<   2007年 05月 ( 6 )   > この月の画像一覧

◆南米の小国・ウルグアイを相手にしたビジネスを念頭に考えた際どのように付き合うのか。日本企業の観点からすると非常に見えづらいところがあります。その理由の一つとして、どのような産業が中心になりつつあるのか、そのトレンドが掴み難いことがあります。

◆例えば、在ウルグアイ日本国大使館は、毎日スペイン語でウルグアイ主要紙のニュースを希望者に配信するサービスを行い、南米に拠点を置く日本企業に対する一般的なウルグアイに関する情報不足の補完に一役買っているようです。ただし、それも飽く迄ウルグアイの毎日を伝える主要ニュースが中心であって、産業関係の動向に弱かったりします。

◆それでは、最近のウルグアイの産業にかかるトレンドをどのように把握できるのか。実は在ウルグアイ米国大使館関連のHPに眠っていたりします。例えば、同サイト内にあるIndustry Highlights 2007では、ウルグアイに関心を持つ米国企業に対して、次の20業種を注目業種として紹介しています。

・Agricultural Machinery
・Banking
・Building & Construction
・Cellular Telephony
・Chemical Products
・Cosmetics & Toiletries
・Electronic Security
・Energy
・Environmental Technologies
・Forestry
・Health
・Information Technologies
・Lawn & Garden Equipment
・Metalworking
・Pet Foods & Supplies
・Plastics
・Ports & Ships
・Security/Safety Equipment
・Telecommunications Services/Equipment
・Travel & Tourism

◆一見するだけでも将来性のある業界をしっかりと網羅していますし、何よりも「米国の裏庭」だと感じさせるのは、これらの業種を4名の在ウルグアイ米国大使館関係者でカバーしていること。人口300万人の市場に対してそこまで張り付かせる意味があるかは不明ですが、進出を検討する米国企業にとっては、それなりの価値があるのでしょう。

◆個人的な印象の域を出ませんが、これら業種のなかで日本企業が関与できているのは、今のところ、半分程度ではないでしょうか。ただ、一般的な日本とウルグアイの関係を鑑みるのであれば、その数字はかなり頑張っている方だと思います。

◆一方で、どうしても両国の関係を考える際には、輸出入額といった統計数字をまず見てしまいがちです。ところが、その呪縛にとらわれてしまうと、如何に輸出入を増やすかという発想に陥ってしまい、その結果ウルグアイからの輸入産品として牛肉やコメといった日本にとって神経過敏になる農産品がお題目のなかに入ってきてしまいます。これまで二国間の経済を軸にした関係向上を目指す際、建設的な議論が培われてこなかったのは、どちらかの側(又は双方)がこの統計数字の呪縛から逃れることができなかったからではないかと思われます。

◆しかしながら、そのような日本側の心配をよそに、バスケス政権発足以降における政権幹部の主眼はウルグアイ向け投資の拡大とそれによる新規雇用拡大であり、輸出入といったパラダイムに拘っていないように見受けられます。その意味では、輸出入ともに1%程度の実績しか残せていない日本が今後ウルグアイとの経済関係を深めることを考える際、現政権の思考回路は救いなのかもしれません。また、先の20業種を念頭においてウルグアイ向けのビジネスを模索することは、金額が小さいことが一番のネックになるでしょうが、必ずしも損な話ではないようにも思います。

◆二国間にとって大型イベントになるであろうバスケス大統領訪日が本当に9月に実現するかは不明ですが、いずれにしても、今後の二国間経済関係の将来を考える際、日本側は過去の輸出入偏重の立場から脱却して、投資等によるビジネス関係構築を念頭においた実績を重ねることが重要でしょう。先の業種は一つの参考になるような気がします。
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◆東京に来てから読めないのが天気。ウルグアイは50年に一度の大洪水に見舞われたと聞きますが、モンテビデオに住んでいた時には、風向きなんかで「今日は天気が悪くなるな」というのが天気予報を相手にしなくても感覚としてわかったものです(何よりも天気予報が当たらないので、自己防衛するしかなったからかもしれませんが)。ところが東京ではそんなわけにはいかず、結構情報不足のために痛い目に過去2ヶ月で幾度か遭っています。

◆さて、今日の話題は、2009年に行われるウルグアイ大統領選について。既に1年以上前にブログで書いていますが、ここ数週間、再びウルグアイ政治の俎上に乗ってきました。そして、今日の或るメディアではしっかりとテーマにしています。したがって、久しぶりに整理しても良いのかなと思って書くことにしました。

◆今回、メディアを通じて盛り上がった理由は、与党内の実力者、ムヒカ農牧相バスケス大統領の再選に向けた動きに対して好意的な見解を示したことに端を発しています。同相の率いる政党・MPPは与党連合・拡大戦線(FA)の最大政党を占めています。与党連合は21からなる左派の連合体であり、議員を出している政党でも8つの政党にわたっています。このような小政党の寄せ集めにも見える与党連合のなかで、MPPは3分の1の得票率を獲得するほどの影響力を持っており、与党連合の中では、一定の影響力を占めています。

◆ムヒカ農牧相は、その与党にあって、軍政時代前には、都市型ゲリラのリーダーとして「活躍」し、軍政下では獄中にあった経験を持ちます。現在でもネクタイを決してつけずに皺のよれた服装で政治活動をするあたりは、ウルグアイの庶民のカリスマであり、左派連合のマスコット的な存在でもあります。これまで、明確に大統領の再選について言及をしてこなかった同相の発言に、その直後から地元紙は1面に持ってくるほどの扱いをしていました。

◆なぜ、この段階で次の大統領選の話をするのか。すべては、バスケス大統領の再選に向けた動きがあるためです。過去のブログでも指摘しましたが、ウルグアイでは大統領の再選は憲法上認められていません。そして、2006年の1月時点では、バスケス再選に向けた憲法改正は「革命的」であり、国民は受け付けないだろうとする見通しを述べました。

◆ところが、1年以上経って、断続的にバスケス大統領周辺で大統領再選の可能性を政治的なアジェンダにするかのような発言とそれを受けたメディアによる報道によって、大統領再選反対の空気が少しずつ逓減されているような印象を受けます(つまり、ムヒカ農牧相発言は唐突でも何でもないということです)。このような情報誘導(綺麗に言えばPRですが)にバスケス大統領周辺は成功していると思われます。

◆1年前、次の大統領選は、バスケス大統領の名代として出馬するニン・ノボア副大統領アストリ経済財務相の対決になるだろうと述べました。過去20年近く与党連合(FA)を天才的な調整力によって維持してきたバスケス大統領に後継者は見当たらず、実は大統領当人もまだ引退する意思を持ち合わせていないということでしょう。それが、一連の大統領再選への政治的な野心に結びついているかと思われます。

◆実は、現在維持している与党連合(FA)ですが、バスケス大統領が頭領として位置しているから成り立っており、それ以外の人物(例えば、アストリ経済財務相、ムヒカ農牧相、ニン・ノボア副大統領)では、バランスが大きく崩れる可能性があります。恐らく国際金融機関や欧米諸国は、憲法改正がされないという前提で、経済成長を軌道に乗せているアストリ経済財務相が後継の大統領として相応しいと見るでしょうが、それでは与党連合が分裂する可能性が高いというのが自分の見通しです。「アストリ大統領」を実現させようとする際、それはウルグアイ国内の政界再編を含めた動きに発展する可能性も含まれるでしょう。

◆バスケス大統領としては、2008年には大統領再選の動きを開始したいと考えているでしょう。したがって、政治・経済面での成果は今年までに成し遂げる必要があります。税制改革、国家改革等々を今年中に公約を盛り込んで動かそうとしている理由はそこにあると見られます。来年以降は政治の季節。そして、2009年は大統領選挙にしか力が入らないでしょう。

◆果たして、バスケス大統領の野心が実るかどうか。ここまでバスケス大統領自身が周到な仕込みを行っておきながら、最後は今年10月に行われるアルゼンチンの大統領選挙の成り行きによります。つまり、出馬をすれば勝利が確実と言われているキルチネル・アルゼンチン大統領が再選に向けて出馬するかどうかです。もしくは、既に社会開発大臣(注:「上院議員」に修正 May 19 2007 21:21)となっているキルチネル夫人を大統領候補に仕立てるかどうか。

◆キルチネル大統領が出馬をして勝利した場合、ウルグアイにとっては不幸でしょうが、バスケス大統領自身は自らの再選シナリオに合致するため、個人的に喜ぶことでしょう。これで、ブラジルのルーラ、ベネズエラのチャベス、アルゼンチンのキルチネルといった風に、再選を含めた長期政権が望ましいという空気が醸成されてきます。

◆一方で、キルチネル夫人が出馬して当選した場合、バスケス大統領の再選は2008年の大きな政治的な課題となり、場合によっては支持を集めない可能性もあります。つまり、「アルゼンチンはキルチネルが降りたのに、ウルグアイはバスケスが権力の地位に恋々としようとするのは紳士ではない」という国民感情が生まれる可能性があります。ウルグアイ人は常にアルゼンチン人よりも知的で優秀でありたいという意識の強い国民性を有しています。野党がこの潜在意識をくすぐることに成功すれば、バスケス再選の道は険しいでしょう。

◆ただし、バスケス大統領としては、プランBとして自分が出馬しない場合の名代を準備しています。先ほど述べたニン・ノボア副大統領もそうですが、ウルトラCで登場する可能性があるのがバスケス大統領の弟であるホルヘ・バスケス首席補佐官代理(写真左)でしょう。同代理はこれまで2年間大統領府において黒子に徹していましたが、2007年に入ってから急速にメディアの露出度が増えました。また、現在は大洪水対策の担当を任されています。ここで政治的に成功すれば、今年又は来年のどこかで閣僚になる可能性も排除できません。与党連合がどこまでそれを支持するかは微妙ですが、次を狙う政治家同士の疑心暗鬼も深いところがあり、すべてはバスケス大統領の政治的野心に沿った掌の上で展開されているような気がします。
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◆前回のブログでは、今年9月と報じられているバスケス・ウルグアイ大統領訪日予定について、日本とウルグアイという二国間だけにとらえるのではなく、東アジアの他国との観点から着目してみてはと述べてみました。今日は、ウルグアイと東アジア諸国との関係を考える際に象徴されるであろう一つの材料を提供したいと思っています。

◆4月20日付の大統領府HPですが、ウルグアイの企業ミッションが5月10~12日に中国・上海で開催される展示会(SIAL CHINA)に出展するために訪中することが発表されました。また、同ミッションは、中国訪問の後、5月14~16日にかけて韓国にも訪問することも伝えられています。

◆企業ミッションを構成しているのはINAC(全国食肉協会)で、SIAL CHINAにおける同協会の出展ブースに参画する企業は、食肉加工企業6社になります。また、同ミッションでは、過去数年続けてきた展示会出展だけではなく、ウルグアイでトップクラスのシェフを同行させ、上海及びソウルにおいて、ウルグアイ産ワインとウルグアイ産牛肉の料理による試食(試飲)会が開催されると報じられています。実際に、ウルグアイ産牛肉のレベルを該当国の企業及びメディアに売り込むことが練られています。

◆まず、ここで注目したいのは、南米から30時間以上もかけた東アジアへの企業ミッションに際して日本は外されていることです。ウルグアイ側から日本側に何らかの打診が見受けられなかったことからすると、そもそもウルグアイから日本に対する関心を有しなかったということが垣間見えてきます。

◆ウルグアイにおける最大の産業は牛肉を中心とした食肉加工産業であり、輸出額の20~25%を占めています。2003年以降のウルグアイ経済が回復した一番の原因は、この主要産業が対米輸出によって活性化したことによります。それぐらいウルグアイでは食肉加工産業に対する位置づけは高いと言って過言ではないでしょう。

◆現在、ウルグアイから日本に対する牛肉の輸出ですが、まったくありません。これは、2000年にウルグアイ国内で口蹄疫が発生し、日本への輸出が出来なくなったためです。1998年に初めての牛肉輸出実績を記録して以来、対日有望産品になろうとしていたので、両国にとって不幸な出来事になりました。現在、ウルグアイはワクチンを接種した上での口蹄疫清浄国とされているので、米国等には積極的に輸出されています。ただし、日本は、ワクチンを接種していることは必ずしも清浄な状況ではないとする解釈を採っているので、ウルグアイ産冷凍肉及び生肉の輸入禁止が続いています。

◆両国間では、生肉・冷凍肉対日輸出解禁に向けた動きとして、昨年6月、日本の農水省はウルグアイ国内にある5つの工場に対して加熱処理肉の輸出を認めました(参考)。ただし、ウルグアイ側にとっては、飽く迄主眼は冷凍肉の輸出なのでしょうから、今後日本側との折り合う接点を見出すことは難しいのかもしれません。実際に、先述のとおり、解禁されてから現在まで、加熱処理肉の対日輸出実績はありません。

◆そのような状況下における今回の東アジアに向けたウルグアイ企業ミッションですが、構成員をつぶさに見ていきますと、先に述べた対日輸出のアクセスを持つ5つの指定工場に属する企業のうち3社がメンバーに入っていたり、さらに全国食肉協会会長がミッションに同行しています。例えば、今回の一連のイベントの企画者は全国食肉協会なのでしょうが、同会長は昨年11月、一度日本と韓国に訪れて農水省関係者と会談したこと報じられていました。また、日本を訪れた理由は日本において開催された展示会(「ボリビア・パラグアイ・ウルグアイ3カ国展」)に出展するためと聞いています。

◆その昨年の動きを受けての今回のミッションであれば、全国食肉協会としては韓国には将来が見えたのでしょうが、日本には次のステップを踏み出す価値を見出さなかったことになります。ちなみに、韓国は日本と同じくウルグアイ産冷凍肉の輸入を禁止しています。そのような最近の韓国の微妙な変化については、どことなく先般来の韓国のFTA戦略と符合しているきらいもあり、果たして日本政府がどこまで危機感を持っているかは不明です。

◆バスケス大統領の訪日(又は東アジア歴訪)の主眼が牛肉といったミクロな話になるとは思いません。先月のチリ及び中東諸国の歴訪を見る限り、バスケス大統領は「投資と貿易の促進」というテーマで複数の大臣を連れて陣頭指揮に立ってやってくるでしょう。そして、そのようなウルグアイ側の意図を既に中国及び韓国側は織り込んでいて、中国の場合は牛肉の輸入及び自動車産業の投資(奇瑞汽車社の動き)という布石を打っていますし、韓国の場合は中長期的なFTAを念頭に置いて牛肉関係で何らかの合意を模索してくると思われます。

◆それでは、日本ではどうなるか。細部に宿るものを信じるのであれば、牛肉のケースでは、「加熱処理肉の門戸を開放したのにもかかわらず、そもそもウルグアイ側に対日輸出の意欲ががない(ので先に進める必要性はない)」と言い張りそうな日本側と、「加熱処理肉解禁はそもそも興味がなく、肝心なのは冷凍肉の解禁だ」と言いそうなウルグアイ側の認識ギャップの可能性がすべてを語っているような気がします。この議論に接点を見出すのはなかなか難しいでしょうが、国益に立った観点から進めてもらい、「角を矯めて牛を殺す」ような力が日本政府内で大きく働かなければと見ています。
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◆前回、ウルグアイとチリの南米における地域戦略について書きました。南米で最も安定にしているチリと、最近の英エコノミスト誌で「チリに次ぐ存在」と高い評価を受けているウルグアイが、大西洋及び太平洋の玄関同士として、互いの新規市場開拓を支え合うといったものです。

◆このチリとウルグアイを結ぶ南米南部ゲートウェー構想の思惑ですが、恐らく両国では微妙に異なっていると思われます。例えば、チリの場合は純粋にロジスティックの観点から成り立っており、それはチリからアンデス山脈を越えて、最終的にはチリの産品を大西洋の窓口となるモンテビデオ港から欧州に向けて出す動脈が出来れば良いといったものでしょう。

◆一方のウルグアイの思惑ですが、バチェレ・チリ大統領との会談後の記者会見において、バスケス・ウルグアイ大統領は、チリとの戦略的連携によって今まで手が届かなかった新規市場に参画することが目的と明言しています。つまり彼にとってはロジスティックではなく、ウルグアイが未だに開拓でいない新規市場へのアクセス強化にチリに協力してもらいといったものです。

◆ここでいうところの「新規市場」とはアジアを意味します。これはバスケス大統領も明言しており、また同じ記者会見では、今年9月にAPEC会合の前後に合わせて、バチェレ大統領と共にアジアを歴訪することも視野に入れていると発言しています(ちなみに、ウルグアイ特有の新聞記者による双方織り込み済みの誘導尋問でしたが)。この同じ時期、ウルグアイの主要紙では、バスケス大統領が一番最初の訪問先が日本であると報道されており、それに続くように日本市場の特集が別の主要紙で取り上げられていました。

◆一連の報道を鵜呑みにすれば、バスケス大統領は、バチェレ大統領と一緒のタイミングで日本に訪問することになりますが、果たしてそれがウルグアイに効果的かについては意見が分かれるところです。好意的に解釈をすれば、南米南部の優等生国の2カ国が一気に日本に訪れることで、日本の反対側に位置する国々でも日本への期待は高いということをメディアに売り込みやすいといえるでしょう。ウルグアイの好印象を高める効果があるかもしれません。

◆しかしながら、バチェレ大統領は公賓として呼ばれている中で、日本政府がバスケス大統領を日本に招待したという話は聞いたことがありません。また、バチェレ大統領が訪日するのは日本とチリの修好110周年という大義名分があって、他にもモアイ像が遥々イースター島からやってくるという一大イベントまであると聞いています。そこからすると、バスケス大統領が如何に行きたいという願望をもっても、官民含めた日本側の準備不足の感は否めません。ましてや同じタイミングになった場合は、バチェレ大統領が映えるだけで、バスケス大統領が埋没する可能性もあります。それはバスケス大統領も希望しないところでしょう。

◆だからといって、訪日延期という選択肢を日本側から申し出ることも安易であり、芸がありません。折角バスケス大統領がその気になっているのですから、日本側としては現地の官民が主導になって持ち駒の中で最善のものを作り上げていくべきでしょう。それは決して日本の都合で済まされる問題ではなく、ウルグアイにおけるアジア諸国のプレゼンス競争の観点からも考慮されるべきかと思量します。その一例として、同じ東アジアの中国や韓国の場合、バスケス大統領が9月に同国を訪れても遜色ない準備を粛々と進めています。その様子については、次回に譲りたいと思っています。
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◆この一ヶ月間、バスケス・ウルグアイ大統領は、4月第2週にチリ、4月第4週から5月第1週にかけてアラブ諸国というように外遊を2度行いました。いずれも企業ミッションを同行させており、前者で50名、後者で20名ほどが集まったとのこと。バスケス大統領が陣頭指揮に立って海外各国への投資誘致及び経済活性化の行脚をおこなっている様子が垣間見えます。今回は前者のチリ訪問をテーマにします。

◆今回、バスケス大統領がチリに訪問する準備は、実は昨年11月下旬あたりから形になってきました。その前捌きを行ったのがアストリ経済財務相。ウルグアイがチリに目を向けた背景には、昨年9月の米国とのFTA協議未遂があります。それまでのバスケス政権の通商政策は、米国一辺倒であり、実質的に通商政策を牛耳っているアストリ大臣を筆頭とした「経済チーム」(共和国大学経済学部出身者を中心とした政府高官グループ。経済財務相の下に経済財務次官、同省マクロ経済顧問、関係局長等が該当します)がバスケス大統領の内諾のもと、ガルガノ外相をはずした形で進められてきました。

◆ところが、バスケス政権内に存在する反米勢力の抵抗によって、政権の二極分化回避を優先したバスケス大統領は米国とのFTA協議を凍結。その結果、米国政府に対して前のめりになって交渉を進めてきた「経済チーム」は梯子を外される結果となりました(この凍結によって、当時下準備を進めていたサラチャガ経済財務省局長は抗議の辞表を叩き付けたりしました)。そして、この政治的な敗北を前にして、「経済チーム」は暫く開店休業の状態になり、バスケス政権は米国一辺倒からの戦略立て直しを迫られました。

◆その戦略立て直しに対する当座の回答がチリとの戦略的連携であり、「経済チーム」の誰の発案かは知る由もありませんが、アストリ経済財務相はチリに訪問をして、前捌きを行ったのです(ご参考まで、ここまでは過去のブログでも触れているはずです)。ただし、このときもアストリ大臣は前のめりの姿勢を崩しておらず、チリとの経済提携の選択肢の一つに二国間FTAを加えていました。その積極姿勢に対して、元来二国間FTAには反対の姿勢を貫いているガルガノ外相は、今年1月にチリを直接訪問して釘を刺すなど、「ポスト米国」においてもバスケス政権閣僚間での鞘当が続いていました。

◆今回のバスケス大統領の訪問を通じて見えてきたことは次のとおりです。(1)ウルグアイとチリ両政府間で経済協定等を3ヶ月間で形にすること、(2)二国間FTAには触れず、チリとメルコスール(南米南部共同市場:ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラが加盟)との関税撤廃時期の前倒しを呼びかける、(3)チリは対太平洋諸国、ウルグアイは対大西洋諸国とのゲートウェーとして戦略的な経済関係を構築すること、等があります。

◆(1)については6つの協定が署名され(9つという報道もありますが)、それを7月までに具現化するのですが、そのベースになっているのが(3)で指摘した南米南部ゲートウェーという新しい発想です。これはどちらかというとバチェレ・チリ大統領(写真左)のアイデアのようで、それにバスケス大統領は彼女のアイデアに乗ったと見られています。ウルグアイの経済財務省内では、これまでに米国の他に中国とインドとのFTAを含めた経済協定の検討をしていますので、アジアへの窓口としてのチリの役割の申し出は有難いものになります。また、報道でもありますように、既に50以上もの国々と二国間FTAを締結しているチリと経済関係を強化することは、メルコスール以外の市場の確保を命題としているバスケス政権に大きなメリットになります。

◆また、(2)については、アストリ経済財務相の過去の発言からはトーンダウンしています。これを見て、ウルグアイがブラジルやアルゼンチンといったメルコスール加盟国に屈したと判断するのは早計でしょう。バスケス政権(具体的には推進役のアストリ経済財務相)は、米国FTA協議未遂という失敗から教訓を学んでいます。それは、名より実をとるということです。米国FTA協議の際には、話だけが先行してしまい、実質的なメリットは省みられることはありませんでした。それ以降のバスケス政権はメディアを踊らせるような真似は慎み、ローキーの中で既成事実を構築していく戦術に変えています。具体的には米国とのTIFA(二国間投資枠組み協定)があります(詳細は別に機会に話すとしましょう)。今回のウルグアイ・チリ首脳会議における声明でも、ブラジルやアルゼンチンが注目しているなかで、彼らに言質を与えないという賢明な判断をしたと理解すべきでしょう。

◆南米の優等生であるチリと、それに次いで(南米諸国の中では)国際的な評価が高いウルグアイが戦略的な提携を結ぼうとする動き。「南米=ブラジル」だけではない新しい視点を持つことがあっても良いのではないでしょうか。
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◆ほぼ一ヶ月ぶりに書いていますが、理由は新居にネットが開通したため。その間にも毎日平均して100件以上のアクセスがあったようで、改めて読者の皆様に御礼申し上げます。既にウルグアイについては浦島太郎状態なのかなと認識していますが、それでも情報は何かと集まってくるので、その一端でも紹介しながら、引き続きウルグアイ等を眺める方々の一助になればと思っています。

◆手始めに、最近の南米の大統領支持率を紹介してくれるサイトを目にしましたので(参照)、そこを抜粋した形で、少しばかり大統領支持率を通じた南米諸国の様子をお知らせしたいと思っています。

<南米諸国の大統領支持率>
1.コレア・エクアドル大統領 76% (4月調査)
2.ウリベ・コロンビア大統領 72% (3月調査)
3.モラレス・ボリビア大統領 64% (4月調査)
4.バスケス・ウルグアイ大統領 60% (4月調査)
5.キルチネル・アルゼンチン大統領 57% (4月調査)
6.ルーラ・ブラジル大統領 53% (4月調査)
7.ガルシア・ペルー大統領 50% (3月調査)
8.バチェレ・チリ大統領 49% (3月調査)
9.チャベス・ベネズエラ大統領 41% (2月調査)
10.デゥアルテ・パラグアイ大統領 33% (昨年11月調査)

◆この統計を見て、最初に注目したのは、南米の大統領支持率は総じて安定しているということです。例えば、今から2~3年前にも南米各国の大統領支持率を拾った記憶があるのですが、その際にはエクアドル、ペルーあたりの大統領支持率は20%を切っていたはずです。2006年には立て続けに南米各国で大統領選挙が行われましたが、それらを通じて、各国政府は有権者への「ガス抜き」は無事に終了した形となり、少なくともこれから1年程度は安定期になるのではないかと思われます(その意味では、パラグアイの場合は有権者の大統領に対する嫌気が背景にあるようです)。なお、2008年以降は、米国経済に大きく左右されながら、南米経済も成長率が鈍化するでしょうから、各国政府とも一つの正念場を迎えることになるでしょうし、各国政府ともそのような外的要因の煽りを受けないように色々な仕掛けを模索しているようです。

◆次に、政権発足直後の安定期を最大限に活かした成功例として最近のエクアドルの動きがあるように思っています。4月15日に制憲会議の設立にかかる国民投票を行い、8割近くの支持票を通じて、コレア大統領は議会に対して政治的な勝利を得る結果となりました。この政治的改革に向けたアプローチはベネズエラ及びボリビアの例を踏襲するもので、故に「急進左派」と呼ばれる所以の一つになっていますが、大統領選挙に勝利した勢いをそのままに、公約の大きなテーマの一つを実行に移したことは、過去のエクアドル大統領との違いを明確にさせ、国民の期待を更に高める結果になったのでしょう。ビジネスの世界を中心に海外からの目は厳しいものがありますが、国内の支持率の高さは、1979年の民主化以降騙され続けたと感じる有権者の期待値が維持されているものだと理解できるでしょう。「内」と「外」で見えてくるものが変わってくる一例です。

◆先の一例に加えるべきなのがベネズエラかもしれません。最近はそれほどではありませんが、「南米=左派」とレッテルを貼りたがる日本人は多く、その旗頭となっているチャベス・ベネズエラ大統領に対するイメージは多少誇張されつつあるようにも思われます。確かに、外向けの行動は派手ですし、国内向けの政策についても石油マネーを駆使している様子ですが、足元はそれほどまで磐石ではないのではと示唆するのが今回の世論調査ではないかと思われます。

◆数字だけで評価することには隔靴掻痒の感が否めませんが、一つの国だけではなく、他国と比較することにそれなりの価値はあるように思われます。
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