<   2010年 06月 ( 10 )   > この月の画像一覧

◆金曜日の深夜3時前、いつものように娘の夜泣きで目が覚めて、電気のスイッチをつけようとしたところ、電気がつきません。他のスイッチも同じ。辺り一帯のマンションも電気がついているところがないことで、停電であると確認しました。サンパウロで生活を開始してから初めてです。別の地区では時折起きていると聞いていたので、その夜は「仕方ない」と、娘を再び寝かせてから、眠ることにしました。

◆翌朝も引き続き停電。各マンションに備え付けられている自家発電機の音が辺りに響き渡っていたのが印象的でした。テレビが使えなければ、当然インターネットもダメ。ラジオも引っ越し荷物の中ということで、11時には、W杯のウルグアイ対韓国戦が始まります。今大会において自らの魂を注ぎ込むチーム(ウルグアイ)が登場するのですが、この停電、誰を責めるわけにも行かず、自宅で我慢することにしました。

◆そうしていると、11:20過ぎに我が家に電子音が響き、停電が終わりました。早速、テレビをつけると1-0でウルグアイがリードの表示。これで安心しました。先制点をとっている限り、このチームの巧さが更に出ます。ただ、後半戦は、ウルグアイ側の動きが鈍くなっていて、いつでも韓国が得点を挙げてもおかしくない展開。ただ、同点にされてから、よく耐えました。最後はスアレスの見事なシュートが決勝点。思わず、ゴールが決まった瞬間、近所に響くぐらいに「よっしゃー!」と叫んでしましました。あー、恥ずかし。

◆次ですが、ベスト8の対戦相手がガーナとのこと。アフリカのチームらしく(?)、パワーとスピードはあるけど、粗さが目立つような印象があります。南ア戦のような戦い方をすると、「まさかの」ベスト4も夢ではないような気もします。守り中心ではありますが、その中で得点を狙えるストライカーが2名(フォルランとスアレス)いるチームは強いと感じます。滅多に目出度いことに恵まれない国なので、このような僥倖が舞い込んでも罪はないでしょう。

◆そして、日曜日には面白い対戦が二つありましたが、いずれも審判の能力のなさによって、緊迫したはずのゲームが台無しになりました。最初のドイツ対イングランド戦では、イングランドが同点になるはずの得点が認められず、それから突き放されて、最後は4-1の大差になってしまいました。

◆また、アルゼンチン対メキシコ戦では、試合当初からメキシコが予想外の健闘を見せて、優勢に戦っていました。そのメキシコの緊張の糸を切らせたのが、アルゼンチンの最初の得点。あれはオフサイドでしょう。メキシコの監督の不幸は、それから選手が血気立ってしまったことで統制がとれなくなったこと。予想通り、10分以内に追加点を与えてしまい、圧倒的に不利になりました。試合も3-1で終わりました。

◆イングランドのファンにしても、メキシコのファンにしても、そして好試合を期待していたサッカー好きにしても、負け以上に、非常に後味の悪い週末になってしまったのではないでしょうか。
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◆24日付の日本経済新聞HPシンフォニア・テクノロジー社がウルグアイで風力発電のビジネスを開始するとの報道がありました。日本企業の進出が少ないウルグアイにとっては目出度い話です。既に6月9日付の現地紙でも報じられておりますが、同社がウルグアイ側(工業省や国営電力公社)に技術供与も含めた協定を結ぶといった内容になっています。

◆なぜウルグアイにシンフォニア・テクノロジー社がやってくるのかということになりますが、本年2月5日付同社プレスリリースにありますように、ブラジルでの同社製品の現地生産及び販売という契機があったように思われます。同リリースで示唆しているように、ブラジルを始めとする南米諸国へのアプローチも検討対象に入っており、その第一弾が隣国ウルグアイになったのではないかと思われます(実際、ウルグアイ政府は2015年までに風力発電が国内電力消費の6%を賄うを見込んでおり、そのための制度作りにも動いているようです)。

◆ウルグアイのような小国に進出することに果たしてメリットがあるのかという点について、恐らく多くの企業の方々は懐疑的になると思われますが、南米に視線を注ぐ多くの多国籍企業にとっては、ゲートウェーとしてのウルグアイというのは、比較的常識の範囲内として取り扱われているような気もしてます。

◆これは、2004年頃の話ですが、インドのタタ・コンサルタンシー・サービス社がウルグアイに進出した際に、タタ財閥のトップが現地紙に対して、「ウルグアイを南米の拠点にすることの魅力として、国が小さいことがある。つまり、国のトップへのアクセスが近いことであり、当社の意向をしっかりと聞き入れてもらえるということである」といった主旨の発言があったことを記憶しています。

◆小国に対して相応の投資などをすれば、その時の政府は強力な味方になってもらえる可能性が高いということです。ウルグアイ(人口350万人)はその意味で、前のバスケス政権から投資誘致などに力を入れているため、それに資する活動をする企業(人々)に対して義理堅いところがあると見ています。逆説的ではありますが、ブラジルにどれだけ投資をしても、ブラジル政府が強力な味方になってもらえる保証はそれほど高くないでしょう。

◆本件に関連したウルグアイの魅力としては、(1)国のトップへのアクセスが近い、(2)周辺諸国と比べるとクリーンである、(3)政府が左派(&田舎者)ということで真面目である、といったことがあります。進出する業態によって、ブラジルやアルゼンチンといった周辺諸国への輸出で非関税の障壁があるとか、ウルグアイ国内で雇用する人材に限りがある、等々の問題に直面するかもしれません。ただ、それとは別の悩ましい問題はブラジルでもアルゼンチンでも存在することも事実です。

◆ウルグアイをテストケースとして見ているのではないかと思われるシンフォニア・テクノロジー社の今後に注目したいと思います。
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◆今回のW杯ですが、南米から出場しているチームが結果を残しています。すでにブラジルは予選を通過したのも同然ですが、今日もウルグアイとアルゼンチンが予選1位通過を決めました。パラグアイとチリもそれぞれのグループで上位を占めており、このままですと南米勢5チームすべてが決勝リーグに出場します。

◆ウルグアイのチームを追いかけていますが、今日の試合はメキシコとの一戦。予選を1位で通過しないと、決勝リーグで早速アルゼンチンと対戦するという不運に遭うところでした。試合は、昼休みに突入した後半戦からの観戦となりましたが、一言でいえば、メキシコの不運と焦りに助けられたという印象が残りました。日本の紙面では「古豪」という言葉を好んで使いたがりますが、最後にW杯に優勝したのが60年前ですから、いい加減忘れた方がいいでしょう(ウルグアイ人は昨日のことのように語りますが)。

◆アルゼンチンも好調です。マラドーナ監督の舌は滑らかになってきているところが気になるところ。先日、アルゼンチンに出張した際に、同僚と話をしますと、「アルゼンチン人だけど、優勝だけはしてほしくない」とのこと。理由は「これから4年間、自分達が何でも世界一だと勘違いを起こすから」とのこと。勘違いをした方がよい人々と面倒な人々がいると思いますが、アルゼンチンの人々は後者に属するかもしれません。今年は建国200周年ということもありますし、来年は大統領選ということもありますし、色々な人々(特にあの夫婦)が優勝を期待してるようなきな臭さを感じます。

◆ブラジルですが、王者の風格を感じさせます。先週日曜日のコートジボアール戦も3-1の大勝。それでも厳しい目を持つファンにとっては不満が残るかもしれません。それにしても、自宅で観戦していましたが、得点チャンスの際には、地鳴りのような呻り声が辺り一帯から響き、得点によって歓声と花火の音で爆発します。スタジアムで似たような現象を経験できますが、住宅地で体験するのは稀でしょう。もう一度自宅でこの体験をしようと思ったら…、決勝戦の11日(日)。たぶん、今回のブラジルであれば、体験できるかもしれません。
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◆前回、アルゼンチンの国営航空会社であるAerolineas Argentinas(アルゼンチン航空、以下AR)を取り上げましたが、その際に、帰路が心配と書きました。というのも、この航空会社は定時に運行される方が珍しいぐらいで、フライト前日の夜に日系企業の方々とお会いした際にも「よく乗るねぇ」と呆れられる始末。定時に飛んでもらうためには、十字を切るしかありませんでした。

◆サンパウロ便(AR1244)の出発時刻は17時15分。2時間前に空港(Aeroparque)に到着するため、町中でタクシーを拾って、運転手に行き先を告げました。運転手からは「何に乗るんだい」という質問。「ARだ」と答えると、「災難だねぇ。今さっき乗せたお客さんの便は2時間遅れだったよ。Aeroparqueで荷物運搬の組合がストをやっているよ」との説明。予想通りの展開とは思いましたが、国際線は別ではないかと甘い期待を抱いていました。

◆空港に着くと、チェックイン・カウンターは黒山の人だかり。放送メディアや通信社が数社やってきて、カウンターに並ぶ人々を撮影しています。チェックインをすると、「飛行機は2時間遅れなので、ご了承ください」との宣告。この時点では、2時間程度であれば、W杯のTV観戦で時間を潰せばいいという軽い気持ちでした。

◆19時15分発と刻まれたチケットを手に、搭乗口で待ちました。同じ国際線では、他の航空会社(ウルグアイのナショナルフラッグであるPluna航空)のモンテビデオ行きやリゾート地(といっても今は季節外れですが)のプンタデルエステ行きの搭乗案内のアナウンスが流れる中、サンパウロ便を待っているであろう客の苛立ちが次第に高まっていきました。

◆19時過ぎに変化がありました。フライト掲示板にあったサンパウロ便(AR1244)の表示が消えたのです。思わず辺りから「オォー」という呻きにも似た低い音が鳴り響きました。乗客の数人が慌てて搭乗口や待合室にいるはずのAR社員を探すのですが、その時に限って一人もいません。AR社員個々人の危機管理能力の高さには恐れ入りました。

◆仕方ないので、うろうろしていると、ウルグアイに住む知人S氏と3年ぶりに再会。彼は17:00発のARのモンテビデオ便に乗るはずだったところ、フライトは20:30まで遅れているとのこと。「久しぶりに飛行機を使って早く帰ろうと思ったのに、ARにしたのが間違いだった」と苦笑いしていました。彼によれば、往路のブエノス便(ボーイング737)の乗客は彼を入れても5名だけ。民間企業だったら飛ばさないレベル。改めてARのすごさを知りました。

◆もはや案内掲示板にも存在しなくなったAR1244便。乗客と思われる人々の怒りは次第に大きくなり、最後には、乗客が搭乗案内のマイクを使ってAR社員を呼び出したり、手拍子を合わせて抗議に出たりしていました。そういった抗議行動をするのはアルゼンチンの乗客の方で、ブラジル人は半ば諦めたように構えていました。もはや誰も収拾能力を持ち合わせていないという状況になりました。

◆結局フライトはキャンセルにはならず、21時過ぎの出発になりました。チケットを切ってもらった乗客は、まるで何かを成し遂げたようにガッツポーズをする顛末。飛行機が定時に飛ぶという「当たり前のこと」が如何に当たり前ではないかを再認識させられました。

◆ちなみに、この日の荷物運搬の組合によるストでは、15本程度のキャンセルが発生したとの報道がありました。組合のストなので、ARの責任ではないとも言えるでしょうが、実際キャンセルが発生した殆どの便がARでした。そんな折、ARでは新しいデザインを発表したとのこと。個人的には、同社の問題解決はそのような目先の話ではないような気がします。
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◆今日の昼は、アルゼンチンに20年以上在住されている方と食事をしていました。その中で、「アルゼンチンの公共放送(7チャンネル)面白いよ。夜の9時から始まる『6・7・8』を見てみたらいいよ」との仰ったので、今日は、それを見ながら、このブログを書き始めています。

◆アルゼンチンの公共放送に注目するのは、今朝のアルゼンチン主要紙の一面に取り扱われていた「メディア法施行差し止めの却下」とも多少なりとも関連するためです。アルゼンチンでは、ここ1年近くにわたって、テレビ・ラジオ放送の憲法ともいえる「視聴覚メディア法」の改正について議論されてきました。ポイントは幾つかありますが、(1)最近の通信放送の技術の進歩に現存するルールが適していない、(2)そのルール改正によって既得権を有するメディア各社にとっては不利益を被る、(3)ルール改正を進めるのがフェルナンデス大統領一派であることが胡散臭さを醸し出している、といったところが関係してきます。

◆アルゼンチン国民の間では、この(1)から(3)のどのポイントに重点を置くかによって、この法案の改正への評価が全く異なります。まず、(1)を重視する方々にとっては、この改正は技術的な話であり、例えば、地デジの新方式(日本方式)の導入によって、これまでの放送業界の秩序が大きく変化する可能性を秘めています。アルゼンチンのメディアで流れていることをどこまで信用すべきであるかについては、ウルグアイから彼の国をウォッチしていた頃から悩ましいと思っていました。これまでのメディアに懐疑的であったり、(1)を重視する人々にとっては、この新技術の導入とそれに伴う法改正は「情報の民主化」と好意的に見ます。

◆ところが、(2)や(3)に重点を置く人々にとっては、権力者が自らに有利な秩序を築いているものだと批判をしています。ましてや、フェルナンデス大統領と当地のメディア・コングロマリットである「クラリン」が2008年以降、決定的な対立関係に陥ってからは、今回のメディア法改正の動きを「クラリン潰し」の一環と見なされていますし、「視聴覚メディア法」そのものについても「『K』メディア法」と呼ばれています(「K」はフェルナンデス大統領とその夫である前大統領の苗字である「Kirchner(キルチネル)」を指します)。今回のメディア法の成立に際して、「K」側が支持を得るために懐柔を図って、それが効を奏したことが更に(3)のイメージを高めています。

◆前置きが長くなりましたが、この「メディア法」、アルゼンチン国内の連邦を含む複数の裁判所で、違憲であるとの訴えが出ており、これまで一部条項や法律全体の施行差し止めの判決が出ています。その中で、昨日、メンドサ州の連邦裁判所で訴えられていた法律全体の施行差し止め判決が却下されました。新聞紙面では「歴史的な判決」ということで大きな取り扱いをされています。実は、法律全体が施行されないと、地デジの日本方式の本格普及が進まない事情があったりします。

◆しかしながら、日本方式の地デジ放送は開始されていないかというと、冒頭に述べた公共放送(7チャンネル)では開始されています。この公共放送では、11日から始まったワールドカップの地上波の放送を独占しており(※「独占」ではありませんでした。ごめんなさい。100617追記)、ほぼ一日中サッカーの試合とそれら結果のハイライト番組の放送を繰り返しています。また、地デジ放送開始に当たっては、普通のテレビを地デジに対応させるための小型のセット・トップ・ボックス(信号交換器)を25万台ほど政府主導で無償配布をしています。こうした新しい秩序構築に向けた政府の動きを行っているのがフェルナンデス大統領(及び「K」前大統領)であるために、政治的な計算高い動きとして、胡散臭さが引き立つことになっています。

◆ただ、以上の「K」夫妻による政治的な動きを抜きにすると、「7チャンネル」の公共放送としての質は保証されているのではないかと思います。冒頭に触れた「6・7・8」では、アップデートな話題を取り扱う番組コンセプトのため、まさに「メディア法」の話を6名の識者を通じて両論併記で議論していますし(「6・7・8」の意味は、「6人の識者が7チャンネルで夜8時(今は9時)から議論する」ということだそうです)、番組の見せ方でも、チャンネル7の社長が映画監督であるためか、視覚を意識した作りになっていると見受けられます。

◆最後に、政治と公共放送の立ち位置について、実は日本に一日の長があると思われます。NHKに言いたいことがある日本の国民もいるかもしれませんが、そこに蓄積されたノウハウ(成功も失敗も)については、海外でも知るに値するものではないかと思っています。南米などの国では、どうしても公共放送は時の権力者の玩具になりかねないリスクがあるのも事実です(アルゼンチンではそれがテーマになっていますし)。また一部の南米諸国では、公共放送の重要性を認識したことによって日本方式に関心を寄せた国もあるわけで、その辺りを意識した日本発の貢献方法もあるように思われます。
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◆現在、アルゼンチン・ブエノスアイレスに出張中。これから業務でお世話になる方々への挨拶まわりなど、数日過ごします。それにしても、行くたびに勉強になります。ブラジルという遠隔地からアルゼンチンを眺めてばかりですが、現地に行かないと分からないことばかりです。

◆サンパウロからブエノスアイレスに向かったのですが、今回はアルゼンチンの国営航空会社である「アルゼンチン航空(AG)」を使いました。この2時間半の路線を取り扱っている航空会社ですが、ブラジルのTAM、GOL、そしてAGがあり、そのほかにLan ChileやBritish Airways(BA)などがあります。前回はTAM(最近全日空とのコードシェアで日本・ブラジル間の共同運航を開始することを発表しましたが)を使いましたが、今回AGにした理由は、AGの場合、ブエノスアイレス到着が市街地から10分ほどの通称「アエロパルケ」(国内空港)に到着するメリットがあるためです。他の航空会社ですと、到着が市街地から40分程度かかる場所にある国際空港の「エセイサ」空港になります。

◆0700発のAG便に乗りましたが、驚かされたのは、その乗客数です。前回、同じ時間帯に出発するTAM便(0645発)はほぼ満席だったのですが、今回のAGの搭乗率は恐らく2~3割といったところ。席は選びたい放題で、空いているときによくやる「3席占領して、横に寝る」という乗客の光景が至るところで見られました。機体も古く、座席に画面はありませんし、音楽を聴いている乗客もいたのかどうか。この差はいったい何なんだろうと思いました(朝食の貧相さは互いに譲っていませんでしたが)。

◆昼食会の席で隣の方に、「AGも厳しいようですね」とその様子を織り交ぜて話したところ、その方からは「厳しいなんてものではありません。潰れていますよ」と返ってきました。話によると、AGの毎日の赤字額は100万ドルから150万ドルあたりになっているとのこと。さらに、隣に座っていた別の方からは、「先日地方に出張しましたが、AGから『往路は次の便に乗られるようにお願いします。復路は1時間半前の便に乗られるようお願いします』と言われました。後ろの便への変更は分かりますが、前の便に乗ってくださいというのはどういうことですかね」とのコメント。そうすると、「いや、私もそれは聞いたことがあります」と続き、気が付けばAG話に花が咲いていました。

◆改めて報道を確認しますと、AGの赤字額は、2008年に10.62億ドルだったのが、2009年には23億ドルに増加。2008年7月に国有化してから赤字額はうなぎ上りになっています。国有化以前が9億ドルの赤字だったことを考えますと、国有化は失敗であり、「ブラジルのヴァリグ航空の二の舞」のような末期的な状況になっている様子です。国が面倒を見ている限り、倒産はないのでしょうが、どこまで国税をつぎ込むのか。景気が回復基調にあるアルゼンチンではまだ目立たないことかもしれませんが、今後の財政だけではなく、政治的なインパクトからも無視できない事象ではないかと思いました。

◆そんな中、数日後に、今後は復路に乗るわけですが、もしかすると飛行機の遅れは覚悟した方がよいかもしれません。遅まきながら、ウルグアイ駐在時代に、AGには度々飛行機の遅延で泣かされていたことを思い出しました。
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◆11日からワールドカップが1カ月かけて開催されています。その間、64試合が行われますが、ブラジル時間(ブラジリア時間)では、予選リーグが朝の8時半から夕方5時半近くまで行われています。テレビの前に釘付けにされる日々が暫く続きそうです。さっそく、本日(12日)は、朝から、韓国対ギリシャアルゼンチン対ナイジェリアイングランド対米国を立て続けに見ていました。果たして、日本のような睡眠時間を削る過ごし方か、ブラジルのような陽の出ている時間を試合観戦に費やし方か、どちらがいいのか判断に迷います。

◆ワールドカップが開催される日々をブラジル在住中に体験できる幸運に恵まれたのですが、開幕を迎えるにつれて、街中で見かけるブラジル国旗の数が断然増えてきました。それぞれの自宅や会社のベランダに飾られているものが目に付きますし、他にも、多くの店舗ではブラジル国旗をイメージさせる緑と黄色のデコレーションが増えています。この瞬間だけ、国民の関心は一つに集中することは、前回ブラジルに在住した際(1990年)にも感じたことではありますが、ブラジル全体がどこまで興奮が高まるのか、まずは15日の北朝鮮戦における街の雰囲気を感じてみたいと思います・・・(と思ったら、その日はアルゼンチンに出張中でした、残念)。

◆ワールドカップの市民生活への影響に関連して紹介しますと、数週間前、職場にブラジルの試合日における銀行の開店時間の変更に関する案内が回ってきました。それによりますと、15日の北朝鮮戦の開始時間は15:30開始なので、その日は14:00までの営業。そして、25日のポルトガル戦は11:00開始なので、その日の10:30から1:30まではお休みといった具合。ちなみに、これはブラジル銀行協会が公式に出したお知らせです。

◆最後に、ウルグアイですが、11日にフランスと対戦しました。フランスの勝利を予想した人が多いと思いますが、結局0-0のドローで終わりました。個人的には、この試合、非常にウルグアイらしい試合展開だったように思います。一言でいいますと、「負けないサッカー」に徹するということです。ワールドカップの南米予選を見ても、毎回予選通過ギリギリの辺りをさまよっているのがウルグアイ。この予選、如何に負けを少なくするのかがポイントで、ウルグアイはそのシステムに適したDNAが擦りこまれていると思っています。

◆こういっては何ですが、別に優勝候補でもないウルグアイが目指すのは予選リーグの通過。それも2位狙いでしょう。Aグループで競い合う相手は、フランス、メキシコ、南アフリカ。ウルグアイとしては、1勝2分け(勝ち点5)が理想だと思っているのではないでしょうか。その達成のためには、是が非でもフランスに負けるわけには行かなかったわけで、得点を入るなんて偶然があれば別ですが、そうでなければ、とにかく点を与えずに守りで耐え続ける戦術を採ったのではと思います。その意味で、まず、11日の試合は上出来でした。
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◆南米で展開されている地デジ方式を巡る日欧の戦いですが、パラグアイは日本方式になったことが報じられています。

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パラグアイが日本式地デジ採用
 総務省は2日、南米のパラグアイが地上デジタルテレビ放送で日本方式の採用を決定した、と発表した。海外で地デジの日本方式を採用するのは今回で、8カ国目。
 パラグアイ政府が現地時間1日、地デジの日本方式を採用する大統領令を発表した。同国での地デジの放送開始時期などは未定。
 総務省によると、日本の地デジ方式が電波干渉に強い「ワンセグ」といった移動端末向け放送や、ハイビジョン放送に対応している点が評価されたという。日本はパラグアイに対し、技術移転や人材育成での支援協力を進める考えだ。
 今回のパラグアイによる採用決定で、海外での日本の地デジ方式は、ブラジルやペルーなど中南米8カ国で導入される。総務省では今後、アジアやアフリカに照準を移し、日本の地デジ方式のさらなる採用を働きかけていく考えだ。


http://www.sankeibiz.jp/business/news/100603/bsb1006030503008-n1.htm
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◆この記事だけを見ると、南米戦線は終了という印象がありますが、ボリビアがまだ残っています。また、ブラジルのプライドとしては、コロンビアとウルグアイが欧州方式のままでいることは気に喰わないでしょうから、南米が「日本・ブラジル方式」に統一されるまでは、引き続き戦い続けると思われます。

◆さて、その一方の当事者のウルグアイですが、ムヒカ新政権になってから、徐々に日本方式に傾いているとの報道がされています。形を気にするウルグアイ政府としては、何らかの大義名分が必要になってきます。特に今年に入ってからそのための布石は次々と打たれています。

◆まず、日本政府からのアプローチ。これは継続的に行われているようです。5月上旬に総務省幹部がウルグアイを訪問しているようですし、その前にも訪れているという話も仄聞しています。むしろ、ウルグアイの地デジ所轄の大臣が「これまでアプローチはブラジルしかない」といった趣旨の発言を上院の委員会で行ったところ、日本政府が遺憾の意を述べたという積極的な姿勢を見せてもいます。

◆次に、ブラジル政府からのアプローチ。3月20日、ブラジル政府関係者は、ウルグアイ政府関係者に対して、(1)政府系銀行による5,000万ドルのクレジットラインの確保、(2)ブラジルの地デジ関連機器メーカーの進出の提案、などについて話をしています。欧州方式に決まってから、EUがウルグアイに貢いだ金額は69万ドル程度。ウルグアイ政府関係者は、「5,000万ドルといっても融資枠の話で実態がない」とは言っていますが、企業進出だけでも250万ドルの投資が早速見込めるとの話もあり、ブラジルは本気であることが確認されます。

◆このような「アメ」を差し出されたウルグアイですが、国民の意識としては、容易く日本方式になびくわけにはいきません。この国は真面目な方々が揃っているので、「一度約束したことをおいそれと変えることが適当なのか」といった論調が出てきます。ウルグアイ政府の中でも、現実主義のムヒカ大統領は、風が変わったのであれば、向かう方向も変わるといった具合に考えるのでしょうが、欧州の薫りに愛着を感じる人々はそういうわけにも行かないのかもしれません。

◆そこで、「カネ」の他に「大義名分」が必要なところに、今回のパラグアイの決定が重要になってきます。つまり、今回のパラグアイの決定によって、メルコスール加盟国のうち、唯一ウルグアイだけが別の方式を維持していることになります。有名無実のメルコスールではありますが、こういった時には便利な存在になります。使い方によっては、「メルコスールの一体化を維持するために、政治的判断から日本方式に変えることにした」という言い方が先ほどの真面目な国民には受けたりするのです。

◆果たして、今月予定されているメルコスール首脳会議(アルゼンチンが議長国)で地デジに触れることがあるのかに注目しています。議長国は輪番制で、これまでアルゼンチン→ブラジル→パラグアイ→ウルグアイと回っているので、今回はなかったとしても、次のブラジルの番にはやってくるのではないでしょうか。いずれにしても、そうでもないとウルグアイは動かないのではないかと見ています。
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◆今ではお隣の国として眺めているウルグアイですが、先週の金曜日のロイター電で、ウルグアイ大統領に関する記事が出ていたので、掲載します。

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ウルグアイ大統領、所有資産は18万円相当の車だけ
[モンテビデオ 4日 ロイター] ウルグアイのムヒカ大統領(75)が大統領就任時の宣誓陳述書に挙げた個人資産は、1920ドル(約18万円)相当の1987年型フォルクスワーゲン・ビートルのみだったことが明らかになった。
 3月に就任した同大統領は、元左派ゲリラ活動家で、質素な生活や地に足の着いた態度が国民に支持されている。
 先に公開された同陳述書によると、大統領には負債も預金もなく、ほかに資産も何も持っていない。大統領としての毎月の給料は1万1680ドル(約107万円)だが、その大半を左派の与党拡大戦線や公共住宅プログラムに寄付。大統領官邸への入居も拒否し、上院議員を務める夫人が所有する首都郊外の簡素な家に住んでいる。

http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-15695220100607
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◆このムヒカ大統領ですが、温厚そうな風貌と違って、経歴は結構華々しいものがあります(http://en.wikipedia.org/wiki/Jos%C3%A9_Mujicaを参照)。60年代にはウルグアイで発生した都市型ゲリラの一員として活動して、その結果投獄。軍事政権下ではひたすら牢屋の中で過ごしていました。85年に民主化を果たした後には、都市型ゲリラの同志で結成した政党(派閥)に参加。下院議員から上院議員となり、04年の左派政権誕生時には最大派閥の頭領となりました。

◆その頃、ウルグアイで生活していましたが、誰も次の大統領にムヒカがなるとは信じていませんでした。確かに庶民には人気がありますが、その発言の不明瞭さは外国人泣かせでしたし、識者からは大統領に相応しくないと思われていました。ただ、当時のバスケス大統領率いる左派政権は経済成長など実績を重ねて、ムヒカ自身は別段何か功績を残したわけでもないのですが、次第に国民の間に「ムヒカでも大丈夫ではないか」という安心感が出てきたのではないかと思っています。彼が大統領になったことは、ウルグアイで左派政権が根付いた証拠と見ることが出来ます。

◆もう一つは、2009年の大統領選挙において、左派政権は形はどうであれ、新しい候補に「変わった」のですが、対する野党は元大統領を候補に立てるなど、新鮮味がありませんでした。国民に魅力ある提案が出来なかった野党は、自ら勝てる可能性をなくしたと言えます。与野党とも政治家の高齢化が進む中、ウルグアイの好々爺でもあるムヒカが大統領におさまっているいるのは、その意味でも、ウルグアイ的な一つの成り行きだと思います。
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◆先週の大半は出張でブラジル北東部のサルバドールと北部のマナウスに出張。ブラジルといってもこれまで知っているのは、サンパウロとリオデジャネイロ以南の世界でしたので、どんな所なのか、楽しみにしていました。

◆その中で印象に残ったのがマナウスです。アマゾンの原生林のど真ん中に突如として大きな街が開けています。街に沿ってアマゾン川が横たわっており、その光景に圧倒されました。空港からの道路も綺麗に舗装されており、日本人が想像しそうなアマゾンとは異なる世界が存在しています。マナウスの人口は150万人と言われていますが、関係者に聞けば、そもそも出生届も出していないような人々が街に流れ込んでいるだろうから、実数は200万人近くになっているのではないかとのこと。

◆マナウスの人口の推移について、1960年代後半は15万人だったことを考えると、急激な増加を示しているわけですが、その理由は、この地がフリーゾーン(免税都市)に指定されているためです。そのために、1960年代後半から70年代にかけて、欧米企業よりも先に日本企業が相次いで進出を果たしたとのことで、現在では、そのフリーゾーンに直接的に雇用されている人口は10万人に及ぶそうです。

◆その中で、2023年にフリーゾーンの税制恩典の時限立法が終了することの影響を現地進出企業に少し聞いてきたところ、面白い反応がありました。一つ目は、ブラジル政府として、フリーゾーンを安易に畳むことは難しいだろうということ。現在増え続ける人口の多くがフリーゾーンに何らかの形で関係するなかで、恩典がなくなれば多くの企業の撤退が生じ、その影響をブラジル政府は見誤らないだろうという見方です。

◆二つ目は、フリーゾーンの機能の一つとして、アマゾンの自然保護に資しているという議論があることです。これだけの雇用をフリーゾーンは吸収しており、もしフリーゾーンがなかった場合、人々は天然林の伐採に動いていただろうという見方です。これは、一つ目のポイントとも重なっているのですが、今後マナウスで多くの人々の職がなくなれば、彼らは木材を商売の道具にするということです。残念ながら、ブラジル政府はコントロールが難しくなるでしょう。

◆そして、最後に、恩典がなくなれば、企業は撤退するということです。マナウスから最大消費地のサンパウロまでの輸送は片道だけで2週間かかるとのこと(一般的に水上輸送と陸上輸送を行った場合)。それでも税制恩典というメリットがあるため、ビジネスを行っているとのこと。色々な関係者に聞いても、この辺りの議論についてはあまり難しく考えることはなさそうです。

◆ブラジル政府にとってのマナウスは、1960年代後半にあったアマゾン川奥地に対する「国防」という切り口や、マナウスフリーゾーンに代表される雇用も含めた「地域開発」という切り口から、「自然保護」のなども含めた新しいテーマが続々と出てきているようです。あまり知らずに現地に訪れましたが、ブラジルの面白さに更に気付かせてくれる訪問となりました。
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