<   2008年 03月 ( 6 )   > この月の画像一覧

◆以前、ウルグアイワインの話をしました。その際には、東京の虎ノ門近くにあるワイン・ショップで確認できる以外は存在しないといったことや、一方で名の知れないブランドのウルグアイワインが日本に上陸しているようだとも言及しました。その後、その正体(?)を確認すべく少し調べてみましたので、今日はその報告でもしてみたいと思います。

◆はじめに、おさらいとして、ここ最近までのウルグアイワインの対日輸出については、ウルグアイ側にとって王道を歩んでいないような歴史がありました。例えば、糖分のないワインが2005年に1000ケースほど輸出されるとか、フランスのワイン会社がウルグアイワインを抱き合わせとして日本の会社に買ってもらったとかいったものです。必ずしも、ウルグアイワインの質が評価されたものではなく、「結果的に」日本に輸出されてしまったようなものが多かったように思われます。そして、メジャーなウルグアイのワイナリーはブラジル、北米、欧州を向いていました。

◆たしかに、ウルグアイでは、付加価値がつくという理由からボトルワインを日本に売りたがるワイナリーの担当者をたくさん見てきましたが、ウルグアイ在住当時、個人的にはボトルワインの輸出は時期尚早だと思っていました。そもそも在庫があまり気味である日本の買い手企業が取り立てて売り込み材料のないウルグアイワインの面倒を見るとは思いませんでしたし、彼らが売りたい価格帯と日本の市場のニーズとがマッチしませんでした。したがって、一部の日本企業の方々には、現地調査も含めて、まずは南米南部の一つの国として、ウルグアイ・ワインはバルクで買う可能性を検討してもらうべく動いた記憶があります(残念ながら商売としては結実しませんでしたが)。

◆一方、2006年から和香イマール社が試験的にウルグアイワインを輸入していることが確認できました。Valle Mariaというウルグアイでは必ずしもメジャーではないワイナリーからでしたが、ある日本人を介して輸入まで至ったようなことを仄聞しています。この会社は2007年秋からは本格的にウルグアイワインの輸入を開始し、2008年2月までに740ケースの輸入すると見られています。

◆また、調達元を増やすべく、ウルグアイで一番の名門であるJuanico、そしてモンテビデオの空港近くで展開するCarrascoといったワイナリーからそれぞれ900ケースと250ケース程度を輸入すると見られています。また、同社は先週行われていたFoodexで唯一のウルグアイワインのブースとして出展していました。

Juanicoはこれまでにも2001年に200ケースほどの対日輸出の実績がありましたので、それを比較しますと、今回の和香イマール社の力の入れようがわかります。今後の注目点ですが、今回の輸入分を果たして売り捌くことが出来るのかということでしょう。Valle MariaやCarrascoはマイナーなブランドである一方、Juanicoは一定の評価を受けることができるかもしれません。北米や欧州でもJuanicoは恐らくウルグアイワインの中では一定の支持を得ているようです。

◆ただし、一番のネックは値段です。今回のJuanicoのラインですが、クラシックが2,500円(タナット)と2,880円(タナット&メルロー、シャルドネ)であり、レゼルヴァが3,900円です。そこまで払ってウルグアイワインを飲みたいという人はそういないと思います。南米からは、これらラインよりも品質も良い他国のもの(例:チリのモンテス・アルファやアルゼンチンのマルベック種のライン)を1,500円~2,000円で手に入れることが出来ます。

◆また、ウルグアイ国内の大手スーパーでは、本日現在、クラシックが114.50ペソ(約550円)、レゼルヴァ149ペソ(約720円)で売られていることを考えますと、リスクに見合った価格設定というよりも競争相手がいないためという価格設定のようにも見受けられます(たしかにウルグアイ側でも仲介する企業がいることも承知はしていますが)。ちなみに、欧州ではこのJuanicoのクラシックのラインが1,000円周辺で購入可能と仄聞していることからしても、日本での価格設定は高めではないかとの印象を覚えます。

◆ウルグアイワインを最初から価格競争に晒すことなく、一つのブランドとして攻めることも一案なのかもしれませんが、知られていない状態でそのような高等な戦略を描いた場合、絵に描いた餅になり兼ねないのではないかと老婆心ながら思ったりします。とはいいながら、最後に、これらウルグアイワイン、4月以降にスーパーなどでお目にかかる機会があるかもしれません。ご関心のある方は直接和香イマール社に問い合わせては如何でしょうか。
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◆7日、ドミニカ共和国の首都サント・ドミンゴで開催された第20回リオ・グループ首脳会議では、1日に起きたコロンビアによるエクアドル領土内おけるゲリラ(FARC)掃討行為について議論されました。「ここ10年間のラテンアメリカにおける最も深刻な外交問題」と報じるメディアもある中で、果たしてどのような展開になるのか注目を集めていました。会議の結論として、ウリベ・コロンビア大統領は越境行為につきエクアドル政府に対して謝罪をし、今後FARCを攻撃する際において越境を行わないことでひとまずの決着を見ました。

◆まず、ラテンアメリカの首脳もメディアも含めて、今回の首脳会議で問題が終結するとは思っていませんでした。先日もお知らせしたとおり、当事者も周辺諸国も問題解決までの一番の山場は17日の米州機構外相会議あたりになるだろうという見通しの下で動いている節がありました。実際、7日の会議ではエクアドルとコロンビアの両首脳が席上で激しく互いを非難していました。当事者両国がラテンアメリカ諸国に対して説得を試みた内容は、エクアドル側が今回のコロンビアが行為が非難に値する点であり、コロンビア側は同行為に至らしめた過去40年間続く内戦への理解を求める点でした。

◆コロンビアは1日の掃討作戦の際に押収した資料の中からFARCが先のエクアドル大統領選でFARCがコレア大統領を支持したとするものがあり、そのような関係が見られていた中で、たとえば事前にコレア大統領に通知していた場合、作戦そのものが成功しなかっただろうと述べていました。コロンビアの作戦は、自らの行為がFARC撲滅(内戦の勝利)という大義のもとであれば容認されるものであり、世界中で展開されている「テロとの戦い」の一環であるという立場を改めて述べたものでした。

◆エクアドルは、FARCとの関係を全面的に否定するとともに、FARCのエクアドル越境等を指して、エクアドルがコロンビアで展開されている内戦の被害者であると述べています。つまり、ゲリラ(コロンビアでいうところの「テロリスト」)を入国させるようなリスクを敢えてとるような国がどこにあるという論理です。また、コレア大統領はウリベ大統領からのテロ掃討作戦の報告を受けた際、「エクアドル国境沿いのコロンビア国内」との説明をしており、そのような不誠実さを指して「嘘吐き」と公然と批判しました。

◆このような両者が正面から衝突するような事態に際して、動いたのが幹事国であるドミニカのフェルナンデス大統領と、いつものようにチャベス・ベネズエラ大統領です。後者については、ここまでマッチポンプ役を徹すると、呆れるよりも一つの才能であるとそれなりに評価しないといけないのかなと思ってしまいます。そして、最終的に出来上がったのが第20回リオ・グループ首脳会議宣言になります。

◆その宣言の中身が冒頭に書いたウリベ大統領の謝罪と今後越境軍事行為を行わないとする確認です。会議の中でコレア大統領は「今回の問題の唯一の根源はウリベ大統領にある」と発言していますが、コロンビア政府がその認識を認める結果となりました。個人的には過去のブログでそれが解決方法と示唆してきましたしたので当然であると思っています。一方で、コロンビアの面子を保つ意味からも、合意書ではコロンビア政府が指摘するコレア大統領とFARCの関係性についてエクアドルの司法が手続きをとることも約しています。どこまでの拘束力があるかは知りませんが、コロンビアとしても手ぶらでは帰れないので、一定の配慮が働いたと見ています。

◆これで、ひとまず「危機」は去ったことになりますが、当事者のアンデス山脈3カ国(ベネズエラ、コロンビア、エクアドル)がそれぞれ得して終えることになりました。まず、ベネズエラはコロンビアを批判をしつつ、FARCとの和平の有力な仲介役になり得ることを再確認し、更に最後は調停役とした超然とした役割を担うことが出来ることを内外にアピールできました。要はマッチポンプなのですが、この政治的な立ち回りは大したものです。

◆次に、コロンビア。収穫はFARCのナンバー2を殺害することができたということでしょう。彼らの誤算は、彼らにとっての「些細な」越境がラテンアメリカ全体の問題に波及したことでした。そして、7日の会議によって、問題が拡散することを止めたことも懸命な判断となるでしょう。報道によると、新たにFARCの幹部7人衆のもう1名が殺害されたと伝えられており、FARCそのものが不安定化しているのではないと見る向きもあります。

◆最後に、エクアドル。これは、コレア大統領のリーダーシップをアピールする格好の機会となりました。危機を好機に変える成功例と見ることができます。今回のコロンビア越境問題を契機とした危機を前にして、迅速に国交を断絶するとともに、南米各国に自国の立場を理解を獲得することに成功。更にコロンビアから謝罪を勝ち取ることに成功しました。リオ・グループ首脳会議開始前の支持率は80%に上昇したと報じられており、今後の政治活動に大きく資することになるでしょう。どの国もただでは転ばないとは、なんとも政治の真髄を見るような気がします。
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昨日に続いてコロンビア軍越境事件について。事件の発生後、南米にとどまらず、北米までも巻き込んで、各国は積極的な動きを続けています。ロイターによれば、新しい動きとして、ベネズエラの「友好国」であるニカラグアが「エクアドルとの連帯」を表明するためにコロンビアとの国交を断絶するなど、局地的に解決できた事態が時間の経過とともに拡大を見せています。今日は、各国の事情などを踏まえながら、この問題を考えてみたいと思います。

◆3月6日付のOppenheimer Reportでは、この事件について書かれています。論旨から汲み取るに、今回はコロンビアがエクアドル領内で内戦相手のゲリラ(FARC)を襲撃したことは責められることではありながらも、その拠点を放置したエクアドル政府も国際法的に容認されるものではないとのこと。更に、ベネズエラに至っては、今回も含めてFARCとの黒い関係が裏付けられようとしており、このエクアドルとコロンビアの二国間問題に便乗することでベネズエラの国内問題から国民の目を逸らせようとしているといったものでした。

◆これまでもバランスの取れたコラムを送り続けているOppenheimer氏ですが、今回は少々「麻薬・テロ」と「チャベス・ベネズエラ大統領」という二つの影に過敏な反応を示して、コロンビアの行為の正当化に走りすぎているのではないかと思われます。確かにチャベス大統領が便乗していることは事実であり、時間の経過とともに、いつの間にかエクアドルとコロンビアの問題は南米全体の問題に拡散し、エクアドルの正当性については、ベネズエラ(又はチャベス大統領)の正当性へと拡大解釈されようとしています。ただし、それは、ウリベ・コロンビア大統領がいたずらに自らの犯した行為について謝罪しないことに拠るものであり、40年間継続している内戦解決への理解と協力については、その謝罪を済ませてからでも十分議論できる話です。Oppenheimer氏が批判するチャベス大統領の「便乗」の根源には、ウリベ大統領の依怙地があることを忘れてはいけません。

◆コロンビアが強気を維持できる背景には、米国という味方がいるというウリベ大統領の計算があります。米国は既に何十億ドル相当の麻薬・テロ対策支援をコロンビア政府に行っており、FARCとの内戦においては間違いなく自陣に組すると見られています。今回のエクアドル領内越境についても、二国間の外交的解決を求め、当然ながらベネズエラの「便乗」については批判しています。また、5日まで開催されていた米州機構の会合では、今回のコロンビアの行為がエクアドルの主権を侵害することについては合意されたものの、コロンビアの採った行為を非難するまでには至らないという外交の世界ではよくある玉虫色の決着になった経緯において、米国はコロンビアが窮地に陥らないようにこの玉虫色の決着に導くよう尽力していました。

◆地域内では、外交による解決を求めていますし、またそのような落としどころに対する楽観的な見通しがあります。ただ、ベネズエラが「便乗」しなければという条件が伴いますが・・・。南米の雄・ブラジルや中米の雄・メキシコはエクアドルの立場を支持していますし、アルゼンチンもベネズエラと認識を共有するという立場からコロンビアを非難しています。コレア・エクアドル大統領が4日からペルー、ブラジル、ベネズエラなど6カ国を相次いで訪問して支持を求めてきたことで、中南米域内でのエクアドル支持というコンセンサスが形成されつつあります。今後、中南米20カ国が集まるリオグループ首脳会議(7日)、米州機構外相会議(17日)と多国間の政府関係者による首脳・大臣級の会議が開かれますが、その中でコロンビアは孤立の色を深めることになりかねない情勢にあります。

◆コロンビアが現状を凌ぐ可能性については、3つほど考えられます。はじめに、米国の助けを借りながら、南米の主要国を穏便な解決へと支持するよう説得できるかどうかということでしょう。ライス国務長官(米国)は3月13~15日にかけてブラジルとチリを訪問します。もともとはバイオ燃料の協力がテーマでしたが、恐らくコロンビア問題が裏のテーマになるでしょう。コロンビア単独で南米各国の首脳に自らの正当性を訴えるには役不足のため、親分格の米国に協力を仰ぐことになってしまいます。この場合、問題が穏便な形で収まったとしても、コロンビアが独自に問題を解決する能力を持ち合わせないと南米諸国から見られてしまい、コロンビア外交のダメージになりかねないでしょう。

◆次に考えられるのは、ベネズエラが暴発することで、南米大陸の悪者がコロンビアからベネズエラに交代することです。先に指摘するように、ベネズエラは今回のエクアドルとコロンビアの二国間問題に便乗して、チャベス大統領の正当性とウリベ大統領の無能さを浮き立たせようとしています。2007年にはチャベス大統領は自らが仲介役となってコロンビアの内戦を終結させるという彼の憧れのシモン・ボリバル気取りの活動を行っていましたが、同年11月にウリベ大統領から拒否される経緯があり、それ以降、両国間は冷え込んでいます。コロンビアにとっては、隣国の問題として存在するのは、元々エクアドルではなく、ベネズエラです。ウリベ大統領としては、コロンビア国境沿いまで展開しているベネズエラ軍が紛争の一つでも起こしてくれれば、米国を引き込める大義名分は出来上がると内心期待しているかもしれません。まさに、オセロのような状況があるのも事実です。

◆そして、最後の可能性は、コロンビアが戦線が拡大する前に、エクアドルに対してまずは謝罪することです。それは、南米の大方の国々が期待していることです。コロンビア政府にとっては単純な謝罪だけではメリットがないのですが、時間の経過によってコロンビアを取り巻く情勢は更に不利になり、孤立化が進むだけになります。折角昨今では日本企業も含めた外資がコロンビアに着目しつつあるなかで、経済的な側面も勘案しながら、被害の最小化に努めることがウリベ政権の果たすべき役割なのではないでしょうか。
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◆ここ数日、19世紀初頭にグランコロンビアという名で呼ばれていた地域が国際社会で注目されています。当時のグランコロンビアの構成国は、ベネズエラ、コロンビア、そしてエクアドルなど。3月1日、コロンビア軍はエクアドル領地内でコロンビアが長年内戦の相手となっているゲリラ軍(FARC)の幹部を殺害しました。その際、自国領土を侵されたエクアドルのコレア大統領は3日にコロンビアとの国交を断絶。中南米の関係諸国政府は米州機構で緊急会議を開き、二国間の問題について外交的見地からの解決策を模索することになりました。今回はこのコロンビア越境や二国間の駆け引きの背景について述べていきたいと思っています。

◆北にコロンビア、南にペルーに隣接する南米の小国・エクアドルにとって、「国境問題」とは90年代中盤までペルーとのことを指していました。1940年代前半にアマゾン地域をペルーに「奪われて」以来、エクアドルは長年領土を回復するために、政治的な思惑も左右していましたが、領土を回復すべく局地戦レベルの「戦争」を行い続けていました。1998年、エクアドル・ペルー両国は国境問題について最終和平合意をしました。

◆このペルーとの国境問題に代わるようにして、2000年以降から顕在化しているのが北の隣国・コロンビアとの国境問題です。これは国境線画定云々といった話ではなく、コロンビアの悪弊がエクアドルに輸出されていることに対して、次第にエクアドル国民のコロンビアに対するイメージが悪くなりつつあるという傾向です。ちなみに、コロンビアの悪弊3点セットとは、「ゲリラ・麻薬・誘拐」。お互い密接に関係していますが、特に首都のキトの人々は、裕福な家庭ともなると、誘拐ビジネスの餌食になってしまうリスクを感じて生活していると仄聞したことがあります。

◆一方、過去40年間にわたってゲリラ軍との内戦を継続しているコロンビア政府側からしますと、エクアドルは格好の逃げ場になっており、切歯扼腕の対象となっていました。今回のエクアドル・コロンビア二国間の国交断絶の理由となったゲリラとの銃撃戦(といってもヘリコプターまで動員されたようですが)においても、ゲリラ軍はエクアドル国内で陣地を張っていたと伝えられています。コロンビア政府がコレア・エクアドル大統領率いる左派政権がゲリラ軍と通じているのではという疑心暗鬼に襲われていることも今回の一件を深刻にさせました。

◆この二国間の事件の火に油を注いだのがチャベス・ベネズエラ大統領。越境行為を働いたコロンビア政府を非難するとともに、間髪入れず自国のコロンビア国境沿いに師団を送り込みました。この過剰反応に対しては、ウリベ・コロンビア大統領だけではなく、ブラジルやメキシコからも自重を求める発言がありました。チャベス大統領としては、同じ左派で「友好国」と見做しているエクアドルに対する援護射撃だったのでしょうが、彼の行動がなくても、南米各国はコロンビアの行為に何ら正当性がないということで見解の一致を見ていますので、所謂「余計なお世話」以上のものにはなりませんでした。

◆今回の越境行為で判ったことが少なくとも二点あるでしょう。一つは、コロンビア政府がエクアドルという国を対等な存在として見ていないということです。まるでそれは、グランコロンビアの首都があったコロンビアが同国の僻地であったエクアドルを見下しているかのようです。今回の一件でエクアドル政府は国のプライドが傷つけられましたし、今後そのような相手に建設的な友好関係が築くことが出来るのかと思われます。だからといって、戦争を起こすという選択肢はないのですが、コロンビア政府(ウリベ政権)にかなり舐められているのがコレア大統領あたりが事件発生直後に感じた点ではないでしょうか。

◆二点目ですが、南米各国政府に対して、このような行為を黙認するようでは「明日は我が身」に及ぶという点をエクアドルは上手にアピール出来たのではないかと思われます。コレア大統領がコロンビアとの断交に合わせて行ったことは周辺諸国の訪問と相次ぐ首脳会談でした。先手必勝とばかりにペルーやブラジルなどを訪れ、各国の大統領相手にエクアドルの判断に対する支持を求めました。

◆今の南米各国の政権は潜在的に反米の色が濃淡はあれど入っています。米国の代理人でもあるコロンビアが「テロや麻薬撲滅を大義名分にして隣国に侵入する」という事件を起こしたことで各国首脳の間で否応にも思い浮かぶのは米国の南米への介入というリスクです。チャベスの介入も面倒だが、米国の介入は更に面倒という潜在意識を恐らく今回のエクアドルは成功したように思われます。

◆イデオロギーの色眼鏡をかけずに、常識的に見れば、軍隊を越境させることに理を求めることはできないでしょう。逃げ場があることを非難する前に、内戦の相手と40年間も「共存」しているその政府に何の落ち度はないのかということです。存続するには何らかの力学が働いていますし、それを外の政府に求めるのは本末転倒ではないでしょうか。40年前にチャベスはいないのですから。ウリベ政権の常識が欠けているのか、大統領は政府軍を統率できていないのか。問題はむしろそこにあるような気がします。隣国にとってもとんだ「迷惑」と共存しています。
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◆2005年に始まったウルグアイの左派政権であるバスケス政権は、1日で4年目に入りました。そして、4日午前10時からバスケス大統領は6人の新大臣の任命を行う運びになっているとEl Paisが伝えています。今回の内閣改造は既に2月11日に発表されており、当ブログでもEl Paisの先行記事をフォローする内容のものを書きましたが、今回はその時に盛り込むことの出来なかった点なども踏まえて紹介していきたいと思います。

◆まず、今回の内閣改造の対象になっている6大臣を確認しましょう。

外相: レイナルド・ガルガノ → ゴンサロ・フェルナンデス(前大統領府長官)
農牧相: ホセ・ムヒカ → エルネスト・アガッシ(前農牧次官)
住宅相: マリアノ・アラナ → カルロス・コラッセ(前水道公社総裁)
教育相: ホルヘ・ブロベット → マリア・シモン(前電電公社総裁)
防衛相: アスセナ・ベルッティ → ホルヘ・バジャルディ(前防衛次官)
工業相: ホルヘ・レプラ → ダニエル・マルティネス(前石油公社総裁)

◆今回の内閣改造の特徴は、既に以前のブログでも触れていますが、「脱政治化」と「世代交代」です。例えば、ガルガノ前外相、ムヒカ前農牧相、アラナ前住宅相は左派政権の主要派閥の領袖であり、各大臣が自らの派閥の主導権を維持すべく積極的に見解を表明してきました。バスケス大統領は、政権運営において陣頭指揮に立って進むというスタイルを見せることなく、常に閣内外で一通りの議論を尽くさせて、最終的な落とし所を見つけ出すという調整役のスタイルに徹してきました。その結果、各種の「改革」と言われている政策課題は前進しない状況が続いています。

共同通信などの報道では今回の内閣改造を実質的なガルガノ前外相の更迭と示唆しています。政権発足直後からバスケス大統領とガルガノ外相の対立は顕在化しており、それがピークに達したのが2006年の米国とのFTA協議の可能性が検討された時でした。FTA推進を模索していたバスケス大統領に対してガルガノ前外相は断固反対を貫き通し、同大統領は最終的に2006年9月に米国とのFTA交渉を断念しました。バスケス大統領がガルガノ前外相をその時点を含めてクビにすることが出来なかった背景には、左派連合支持者が潜在的に反米であり、それを軸に党内で論争を巻き起こすことを善しとしなかったためです。

◆ただし、ガルガノ前外相がウルグアイ外交を切り盛りすることはそもそも役不足であり、例えばアルゼンチンとの間で紛糾したセルロース工場建設問題ではアルゼンチン政府に「ガルガノとは交渉しない」と窓口を閉ざされましたし、スペイン政府からも交渉相手として拒否された経緯もあります。「米国よりもメルコスールとの関係を重視すべき」というのが口癖でしたが、メルコスール統合でウルグアイのイニシアチブは限られていました。ガルガノ前外相の最後の逃げ場はベネズエラとキューバであったとも揶揄される始末でした。

◆一方、「外相不在」時のウルグアイ外交を実質的に切り盛りをしていたのがフェルナンデス新外相(当時の大統領府長官)です。彼はバスケス大統領の腹心であり、米国とのFTA協議準備、セルロース工場問題におけるウルグアイ窓口として務めていました。当時の外務省は、ガルガノ前外相が裸の大様のような状況であり、実質的な外交案件は大統領府が握っていた状態でした(小泉政権時における田中元外相と官邸との間柄を想像されると分かりやすいでしょう)。なので、今回の外相人事はある意味では当然の帰結なのかもしれません。

◆そして、今回の人事で注目されているのは、ムヒカ前農牧相の辞任です。彼は左派連合最大派閥(MPP)の長であり、2009年大統領選の有力候補と目されています。今回の辞任でも大統領選の準備のためといった論調が大勢を占めています。ただし、EIUなどでは、ムヒカ前農牧相が自ら出馬することについて懐疑的な見方をしています。例えば、ムヒカ前農牧相が立候補することで(1)左派連合の分裂が決定的になること、(2)都市型ゲリラ活動家であったムヒカ前農牧相の立候補が国外にウルグアイの左派に対する間違えたメッセージを送りかねないこと、をムヒカ前農牧相自身も懸念しているとも伝えられます。

◆今後、ムヒカ前農牧相が模索するのは、対抗馬と目されているアストリ経済財務相(6月に同じく大統領選準備のため辞任予定)に対して同氏支持と引き替えに諸条件を飲ませることでしょう。与党・左派連合の維持と次期政権における自らの影響力の維持が最善の策と気づき始めているかもしれません。健康問題もあるムヒカ前農牧相としては、アストリ経済財務相との協議を通じて現実的な折り合いをつけることが出来るのかが鍵になるでしょう。

◆それにしても、バスケス大統領のこのタイミングでの内閣改造は絶妙であると言っても過言ではないでしょう。今後の政権運営と2009年大統領選とのリンケージを断ち切り、政権内には従順で専門性の高いテクノクラートを揃えることに成功しました。これから政権終了時まで恐らくバスケス大統領は積極的にイニシアチブを発揮するでしょう。2007年6月に大統領再選カードを自ら捨てたことによって、今回の内閣改造を経て、超然とした大統領へと近づこうとしているようにも見えます。
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◆このブログで継続的に取り上げているベルガラ経済財務次官の訪日ですが、その成果について、2月29日付のEl Paisが伝えています。同記事は、地元の記者が同経済財務次官の帰国に合わせて、外信で伝えられていた内容を確認するというお得意の手法。ウルグアイの新聞社はさすがにお金がないので、このような方法で外信との差別化を図っています。ちなみに、今回の記者の一番の確認したかった内容は日本製紙が新たにウルグアイ向けに投資をするという事実関係だったでしょう。

◆ウルグアイにおける投資誘致の一番の目玉は製紙業です。一次産品からの最終製品までの流れでいけば、一番最初の材木から木材チップ、セルロース、紙パルプ、製紙ということになるでしょうが、外資が投資を試みているのは、その中でもセルロース工場の建設です。欧州勢ではBOTNIAが操業開始、ENCEが工場建設を開始、STORA-ENSOが土地購入を完了し、他にもポルトガルやアルゼンチン勢がそれぞれ10億ドル規模の投資を検討していると報じられています。

◆日本勢については、2004年から王子製紙と日本製紙が木材チップを調達することでウルグアイとの結びつきを強めてきました。その両社の一般的な傾向から比較すると、日本の近隣で材料を調達する王子製紙よりも遠隔地をも厭わずに調達を試みる日本製紙の方がそもそもウルグアイとの相性は良かったのかもしれません。また、これまでもコンスタントに対日輸出の実績も残し、2007年9月から駐在員事務所も開設している日本製紙は、今後のウルグアイとの関与の仕方について検討を重ねやすい環境にあったともいえるでしょう。

◆2月23日付のEl Paisの報道では、まるで日本製紙が製紙(又はセルロース)工場を建てるかのようなニュアンスで報じられていましたが、同月29日付のEl Paisの報道では、その点について、ベルガラ経済財務次官は、日本製紙が工場建設をコミットしたわけではないものの、既に土地や森林の購入などを進めていると抑え目ではあるものの、確実に日本企業がウルグアイに投資を行いつつあることを伝えています。

◆このベルガラ発言については、先走り報道ではないかとの見立ても出来るかもしれません。一般的に、ウルグアイの政府高官は地元メディアに馬鹿正直に話をする癖があって、オフレコの線引きの解釈が日本の企業関係者と異なる部分があるように思われます。憶測の域を出ませんが、今回の日本製紙のウルグアイ進出の話についても、ベルガラ経済財務次官が同社を訪問した際に同社幹部から現在そのように検討していますのでとオフレコ・ベースで話をしたのでしょうし、当然同社幹部はそのようなことが進行中のことであるので表にならないと思い込んだのでしょう。一方、ウルグアイの政府高官にとっては「これはオフレコだ」という念押しがない限りは情報の公開の裁量は自分にあると一般的に解釈します。

◆従って、今回の日本製紙の動きについて、ベルガラ経済財務次官は、日本訪問における一つの収穫であり、投資誘致を率先するバスケス政権の大きな成果の一つとして我慢できずにメディアに伝えてしまったというのが今回の事の顛末ではないかと見ています。実際、このような先走り報道は初めてではなく、他の日系企業のウルグアイ進出(又は計画)のケースでも垣間見られます。いずれも、情報が漏れた元はウルグアイ政府高官であり、グッド・ニュースを自らの手柄にしたいという誘惑から生じてしまっています。

◆日本製紙がベルガラ経済財務次官のお土産としてこのニュースを持ち帰っていただこうという意図で情報を提供したのであれば、それはそれで戦略性があって良かったのですが、限られた経験の中では、そのような戦略的なケースは稀有です。一般的には、相手国の政治家や政府高官の情報の取り扱い作法の認識不足が理由になっているような気がします。ウルグアイの場合、進出している日系企業が5社ですが、大方の企業は進出してまだ0.5~3年程度であり、そのようなウルグアイの政治家や政府高官の「お行儀」を理解することには困難があると思われます。

◆製紙業界で日本製紙が既にウルグアイの土地を購入していることが周知の事実であれば、今回のニュースもそれほどの価値はありません。ただ、木材チップを含めた製紙原料の欧州勢との奪い合いが近年熾烈になっている中で、アクシデントとして今回の情報が漏れてしまった場合、果たして今回のアクシデントをオール・ジャパンとして防ぐことができなかったのか考えてみても良いのかもしれません。一日系企業が「お行儀」を知らなかったでは済まないと思っています。
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