レプラ工業相の訪日

◆12日付日本経済新聞にウルグアイをテーマにした記事が登場したので、紹介しようと思います。

ウルグアイ、年内にサムライ債・産業相会見
 【サンパウロ=岩城聡】南米ウルグアイのレプラ・産業・エネルギー・鉱業相(64)は11日からの訪日に際して日本経済新聞のインタビューに応じ、「年内に日本で円建て外債(サムライ債)を発行する」と語った。ブラジルが地上デジタル放送で日本方式がベースの規格を採用したのを受け、ウルグアイでも「同方式が採用可能か、総務省と協議したい」とも述べた。
 隣国アルゼンチンの金融危機の余波で、同国は2002年の国内総生産(GDP)成長率がマイナス約11%まで落ち込んだが、牛肉を中心とした農牧産品の輸出をテコに04年以降は急回復しており、同相は「今年は6―6.5%、来年も5%の成長を維持する」と語った。こうした経済環境の改善に自信を深めて、国際資本市場から資金調達に踏み切る。 (07:00)


◆どうも話によれば、ネットの記事は要約だそうで、全文は同日付の国際面(5面)に掲載されているとのこと。是非紙面にもアクセスしてみてください。

◆レプラ工業エネルギー鉱業相(写真、注1)の訪日については、ウルグアイでも6日付のオブセルバドール紙にも取り上げられていました(注2)。その記事のトーンでは、サムライ債の発行の「マーケティング」活動を9月のIMF総会の時点から継続して行ってきており、今回も(報道によればレプラ大臣と同時に訪日するステネリ経済財務省債務対策室長が)その一環を行うとする経済財務省筋からの発言が掲載されていました。ちなみに、同紙によればサムライ債は「年内の可能性も捨てていない」という風に当国政府としては検討課題の一つに挙げている様子です。

◆レプラ大臣の訪日の意味を考えていくと、日本側からみれば、「ウルグアイの或る大臣の訪日」という些細なことに見えてしまいがちですが、実はウルグアイ側からはこの大臣の訪日の意味が日本とウルグアイの二国間関係において深い意味を持つことが透けて見えてきます。

◆まず、レプラ大臣は、日本に「たまたま」訪日するのではなく、実は先月中旬に中国を訪問しています(中国政府の招待との報道ですが)。その訪中を伝える記事では、レプラ大臣は「バスケス大統領は確実に来年訪中する」と発言しています。確かに、今年に入ってからもバスケス大統領は、アジア歴訪先として「中国とインド」と例示しています。そして、これらの国々に対してはFTAを含めた通商関係拡大の可能性をウルグアイ政府としても戦略として取り組んでいることが度々報じられています。

◆そのバスケス大統領アジア歴訪の中に「日本」という選択肢が出てきていなかったのですが、今回のレプラ大臣訪日によって、初めて可能性として出て来たことになります。レプラ大臣の訪日は、その点で「ウルグアイのパートナーとして日本は国益に適うか」というフィージビリティー・スタディーの意味合いも含まれています。言い方を変えると、レプラ大臣の目を通じて、アジアにおける通商パートナーとして「日本と中国のどちらが頼りになるか」と天秤に計っているのかもしれません(なお、レプラ大臣が訪問期間中に講演をするそうなので、関心の有る方はこちらまで)。

◆ウルグアイ政権内でレプラ大臣にその資格があるのかについては、次のように考えられます。まず、論功行賞が目立つバスケス政権の閣僚の中で唯一の民間出身(Texaco Uruguay)であり、自らも企業家として米国ウルグアイ商工会議所の会頭を務めていました。また、政治色がないので、バスケス大統領に信頼されていて、米国とのFTAを含めた通商協定締結に向けた協議では、ウルグアイ側の関係各省の取り纏め役を担っていました。つまり、ウルグアイの通商問題では、彼がキーパーソンであるということです。

◆以上のように、ウルグアイ政府が、ここに来て日本をパートナーとして検討する動きになりつつあることを日本側は勿怪の幸いとして良いのではと思っています。日経新聞のネット版の記事を見る限りでは、その弾(タマ)として目下検討されているのがサムライ債とデジタルテレビ方式のようです。それらの成り行きが嚆矢となって、次へのステップに結び付けていくかが試されているのかもしれません。また、レプラ大臣には、中国とは違った形において、信頼に足るパートナーであることを売り込む絶好の機会かと思っています。

注1:レプラ大臣の肩書きにある最初の「INDUSTRIA」が「工業」なのか「産業」なのかについては、日本大使館が「工業」、日経やジェトロが「産業」を用いているようです。ここでは前者を採用しています。
注2:ウルグアイのニュースについては、在ウルグアイ日本大使館が毎日地元紙のニュース記事の要約(スペイン語)をメルマガ方式で配信していますので、ご参考まで。
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