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◆ここしばらく気になる数字の一つがブラジルの通貨であるレアルのレート。先月は1.75レアル/米ドルであったのが、いつの間にか1.85レアル/米ドルを超えています。新興国のトレンドとして自国通貨は強くなる中で、やはり欧州の金融不安の影響がじわりと利いている様子。一部メディアでは、欧州からの投資でブラジルの好況は成り立っていたとの論調もありましたので、様々な憶測を呼んでいるかもしれません。

◆このレアル安によって、関係者の悲喜交々が起きているのではないでしょうか。最近、金利の高いブラジル債券やその関連のファンドへの投資に人気がありますが、これは現地通貨がベースでしょうから、個人投資家にとって、レアル安は予想していなかったかもしれません。

◆今日、或る日系企業の工場見学をしましたが、その席で、その会社の社長が、「ブラジルは時折通貨が大きく暴落することがあって、インフレに結び付くことがあります。例えば2002年のルーラショックの時のような・・・」といった趣旨のコメントがありました。ブラジル経済に対して、このような予防線を張った発言をここ暫く聞いていなかったので新鮮な響きがありました。現地の企業経営者は、今後のブラジル市場に対して、その辺りまで考えています。

◆そんな折、地元紙では、10月のブラジル大統領選に対する世論調査で、これまで大差がついていた与党候補と野党候補が同率になったと報じています。与党候補が追いついた背景には、人気の高いルーラ大統領の後継者であることや、低所得者層に対する大盤振る舞いが効を奏して北東部では断然強いとか伝えられています。ただ、欧州の動向次第では、経済への見識や危機管理能力など、新しい争点が出てくるかもしれませんし、今後のブラジルの置かれる環境が少し変わるかもしません。
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◆ブラジル・サンパウロに生活していますが、アルゼンチンに出張する機会が増えそうで、来月も最低2回は行く予定です。そんなこともあって、色々なアルゼンチン経済のニュースを追っかけています。最近、気になったのは、こちらの記事。
・Argentina moves to protect food production (Financial Times)
・食品の輸入制限制度導入の動き (ジェトロ通商弘報)

◆概要を述べますと、5月6日にアルゼンチンのモレノ国内商業庁長官が国内のスーパーマーケット・チェーン関係者に対して、6月1日からアルゼンチン製品で代替できる食料品の輸入は制限するという声明を出しました。その後から、関係者の間に混乱が生じているという話です。

◆とにかく、この話、不透明なことばかりです。例えば、(1)一体食料品の何が制限の対象なのかがわからない、(2)モレノ長官は何の権限でこの声明を表明したのかがわからない(彼は貿易の所管ではない)、(3)この「声明」の根拠となる政令や法律ができるのかもわからない、などがあります。

◆また、「わからないことだらけ」の極めつけは、このタイミングです。5月17日からEUとメルコスールの経済協議が開始されたのですが、そこでは両地域間のFTA協議を6年ぶりに開始するという「明るいテーマ」がありました。ところが、この食品輸入制限の話はその向かう方向性とは逆行するものでありますし、何よりも今回のメルコスール側の議長国がアルゼンチンというおまけ付き。タイミングとしては、最悪です。

◆当然、17日の記者会見では、議長であるクリスチーナ大統領にこの輸入制限の質問が出てきたのですが、同大統領は、そのような制限は現時点で存在していないと高を括った回答に終始していました(地元紙ではこの発言で「撤回」と解釈しているところもありましたが)。

◆以上のとおり、アルゼンチン的な香りのする今回の一件。恐らく、経緯とか、落とし所とかについても、我々の常識を超えるところ(知らないところ)に本質があるのではないかと思っています。それが一体何なのかを探し当てるのがこの国を見る上での醍醐味なのではないかと思っています。
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◆前回は、2007年時点でウルグアイが読みを外した話をしました。当時、地デジ放送の方式というテーマを通じた、EU対ブラジルの威信をかけた戦いで、ウルグアイは早々にEU側に賭け金を置きました。それは、決してブラジルを見くびっていたわけではなくて、当時のEUにそれほどの勢いがあったためです。それが、サブプライムやリーマンショックを通じて、EUはこけたが、ブラジルは軽傷で済んだ。欧州方式を採用すると思われていたアルゼンチンは、ブラジルによる硬軟自在のアプローチによって「ブラジル・日本方式」を採用しました。

◆日本のメディアでは、日本政府などの頑張りによって、南米での日本方式の普及に成功しているという美談が描かれています。しかし、それとは別に、EU対ブラジルの威信をかけた戦いという構図もあります。その場合、日本はブラジルの技術面でのパートナーという位置づけ程度でしかありません。

◆たしかに、日本勢は南米諸国で一生懸命普及活動をしていますが、その技術の優秀さだけで日本方式を採用する政府はありません。その最初の例がウルグアイでした。当時の日本勢は、地デジ放送の担当大臣を日本に招聘するなど、ウルグアイのペースを把握していましたが、ブラジルはまだこの戦い(局地戦?)に本腰ではなかった。日本勢が孤軍奮闘の中で、欧州の影響力の強いウルグアイで日本勢が苦戦し、結果、負けてしまった。

◆当時の日本勢が敗北の教訓として学んだとすれば、如何に優れた技術を持っていてもダメで、それとともに腕力の強い存在が一緒にいる必要があるということです。ドラえもんでいうところの「ジャイアン」が必要でした。南米での地デジ方式の戦いでは、ジャイアンであるブラジルと一緒に、日本はスネオ役として生きる。この役割分担を通じて、日本のプレゼンスは相乗的に増してきたのではないでしょうか。

◆「君はスネオだ」と言われて嬉しい人はいませんが、今のところ、ないものねだりをしても仕方がない。腕力のない国、あるいは新参者としての処世術として、この方法は一つの知恵だと思っています。当然、スネオになることが最終目的にさせることでは本末転倒だと思いますけどね。

◆欧州方式を決めたウルグアイに対しては、捲土重来とばかりに、日本政府もブラジル政府も本腰を入れています。それらに押される形でムヒカ大統領は日本方式に変更することも検討するような発言をしたとも報じられています。天の利、地の利、人の利、時の利が揃っているのでしょう。そして、これらが揃っているうちに日本方式への引っ繰り返しをやっておかないといけません。ブラジルの天下だって、いつまで続くかわかりませんからね。
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◆5月3日から5日にかけて、アルゼンチンのブエノスアイレスで、地デジ放送の日本方式を導入した南米諸国と日本の関係者などによる、第2回ISDB-T(日本方式の名称)インターナショナル・フォーラムというイベントを見てきました。

◆南米では、3~4年ほど前から、地デジ放送の方式をめぐって、日本と欧州、米国が鎬を削っています。2006年にブラジルが日本方式の導入を決めてから、チリ、アルゼンチン、ペルー、ベネズエラ、エクアドルが日本方式に決めており、その実績は日本のメディアでも紹介されています。現時点でまだ方式を決めていないのは、パラグアイとボリビア。既に欧州方式に決めたのは、コロンビアとウルグアイです。

◆今日話をしたいのは、日本と欧州の対決になっている中で、なぜウルグアイが欧州方式に決めたのかについてです。それは、南米の小国としての計算があったからですが、その後、ウルグアイはその目論見が外れ、地デジ放送方式の面では周辺諸国から孤立しています。

◆当時のウルグアイは、ブラジルが日本方式を採用したものの、最終的には、欧州方式が南米大陸を席巻して、南米のデファクトになるという読みをしていました。その中でウルグアイが特に意識したのは、隣国のアルゼンチンの動向でした。当時、同国があたかも欧州方式に決めるかのような様子を目の当たりにして、焦りを感じていたようです。

◆ウルグアイとしては、南米のデファクトとなるであろう欧州方式を早急に採用することで、産業振興を行いたい意向がありました。注目したのは、IT産業やコンテンツ産業、それらに関連した研究開発関係でした。当時、ウルグアイは、IT分野では南米でトップを争うほどの産業力があると言われており、欧州企業の誘致に成功することで、南米におけるIT関連産業の発信基地としての地位を確立したかったと見られます。

◆ところが、ウルグアイよりも国力も市場も大きなアルゼンチンが先に欧州方式に決めてしまうと、これら関連産業の投資はアルゼンチンに逃げてしまう。当時の報道では、アルゼンチンは間違いなく欧州方式に決める勢いでしたし、当時のEUは勢いがありました。ユーロも高く、欧州企業も色々な意味で資金面で余裕があった。ウルグアイが南米で欧州方式が勝つと思ったのも無理がなかったと思います。

◆以上が2007年の話。3年が過ぎて、様相は大きく変わりました。その辺りの話は、次の機会に。
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◆Keyです。再び南米の地を踏んでいます。4月からブラジル・サンパウロで生活を開始しました。今回は妻だけではなくて、娘も加わっての日々です。

◆2004年から2007年にかけて、このブログでは、南米・ウルグアイを中心にした少し硬めな話(例えば政治や経済)が多く書かれていました。日本語で書かれている数少ないウルグアイ情報ということで、その価値を相応に認めていただいていたことを後々知ることができました。

◆その後、書いていたものの殆どは、当時書き込んでいたDoblogのサービス終了によって、彼方へと消えてしまいましたが、幸い、ほんの少しだけがこのexciteブログに残っていましたので、こうしてご挨拶ができています。

◆ブラジルの新生活を契機に、何か新たにブラジルに関するブログでも取り組もうかと一瞬だけ脳裏を過ぎりましたが、ブラジルに真剣に取り組むプロの方々が既にたくさんいるなかで、改めてブラジルだけに絞って語ることもないだろうと思いました。そこで、これまでのブログの題名をそのままにしながら、気楽に好きなことを書いていきたいと思っています。

◆また、今回の勤め先は、ブラジルだけではなくて、メルコスール諸国(自分の心の中ではまだベネズエラを加えていませんので、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイとお考えください)も活動範囲です。少しだけ広い視野から物事を捉えることが出来るのかなと楽しみにしています。

◆不定期の書き込みになりますが、今後とも宜しくご愛顧ください。
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