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EU向け魚介類輸出停止

◆22日、AP電によると、EUがウルグアイ産の魚介類の輸入を衛生上の理由から停止したと発表しました。その記事によれば、ウルグアイの魚介類輸出およそ2億ドルのうち、40%がヨーロッパ向けとされており、ウルグアイにとっては痛手となっているかのように想像させます。ただ、記事を読んでいくと、ウルグアイ当局はEUの判断に対して従順な姿勢を示しており、少し意外な感じを与えます。この記事に見えてこないところは何かついて考えていきたいと思います。

◆ウルグアイにとって魚介類は伝統的な産品であり、輸出総額の3~4%あたりを占めています。ウルグアイ中央銀行も含めた幾つかの統計によれば、2007年の輸出額は1.55億ドルから1.70億ドルあたりを推移しています。

◆今回の経緯を整理しますと、EUからの検査官がウルグアイを訪問し、8つの魚介類工場を調べたところ、そのうちの4工場からの輸入を停止するとの判断を行いました。その後、水産資源局(DINARA)が独自に検査した結果、問題点が克服されるまで、すべての工場の魚介類の対欧輸出を停止する判断をしたそうです。

◆随分と思い切ったことを行ったようにも見えますが、果たして本当にそうなのか。統計を切り口にして考えていきたいと思います。そこで、2005年から2007年にかけての魚介類(HSコード:03)にかかる輸出額と主要対象国を紹介したいと思います。

・2005年(130,483千ドル) 
(1)イタリア、(2)中国、(3)米国、(4)スペイン、(5)ナイジェリア
・2006年(153,258千ドル) 
(1)イタリア、(2)中国、(3)ブラジル、(4)スペイン、(5)米国
・2007年(170,845千ドル) 
(1)ブラジル、(2)イタリア、(3)ナイジェリア、(4)スペイン、(5)中国

◆このデータからも判明するように、魚介類の輸出額は年々伸びてはいますが、その主要輸出国については必ずしもEU一辺倒ではありません。EU以外では、老舗としての中国や米国、そしてアフリカからナイジェリアやトップ5には入っていませんがカメルーンなどもあります。そして、新しい主要輸出国としてブラジルが台頭してきたことが見逃せません。2008年の1月から事件直前の2月15日までの魚介類の輸出額(HSコード:03)を確認しましょう。

・2008年1月1日~2月15日(22,385千ドル)
(1)ブラジル9,612、(2)イタリア2,844、(3)ロシア1,269、(4)スペイン1,200、(5)ナイジェリア1,150

◆今年に入ってから顕著なのは、ブラジル向け輸出が全体の4割以上を占めているということです。過去3年間でもトップの国のシェアが2割を超えることがなかったなかで、このような突出した数字を出していることは、EU向け輸出停止を決断する上で大きな後押し材料になったのではないでしょうか。

◆当然、そのような打算的な視点だけではなく、EUの指摘に対しては真摯な姿勢で対応していこうとするウルグアイ独特の潔さがあることも事実です。自らに落ち度があった場合は、素直に認めるような美学がウルグアイ人の間にはあったりします。

◆なお、ウルグアイの当局ですが、EUによる輸入停止を3月末までに終わらせたい目標を設けています。早速、ウルグアイ当局関係者をEU本部のあるブリュッセルに派遣すると報じられており、その行動の速さは少々ウルグアイらしくないところがあります。

◆ちなみに、今回の一件の担当となっているモンティエル水産資源局長とは何度も仕事の上で話を交わしたことがありますが、物腰の柔らかいスマートな人物です。元々2005年に議員として当選していたのですが、ムヒカ農牧大臣の引きで、局長ポストを宛がわれた経緯のある若手実力者です。同局長が所属するMPP(与党・拡大戦線内で最大派閥)が親メルコスールであることも今回の政治決断に躊躇いをもたせなかった一因だったとするのは少々穿ち過ぎでしょうか。