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◆2007年はウルグアイの政権与党・左派連合(FA)にとっては受難の年になったのかもしれない。ウルグアイの世論調査会社FACTUMは四半期ごとに「もし今週末に大統領選挙が行われた場合、どの政党に投票するか」という調査を行っている。今年に入って、FAは57%→52%→47%→44%と着実に支持率を落としている。この支持率は2002年のウルグアイ経済危機以降では最低のレベルである。

◆ウルグアイには主要な世論調査会社として、FACTUMのほかにCIFRAEquipos/Moriがあるが、支持率に関して、CIFRAではバスケス大統領の支持率が59%(6月)から46%(9月)に急落したと伝え、Equipos/Moriでは9月にバスケス政権の支持率を40%、不支持率27%と発表し、その差がこの半年で5%縮小したことを伝えた。総じて与党にとって厳しい数字ばかり目立つ。

◆このような支持率の低下の背景には様々な分析が出ているが、概して高まるインフレ率や7月から実施された税制改革などが主な要因であると伝えられている。特に、2005年大統領選挙で従来の2大伝統政党(コロラド党と国民党)からFAに乗り換えた中流所得層にとって痛みが伴う政策が続いたためとの見方がある。

◆冒頭のFACTUMの調査でもFA離れ・伝統政党回帰の傾向が紹介されており、国民党が31%(9月)→34%(12月)とFAを補完するように増えている。ただし、コロラド党は9%(9月)→9%(12月)と頭打ちの状態が続いている。一概に言えない部分もあるが、FAとの選択肢として、ウルグアイ国民はどちらかというとFAと思想的に近い国民党に対抗勢力としての期待を持ち始めていると見受けられる。

◆一方で、FACTUMのトップであるボティネリ氏(政治評論家)が面白い結果を紹介してくれた。それは、同社が先日発表したバスケス大統領の支持率である。9月の時点で47%まで下がり続けていたが、12月の調査では52%に回復した。これまで、バスケス大統領の支持率と冒頭調査によるFAの支持率は、一方が上がればもう一方も上がるといったように、足並みが揃っていた。ところが12月の調査によって、バスケス政権発足後初めて、バスケス大統領とFAの支持率が枝分かれする結果になった。

◆ボティネリ氏によれば、この調査結果の原因としては、(1)6月にバスケス大統領が再選を目指さないと述べたことでウルグアイ国民はバスケス大統領とFAを別の存在として見做すようになってきた、(2)バスケス大統領のいないFAに魅力を感じない集団が出てきている、と分析している。この調査結果がバスケス大統領の再選をウルグアイ国民が期待していることには直結しないが、FAは続いている支持率下降傾向に歯止めをかけて、2009年に行われる次期大統領選挙に勝つことを考え始めなければならない。FAにとっては2008年が鍵になる年になるだろう。
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◆久しぶりにウルグアイ情報に耳を傾けてみると、ブログに書きたいことが色々と出てきます。在ウルグアイ日本大使館では、ウルグアイのニュースをスペイン語で伝えるメール配信サービスがあり、現在でもほぼ毎日メールが送信されてきます。ただでさえ、情報寡少なウルグアイの情報の取っ掛かりを得る(またはスペイン語を忘れない)上では大変参考になります。ちなみに、自分の知る限り、このように公に対して継続的に情報を提供する在外公館はないはずで、小国の在外公館における情報提供の一つの試みだと思ってみています。

◆そこでメール配信された資料に目を通してみますと、12月11日付のエル・パイス紙の報道では、来年早々にバスケス大統領は幾つかの閣僚を交代する意向であると伝えられています。早速、エル・パイス紙そのものに目を通しますと、来年2月のバスケス大統領の夏休み明け(南半球なので、夏休み)には、閣僚交代を発表することを決めた模様と強めの論調になっています。

◆具体的な交代閣僚候補ですが、ベルッティ防衛相、ブロベット教育相、アラナ住宅土地整備相、ガルガノ外相(写真参照)の4閣僚。そして、外相の後任にはレプラ工業相が就き、工業相の後釜にはマルティネスANCAP(石油公社)総裁が就任する見通しと報じられています。ちなみに、最近でも外相交代の見通しにかかる報道がされていたようですが、その際の後任人事は、外相をジアネリ駐米大使として、駐米大使の後任にレプラ工業相を宛がうといったものでした。

◆この人事から垣間見えてくるのは、バスケス大統領は政権の前期と後期でスタイルを変えていきたいという意欲です。バスケス政権は今年9月で任期5年の半分を経過したことになりますが、前期の組閣人事は論功行賞の色合いが極めて濃いものでした。例えば、与党・左派連合(FA)の主要派閥の領袖はいずれかの大臣に就任していましたし、バスケス大統領が組閣を嫌ったとされるガルガノ上院議員・社会党党首(当時)に対しても最終的には外相ポストを渋々容認した経緯がありました。

◆皮肉にも、バスケス大統領のここ1~2年における政権の命題の一つは「いつガルガノ外相を追い出すか」ということでした。冷戦時代的な左派(というか左翼)の思想を持ち合わせているガルガノ外相が外交のトップにいたことで、ウルグアイの外交は硬直化し、大統領周辺の意向とは乖離した一貫性のないものになりました。例えば、米国との関係ではFTA(自由貿易協定)に至るチャンスがあったものの、嫌米で鳴らしているガルガノ外相が強硬に反対を続けたことで純粋な通商外交を通じた貿易の拡大がいつの間にか派閥間の政争の具に矮小化され、結果としてウルグアイは2006年9月、米国とのFTAを断念しました。

◆一方で、ガルガノ外相が夢見ていた左派の首脳陣が結束した中でのメルコスール(南米南部共同体)統合の強化は実現の程遠い状況にあります。一例を挙げますと、現在ウルグアイとアルゼンチンの間で紛糾しているセルロース工場問題は両国間の協議が相変わらず停滞している様子ですが、その交渉役としてバスケス大統領はガルガノ外相ではなく主にフェルナンデス大統領府長官に交渉を任せている状況が続いてきました。過去に交渉過程でガルガノ外相はアルゼンチン政府を怒らせる真似をした前科があり、バスケス大統領はその任から外したというのが実情です。ガルガノ外相のメルコスールへの片思いによって、ウルグアイは他のメルコスール加盟国(特にブラジルとアルゼンチン)から足元を見られており、交渉カードを持ち合わせていない状況に陥っています。

◆ウルグアイとアルゼンチン両国の紛糾をケースにみても、メルコスール(南米南部共同体)が一つの共同体として成り立つことの限界を垣間見るケースになっています。また、ウルグアイのような小国が外交で首尾よく立ち回る場合は、常に複数の選択肢を持ち合わせたなかで、本心を晒すことなく、相手国政府と交渉を行うことが好ましいことをここ数年で証明したのではないでしょうか。バスケス大統領としては、個人的な好き嫌い以上に、国益の関係からもガルガノ外相の退場をソフトランディングで進めていく方法をこれまで考えてきたと思われます。それが今回の閣僚の交代話なのでしょう。

◆ガルガノ外相交代の噂はこれまで何度も出てきていますので、本当に来年2月に交代するかは不明ですが、そろそろ次の大統領選挙(2009年)がちらついてきて、後継者にとって引き継ぎやすい環境に導くのが与党を引っ張るバスケス大統領の一番の仕事でもあるでしょうから、このタイミングでの閣僚交代は理に適ったものに思われます。
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◆日本に戻ってきてから8ヶ月近く過ぎ、このブログへの書き込みも暫くご無沙汰していました。その間にブログのアクセス総数は20万件を突破しており、これも皆様のお陰だと思っており、改めまして御礼申し上げます。年の瀬のご挨拶も兼ねて書き込ませてもらっています。

◆週末は友人の紹介を受けて、銀座で開かれていたワインの試飲会に。ウルグアイ滞在中には夫婦して地場のワインを飲み続けていましたが、どうしても日本に戻るとコストパフォーマンスとの兼ね合いから色々なワインを試すことがなくなりました。何せウルグアイでは輸出用の樽仕込のワインでも8~10ドル程度で売られているのですから、随分と贅沢な時間を過ごしたと思います。

◆そもそも、ウルグアイでワインを生産・輸出していることは知られていません。南米のワインといえばチリであり、それに最近アルゼンチンが知られるようになってきた程度でしょうか。ウルグアイ・ワインの対日輸出の実績を調べてみますと、2006年及び2007年は4千ドル程度に過ぎません。ケースにしても400~500ケース(6本入り)程度のようです。言ってみれば、趣味の域を出ないような商いで終わっています。

◆そこで興味本位に何処のワイナリーが輸出しているのか確認してみると、ここ2年間はEstablecimiento Valle Mariaというところが主です。ウルグアイ・ワインについて少しばかし知識を蓄えてきた自分でも知らないようなマニアックなところが実績を出しています。 この他にも、最近3~4年間に、ウルグアイ・ワインとして比較的多く対日輸出された銘柄がありますが、いずれも「フランス・ワインとの抱き合わせ販売で日本にやってきた」とか「糖分の入っていないオーガニック・ワイン」という曰く付きのワインばかりで、そのような方法でしかウルグアイ・ワインは売れないんだなと観念した記憶があります。

◆ウルグアイ・ワインが普及しない理由は、日本市場においてウルグアイ・ワインが「割に合わない」と買い手も売り手も思っているからでしょう。現在、東京都内でもウルグアイ・ワインを2銘柄ほど売っている店(写真参照)がありますが、一つは2,100円で、もう一つは3,500円周辺で販売されています。ウルグアイ・ワインの「売り」の一つは、タナット種という独特の濃厚なブドウ種にあるのですが、同じワイン・ショップ内でアルゼンチン産のタナット種も同じ価格帯で売られていることを考えると、改めて「未知の国」のワインのために2千円を落としてくれる客はまずいないでしょう。

◆また、ワイン通であれば話は別なのかもしれませんが、ワイン初心者の手に届く価格帯は1千円台までのような気がします。同じ南米の国々のワインであれば、チリやアルゼンチンの有名ワイナリーの銘柄で、この価格帯でお得感のあるワインを十分見つけることができます(例えば、チリのMontes Alpha)。そのような強豪相手に、ウルグアイ・ワインが2千円台以上の価格設定であるのは、更に普及を難しくする結果になっています(実際に先の店では売れている形跡が見られませんでしたしね)。

◆2006年11月にウルグアイ産品を取り扱った展示会がジェトロ(日本貿易振興機構)で開かれましたが、その直前に地場のワイナリーに対して「お宅は出展を考えないのか?」と個人的に尋ねた記憶があります。オーナー連中の答えは、「同じものを売るとして、日本市場と北米市場のどちらにチャンスがあるかと考えると、それは北米市場だ」ということでした。ウルグアイの売り手の立場から考えると至極真っ当な発想であり、そのような結果ウルグアイのワイナリーからその展示会への出展はありませんでした(試供品としてウルグアイ・ワインが配られていたようですが)。

◆そのようなオーナー連中の動きを裏付けるような統計を紹介しましょう。2007年1~11月期のウルグアイ・ワインの輸出額ですが、833万ドルを記録し、昨年同期比90.5%増になっています(この数字を見ても分かるように、ワイン輸出額は少ないです)。主なワイン輸出先ですが、ブラジル(305万ドル)、ロシア(171万ドル)、米国(63万ドル)、カナダ(57万ドル)、英国(26万ドル)となっています。特に、ブラジルへの輸出急増(昨年同期比2.5倍)とロシアという新規市場開拓の成功がウルグアイ・ワイン輸出の急増に資しています。

◆このように、日本市場でウルグアイ・ワインが普及する可能性は低いと思われますが、それはボトル・ワインの話であり、バルク・ワインであれば他地域の代替としての可能性があるかもしれません。ただし、その場合でもウルグアイ単独というのは考えにくいでしょうから、隣国アルゼンチンとのワンセットで考えるとかいったものになるのではないでしょうか。いずれにしても、供給側が主体的に何かを展開することは非常に考えにくく、需要側の意向に大きく左右されると理解して良いかと思います。

◆そのように考えてしまうと、われわれ日本の消費者が美味しいウルグアイ・ワインを口にするのは難しいようです。せめてもの朗報として、ウルグアイ・ワイナリーの大御所であるJuanicoの対日輸出実績が2007年後半にありましたので、もしかすると何処かのお店又は通販サイトでお目にかかる機会があるかもしれません。また、Juanicoほどの生産量ではないものの、評価の高いToscaniniのワインも先日或る通販で案内されていました。個人的にはこの二つの銘柄はおススメします。
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