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アルゼンチンの食品の輸入制限

◆ブラジル・サンパウロに生活していますが、アルゼンチンに出張する機会が増えそうで、来月も最低2回は行く予定です。そんなこともあって、色々なアルゼンチン経済のニュースを追っかけています。最近、気になったのは、こちらの記事。
・Argentina moves to protect food production (Financial Times)
・食品の輸入制限制度導入の動き (ジェトロ通商弘報)

◆概要を述べますと、5月6日にアルゼンチンのモレノ国内商業庁長官が国内のスーパーマーケット・チェーン関係者に対して、6月1日からアルゼンチン製品で代替できる食料品の輸入は制限するという声明を出しました。その後から、関係者の間に混乱が生じているという話です。

◆とにかく、この話、不透明なことばかりです。例えば、(1)一体食料品の何が制限の対象なのかがわからない、(2)モレノ長官は何の権限でこの声明を表明したのかがわからない(彼は貿易の所管ではない)、(3)この「声明」の根拠となる政令や法律ができるのかもわからない、などがあります。

◆また、「わからないことだらけ」の極めつけは、このタイミングです。5月17日からEUとメルコスールの経済協議が開始されたのですが、そこでは両地域間のFTA協議を6年ぶりに開始するという「明るいテーマ」がありました。ところが、この食品輸入制限の話はその向かう方向性とは逆行するものでありますし、何よりも今回のメルコスール側の議長国がアルゼンチンというおまけ付き。タイミングとしては、最悪です。

◆当然、17日の記者会見では、議長であるクリスチーナ大統領にこの輸入制限の質問が出てきたのですが、同大統領は、そのような制限は現時点で存在していないと高を括った回答に終始していました(地元紙ではこの発言で「撤回」と解釈しているところもありましたが)。

◆以上のとおり、アルゼンチン的な香りのする今回の一件。恐らく、経緯とか、落とし所とかについても、我々の常識を超えるところ(知らないところ)に本質があるのではないかと思っています。それが一体何なのかを探し当てるのがこの国を見る上での醍醐味なのではないかと思っています。