<   2010年 09月 ( 2 )   > この月の画像一覧

◆最近、手を付けることができなかったブログ。罪滅ぼしで次の二つを紹介します。

「2010年下半期の業種別部会長シンポジウムの議事録」
最初にブラジル日本商工会議所で8月17日に開催されたシンポジウムの議事録(ページを開けて、名前の箇所をクリックすると議事録が開きます)。元々、ブラジルの最新の経済動向を追っかける上で便利な商工会議所のHPですが、この議事録はブラジルの日系企業が現地において何を考えているのか知る上で大変参考になると思います。関心業種だけでもいいでしょうが、個人的には一度通しで読んでみたい。

「サンパウロ・スタイル」
次に、こちらは、ジェトロが9月10日付でアップした「サンパウロ・スタイル」。サンパウロに出張する人や関心ある人に対して、写真や説明が満載の価値ある資料になっています。サンパウロでの人々の生活がどうなっているのかなど、最新の情報が盛りだくさんです(こちらは先週の出張時に全部読みました)。ちなみに、ジェトロの「スタイル」シリーズでは、このほか、「香港スタイル」、「広州スタイル」、「デリー・スタイル」、「クアラルンプール・スタイル」などが出ています。

◆最後に、大統領選を10月3日に控えたブラジル。数か月前までは、主要2候補が35%周辺で鎬を削っていましたが、先週末の世論調査を見ますと、ルーラ大統領の実質的な後継者であるジルマ前官房長が50%近くを推移し、対抗馬であったセーハ・サンパウロ州知事が20%台後半で伸び悩んでいるといます。目下の関心は、ジルマ候補が第1回目の投票で勝利を決めてしまうかというところ。ブラジルの将来の考える中で、PT(労働党)政権の継続については、賛否両論が出ています。
[PR]
◆ここ数カ月、久しぶりに南米で地デジ日本方式の話に触れた。前回は06年から07年頃のウルグアイだったが、当時はブラジルが日本方式に決まったものの、誰も本気で日本方式が南米を席巻するとは思っていなかった。総務省は技術のノウハウはあるけど外に手足を持ってはおらず、外務省は地デジの日本方式の普及を優先順位に置いていなかった。日本のメーカーにとってはどの方式でも構わないということで、オール・ジャパンとは言い難い状況がそこにあったと思う。その中で、南米に日本方式が席巻することになったのは、日本が主体的なあったのであれば、それは政府とか省庁、企業とかいった無機質なものではなくて、そこに所属していた人々の熱意と思惑の蓄積の結果だと思っている。

◆けど、熱意と思惑だけでは続かない。当時のプレーヤーも次々と変わっていく。どこかでシステムとしてしっかり構築しないと雲散霧消してしまう。久しぶりに見ると、南米における地デジの日本方式(ISDB-T方式)の普及というベクトルは、第1フェーズから第2フェーズへの移行の端境期にあると思っている。つまり、日本方式の採用という第1フェーズのゴールから、日本の技術の水位を南米諸国に見せつける(あるいは活用する)という第2フェーズのスタートラインに立っている。昨年から断続的にペルーのリマやアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されてきたISDB-T国際フォーラム(日本方式を採用した加盟国による集まり)は、そのスタートラインにおける制度設計などで力を入れたいとする総務省の強い意向が反映されたものと思っている(残念ながら、8月24日に開催されたサンパウロでの第3回フォーラムはメディアも扱わないほどのレベルになったが)。

◆そのような気持ちを酌んだ日本のメディアは、現地特派員も含めて次々とその線に沿った報道をしてきた。一部では、まるで南米に宝の山が眠っているような論調もあった。しかし、南米における地デジ日本方式の顛末を知れば知るほど、彼らが決まり文句のように書いてきた牧歌的な記事は書けないと思われる。

◆例えば「A国に日本方式が導入されたから日本企業のビジネスにチャンスがある」というフレーズがある。このような記事を書く記者の頭の中には、日本の製品を南米に輸出するというイメージを想起させているかもしれないが、少なくともブラジルでそのようなモデルは極めて厳しいと聞く。南米ではもしかするとFTAを締結しているチリやペルーに可能性があるかもしれないが、そのような国々でも価格競争力で日本勢は既に壊滅的な状況にあるとも聞いている。当然、ものによっては可能性はあるだろうし、日本国内で試行錯誤をしてきた日本企業の経験値は南米でのライバル企業群よりも高いかもしれない。ただ、それを単騎で戦えというのは酷である。

◆地デジ日本方式の普及を戦略として真剣に考えるのであれば、採用方式で満足するのではなくて、第2フェーズにおいてどのように主導権を獲得するかを考えないといけない。ところが、それを束ねるシステムを相変わらず見つけ出すことができない。例えば、ビジネスで潜在的な不利益を被りそうであれば、それを防ぐ動きを官民一体で相手国政府に対して行わなくてはいけない。受動的な動きはこれまでもやっているとして、試されるのは能動的な動きである。理想を言うのであれば、その尖兵となるのは大使館である外務省ではないだろうか。そこの構想力が試されるが、外務省が地域戦略としての南米における地デジ日本方式普及(深化)に向けた動きはあまり聞かない。動きで目立つのは相変わらず総務省である。

◆冒頭に「総務省は技術のノウハウはあるけど外に手足を持ってはおらず、外務省は地デジの日本方式の普及を優先順位に置いていなかった。日本のメーカーにとってはどの方式でも構わないということで、オール・ジャパンとは言い難い状況がそこにあったと思う」と書いた。実はこの状況は、程度の差はあるかもしれないが、あまり変わっていないと思っている。むしろ、今では、日本方式の母屋を借りて、ブラジル政府が好き勝手なことをしているようにも見える。このままでは、山本七平氏や野中郁次郎氏が取り扱いたがるような素材にまで堕ちてしまう。そんな懸念を持っている。
[PR]