハイレベルなホテルにも泊まっていたようです(自宅近くの「シェラトン」も同様)。

◆このために一般の観光客はモンテビデオを訪れることがなかったのでしょう。ひとまずホテルが満杯になっていることを当初は喜んでいた様子だったのはお土産屋。イベロアメリカ各国からお客がやってくるために、皮算用をしていたのですが、その結果は散々。当地の新聞記事に掲載されてもいますが、ビジネスでやってきた人々は、一般の観光客と比較して、お土産を買わないとのこと。特に、入場規制地区に店を構える地元でも有名な土産物屋は通常の50分の1程度しか儲かっていないとのコメントまでしています。

◆さらに、イベロアメリカ(特に中南米)の世界を旅した人は分かるのかもしれませんが、ウルグアイも他の諸国と似たようなものしか売っていません。そのような特徴のないお土産物(キーホルダー等々)をわざわざ出張者が買わないといったことも働いた様子。或る宝石商では、開店時間から午後2時まで訪問したお客が5名だったとのこと。「まるで墓地にいるようだった」とのコメントは政府への恨み節にも聞こえます。

◆では、その中でも売れた(差別化された)商品とは何だったのか気になるところですが、その新聞記事に書いてあったのがウルグアイのナショナルチームのユニフォームだったそうです。確かに、差別化によって他の南米諸国の心を捕えることができるのがサッカーだったとは何となく分かるような気がします。自分たち夫婦も昨年この時期の日本訪問の際のお土産にはサッカー関連グッズ(第1回W杯のポスターレプリカ等々)を持ち帰った記憶があります。

◆実は、このサッカー関連グッズの潜在力をまだウルグアイの土産物屋は気がついていない部分があったりします。今回の一件が転機となることができるのでしょうか。
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