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ウルグアイ林産業の可能性

◆前回はウルグアイの林産業を中心に話をしてきました。同国が林産業でそれほど有名ではなかったなかで、欧米諸国による大型投資が相次ぐなど、近年注目を集めている理由は幾つかありますが、なによりもこれまでウルグアイは未開の土地であったということでした。

◆ウルグアイの国土は約1,700万ヘクタールなのですが、そのうち農地として利用可能な土地は約1,500万ヘクタールです。実に国土の9割近くは開墾が可能という恵まれた環境にあります。それら大半は手付かずなのですが、ウルグアイ政府は、300万ヘクタール分を植林地として宛がっています。そして、そのうち、手をつけられた植林地は100万ヘクタールのみ。まだまだ余地が残っていることは、バスケス政権幹部も強調しています。

◆次に、昨今の世界の情勢からすると、森林の伐採については数多くの制約を課されています。その顕著な例は、自然林を伐採してはならないということ。これによって、一昔前にはカナダ又は米国といった北米が日本向け木材チップの供給国がシェアを大幅に下げていきました。近年では、チリ、豪州、南アフリカなどが対日市場の主要プレイヤーになっています。そして、その間隙を縫うべく、ウルグアイも2004年から対日輸出を開始して、今では日本の輸入量の3~4%を占めるに至りました。小さなシェアにも見えますが、輸入が開始されて3年程度でこのシェアを確保できているわけで、攻め方によっては更に堅実なプレイヤーになる可能性も秘めています。

◆そのような林産業の将来性を見た上で、土地を投資の対象にする外国の人々も存在しています。特に米国の年金基金などを運用する企業にとっては、ウルグアイの土地価格の安さは魅力であり、大量に土地を購入して、そこで植林を展開することで木材を追って売っていこうとするビジネスモデルが見えてきました。数週間前のNew York Timesでも不動産欄でこの傾向を紹介するなど、米国マネーの行き先の一つがウルグアイにあることを把握するのは損な話ではありません。

◆このように、昔ながらの畜産業一色に見えるウルグアイの産業ですが、水面下では着々と林産業へとシフトしているようにも見受けられます。そして、そのようなウルグアイ産業の多角化を発掘・提案・推進してきたのが一人の日本人であったというのは、二国間の関係を考える上では非常に示唆に富むことであるかと思われます(その詳細についてはこちら)。日本はそのような観点からウルグアイに対して更にPRしていっても良いのかもしれません。

◆ただし、このような林産業の「ブーム」を前に、ウルグアイ政府として用心しなくてはいけないのがインフラ整備です。特に、内陸地から木材を運搬するための鉄道及びそれら木材を海外へ輸出するための港湾が非常に脆い状況にあります。例えば、鉄道は単線であり、過去1世紀近くも抜本的な改修が行われた経緯がありません。また、主要港湾であるモンテビデオ港についても、今後4~5年程度でパンク状態に陥るという港湾局長官の発言が伝えられています。

◆国際協力銀行(JBIC)としては、そのような「ブーム」を側面的に維持発展させるべく、3月に三井住友銀行協力の上、ウルグアイ政府が発行したサムライ債に際し、保証するため、これらアキレス腱となっているインフラ整備宛の資金を宛がった経緯があります。オール・ジャパンで日本からの民間企業の参画への呼び水効果を期待しているようであり、この動きはメルコスール諸国が期待するインフラ整備にも適合しています。